西川和久の不定期コラム

2万円ちょっとのスマホ「Xperia Ace II」。おサイフケータイも使えてとりあえず買いたくなる1台!

ソニー「Xperia Ace II

 ソニーは5月19日、Xperiaシリーズのエントリーモデル「Xperia Ace II」を発表。5月下旬から販売中だ。編集部から試作機が届いたので試用レポートをお届けしたい。FeliCaなど全部入りで2万2,000円の実力はいかに!?

2万2,000円でおサイフケータイも含め全部入り!

 docomoのXperiaシリーズは、「Xperia 10 II」、「Xperia 5 II」、「Xperia 1 II」。2021年になって「Xperia 10 III」、「Xperia 1 III」も発表済みだ。歴代は各モデルのマークIIなどがないもの、そして「Xperia Ace SO-02L」(2019年)、「Xperia XZ3 SO-01L」(2018年)などが挙げられるだろうか。

 今回ご紹介するのは、2019年の「Xperia Ace」(SO-02L)の、2021年モデルに相当する「Xperia Ace II」(SO-41B)。4G機でMediatek Helio P35/メモリ4GB/ストレージ64GBと最小構成ながら、防塵防水、おサイフケータイ、深度センサーありのカメラ、指紋センサーなどを搭載し、価格は何と2万2,000円(ドコモ一括払い時)と激安な意欲作だ。

 なお、手元に届いたのが試作機ということもあり、ベンチマークテスト、おサイフケータイ、回線テストなどができなかった。また、パッケージや付属品などもなく、本体と別売のケースのみでの評価となることを、あらかじめご了承いただきたい。

 主な仕様は以下の通り。

【表】「Xperia Ace II」の仕様
SoCMediatek Helio P35(2.3GHz+1.8GHz/8コア)
GPUIMG PowerVR GE8320
メモリ4GB
ストレージ64GB
OSAndroid 11
ディスプレイ5.5型HD+(1,496×720ドット)、Corning Gorilla Glass 6
通信機能4G LTE、Wi-Fi 5、Bluetooth 5.0、NFC(FeliCa対応)
SIMNano SIMカードスロット
インターフェイスUSB Type-C(USB PD対応)、microSDカードスロット(最大1TB)、スピーカー、3.5mmイヤフォンジャック
センサー指紋認証
カメラ前面:800万画素(F2.0)
背面:1,300万画素(焦点距離25mm/F2.0)+深度センサー
サイズ約69×140×8.9mm(幅×奥行き×高さ)
重量約159g
バッテリ4,500mAh
カラーバリエーションブラック、ホワイト、ブルー
その他防水(IPX5/IPX8)/防塵(IP6X)、FMラジオ
価格2万2,000円(ドコモ一括払い)

 SoCはMediatek Helio P35で、2.3GHz+1.8GHzで8コア、GPUとしてIMG PowerVR GE8320を内包している。メモリは4GB、ストレージはeMMC 64GB。昨今のAndroid搭載スマホとして最小構成だろうか。Androidのバージョンは最新の11。

 ディスプレイは5.5型HD+(1,496×720ドット)。Corning Gorilla Glass 6対応だ。通信機能は、4G LTE(対応バンドは不明)、Wi-Fi 5対応、Bluetooth 5.0、NFC(FeliCa対応)。SIMはNano SIMとなる。

 インターフェイスはUSB Type-C(USB PD対応)、microSDカードスロット(最大1TB)、スピーカー、3.5mmイヤフォンジャック。センサーは指紋認証。日本の周波数をカバーしたFMラジオも搭載する。

 カメラは前面800万画素(F2.0)、背面1,300万画素(焦点距離25mm/F2.0)+深度センサー。詳細は後述しているので参考にしていただきたい。

 サイズ約69×140×8.9mm(幅×奥行き×高さ)、重量約159g。3年使っても劣化しにくいと言われる4,500mAhのバッテリを内蔵し、カラーバリエーションはブラック、ホワイト、ブルーの3色。防水(IPX5/IPX8)/防塵(IP6X)対応で、ドコモ一括払い時の価格は何と2万2,000円!全部入りでこの価格はある意味衝撃的と言える。

パネル中央上に前面カメラ。フチは広くはないが狭くもない。ナビゲーションボタンはソフトウェア式
左側に背面カメラ。その横中央あたりにFeliCaマーク
左側面にNano SIM/microSDカードスロット。下側面にUSB Type-Cとスピーカー
右側面に音量±ボタン、指紋センサー兼の電源ボタン、アシストボタン。上側面に3.5mmジャック
防塵防水のためイジェクトピン式ではなく、凹みに爪などで引っ掛けると外れる。裏にmicroSDカードスロット、表にNano SIM
重量は実測で159g
Xperia 1 IIとの比較。幅はあまり変わらないものの、厚みと高さが違う。どちらもパネルの明るさは最大だが、さすがに随分異なる
別売のスタンド付き専用ケース。抗菌性能付きカバー「Style Cover with Stand」

 手元に届いたのはホワイトのモデル。コンパクトで軽く非常に持ちやすい。また2万2,000円とは思えない質感でさすがソニーと言ったところか。

 フロントはパネル中央上に前面カメラ。リアは左側に背面カメラがある。その横中央あたりにFeliCaマーク。左側面にNano SIM/microSDカードスロット。スロットの表裏にそれぞれ入れる仕掛けになっている。

 下側面にUSB Type-Cとスピーカー。右側面に音量±ボタン、指紋センサー兼の電源ボタン、アシストボタン。上側面に3.5mmジャックを配置。

 防水防塵なので、SIM/microSDカードスロットはイジェクトピンを使用しないタイプ(つまりピン穴がない)になっている。加えてUSB Type-Cとスピーカー、3.5mmジャックはキャップレス。このあたりのこだわりは見事だ。

 5.5型HD+(1,496×720ドット)のディスプレイは、発色、視野角などは価格を考えれば十分以上。画面設定でホワイトバランスも調整できる。ただ明るさはそれほどでもなく、炎天下では少々見づらい。ここは仕方ない部分だろう。特筆すべきは指紋が付きにくいこと。この点は筆者所有のXperia 1 IIよりいいかもしれない。

 発熱は試用した範囲では特に気にならなかった。サウンドはスピーカーはモノラルながらパワーもあり、音もクリア。中域中心でシャリシャリ気味だが、ボーカルなどは前に出る。

 イヤフォン出力は手持ちのソニー MDR-EX800STで視聴したところ傾向はスピーカーと同じで上下に伸びる。ただ透明感など+αの部分はなく普通に鳴っている感じだ。価格が価格なので、あまり贅沢は言えないところだろう。

意外と撮れる!35mm換算25mm/F2.0+深度センサー

 搭載しているカメラは、前面800万画素(F2.0)、背面1,300万画素(焦点距離25mm/F2.0)+深度センサー。最大出力解像度は順に3,264×2,448ピクセルと4,160×3,120ピクセル。

最近のミドルレンジクラス以上のスマホでは何個もレンズが並ぶが、Xperia Ace IIは+深度で2つとシンプル

 モードは、写真、ビデオ、ポートレートセルフィ、Google Lens、パノラマ。プロモードに相当するものはない。写真モードは、ストロボ 自動/強制発光/オフ/照明、背景ぼかしのオン/オフ、HDR オン/オフ、明るさ/色合い調整オン/オフ。ビデオは明るさ/色合い調整オン/オフが可能だ。

 またAI機能もあり、被写体に応じて料理や低照度など13種類のシーンと、固定/動き/歩き検出/オートの4コンディションを合わせた「プレミアムおまかせオート」に対応する。

 前面カメラでは、背景ぼかし、美肌、肌の明るさ、目の大きさ、輪郭補正などいわゆる盛れる機能が標準搭載だ。ここまでするならアイキャッチ(瞳の中の光の写り込み)強調も欲しかった。

カメラ/リア写真
カメラ/リア設定
カメラ/フロント写真(ポートレート)
編集はGoogleフォト。ポートレートモードは後からボケ味などを調整可能

 以下作例を日中(屋内も含む)、夜景、人物(フロント/リア)と計22枚掲載する。一部、露出補正、HDRや背景ぼかしをオンとしているが、基本AI任せのフルオートだ。

 撮り始めは値段が値段なので期待していなかったが、ご覧のように意外とよく写る。光学的な広角や望遠はないものの、これだけ写れば普段使いなら十分ではないかと思うほどだ。マクロ的な使い方でも結構寄れるし、リアは深度センサーがあるので人以外でも背景ぼかしできる。

 ポートレートは、筆者が背面カメラを使い、自撮りは前面カメラを使っているが、前面カメラの方が写りは(色も含め)甘くなる感じだ。女性が使う時は自撮りが多くなるので、前面カメラは後一歩頑張ってほしいところか。

 起動やオートフォーカスはそれなりに速く、全体的に概ね良好だが、背景ぼかしやHDRのオン/オフ、撮った後の確認表示などは非常に遅く一呼吸以上かかる。SoCのスペックを考えれば仕方ない部分であるが、写りがいいだけに惜しい部分だ。

写真作例
モデル:茜音愛

ユーザーに合わせて3つのホーム画面を用意

 今回は試作機でSIMが使用できなかったため、SIM関係は試していない。ほぼAndroid準拠で、ドコモ初期設以降はdアカウントの設定になるため(いったんこの画面に入ると[戻る]で戻れない)、「セットアップを続行しますか?」で[中断し、リマインダーを受け取る]を選ぶと、追加するアプリ画面に切り替わり、その後セットアップ終了となる。

 指紋認証は右側にある電源ボタン兼なので、通常だと右手の親指と人差し指になるだろうか。サクッと登録でき、認証も即時。マスクとは無関係なので今だと非常に便利と言えよう。

ドコモ初期設定
追加するアプリ
画面ロックを選択
指紋の登録

 OSはAndroid 11。my daizが中央にあるのがdocomoらしい(オフにできる)。ホーム画面はXperiaホーム、docomo LIVE UX、簡単ホームと3種類設定できるが、画面キャプチャはXperiaホームで撮影している。

 ストレージは64GB中の約18GBが使用中。あまり余裕がないため、音楽や動画、写真などはmicroSDカードに逃すことになる。IMEはGboard。

Xperiaホーム
docomo LIVE UX
簡単ホーム
デバイス情報
アプリ一覧
ドコモフォルダ
Googleフォルダ
Sonyフォルダ
ツールフォルダ
FMラジオ。日本固有の76MHzから対応。ヘッドフォン/スピーカーの切替対応

 ストレージ容量が少ないわりにdocomo/Sony連合アプリで山盛りだ。キャリア端末なので仕方ない部分なのだが、起動しないと分からない「これは何?」的なアプリがいくつもあり、本機がターゲットにしている一般ユーザーがこれらを全て理解できるとは考えにくい。もう少しスッキリさせてはいかがだろうか。

ハイエンドと比較して価格が約5分の1、性能もざっくり5分の1だがスタミナは抜群!

 今回は試作機のためベンチマークテストは実行できない。そのため、搭載SoCのMediaTek Helio P35の性能から軽く考察してみたい。

 Notebookcheckという海外サイトに掲載されているHelio P35のスコアでは「Geekbench 5.4」のSingle-Coreが168、Multi-Coreが967、「Google Octane 2.0」は4,568.5(全てmedianのスコア)だった。個体が違うため、あくまでも参考値だが、ここから大きく外れることもないと思われる。いずれにしても今時としてはかなり低い。

 筆者所有のXperia 1 II(Snapdragon 865 5G)は、「Geekbench 5.4」のSingle-Coreが870、Multi-Coreが3,122。「Google Octane 2.0」は30,706。価格差約5倍なので、スコアもざっくり5分の1前後で、妥当なところだろうか。

 バッテリ駆動時間は、輝度と音量50%、Wi-Fi経由でフルHD動画を全画面連続再生し少し試したところ、10時間で残58%と、軽く20時間を越えそうな雰囲気。考えてみればXperia 1 IIのバッテリは4,000mAh。低性能のMediatek Helio P35で+500mAhも多いのだからスタミナがあって当然と言える。

 最後に短期間であるが、実際FacebookやInstagramアプリなどを使いつつ試用して思ったことを書く。

 iPhone 12 Pro MaxやXperia 1 IIなどハイエンドスマホユーザー目線だと、速度、動きの滑らかさ、写りやレンズの数、画面の綺麗さ、サウンド……全てがイマイチでもっさり。何ひとつ満足できるものはない。

 ただし、それら全てが使えないほど酷いわけではなく、本機が狙っている一般ユーザー層目線だと、特に何も困ることもなく普通に使える。実際作例撮りの時、モデルの子に少し触ってもらったが「え!これで十分」と言っていた(彼女は普段iPhone 11 Pro)。

 加えて指紋認証、防塵防水、おサイフケータイ、FMラジオなど全部入り。バッテリの持ちも良さそうだ。4G機だが、5Gはまだまだ使えるエリアが狭く今のところ考える必要はない。これで2万2,000円。驚くべきコストパフォーマンスと言えるだろう。かなり人気機種になるのではないだろうか。

 昨今のスマホの基準で考えれば、価格を抑えつつこれだけのものを作るのはなかなか難しい。「やるなXperia!」と思った次第だ。


せっかくなので元祖Aceかも知れないXperia A(SO-04E)とのツーショット(写真左)。雰囲気が結構似ている。2013年登場で、SoCはQualcomm APQ8064、メモリ2GB、ストレージ32GBを搭載。そしてFeliCa/ワンセグ/防水・防塵など当時の全部入り。OSはAndroid 4.2.2だがまだ動く

 以上のように「Xperia Ace II」は、5.5型HD+のディスプレイで、Mediatek Helio P35、メモリ4GB、ストレージ64GBを搭載するAndroid 11のスマホだ。コンパクトなサイズに指紋認証、防塵防水、おサイフケータイなど全部入り。普段使いなら問題ないレベルで動作する。カメラの写りも悪くない。そして価格は驚きの2万2,000円。

 仕様上特に気になる部分もなく、スマホ入門者のみならずハイエンドユーザーのセカンド/サード機など、とにかく安いので「とりあえず行っとくか!」のノリでぜひ使ってほしい1台だ。