後藤弘茂のWeekly海外ニュース

AMDが2012年のCPUロードマップを発表
〜メインストリームPCまでをBulldozerに



●AMDが2013年以降の技術方向性も発表

 AMDは米国時間11月9日に開催したカンファレンス「2010 Financial Analyst Day」で、2012年までの製品ロードマップを発表。また、2013年以降のテクノロジの方向性も示した。その中には、GPUコアに対する、より進んだプログラミングモデルも含まれる。

 ロードマップの最大のポイントは、2012年には次世代CPUアーキテクチャ「Bulldozer(ブルドーザ)」がメインストリームPCまで降りてくること。K8以来続いてきた現在のCPUアーキテクチャを、新しいBulldozerへと置き換える方針が明確になった。メインストリームPC向けBulldozerは、GPUコアを統合したAPU(Accelerated Processing Unit)となる。AMDは、毎年新しいAPUを投入して行くという。

 Analyst Dayでは、8コア版Bulldozerのデモも公開し、2011年夏から、BulldozerをハイエンドデスクトップPCとサーバーに投入することも公にした。さらに、2012年には拡張版Bulldozerコアを、2013年には次の世代のBulldozerコアを投入することも明らかにされた。

 また、低消費電力&低コスト市場向けの「Bobcat(ボブキャット)」コアベースの製品の、OEM向け出荷が始まったことも発表された。Bobcatは、従来より鮮明なダイ写真が公開され、その結果、40nm版のBobcatのCPUコアが極めて小さく、45nm版AtomのCPUコアより小さいことが明らかになった。

AMDアーキテクチャの比較
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●マルチスレッド性能にフォーカスしたBulldozer

 ロードマップを概観すると、2011年はBulldozerがサーバーとハイエンドデスクトップから浸透。Bobcatが薄型ノートPCとネットブック/ネットトップからタブレットまでの市場に登場する。その一方で、メインストリームデスクトップとパフォーマンス&メインストリームノートPCは、現在のK10(Hound)コアの「Llano(ラノ)」のまま残る。

 しかし2012年になると、BulldozerがK10を置き換えるように、デスクトップとノートPCのメインストリームまで登場。BobcatとBulldozerで製品ラインナップが構成されるようになり、K10は消えて行く。この戦略からは、AMDがBulldozerアーキテクチャの有効性に自信を持っていることが伺える。

 BulldozerはAMDにとってCPUアーキテクチャの大きな転機だ。既存アーキテクチャの改良を続ける慎重なIntelに対して、AMDはBulldozerでCPUアーキテクチャを大転換する。フロムスクラッチ(ゼロから)で開発されたBulldozerは、従来のK8/K10(Hound)系CPUコアとは大きく異なる設計を取っている。

Bulldozerアーキテクチャ(推定図)
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Bulldozerのマルチスレッドとアーキテクチャ

 Bulldozerでは1個のCPUモジュールの中に、2つの整数コアがあり、それぞれ独立したCPUコアとして働いて、2つのスレッドを並列に実行する。マルチスレッドでのスループットに焦点を当てて最初から設計されている。シングルコアでの性能を追求したCPUから出発した従来のCPUとは異なる発想で設計されたCPUアーキテクチャだ。

 Bulldozerモジュールの中では、2つのCPUコアが融合して一部のユニットをスレッド間で共有している。性能への影響が大きい整数演算部を各スレッド専用のユニットとすることで、スレッド性能が落ちないマルチスレッドを実現したという。その一方で、浮動小数点演算ユニットやフロントエンドの命令デコードパイプラインは共有している。この構造のため、Bulldozerでは1つのCPUに搭載できるCPUコア数が相対的に多くなるという。

Bulldozerモジュールのマルチスレッディング
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Opteron 4100/6100と、Bulldozer系Opteronの比較
マルチコア、SMTと比較したBulldozerの利点
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●現在のAtomよりも小さいBobcatのCPUコア

 デスクトップのロードマップは、3つのCPUアーキテクチャが混在する。ハイエンドデスクトップには、Bulldozerアーキテクチャの「Zambezi(ザンビージ)」が投入される。Zambeziは、従来のAMD CPUと同じディスクリートCPUで、FSBはHyperTransport 3だ。CPUモジュール数は4で、CPUコア数は8。従来通り2チャネルのDDR3コントローラを搭載するが、GPUコアは統合しない。AM3の拡張ソケットで登場する見込みだ。AMDはAnalyst DayでBulldozerが2011年夏に登場すると説明した。

 メインストリーム&エッセンシャルCPU市場には、K10コアにGPUコアを統合したAPU「Llano(ラノ)」が登場する。Llanoからチップセットは「Hudson(ハドソン)」FCH(Fusion Controller Hub)となる。

 Llanoは、下のダイ写真のように、4個のK10コアと、大きなGPUコアを統合している。AMDは、Intelの「Sandy Bridge(サンディブリッジ)」のGPUコアのような「必要充分」な性能ではなく、優れた性能を提供できるとAnalyst Dayで説明した。Llanoの投入時期は2011年中盤とされている。

Llanoのダイ
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デスクトップCPU/APUロードマップ

 2011年前半には、スモールフォームファクタやIntelのカテゴリではネットトップとなる市場向けに、Bobcatコアの「Zacate(ザカーテ)」と「Ontario(オンタリオ)」が投入される。こちらも、2個のCPUコアに、GPUコアと1チャネルのDDR3インターフェイスなどを統合したAPUとなっている。

 Zacate/Ontario(同ダイ)は、より鮮明なダイ写真が公開された。下の写真の奥側の端に配置されているのが2個のBobcat CPUコア(L2を含む)だ。ダイ全体の面積は75平方mmで、2個のCPUコアはそのうち1/4強しか占めていない。CPUコアのサイズは、45nmのK10の半分程度であり、極めて小さい。Zacate/Ontarioも、Llanoと同様にダイの多くをGPUコアに割いている。

Bobcatのダイ写真

 AMDの2011年デスクトップCPUのうち、ZambeziとLlanoはGLOBALFOUNDRIESの32nm SOI(silicon-on-insulator)プロセス、Zacate/OntarioはTSMCの40nm Bulkプロセスで製造される。

●2012年のメインストリームAPU「Trinity」

 デスクトップでは2012年にBulldozerコアのAPUが登場する。最大4 CPUコア(2モジュール)の「Trinity(トリニティ)」で、DirectX 11世代GPUコアと融合して登場する。Trinityについては、上位のZambeziと同様にL3キャッシュを備えるのかどうかはわかっていない。メモリサポートはDDR3となる。

 上のAnalyst Dayでのスライドでは、TrinityのCPUコアについて、次世代Bulldozerコアとなっている。しかし、技術を担当するChekib Akrout氏(Senior Vice President, Technology Group)は、下のように、2012年に登場するのは拡張版Bulldozerで、次世代Bulldozerは2013年と説明している。Trinityのコアは、拡張版である可能性が高い。

Bulldozerのロードマップ

 ちなみに、2012年のGPUコアでもDirectX 11のままなのは、DirectX 12の姿が一向に見えてこないからだ。そのため、GPUのフィーチャセットは、しばらくDirectX 11で足踏みをすると推測される。DirectX 10ハードウェアは短命で、DirectX 9と同様にDirectX 11が長く続くことになりそうだ。これは、GPUコアを設計サイクルが長いCPUコアと統合するAPUにとって有利に働く。

 2012年のハイエンドデスクトップCPUには「Komodo(コモド)」が登場する。KomodoはZambeziと同様に8コアまでのBulldozerコアを搭載する。しかし、“CPU”となっており、GPUコアを搭載したAPUではない。CPUコアは次世代Bulldozerとなっており、CPUコア自体に拡張が加えられている可能性が高い。TrinityとKomodoは32nmプロセスで製造される。

 2012年にAMDは、ローエンドのBobcatコアCPUも刷新する。最大4 CPUコアを搭載する「Krishna(クリシュナ)」で、GPUコアを持つAPUとなっている。Ontarioとの大きな違いはプロセス技術。こちらは、28nm Bulkプロセスで製造される。CPUコアはさらに小さくなるため、4コア化が可能になると推測される。

2012年までのデスクトッププラットフォーム

●ノートPCにもBulldozerベースのAPUが登場

 ノートPC向けCPUでは、来年(2011年)、Llanoがパフォーマンスとメインストリーム市場の投入される。LlanoベースのノートPCプラットフォームは「Sabine」。また、BobcatベースのOntarioとZacateが、エッセンシャルとネットブックに近い価格帯の市場に投入される。こちらのプラットフォームは「Brazos(ブラゾス)」だ。AMDは、Bobcatベースで、タブレット市場にも浸透を始めることができると期待している。

Bobcatのアーキテクチャ
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 2012年になると、ノートPCにもBulldozerコアが入ってくる。Llanoの後を引き継ぐ形で、Trinityと、まだ名前のついていないAPUが登場する。TrinityベースのノートPCのプラットフォームは「Comal(コーマル)」だ。また、OntarioとZacateの後継としては、Krishnaと「Wichita(ウィッチト)」が登場する。OntarioとZacateは同ダイでTDP(Thermal Design Power:熱設計消費電力)レンジとパフォーマンスが異なるだけだが、KrishnaとWichitaの場合は、まだわからない。Krishna/Wichitaのプラットフォームは「Deccan(デカン)」で、チップセットは新しい「Yuba(ユバ)」FCHとなる見込みだ。

2012年までのノートPCプラットフォーム
AMDのCPUアーキテクチャ移行
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