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7GB/s級の転送速度を実現したSamsung初のPCIe 4.0 SSD「980 PRO」を試す

Samsung SSD 980 PRO

 Samsungより、PCI Express 4.0に対応するM.2型NVMe SSD「Samsung SSD 980 PRO」が登場する。従来の製品を超える7GB/s級のリード性能を備えた、新世代のPCI Express 4.0対応SSDだ。

 今回、Samsung SSD 980 PROの発売に先立って、1TBモデルの試作品を使用する機会が得られたので、その性能や特徴をベンチマークテストで確認してみた。

7GB/s級のリード速度を実現するPCIe 4.0対応SSD

 Samsung SSD 980 PROは、インターフェイスにPCI Express 4.0 x4(NVMe 1.3c)を採用したM.2型SSD。Samsung SSD 970 PROの後継にあたる高性能向けSSDで、リード最大7,000MB/s、ライト最大5,000MB/sという転送速度を実現する。

 容量ラインナップは250GB、500GB、1TB、2TBの4モデル。ただし、最初に発売されるのは1TB以下の3モデルで、2TBモデルについては後日(2020年内)発売予定で、製品仕様も多くが未定となっている。

【表1】Samsung SSD 980 PROのおもな仕様
容量250GB500GB1TB2TB
NANDフラッシュSamsung V-NAND 3bit MLC
コントローラSamsung Elpis Controller
キャッシュ512MB LPDDR4512MB LPDDR41GB LPDDR42GB LPDDR4
TurboWrite4~49GB4~94GB6~114GB未定
シーケンシャルリード6,400MB/s6,900MB/s7,000MB/s未定
シーケンシャルライト2,700MB/s5,000MB/s5,000MB/s未定
ランダムリード(4KB QD32)500,000IOPS800,000IOPS1,000,000IOPS未定
ランダムライト(4KB QD32)600,000IOPS1,000,000IOPS1,000,000IOPS未定
インターフェイスPCIe 4.0 x4(NVMe 1.3c)
フォームファクタM.2(2280)
本体サイズ80.15×22.15×2.38mm(最大)
動作温度0℃~70℃
MTBF150万時間
耐久性(TBW)1503006001,200
製品保証5年間
1TBモデルの基板表面。コントローラ、キャッシュメモリ、NANDフラッシュ(2個)が搭載されている
基板裏面。部品は表面側に集約されており、裏面には何も実装されていない
CrystalDiskInfo実行画面。インターフェイスがPCI Express 4.0 x4であることが確認できる

 Samsung SSD 980 PROは、Samsungのハイパフォーマンス向けSSDとしては初めて3bit MLC(TLC)タイプのV-NANDを採用した。このV-NANDは100層以上のメモリセルを積層した、最新の第6世代V-NAND(1xx層)で、従来の第5世代V-NANDに比べ、読み書き速度が10%向上したほか、消費電力を15%以上削減したという。

 コントローラには新設計の「Elpis Controller」を採用。8nmプロセスで製造されるElpis Controllerは、Samsung SSD 970 PROに搭載されていたPhoenix Controllerの4倍のキュー(32→128)を処理できる能力を備えている。

 また、TLCタイプの書き込み性能をカバーするSLCキャッシュ技術「Intelligent TurboWrite」を搭載。確保するキャッシュの容量はモデルによって異なるが、1TBモデルであれば固定で確保される6GBと、動的に確保する108GBで、あわせて最大114GBのSLCキャッシュが利用できる。

Samsung SSD 980 PROのIntelligent TurboWrite仕様と、従来製品(970 EVO Plus)の比較。かなり大容量のSLCキャッシュが利用できることがわかる

ベンチマークテストで980 PROの性能をチェック。既存のTLC採用モデル「970 EVO Plus」との比較も実施

 それでは、Samsung SSD 980 PROの性能をベンチマークテストでチェックしていこう。参考までに、現行の3bit MLC V-NAND搭載SSD「Samsung SSD 970 EVO Plus」の結果も紹介する。

比較用のSamsung SSD 970 EVO Plus(1TB)
Samsung SSD 970 EVO PlusのCrystalDiskInfo実行画面

 テストに利用したのは、Ryzen 9 3950Xを搭載したAMD B550環境。テストするSSDは、CPU内蔵PCI Express 4.0と直結しているM.2スロットに接続した。そのほかの機材は以下のとおり。

 なお、今回テストするSamsung SSD 980 PROは発売前の試作品であり、製品版ではファームウェアや製品仕様が変更される可能性がある点について、あらかじめご了承いただきたい。

【表2】テスト機材一覧
CPURyzen 9 3950X
CPUパワーリミットPPT:142W、TDC:95A、EDC:140A
CPUクーラーサイズ APSALUS G6(ファンスピード=100%)
マザーボードMSI MAG B550M MORTAR [UEFI:1.30]
メモリDDR4-3200 16GB×2(2ch、22-22-22-53、1.20V)
GPUGeForce GT 1030 2GB
システム用SSDIntel SSD 760p 256GB(NVMe SSD/PCIe 3.0 x4)
電源CORSAIR RM850 CP-9020196-JP(850W/80PLUS Gold)
グラフィックスドライバGeForce Game Ready Driver 452.06(27.21.14.5206)
OSWindows 10 Pro 64bit(Ver 2004 / build 19041.450)
電源プランAMD Ryzen Balanced
室温約24℃

CrystalDiskMark 7.0.0

 CrystalDiskMark 7.0.0では、テストサイズ「1GiB」と「64GiB」でテストを実行した。

 Samsung SSD 980 PROは、シーケンシャルでリード約6.7GB/s、ライト約4.9GB/sを記録。スペック値をやや下回ってはいるものの、リード最大5GB/s前後であった既存のPCI Express 4.0対応SSDを大きく超えるリード性能を発揮しており、PCI Express 3.0対応SSDであるSamsung SSD 970 EVO Plusを圧倒している。

 また、テストサイズ「64GiB」での結果において、Samsung SSD 970 EVO Plusのライト性能が1GiB時より低下しているのに対し、Samsung SSD 980 PROでは速度低下がみられない。これは、最大114GBのSLCキャッシュを利用できるIntelligent TurboWriteが効果を発揮した結果だろう。

 ランダムアクセス性能も優秀で、特に、80MB/sを超える「RND4K Q1T1」のリード速度は、NANDフラッシュメモリを利用するSSDとしては極めて優秀なものだ。

CrystalDiskMark 7.0.0(テストサイズ=1GiB)
980 PRO(1TB)
970 EVO Plus(1TB)
CrystalDiskMark 7.0.0(テストサイズ=64GiB)
980 PRO(1TB)
970 EVO Plus(1TB)

ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1

 ATTO Disk Benchmarkでは、リード約6.2GB/s、ライト約4.6GB/sを記録。CrystalDiskMarkよりやや低い数値となっているものの、PCI Express 3.0対応SSDであるSamsung SSD 970 EVO Plusを大きく上回る速度を実現している。

980 PRO(1TB)
970 EVO Plus(1TB)

HD Tune Pro 5.75

 HD Tune Proでは、File Benchmarkで200GBの読み書きを実行し、Samsung SSD 980 PROのIntelligent TurboWriteがスペックどおりの動作をしているのかチェックしてみた。

 注目すべきはライト速度を表すオレンジ色の折れ線だ。Samsung SSD 970 EVO Plusが40GBを超えたあたり、Samsung SSD 980 PROは110GBと120GBの間で、ライト速度の低下が発生している。これは、各SSDがIntelligent TurboWriteで確保できる最大キャッシュ容量(42GBと114GB)とほぼ一致している。

 SLCキャッシュが切れた後のライト速度は1,500~1,800MB/sとなっており、約1,500MB/sのSamsung SSD 970 EVO Plusよりやや高速だ。

980 PRO(1TB)
970 EVO Plus(1TB)

冷却用ヒートシンクの有無による動作温度と性能の違い

 ここまでのテストでは、Samsung SSD 980 PROに冷却用のヒートシンクなどは利用していないのだが、これほど強力な性能を発揮するSSDであれば、発熱がどれほどのものなのか気になるユーザーも多いだろう。

 そこで、ヒートシンクを搭載しない標準状態と、マザーボードのMSI MAG B550M MORTARに付属するヒートシンクを利用した場合で、動作温度や性能にどのような差が生じるのかをチェックしてみた。

ヒートシンクを搭載していない標準状態
MSI MAG B550M MORTAR付属の冷却用ヒートシンクを搭載したところ

 「HWiNFO v6.30」を使用して取得した、CrystalDiskMark(テストサイズ64GiB)実行中のSSDモニタリングデータをまとめたものが以下のグラフだ。グラフ中の「SSD温度_1」と「SSD温度_2」は、それぞれコントローラとNANDフラッシュの温度であると思われる。

 ヒートシンクを利用することで、SSDの最大温度は92℃から76℃にまで低下しており、ヒートシンクがSSD温度の抑制に大きな効果を発揮していることがわかる。一方、どちらのグラフでもサーマルスロットリングによるものと思われる速度低下は発生しておらず、動作温度の改善は性能改善に結びつかなかった。

ヒートシンクなし
ヒートシンク搭載時

 ヒートシンクを搭載して実行したCrystalDiskMarkとATTO Disk Benchmarkの結果をみても、Samsung SSD 970 EVO Plusとの比較で紹介したヒートシンクなしの結果と大差ないものとなっている。

 これらのベンチマークテストを実行しても、サーマルスロットリングによる性能低下が発生しないという結果は、Samsung SSD 980 PROの発熱が性能の割に小さいことを示すものだ。

ヒートシンク搭載時の「CrystalDiskMark 7.0.0」実行結果
テストサイズ=1GiB
テストサイズ=64GiB
ヒートシンク搭載時の「ATTO Disk Benchmark 4.01.0f1」実行結果

強力なリード性能が魅力の新世代PCIe 4.0対応SSD

 PCI Express 4.0に対応したSamsungの新世代ハイパフォーマンス向けSSDは、7GB/sクラスのシーケンシャルリードと、NANDフラッシュ採用SSDとしては非常に高いランダムリードが魅力のSSDだ。

 フラッシュメモリのタイプがMLCからTLCに変更されたことで、最大ライト性能を維持できるのはSLCキャッシュが尽きるまでの間に限定されるものの、従来モデルより遥かに多くのキャッシュを確保できるIntelligent TurboWriteのおかげで、キャッシュ切れに遭遇する機会は少ないだろう。

 記事執筆時点では発売日や価格についての情報を得られていないが、新世代のPCI Express 4.0対応SSDであるSamsung SSD 980 PROの性能は、SSD性能にこだわりたいエンスージアストやゲーマーにとって魅力的なものだ。早く製品版を入手できるようになることを期待したい。