Hothotレビュー

3Dゲームも遊べるのか? 4万円ちょっとの10.1型2in1「マウス MT-WN1004」を試す

Atomはどこまで進化したのか?

マウスコンピューター「MT-WN1004」

 IntelがAtomプロセッサを世に出したのは2008年のこと。安価なネットブックが市場を席巻したり、Windows搭載タブレットPCが「艦これ」専用機として重宝されたりと、時代ごとに印象的なマシンが登場した。かく言う筆者は未だに「VAIO P」を愛用していたりもする。

 最近は、より高性能でそこそこ安価かつ小型のノートPCが登場したり、iOSやAndroidのタブレットが高性能化してきたこともあり、存在感は薄れ気味だ。とはいえAtomプロセッサもちゃんと開発されていて、現在は第6世代となるGemini Lakeが最新となる。なお製品名にはPentium SilverやCeleronといった名前が使われており、Atomという名前は表向きには出てこない。

 株式会社マウスコンピューターが6月に発売した「MT-WN1004」は、そのGemini Lake世代のCeleron N4000を搭載した2in1。税別39,800円(税込42,984円)という低価格ながら、カバーにもなる着脱式キーボードが同梱され、タブレットとノートPCスタイルの両方で使えるWindowsマシンだ。実機をお借りしたので、性能や使い勝手をお伝えしよう。

Windows 10 Pro搭載でも税別3万円台の2in1

 今回レビュー用にお借りしたモデルは、Windows 10 Proを採用した「MT-WN1004-Pro」。ほかにWindows 10 Home(Sモード)を採用したモデル「MT-WN1004」があり、税別で2,000円安の37,800円となる。Windows 10 Home(Sモード)はMicrosoft Storeのアプリのみインストールできるセキュア仕様だが、無償でSモードを解除し、通常のWindows 10 Homeに変更できる。解除後は再びSモードに戻すことはできない。

 「MT-WN1004-Pro」のスペックは下記のとおり。

【表1】MT-WN1004-Proのスペック
CPUCeleron N4000(2コア/2スレッド、1.1~2.6GHz)
メモリ4GB LPDDR4-2400(オンボード、デュアルチャネル)
フラッシュメモリ64GB eMMC
ディスプレイ10.1型光沢液晶
解像度1,280×800ドット
OSWindows 10 Pro
汎用ポートUSB 3.0×2(うちType-C×1)
カードスロットmicroSD
映像出力Mini HDMI
無線機能IEEE 802.11ac、Blunetooth 4.2
有線LAN-
その他前面・背面各192万画素カメラ、音声入出力など
本体サイズ(幅×奥行き×高さ)約259×174×10mm
重量約640g(本体のみ)、約978g(キーボード、カバー込み)
税別直販価格39,800円

 CPUのCeleron N4000は、Gemini Lakeのラインナップ中では最下位に位置する。それでも2コアでクロックは最高2.6GHz、メインメモリはLPDDR4-2400にも対応しており、デュアルチャネルで4GB搭載。数字の上ではかなり戦えそうな印象がある。

 画面は10.1型で1,280×800ドット、10点マルチタッチ対応。カバーはマグネット着脱式86キー日本語キーボードと一体化したもので、タッチパッドも付いているので、タッチパネルと両方で操作できる。

 厚さ10mmながら、Type-AのUSBポートを備える。USB Type-Cも搭載するが、本体への給電や映像出力には非対応。充電には専用のACアダプタ、映像出力にはMini HDMIを使用する。さすがに有線LANポートは非搭載ながら、IEEE 802.11acにも対応した無線LANを搭載。またmicroSDカードスロットも用意されており、ノートPCとして使うのに必要なものはひととおり用意されている。

 重量は本体のみで約640g。普段はカバー付きで使用すると思われるが、それでも約978gと1kgを切る軽さだ。ストレージが64GB eMMCとなるため、サブ機としての運用になるとは思われる。

Atomタブレットでゲームは動かせるのか

無茶を承知でゲーム系ベンチマークテストを実行してみた

 製品の位置付けから考えて、3Dゲームをバリバリ遊ぶマシンではないのは明らかなのだが、とはいえ現行のAtomでどこまで動かせるのかは気になるところ。可能な範囲で各種ベンチマークソフトを試してみよう。

 利用したのは、「PCMark 10 v2.0.2115」、「3DMark v2.9.6631」、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」、「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」、「World of Tanks enCore」、「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」、「CINEBENCH R20」、「CrystalDiskMark 6.0.2」。

 ゲーム系のベンチマークは解像度を低めにしつつエフェクトも最低ラインに設定してみたが、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」では音と映像がズレるほどで話にならない。「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」は一応動作はしたが遊べるレベルとは言えない。

 しかし「World of Tanks enCore」は、最低品質ながら高い性能との評価。「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」も標準的な動作を見込めるとしている。テスト中の映像を見ても、30fps程度は出ている場面が多く、一応遊べるレベルには達していると思う。Atomでも物によっては3Dゲームが遊べるというのは、筆者としては感慨深い。

【表2】ベンチマークスコア
「PCMark 10 v2.0.2115」
PCMark 101,571
Essentials4,409
Apps Start-up score4,561
Video Conferencing Score4,228
Web Browsing Score4,445
Productivity2,628
Spreadsheets Score3,146
Writing Score2,196
Digital Content Creation909
Photo Editing Score911
Rendering and Visualization Score564
Video Editing Score1,462
Idle Battery Life7時間20分
Modern Office Battery Life4時間38分
Gaming Battery Life2時間43分
「3DMark v2.9.6631 - Fire Strike」
Score380
Graphics score416
Physics score2,151
Combined score132
「3DMark v2.9.6631 - Sky Diver」
Score1,191
Graphics score1,196
Physics score1,548
Combined score866
「3DMark v2.9.6631 - Cloud Gate」
Score2,509
Graphics score3,496
Physics score1,263
「3DMark v2.9.6631 - Ice Storm Extreme」
Score12,052
Graphics score11,578
Physics score14,073
「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」(軽量品質)
1,280×720ドット370
「ファイナルファンタジーXIV: 漆黒のヴィランズ ベンチマーク」(標準品質(ノートPC))
1,280×720ドット778
「World of Tanks enCore」(最低)
1,280×720ドット8,034
「ファンタシースターオンライン2 キャラクタークリエイト体験版 EPISODE4」(簡易設定1)
1,280×720ドット2,732
「CINEBENCH R20」
CPU299cb
CPU(Single Core)158cb

 ゲームと言えば、せっかくなので先に名前の挙がった「艦これ」も試してみることにした。Windowsタブレットで「艦これ」が流行していたときと比べると、「艦これ」自体がFlashベースからHTML5ベースに変更され、解像度も向上している。

 Microsoft Edgeで動かしてみたところ、なんの問題もなく滑らかな映像で動作した。ゲーム自体がタッチ操作に最適化されたインターフェイスではないとはいえ、10.1インチの画面は十分広く、タッチパネルでの操作もなかなか快適だ。ブラウザベースのゲームを遊ぶなら、今もAtomタブレットは重宝する。

じつはかなりひさびさに「艦これ」を起動した筆者。HTML5ベースになっても本機なら快適に動作した

 ストレージはeMMCということで期待はしていなかったのだが、シーケンシャルで100MB/sを超え、ランダムアクセスでも10MB/s以上の値が出ている。実際に使用していても、OSやアプリの起動はなかなか機敏で、SSDに迫るとまでは言わないにしても、HDD以上の快適性は確保されていると感じた。

CrystalDiskMark 6.0.2

 バッテリ持続時間は、「PCMark 10」でアイドル時に7時間20分、オフィスユースで4時間38分、ゲーミングで2時間43分という結果に。アイドル時の公称動作時間は約8.6時間とされているので少々短いが、会議等に持ち込んでもバッテリ切れを心配する必要はなさそうだ。

「これで3万円台?」と言うほかない、至れり尽くせりの高品質

キーボード付きカバーを装着し、スタンド状態で使用したところ

 続いて使用感を見ていく。本製品に初めてふれた時に感動したのは、性能でも軽さでもなく、液晶に貼られたフィルム。最初から液晶保護フィルムが貼られており、あとから購入する必要がない。液晶保護フィルムの貼り付けは何度やっても慣れないし、かと言って貼らないのも嫌。標準で最初から貼ってあるのはとてもありがたい。

 さらにもう1つありがたいことに、液晶保護フィルムの上に輸送保護フィルムなるものも貼られた二重構造になっている。使用時には剥がすわけだが、この輸送保護フィルムに各端子やボタンの場所が書いてあり、説明書を見なくても製品仕様が理解できる。安価なわりになんとユーザーフレンドリーなことか。

輸送保護フィルムに書かれた端子の説明。初めて触るときにはとてもありがたい

 本体は10.1インチタブレットとして標準的なサイズ。カメラが前と後ろにあり、前面下部にWindowsボタンがあるくらいで、他にデザイン的に目立つところはない。色もブラックで統一されており、地味ともシンプルとも言える。ただ背面はラバーコーティングされており、しっとりした手触りで滑りにくく、安っぽさは感じられない。

 着脱式のキーボード付きカバーは、本体とのコネクタ部分がマグネット式になっており、ワンダッチで確実に脱着できる。カバー自体も本体にマグネットでくっつき、本体の側面以外をぐるっと囲ってくれる。フェルト調の表面も手触りがいい。

 またカバーの背面部分は後方に折りたたむようにすることで、本体を支えるスタンドにもなり、ノートPCスタイルで使用できる。膝上で使おうとするとうまく自立できないので、あくまで机に置いて使うのが前提である。

 キーボードはカバーの分を含めても5mmほどの厚さしかない。となるとキータッチもペラペラなのか……と思いきや、意外としっかりしたストロークとクリック感がある。キー配置もとても素直で、キーピッチは若干縦が短いものの不満に感じるほどではない。タッチパッドの反応も問題なく、左右のクリックボタンもキーボード同様しっかりしたストロークとクリック感がある。本体とカバーのコンパクトさを考えればすばらしく良質だ。

本体前面。液晶上部にカメラ、下部にWindowsボタンがある
本体背面にもカメラがある。ラバーコーティングで手触りも良好
カバーはマグネット式で簡単に着脱できる
本体にカバーを巻き付けたところ
キーボードは意外としっかりしたストロークとクリック感がある
タッチパッドも搭載

 動画の再生もスムーズ。画面の解像度があまり高くないので精細さには欠けるものの、色味や動きの滑らかさは十分。上下左右の視野角も良好で、色相変化もほとんど感じられない。タブレットとして使用しても、向きの違いによる違和感はない。

 音はサイズなりで、高音は立っているが低音はほとんど出ていない。音楽再生デバイスとして期待すべきではないが、人の声はよく聞こえるので、ストリーミングで映像を見たりする分には不満は感じない。音質が気になるときはヘッドフォンを使えばいいだろう。

 ここまで書いてきて気づいたのだが、本機はとても完成度が高い。3Dゲームを遊ぶのに性能不足というのは当たり前だが、それでも期待した以上に動作している。ブラウジングやオフィスユースならソフトの起動も十分早いし、キーボードやタッチ操作も快適だ。ファンレスでHDDもないので、使用中も完全に無音。カバーとキーボードも標準で付属し、フィルムまで貼り付け済み。

 強いて言えば、気になったことは2点ある。1つはストレージのアクセスランプがないこと。eMMCでも十分快適とはいえ、ソフトの起動には数秒かかるものもある。わずか1秒2秒の遅れでも、画面に反応がなく、ストレージにアクセスする音もないと、「今ちゃんと起動できたか? ダブルクリックに失敗したか?」と少々心配になる。もっともタブレットにアクセスランプなどつけなくて当然だし、あったらむしろ邪魔ですらある。

 もう1点はストレージの容量だ。64GBではただでさえ少ない上、OSで使用する分も減る。今回使ったベンチマークテストのソフトをインストールしただけで、容量不足になってしまった。インストールが済んだソフトのダウンロードファイルを順々に消していくことでなんとかなったが、用途によってはmicroSDXCを入れっぱなしにするなどの対応は必要になるだろう。

 とはいえ、冷静に考えてみると、本機は税別39,800円のマシンなのだ。それでいて外見に安っぽさは感じられず、むしろスマートな印象の方が強い。オシャレなカフェに持ち込んで自慢げに使えとは言わないが、誰かに見せて「キーボードも全部込みで税別3万円台で、Windows 10 Proが動いているんですよ」と言ったら驚かれるに違いない。性能面でも外見でも、価格以上の価値を感じられる1台だ。

左側面に端子が集中している。ヘッドフォン端子、USB Type-C、Mini HDMI、USB Type-A、電源端子、microSDカードスロット。その下にスピーカーがある
右側面はスピーカーのみ
上部には電源ボタンとボリューム調整ボタン
下部はキーボードコネクタ
液晶の視野角も広く、どの角度から見ても破綻しない
ACアダプタはかなりコンパクトだが、USBではなく専用のもの