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ユーザーが求める仕様を追求した高性能15型ノート「VAIO S15 VJS153」

VAIO 「VAIO S15 VJS153」

 VAIOは、15型液晶搭載のメインストリームノートPC「VAIO S15」の2019年モデルを発表した。従来モデルからデザインを一新しつつ、ユーザーが求める仕様をしっかり網羅することで、魅力が向上している。

 今回は、VAIO S15新モデルのうち、直販サイトで販売されるカスタマイズモデルをいち早く取り上げ、ハード面を中心に紹介する。2019年4月19日の発売を予定しており、直販価格は119,800円(税抜)から。

ディスプレイを狭額縁化しデザインもシャープに

 VAIO S15の2019年モデル「VAIO S15 VJS153」(以下、VJS153)は、スペック面の進化だけでなく、デザインも大きく変更されており、フルモデルチェンジと言っていい進化を遂げている。

 従来モデルは、本体側面や角などにカーブを取り入れた柔らかい印象のデザインに、ホワイトやピンクなどの鮮やかなカラーを用意することで、どちらかというと幅広いユーザー層に親しみやすい印象の製品となっていた。

 それに対しVJS153では、VAIOのモバイルノートPCシリーズとほぼ同様の、直線的なデザインを新たに採用。天板の後方にはVAIOのモバイルノートPCでおなじみの“オーナメント”と呼ばれるシルバーのパーツも採用されている。

 本体色はブラックとシルバーのみとなり、重厚な印象の強いデザインとなった。筐体素材には樹脂を採用しているが、塗装などの仕上げが上質で、安っぽさを感じることもない。デザインについては人によって好みが変わると思うが、個人的にはVJS153のほうが圧倒的にVAIOらしいと感じ、好印象だ。

 本体デザインの変更と合わせ、ディスプレイのベゼル幅が従来モデルからかなり狭められており、本体サイズも小型化されている。サイズは361.4×254.3×22~26mm(幅×奥行き×高さ)となっており、幅が18.9mm、奥行きは6.5mmそれぞれ短くなった。15.6型液晶搭載のノートPCでは、コンパクトさが求められることはそれほどないかもしれないが、デスク上で占めるスペースが少なくなることで、デスクワークもやりやすくなるはずだ。

 重量は約2.25kgと、こちらも従来モデルと比べて軽量化を実現。これなら室内での持ち運びも苦にならないだろう。なお、実測の重量は2,176gと、公称よりもかなり軽量だった。

ディスプレイを開いて正面から見た様子。ディスプレイのベゼル幅が狭められたことで、サイズの小型化を実現
天板部分。素材は樹脂製だが、上質な仕上げで安っぽい印象は皆無。また、モバイルモデル同等の角が鋭角となったデザインを採用し、シャープな印象となった
本体正面
左側面。高さは22~26mmと、後方に向かってやや厚くなっている
背面。モバイルモデル同様のシルバーパーツ”オーナメント”も搭載
右側面。側面から見ても、全体的に直線的なイメージとなっている
底面。フットプリントは361.4×254.3mm(幅×奥行き)と、従来モデルからかなりの小型化を実現している
重量は実測で2,176g。室内の持ち運びも苦にならないはずだ

15.6型液晶は4K表示対応モデルも選択可能

 ディスプレイは、15.6型の液晶を採用。従来モデルでは15.5型だったため、わずかではあるがサイズアップとなっている。表示解像度はHD(1,366×768ドット)、フルHD(1,920×1,080ドット)に加えて、4K(3,840×2,160ドット)も新たに選択可能となった。パネルの種類はIPSで、フルHDおよび4K液晶では、高輝度、広視野角、広色域、ハイコントラスト表示に対応するパネルを採用するという。

 今回の試用機では4K液晶が搭載されていたが、確かに発色は鮮やかで明暗のコントラストも優れているという印象で、かなり高品位な表示が可能と感じる。パネル表面は非光沢処理が施されており、光沢液晶のような目の覚める鮮やかといった印象はなかったものの、それでもデジカメ写真のレタッチや動画の編集も、本来の色合いをしっかり確認しながら行なえると感じる。また、外光の映り込みが少ないため、文字入力などの作業も快適に行なえる。

 ただし、15.6型の4K液晶では、等倍表示時の文字のサイズがかなり小さくなってしまうため、ある程度表示スケールを拡大して利用するのが基本となるだろう。とはいえ、文字サイズと情報量を好みに合わせて設定できる点は、高解像度パネルの大きな利点。合わせて、画像はフルHDよりも高精細に表示できる。そのため、予算が許す限り4K液晶の選択をお勧めしたい。

15.6型のIPS液晶を採用。従来よりわずかだが大型化している。表示解像度はHD、フルHD、4Kから選択可能
フルHDと4Kパネルは、高輝度、広視野角、広色域、ハイコントラスト表示に対応。写真なども鮮やかに表示できる
試用機では4Kパネルが搭載されていた。等倍表示では文字がかなり小さくなる反面、広大な作業領域を確保できる

キーボード面はフラットで、ディスプレイを開くと角度がつく

 キーボードは、従来モデル同様のアイソレーションタイプのものを搭載している。ただ、キーボード面がフラットになるとともに、キーボード面にアルミ素材を採用。表面にヘアライン処理が施されていることもあって、かなり上質な印象が伝わってくる。

 キー配列は従来モデルと同じで、Enterキー右側にはテンキーも用意されている。キーピッチは、主要キーは19mmフルピッチを確保。ただし、本体の横幅が短くなったことの影響もあってか、テンキー部分はピッチが16mmとやや狭くなっている。とはいえ、メインのキーは19mmフルピッチで統一されているため、キーボードの利便性はほとんど失われていないと感じる。

 キーストロークは1.5mmと十分な深さがある。タッチは個人的にはやや硬めと感じるが、クリック感はしっかりとしており、確実にタイピングできるという印象だ。

 ところでVJS153では、ディスプレイを開くとディスプレイ後方が本体下部にもぐり込む、VAIOのモバイルノートPCでも採用されている“リフトアップヒンジ”を採用している。これによって、ディスプレイを開くとキーボード面に適度な角度が付き、快適なタイピングの要因となっている。実際にタイピングしていても、手首への負担が少なく、キーボードの利便性はかなり優れると感じる。

 加えて、キーボード面にアルミ素材を採用することで剛性が高められている。これによって、本体後方をリフトアップしてもキーボード面のしなりはほとんど感じることなく快適にタイピングできるようになっている。

 ポインティングデバイスは、クリックボタン独立型のタッチパッドを搭載。従来モデルよりもパッドの面積が拡大したことで操作性が高められている。また、従来モデルから引き続き独立したクリックボタンを用意することで、確実なファイル操作が可能で、こちらも好印象だ。

キーボードはアイソレーションタイプ。キーボード面はフラットで、アルミ素材を採用することで剛性も高められている
主要キーのキーピッチは19mmフルピッチを確保
配列は標準的で、無理なキー配置は皆無だ
ストロークは約1.5mmと十分。やや硬めのタッチだが、打鍵感は良好だ
Enterキー右側にはテンキーも搭載。ただしこちらはキーピッチが約16mmとやや狭くなっている
ディスプレイを開くと下部が本体後方にもぐり込む”リフトアップヒンジ”を採用
ディスプレイを開くことでキーボード面に適度な角度がつき、快適なタイピングが可能
ポインティングデバイスはクリックボタン独立型のタッチパッドを搭載。従来よりパッド面積が広くなり、操作性が向上している

第8世代Core Hプロセッサ搭載で、従来モデルから性能を大幅強化

 VJS153では、スペック面ももちろん進化している。CPUには第8世代Core HプロセッサーとなるCore i5-8300HまたはCore i7-8750Hを採用。従来モデルでは4コア8スレッド処理に対応するCore i5/i7だったが、VJS153では6コア12スレッド処理に対応するCPUへと強化されたことで処理能力が大幅に向上。そして、このCPUの処理能力を最大限に引き出すために、冷却能力を強化したCPUクーラーを搭載することで、デスクトップPCに匹敵する処理能力を発揮する。

 メモリには、高速なDDR4-2666 SDRAMを採用。容量は4GBから最大32GBまで搭載可能となっているため、メモリを多く消費する画像や映像の処理なども快適に行なえる。もちろん、高速なメモリを採用することで、CPUの性能も最大限引き出せることになる。

 ただし、ディスクリートGPUは搭載しない。これについては、従来モデルまでのユーザー調査から、CPU性能を重視するユーザーが多い反面、ディスクリートGPUの必要性はそれほど高くないという結果が得られたからだという。

 内蔵ストレージは、M.2仕様のSSDと2.5インチHDDの同時搭載に対応。SSDはSATA仕様またはPCIe仕様から選択でき、容量はSATA SSDが128GBまたは256GB、PCIe SSDが256GB、512GB、1TBを用意。2.5インチHDDは、512GB、1TBに加えて、1TBのハイブリッドHDDも選択可能となっている。加えて、標準で光学式ドライブも搭載。こちらはDVDスーパーマルチドライブまたはBDドライブから選択できる。

 無線機能は、IEEE 802.11a/b/g/n/ac準拠無線LAN(2×2)とBluetooth 4.1を標準搭載する。

 外部ポートは、左側面に電源コネクタ、Gigabit Ethernet、アナログRGB、HDMI、USB 3.0、Thunderbolt 3、オーディオジャックを、右側面にUSB 3.0×2を、前面にSDカードスロットをそれぞれ用意する。

 このうち、従来モデルからの大きな強化点となるのがThunderbolt 3の用意だ。これによって、高速な外部ストレージの利用や、Thunderbolt 3経由で2系統の4K映像出力を可能としている。さらにVJS153では、外部GPUボックスの利用についても検証を行なっているという。VAIOによると、GeForce RTX 2070搭載ビデオカードを内蔵する外付けビデオカードボックス「GV-N2070IXEB-8GC」の動作を確認しており、そのほかの製品についても順次動作確認を行なうという。優れたGPU性能が必要な場合のパワーアップ手段としてほしいとのことだ。

 なお、Thunderbolt 3はUSB PD準拠の電力入力には非対応。電力供給の可能なThunderbolt 3対応ディスプレイなどを接続した場合でも、VJS153への電力供給やバッテリーの充電は行なえない。この点は少々残念だ。

 生体認証機能としては、右パームレストに指紋認証センサーを搭載する。従来までは生体認証機能を搭載していなかったので、この点もうれしい強化ポイントだ。

 付属ACアダプタは、CPUの強化に伴って従来よりも高出力なものへと変更されている。サイズがやや大きくなっているが、VJS153ではモバイル性が求められないため、特に大きな問題はないだろう。なお、ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで実測357gだった。

右側面に光学式ドライブを標準搭載。DVDスーパーマルチドライブまたはBDドライブを選択可能
ディスプレイ上部中央にはHD解像度のWebカメラを搭載
右パームレストに指紋認証センサーを搭載
CPUの強化に合わせ、ACアダプタは高出力なものへと変更されている
ACアダプタの重量は、付属電源ケーブル込みで357gだった

かなり優れたパフォーマンスを確認

 では、ベンチマークテストの結果を紹介していこう。今回利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark 10 vv1.1.1761」、「PCMark 8 v2.8.704」、「3DMark Professional Edition v2.8.6546」、Maxonの「CINEBENCH R15.0」の4種類。比較用として、マウスコンピューターの「m-Book G570SN-M2SH5」の結果も加えてある。

VAIO S15 VJS153m-Book G570SN-M2SH5
CPUCore i7-8750H(2.20/4.10GHz)Core i7-8700(3.20/4.60GHz)
チップセット
ビデオチップIntel UHD Graphics 630Intel UHD Graphics 630
メモリDDR4-2666 SDRAM 32GBDDR4-2400 SDRAM 16GB
ストレージ256GB SSD(PCIe) + 1TB HDD512GB SSD(SATA) + 1TB HDD
OSWindows 10 Pro 64bitWindows 10 Home 64bit
PCMark 10v1.1.1761v1.1.1739
PCMark 10 Score3683-
Essentials87009028
App Start-up Score1219711944
Video Conferencing Score71777709
Web Browsing Score75237993
Productivity52087334
Spreadsheets Score47018926
Writing Score57716026
Digital Content Creation2992-
Photo Editing Score45544671
Rendering and Visualization Score1917-
Video Editting Score30713419
PCMark 8v2.8.704
Home Accelarated 3.034953998
Creative accelarated 3.037383946
Work accelarated 2.044625265
Storage50644967
CINEBENCH R15.0
OpenGL (fps)56.2358.91
CPU11281130
CPU (Single Core)174187
3DMark Professional Editionv2.8.6546v2.8.6427
Cloud Gate1042410820
Graphics Score1053311473
Physics Score100609025
Night Raid58056153
Graphics Score57095912
CPU Score64248011
Sky Diver45585068
Graphics Score41514583
Physics Score986112523
Combined score42594618

 結果を見ると、いずれのスコアもm-Book G570SN-M2SH5に劣る部分がほとんどではあるが、かなり肉薄する結果となっていることがわかる。m-Book G570SN-M2SH5は、CPUにデスクトップ向けのCore i7-8700を搭載していることから、通常のノートPCよりも優れたパフォーマンスを実現する点が大きな特徴だ。しかし、VJS153はそちらに負けないほどの優れたスコアとなっており、デスクトップPCに匹敵するパフォーマンスが発揮されると言っていいだろう。

 近年、15.6型ノートPCでは、モバイル向けのCore i Uプロセッサーを採用する例も増えているが、それらと比較しても性能面のアドバンテージは大きくなるはずで、性能を重視する人にとっても、十分満足できるはずだ。

 続いてバッテリ駆動時間だ。VJS153の公称の駆動時間は約4.8時間(JEITAバッテリー動作時間測定法 Ver2.0での数字)とされている。それに対し、Windowsの省電力設定を「バランス」、電源モードを「(バッテリー)より良いバッテリー」、バックライト輝度を50%に設定し、無線LANを有効にした状態で、BBenchでキー入力とWeb巡回にチェックを入れて計測したところ、約4時間42分の駆動を確認した。

 もともと長時間のバッテリ駆動を求められる製品ではなく、テスト自体も高負荷なものではないが、公称に近い駆動時間が確認できたことで、これなら室内で持ち運んで利用する場合でも安心だろう。

CPU性能重視のメインノートを探している人にお勧め

 VJS153は、CPU強化によるパフォーマンス向上に加えて、本体デザインも刷新され、まさしく従来モデルからフルモデルチェンジとなった。もちろん、CPU強化によるパフォーマンス向上は大きな魅力だが、アンケートでのユーザーの意見をベースとした機能強化も数多く取り入れられており、ユーザー目線での強化が実現されている点も見逃せない部分となっている。また、VAIOらしいデザインとなったことも、個人的にかなり魅力を感じている部分だ。

 性能を追求するなら、ディスクリートGPUの搭載も実現してもらいたかったように思う。それでも、デスクトップPCに匹敵するCPU処理能力が発揮される点は大きな特徴であり、ビジネスからホビーまで、幅広い用途に柔軟に対応できる製品と言える。メインPCとして処理の重い作業も軽々とこなせるノートPCを探している人にお勧めしたい。