山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

コントラストと彩度が改善、パフォーマンスも向上し実用レベルに!7.8型のカラーE Inkタブレット「BOOX Nova Air C」

「BOOX Nova Air C」。実売価格は5万9,800円

 Onyx Internationalの「BOOX Nova Air C」は、カラーE Ink電子ペーパーを搭載した7.8型のAndroid 11タブレットだ。KindleやKoboなど、特定の電子書籍ストアと紐づいたE Ink端末と異なり、Google Playストアからさまざまなアプリをインストールし、カラー表示で使えることが特徴だ。

 本製品は新たにカラーE Inkパネル「Kaleido Plus On-Cell ePaper」を搭載することで、従来の「Kaleido Plus」を搭載したカラーE Inkモデル「BOOX Nova3 Color」に比べて、色のコントラストが30%、彩度が15%向上したとされている(フロントライトオン時)。従来の最大の欠点が改良されたことで、実用性の向上が期待できる。

 今回は、国内代理店であるSKTから借用した製品をもとに、電子書籍ユースを中心とした使い勝手を、2021年に発売されたカラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」と比較しつつチェックする。

既存モデル「BOOX Nova Air」をベースにカラーE Inkを搭載

 まずはカラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」との比較から。スペックは表記が統一されていない場合もあるが、原則そのままとしている。

BOOX Nova Air CBOOX Nova3 Color
CPUQualcomm 8コアQualcomm 8コア (Cortex-A72+Cortex-A55)
メモリ3GB (LPDDR4X)3GB (LPDDR4X)
ROM32GB (eMMC)32GB (eMMC)
ディスプレイ7.8型E Ink on-cell Kaleido Plus Screen(4,096色)7.8型ニューカレイドスクリーン(カレイドプラス、4,096色)
解像度468×624(100dpiカラー)
1,404×1,872(300dpi白黒)
468×624(100dpiカラー)
1,404×1,872(300dpi白黒)
ライトフロントライト(暖色及び寒色)フロントライト(寒色)
ネットワークWi-Fi(802.11b/g/n/ac)Wi-Fi(802.11b/g/n/ac) 2.4G+5G
BluetoothBT 5.0BT 5.0
バッテリ2,000mAh3,150mAhリチウムポリマーイオン電池
拡張端子USB Type-C(OTGサポート)USB Type-C(OTGサポート)
スピーカーステレオあり
マイクありあり
OSAndroid 11.0Android 10
本体サイズ136.5×194×6.3mm137×197.3×7.7mm
重量235g265g
実売価格(発売時)5万9,800円5万1,800円

 従来モデルとの最大の違いは、カラーE Inkにまつわる仕様だ。新たにカラーE Inkパネル「Kaleido Plus On-Cell ePaper」を搭載することで、BOOX Nova3 Colorの「Kaleido Plus」に比べて色のコントラストが30%、彩度が15%向上し、より自然な色合いに近づいている。実際の見え方の相違についてはのちほど詳しく見ていく。

【お詫びと訂正】初出時、国内代理店からの情報に基づき、カラーの解像度に違いがあるとしておりました。しかしこれは誤りで、従来モデルと解像度は同一でした。そのため、該当する箇所を修正/削除しました。

 筐体は比較表を見ると薄型かつ軽量になったように見えるが、これは「BOOX Nova Air」「BOOX Nova3」というシリーズの違いによるものだ。バッテリ容量が大きく減っているように見えるのも同様である。基本的に、カラーE Inkパネルの進化と、筐体の小型化および軽量化には、相関関係はあまりないと考えてよさそうだ。

 デザインはモノクロモデルにあたる「BOOX Nova Air」と共通だが、大理石調のザラザラした塗装ではなく、黒を基調としたシックな色合いに改められている。金属素材が用いられているため、今回の比較対象である「BOOX Nova3 Color」の樹脂製ボディよりは高級感がある。また手の脂が目立ちにくいのも利点だ。

ベゼルは左右がスリムで、上下はやや幅がある。ホームボタンに相当する物理ボタンはない
ロゴの向きさえ気にしなければ、横向きにしても問題なく使用できる
背面。モノクロ版では大理石のようなザラザラした加工だったが、本製品はマグネシウム合金で色合いもシック。また下部のパーツもメタル調ではなくなっている
ベゼルは左右が実測約9mm、上下が実測18mm。画面との間に段差はない
上部には電源ボタンを備える。本体にある物理ボタンはこの1つだけ
左側面には専用カバーとの接点であるポゴピンがある
底面にはUSB Type-Cポートとスピーカーを備える
フロントライトが消灯状態では、色がついていることが分かりにくい
フロントライト(寒色)を100%にした状態。これだとカラーであることがはっきりわかる
暖色も利用できるのはカラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」との相違点の1つ

 フロントライトが寒色に加えて暖色に対応したのも、従来のカラーE Inkモデル「BOOX Nova3 Color」との相違点だが、もともと色域が狭いカラーE Inkでは色味が飛んでしまうので、あまり実用性は高くない。このほかOSはAndroid 11ベースに改められているが、これは発売のタイミングによるもの(BOOX Nova3 Colorは2021年3月発売)だろう。

 モノクロモデル「BOOX Nova Air」と同様、スタイラス(BOOX Pen PLus)が標準添付され、手書きノート機能が利用できる。磁力で本体に吸着させることも可能だ。このほかページめくりに対応した2ボタンを備えたカバーがオプションで用意される。

オプションの専用カバーをつけた状態。ページめくりに使う2つのボタンを備える
カバーとはマグネットで吸着させる。信号の伝送はポゴピン経由で行なわれる
専用カバーの表面はナイロン系の素材だが、防水仕様というわけではない
スタイラスペンはボタンレス。本体にマグネットで吸着できる
重量は実測約272g。モノクロモデルは実測239gだったので30g強重くなっている。ちなみに公称では235gとかなりの差がある
カバー込だと実測421g。モノクロモデルは実測424gとほぼ同等だったのでカバー側が軽量化されていることになるが、詳細は不明
カラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」(右)との比較。フロントライト(暖色)のスライダーが追加されている
背面。丸みを帯びた「BOOX Nova3 Color」(右)に比べると直線主体、かつボディは薄く仕上げられている

設定やホーム画面まわりは同一。パフォーマンスは2~3割向上

 セットアップは例によってBOOXならではの、省電力やスタイラスまわりの設定を済ませた上で先にホーム画面を表示させ、そのあとWi-Fiなどの設定を行なう手順になる。Google Playストアの利用にあたり、GSF IDの登録を行なわなくてはいけない点なども同様だ。初めてBOOXを使う場合は戸惑うが、特に難しいわけではない。

 ホーム画面以下の構成も特に変化はない。ソフトウェアv3.2の刷新によって一部は分かりやすく、逆に一部は分かりにくくなった印象はそのままだ。6つのカテゴリのどれをホームとして表示するかは指定できるので、筆者はGoogle Play経由で導入した電子書籍アプリを最速で起動できるよう、「アプリ」タブがホームになるよう指定している。

 なお以下に紹介するホーム画面以下の画像はデバイス側で取得したスクリーンショットで、実画面上の色合いとは異なるので留意してほしい。

ホーム画面は書庫/ストア/ノート/保管庫/アプリ/設定という6つのカテゴリのいずれかを指定する
本製品は物理ボタンがないため、ホームに戻る操作は画面中央下から上へのスワイプ(またはナビボールのダブルタップ)で行なう。画面右下から上にスワイプすると全画面リフレッシュが行なえる
Google Playを使うには「アプリ」で「Google Playを有効化する」にチェックを入れてGSF IDの登録を行なう。BOOXではおなじみの流れだ
画面上をタップすると表示されるクイック設定パネルからは、フロントライトの調整や回転の制御などが行なえる。「E-Ink中央」(E Inkセンター)の誤訳はいまだに修正されていない

 カラーE Inkにまつわる部分は後述するとして、ざっと使ってみてまず感じるのは、従来のカラーE Inkモデル「BOOX Nova3 Color」よりも体感的にパフォーマンスが向上していることだ。そこでベンチマークも測定してみた。

 結論から言うと、総じて2~3割程度、パフォーマンスが向上しているようだ。「Sling Shot Extreme」では、従来モデルの「880」に対して、本製品は「1075」。またGeekBenchでは、従来モデルがシングルコア「231」マルチコア「804」なのに対して本製品はシングルコア「305」マルチコア「1116」となっている。

 この両製品、メモリは同じく3GBとされているが、GeekBenchでハードウェアのスペックを見ると、CPUは同じ8コアながら従来モデルが1.61GHz/1.8GHzだったのに対し、本製品は1.80GHz/2.02GHzと、全体的に底上げされている。このほかGPUもAdreno 509からAdreno 610へと刷新されている。

ベンチマークアプリ「Sling Shot Extreme」は、本製品は「1075」、従来モデルが「880」。約2割伸びている
GeekBenchでは、エラーでテストが完了できなかったものの、本製品はシングルコア「305」マルチコア「1116」。従来モデルがシングルコア「231」マルチコア「804」だったので約3割伸びた計算
CPUは同じ8コアだがクロック数が向上している(左が本製品、右が従来モデル)

カラーはもちろんモノクロでも表示品質が大幅改善

 では電子書籍を中心に、カラーE Inkの品質の違いを見ていこう。サンプルの電子書籍には、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは夏目漱石著「坊っちゃん」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を使用している。電子書籍アプリはKindleを使用している。

 新旧モデルを並べて比較してみると、本製品は明らかに彩度が上がっており、色の再現性も高くなっている。特に従来モデルで顕著だった画面全体の青白さが、今回のモデルでは解消され、自然な色合いに近づいている。

 また黒も引き締まっており、従来はブルーグレーのような色合いだったのが、本製品では「限りなく黒に近いグレー」と言っていいレベルの改められている。テキストの視認性も向上しており、従来は読みづらかった小さな文字も読みやすくなった。

 一方で、背景に色が敷いてある箇所でのテキストは、視認性は向上したものの、せいぜい30点がようやく50点になったというレベルでしかない。このほかグラデーション表示もイマイチなままで、このあたりは約1,677万色フルカラーの液晶ディスプレイとの大きな差だ(本製品は4,096色)。

 こうした特性ゆえ、写真の上にぎっしりと文字が載っているモノ系雑誌のような高密度のコンテンツとの相性は必ずしもよくない。その一方、図版とテキストがしっかり分離しているPC雑誌や技術書などは、7.8型という画面サイズであっても快適に読める。同じ雑誌類でもこうした向き不向きがあるのは、カラーE Inkならではだ。

 なおいずれの場合も、本製品のフロントライトの明るさを高くした状態であることが前提で、フロントライトが50%程度では、従来モデルと大差がないばかりか、逆に従来のほうがコントラストがはっきり見える場合もある。あくまでもフロントライトありきであることは把握しておきたい。

左が本製品、右がカラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」。青白さが解消され、自然な色合いに近づいている
部分アップ。黒がきちんと深みのある色になっているほか、白もより白くなるなど、コントラストの向上が見て取れる
従来モデル(右)は影の部分は色が濁る傾向があったが、本製品では改められ、全体的に色も鮮やかになっている
画面下部を見ると分かるように、黒がきちんと黒として表現されるようになった
背景に色が敷いてあるテキストも視認性は向上しているが、画面上の白背景でのテキストに比べるとまだまだという印象
左が本製品、中央が従来モデル「BOOX Nova3 Color」、右がモノクロの「Kindle Paperwhite」。従来はモノクロに色を付けた程度だったのが、本製品ではきちんとカラーと呼べる品質に進化しているのが分かる

 さて、本製品で特筆すべきなのはモノクロの表示品質だ。従来はモノクロの表示品質がモノクロ専用モデルに及ばなかったので、カラーの利用頻度が低ければ無理に導入しないほうがいいという結論になりがちだったが、本製品はモノクロ専用モデルと変わらないレベルにまで表示品質が向上している。走査線のような横線は多少あるが、見ていて不快になるレベルではない。

 また見開きでも一定のクオリティで表示できることから、ふだん読むコンテンツはほぼモノクロのみでカラーはごくわずかという場合も、本製品を選ぶ価値はある。残像もほぼゼロでノーストレスとあって、従来のBOOXシリーズのモノクロモデルや、KindleやKoboからの乗り換えも視野に入ってくるはずだ。

モノクロ表示の比較。左が本製品、中央がカラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」、右がモノクロの「Kindle Paperwhite」。従来モデルにあった青みがかった発色がなくなり、きちんと黒として描写されるようになった。Kindle Paperwhiteの色合いに近い
解像度はいずれも300ppiで表示品質は同等、かつ色味も問題ない。よく見ると細かい横線が入っているのだが、気になるレベルではない
テキストコンテンツの比較。こちらもやはり走査線は目立つが、解像度に問題はなく、読みづらい印象はない
本体を横向きにして見開き表示にしても問題なく読書を楽しめる
ただし見開きともなると、単ページ表示(右)に比べて前述の走査線が目立ってしまう

 動作のパフォーマンスは、Kindle Paperwhiteのような専用端末との比較ではさすがに勝負にならないが、カラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」と比べると、タップしてからのレスポンスが速く、使っていてストレスが少ない。ページ書き替え時の白黒反転の挙動も、本製品のほうが速く完了するようだ。

 このほかWebページなどの縦スクロールについても、レスポンスが向上している。動画で見る限り、フレームレートが向上しているようにも見えるが、詳細は不明だ(以下動画は本体/アプリともにリフレッシュモードは「ノーマル」を指定)

【動画】左が本製品、右がカラーE Inkの従来モデル「BOOX Nova3 Color」。タップ直後のレスポンスは本製品のほうが速く、めくり完了までが短時間で済む。また従来モデルをすばやく操作した時にみられるタップの取りこぼしは、本製品ではみられない
【動画】カラーページを含むコミックでの比較。こちらもやはりレスポンスの高速さがわかる。ページ書き替えの挙動も、本製品のほうがワンアクション少ないようだ
【動画】Kindle Paperwhite(右)のように電子書籍表示にあらかじめ最適化されたデバイスと比較するとさすがに分が悪い。ただし画面の色合い自体はよく似ていることが分かる
【動画】Webページの縦スクロールでのパフォーマンス比較。挙動はよく似ているが、画面の残像を見る限り、フレームレートが向上しているように見える。ちなみに最後に行っている操作が画面の手動リフレッシュ(右下から上にスワイプ)だ

リフレッシュ設定をいかに極めるかがカギ

 表示品質およびパフォーマンスの向上は確認できたので、続いて設定まわり、とくに残像のリフレッシュ手順について詳しく見ていこう。本製品を使いこなす上では、ここが大きなポイントになる。

 BOOXを利用する上で欠かせないE Inkの最適化は、従来と同様、全体を「E-Inkセンター」で設定し、あとはアプリ単位で最適化するという二段構えだ。後者が優先されように見えて、なぜか前者が優先されるケースがあったりと、いまいち規則性が掴めないのは従来と同じだ。

 アプリごとに調整が可能なのは、細かくチューニングできて助かるという人もいるだろうが、これがデフォルトで80点なのをカスタマイズで100点にできるならまだしも、デフォルトは50点に満たず、また項目間の相関関係が不明なせいでどれだけ設定しても100%になったように感じられないのは、設定していて徒労感はある。

 このあたり、せめて80点くらいのアプリごとの最適化例をサイトで紹介するなどしてほしいものだ。その上で、80点のまま使うか、さらにチューニングするかをユーザーに任せるようにすれば、不満も出にくいだろう。

画面下に表示される「E-Inkセンター」。デバイス全体のリフレッシュモード設定はここから行なう
アプリ単位の最適化は、「アプリ」画面で当該アプリのアイコンを長押しして「最適化」を選択する

 ところで本製品はコントラストが向上し、黒など濃い色の発色がよくなったせいで、適切な最適化設定を施さなければ、残像は従来よりもむしろ目立ってしまう。本製品は従来モデルと同様、毎ページごとにリフレッシュする設定にしたはずがなぜか反映されない症状があり、思うように残像が消えてくれない。

 筆者もこれらについては試行錯誤で、上に述べた「100%の正解」は持ち合わせていないのだが、ひとまずは毎ページごとに全画面が自動リフレッシュが行なわれるよう設定し、あとは必要に応じて手動でリフレッシュを行なうのがよいだろう。以下、おもにKindleアプリで、筆者が行っている設定を紹介する。リフレッシュモードは本体/アプリともに「ノーマル」を指定している。

 まず自動リフレッシュについては、アプリの最適化で「完全更新頻度」を1にする方法のほかに、設定の「システム表示」にある「フルリフレッシュの回数」を、デフォルトの5タップから1タップへと変更するのも、効果があるようだ。

 その上で、これらがうまく機能せず残像が目立つ場合には、手動リフレッシュを行なうことになる。手動リフレッシュの方法はいくつかあるのだが、画面下段の右側を上にドラッグする方法がもっとも手軽で、慣れてしまえば苦にならない。前掲のWebページのスクロール動画の最後で実際に行っているので確認してほしい。

 一方、これまでメインで用いられていたナビボールを使う方法は、二度のタップが必要になる上、ナビボール自体の残像が残ってしまうのでおすすめできない。E-Inkセンター右端にもリフレッシュボタンがあるが、これも呼び出しと実行で2度のタップが必要だ。

 このほか、「E-Inkセンター」右端のアイコンから呼び出す画面で「ドラッグ&リリース後の自動リフレッシュ機能」をオンにしておくと、画面を上下どちらかにスワイプして離すことでリフレッシュされるようになる。ブラウジングなどではこちらも効果があるようだ。

最適化画面。4つのタブがあるが主に使うのはこの「リフレッシュ」。「完全更新頻度」は0ではなく1にしておいたほうがよいようだ
設定の「システム表示」にある「フルリフレッシュの回数」を、5タップから1タップへと変更するのも、強制リフレッシュに効果があるようだ
画面右下から上にスワイプすることで全画面リフレッシュを手動実行できる(左が実行前、右が実行後)。手動ではこれがもっとも手軽だろう
このほか「E-Inkセンター」右端のアイコンから呼び出す画面で「ドラッグ&リリース後の自動リフレッシュ機能」をオンにしておくと、画面をドラッグして離すことでリフレッシュされるようになる

 これらの挙動が意図通りに行なわれるようになれば、実に快適に読書が行なえる。とはいえこれら設定は電子書籍アプリごとに行なわなくてはならず、またアプリ側の設定変更が必要な場合がある(例えば電子書籍側でページめくりのエフェクトがオンになっている場合は無効化する必要がある)ため、手間がかかることに変わりはない。

 いずれにしても、こうした設定はどれが正解と呼べるのかわかりにくく、きちんと再現できるよう手順をメモしたのに再現できなかったりと、首をひねることもしばしば。さらにオプションのカバーでページをめくった場合も、挙動が違って見える場合もあって混乱する。現行のUIになって以降、こうした不明瞭な挙動は増えている印象で、UIの進化が一段落した現在、そちらにより注力してほしいと感じる。

「カラーE InkのKindle」はいつなのか

 以上のように、従来モデルと比べると、カラーはもちろんモノクロの表示品質も向上し、かつパフォーマンスも改善されている。さらにNova Airシリーズならではのページめくりボタンも利用できる付加価値もある。設定の苦労を厭わなければという条件付きだが、従来モデルよりお勧めできる要素は盛りだくさんだ。

 実売価格は従来モデルの5万1,800円から5万9,800円へと上がっており、またカバーは別売(7,800円)だが、その価値は十分にある。発売日から3年間、無償のファームウェアアップデート提供が保証されているのも大きい。品薄で入手困難なので、在庫があるのを見かけたらその時がチャンスと言えるだろう。

 ところで今回見てきたように、かなり成熟してきた印象を受けるカラーE Inkだが、ではなぜ大手から採用製品が登場しないのかというと、カラーE Inkのさらなる進化待ちだろう。先月には次世代の「E Ink Kaleido 3」が発表されているが、こちらは彩度向上のみならず、新たに10.3型や13.3型のモジュールも用意されているとのことで、大画面モデル登場の期待もかかる。

 すでに現時点では、カラーE Inkはコスト面では既存のモノクロE Inkにプラスアルファというレベルまで来ており、ブレイク寸前の状況にあるというのが筆者の所感だ。Kindleのような専用端末に採用された場合、本製品で言う最適化は完了した状態で出荷できるはずで、ユーザーの手間も少なくなるはず。BOOXのさらなる進化に期待しつつも、こうした広がりにも期待したいところだ。

色の再現性はかなり向上したとは言え、iPad mini(右)のような液晶採用デバイスと比較するとさすがに分が悪い