山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Chromebookは電子書籍に使えるか? レノボの2in1「IdeaPad Duet Chromebook」で検証

レノボ・ジャパン「IdeaPad Duet Chromebook」。メモリ64GBのAmazon専売モデルで、実売39,800円、セール時には9,900円クーポン適用で実売が3万円を切る

 ここのところ低価格を売りに急速に普及しているのが、Chrome OSを搭載したGoogleのChromebookだ。先行して展開していた海外に比べ、日本国内では普及しはじめるまでは時間がかかったものの、2020年の夏頃を境に製品数も増え、販売店の力の入れ方も明らかに変わってきている。

 Chromebookの1つの特徴に、Androidアプリが利用できることが挙げられる。そのため、今回紹介するレノボ・ジャパンの「IdeaPad Duet Chromebook」のような2in1タイプであれば、普段はキーボードと組み合わせてモバイルノート的な使い方をしつつ、プライベートではAndroidタブレットとして電子書籍を楽しむといった使い方が可能だ。

 今回はその「IdeaPad Duet Chromebook」を例に、Chromebookにおける電子書籍の利用方法についてチェックしていく。なお試用しているのはAmazon専売の64GBモデルで、レノボ直販ストアで扱われている128GBモデルとは別モデルとなるので留意いただきたい。

タブレットとしてはやや非力だが薄さと軽さは魅力

 「IdeaPad Duet Chromebook」は、キーボードおよびスタンドカバーを取り外し、タブレットとしても利用できる2in1スタイルが特徴だ。ここではタブレット部に絞り、各社のミドルレンジ以下のタブレットとスペックを比較する。

【表】IdeaPad Duet Chromebookのスペック比較
Ideapad DuetFire HD 10(第9世代)Surface Go 2iPad(第8世代)
メーカーLenovoAmazonMicrosoftApple
OSChrome OSFireOSWindows 10iOS
発売2020年5月2019年10月2020年5月2020年9月
サイズ(幅×奥行き×高さ、最厚部)239.8×159.8×7.35mm262×159×9.8mm245×175×8.3mm250.6×174.1×7.5mm
重量450g504g544 g490g
SoCMediaTek Helio P60TMediaTek MT8183第8世代Core m3/
Pentium Gold 4425Y
64bitアーキテクチャ搭載A12 Bionicチップ
Neural Engine
メモリ4GB2GB4GB または 8GB非公表
ストレージ64GB/128GB
※64GBはAmazon専売モデル
(型番 : ZA6F0024JP)
32GB/64GB64GB/128GB32GB/128GB
画面サイズ/解像度10.1型/1,920×1,200ドット(224ppi)10.1型/1,920×1,200ドット(224ppi)10.5型/1,920×1,280ドット(220ppi)10.2型/2,160×1,620ドット(264ppi)
通信方式Wi-Fi 5Wi-Fi 5Wi-Fi 6Wi-Fi 5
バッテリ持続時間(メーカー公称値)約10時間12時間最大10時間最大10時間
端子USB Type-CUSB Type-CUSB Type-CLightning
microSDカードスロット--
キーボード付属---

 「10型クラス、フルHD以上」という条件で各プラットフォームのミドルクラスのタブレットをチョイスしているが、まず目につくのは軽さだ。一般的に、ミドルレンジ以下のタブレットでは重量に無頓着なことが多く、500gを超えるのはざらだが、本製品は公称450g、実測でも462gと、そこそこの軽さをキープしている。

 CPUはMediaTekのHelio P60Tという、2018年に発表されたミドルレンジのプロセッサで、Fire HD 10に使われているMT8183(2019年リリース)よりも世代が古い。Sling Shotでのスコアは、本製品が1,407、Fire HD 10が1,596ということで、わずかに下だ。こと電子書籍ユースではあまり支障はないものの、あまり期待はしないほうがよい。

 CPUがやや古い一方、筐体の横幅はもっともコンパクトで、かつ厚みも今回の4製品のなかでは最薄だ。後述するように本製品は背面のスタンドも分離させられるので、スタンド一体型のSurface Go 2などと比べるとそのぶん有利だ。

 そして何より本製品のメリットは価格だ。キーボード込みながら標準価格は4万円弱、セール時には3万円を切るなど、価格破壊力はすさまじい。タブレット本体にキーボードを追加すると5万円オーバーは当たり前、グレードによっては10万円近くになるSurface Go 2や第8世代iPadに比べると、コストパフォーマンスの高さは圧倒的だ。

 一方で、Wi-FiはWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)止まりで、Wi-Fi 6(同ax)には非対応であるほか、生体認証(指紋認証・顔認証)は非搭載、また急速充電にも対応しないなど、細部まで見ていくと、削れるところは削っていることがわかる。前述のベンチマークも含めて、性格的にはFire HD 10に近い印象だ。

2in1タブレットゆえ、通常はラップトップのスタイルで利用する
キーボードとスタンドカバーを取り外すことでタブレットとして利用可能
同梱品一式。キーボードとスタンドカバーはそれぞれ別パーツで、本体をサンドイッチするように接続する
Fire HD 10(下)との比較。ベゼル幅が違うため筐体サイズは異なるが、画面サイズは同一だ
Surface Go 2(下)との比較。横幅はほぼ同じで、アスペクト比の関係で天地のサイズは本製品のほうが狭い
第8世代のiPad(下)との比較。横幅は本製品がやや大きく、天地は逆に狭い
厚みの比較。左がいずれも本製品、右は上から順に、Fire HD 10、Surface Go 2、第8世代iPad。これらミドルクラスのタブレットと比べると薄いことがわかる

通常はラップトップとして利用可能

 ではざっと製品を見ていこう。本製品は、タブレット部の前面にキーボードを、背面にスタンドカバーを、いずれもマグネットで吸着させる構造になっている。つまり3つのパーツに分離することになる。

 キーボード部は、使用感としてはiPadのSmart Keyboardや、Surfaceのタイプカバーに近く、マグネットでパチンと吸着する。ちなみに給電は専用端子を介して本体側から行なわれるので、単体で充電する必要はない。

 背面のスタンドカバーが取り外せるのは、タブレット部単体で使う上では好都合だ。構造がよく似た「Surface Go 2」は、スタンドがタブレット本体と一体化しているせいで、手で持つときは重量が不利になるが、本製品はそのぶん軽量化できるからだ。ただしそのぶん、着脱に余分な一手間が加わることは言うまでもない。

 本製品の売りはこのキーボード一式が付属しながら実売3万円台という価格にあるが、作りが価格相応かというとそうではなく、細かい作り込みも目を引く。たとえば、右側面に並ぶ電源ボタンと音量調整ボタンのうち、電源ボタンだけが表面にスリットが刻まれ、指先でどちらのボタンか判別できる点などは、よく工夫されていると感じる。

キーボード類を接続したまま電子書籍を表示させた状態
キーボードはマグネットで吸着されており簡単に取り外せる
スタンドカバーもマグネットで吸着されており、こちらも取り外しは容易だ
タブレットとしての利用になんら違和感はない。スタンドが外せるため軽いのも利点だ
右側面には電源ボタンと音量ボタンを備える。電源ボタンのみ表面に細かいスリットが入っており、目視なしでも指先だけでボタンの種類を判別できる
背面カメラは背面からやや突出している。スタンドカバーを取りつけることで段差を緩和できる
スタンドカバーはファブリック素材で覆われている。ヒンジ式のスタンドを内蔵することもありタブレット部と同じくらいの厚みがある

 キーボードについても簡単に紹介しておこう。Chromebookの多くは英語キーボードだが、本製品は日本語キーボードを採用している。Enterキー周りの記号キーは幅が若干詰まっているものの、キーピッチがほぼ18mmとそれなりの幅があり、打鍵感も悪くない。

 ただし一般的なキーボードでは、キーが1行下がるごとにキー幅約3分1ずつ右にズレていくところ、本製品は2分の1近くズレており、多少の違和感はある。これはSurface Go 2のタイプカバーにもある問題で、かなりミスタイプが発生しやすい。人によって差はあるはずだが、意識して使う必要はありそうだ。

キーボード。右のEnterキー周りがやや窮屈だが、Chromebookで日本語キーボード自体が少ないだけに貴重。キーが1行下がるごとに約2分の1ずれる(通常は3分の1程度)のはやや違和感がある
マグネットで吸着させるとすぐに利用可能になる
閉じた状態。タブレット部は軽い反面、フルセットだと意外に重量がある
キーボードおよびスタンドカバーで表裏を保護する。側面はむき出しの状態
タブレット部単体の重量は462g。10型のタブレットとしてはおおむね平均レベルだ
キーボード&スタンドカバーをフル装備した状態では947g。こちらはやや重い部類だ

 スタンドカバーについては、角度を無段階で変更できる。キーボードを外して、このスタンドカバーだけを取りつけておくこともできるので、Surfaceと同様に、本体を立てた状態での運用も可能だ。

 個人的に使っていて気になったのは、閉じた状態ではどちらがキーボード面でどちらがスタンドカバーなのか見分けがつきにくいため、キーボードを開くつもりがスタンドカバーを外したり、スタンドを開けるつもりがスタンドカバーごと外してしまう場合があることだ。これについては少々ストレスにはなる。

キックスタンドを内蔵したスタンドカバーだけを取りつけておくこともできる
スタンドカバーを装着したまま、スタンド部に指を挟んで持つこともできるが、落下の原因になるのであまりおすすめしない

使い勝手は良好も、音量ボタン操作不可などの問題あり

 では電子書籍ユースについて見ていこう。電子書籍の表示サンプルは、コミックはうめ著「東京トイボクシーズ 1巻」、テキストは太宰治著「グッド・バイ」、雑誌は「DOS/V POWER REPORT」の最新号を用いている。電子書籍ストアは原則としてKindleストアを使用している。

 前述のように、現行のChromebookでは、Androidアプリがそのまま利用できる。そのため電子書籍を利用する場合は、Google Playストアから任意のAndroid向け電子書籍アプリをダウンロードして利用することになる。

 AndroidはiOSと違ってアプリ内でコンテンツを新規に購入できるため、別途ブラウザで電子書籍ストアを開き直す手間がかからない。ダウンロードしてしまえば、オフラインにしても閲覧は問題なく行なえる。またブラウザビューに対応したマンガアプリを利用することも可能だ。

 ただし今回試用した複数のストアのうち、BOOK☆WALKERアプリ(BN Reader)は、Chrome OS非対応とのメッセージが出て利用できなかった。また楽天Koboはレイアウトが崩れて読書オプションが開けないなど、動作確認が行なわれていないと見られる症状もある。

 さらにこれに加えて、Kindle、BookLive!、ebookjapan、紀伊国屋書店Kinoppy、Google Playブックスの各アプリはいずれも、音量ボタンでのページめくり機能が利用できなかった。全滅であることからしてアプリ側ではなく、Chrome OS側の問題だろう。この機能を使いたいが故に電子書籍はAndroidを使うと決めている人には、かなり致命的だ。

Google PlayストアからAndroid向けの電子書籍ストアアプリをインストールして利用できる
BOOK☆WALKERアプリ(BN Reader)はChrome OS非対応とのことで、ブラウザビューアの利用を推奨される。今回試用した7社のアプリのなかで動作しなかったのは本アプリのみ

 表示性能はどうだろうか。アスペクト比は16:10と横長なので、画面左右に若干ながら余白はできるが、気になるほどではない。解像度も224ppiと及第点で、高望みをしなければ普通に使える。サイズ的に雑誌コンテンツを表示するのは厳しいが、コミックの見開き表示には向いている。

 ただし画面がかなりギラつくため、非光沢フィルムなどを追加するのが望ましい。本製品はすでに発売から数カ月が経過しており、サードパーティー製のアクセサリも一定の数がそろっているのは、本製品を選ぶ上で、1つのメリットと言っていいだろう。

 なおKindleなど一部のアプリでは、ライブラリページで小さいサムネイルを強引に引き伸ばすせいで、書影が低解像度で表示されてしまう。以前レビューした同じレノボの10型タブレット「Lenovo Tab P10」やファーウェイのタブレットでも同じ症状だったので、アプリ側の問題と見られるが、見た目にややストレスにはなる。

コミックを表示したところ。見開き表示には適したサイズだ
Fire HD 10(下)との比較。画面サイズが同一なので、表示サイズもほぼ同じだ
Surface Go 2(下)との比較。こちらはアスペクト比の関係で本製品のほうがややコンパクトになる
第8世代のiPad(下)との比較。こちらもやはり本製品がひとまわりコンパクトになる
拡大表示した状態。上段左が本製品(224ppi)、右がFire HD 10(224ppi)、下段左がSurface Go 2(220ppi)、右がiPad(264ppi)。このサイズのタブレットとしては平均的な解像度だ
テキストを表示したところ。問題なく読める。Surface Go 2などWindows用タブレットと違い、テキストコンテンツの表示に対応したアプリが多いのは強みだ
雑誌を表示したところ。アスペクト比の関係で左右が圧迫されており、かなり窮屈な印象だ

 挙動についてはどうだろうか。冒頭で述べたようにCPUまわりのスペックは決して高くないため、動画プレーヤーでは再生中に早送りするとデコードが追いつかないなどの症状は起こるが、電子書籍ユースではそうした問題もなく、普通に読書が楽しめる。サムネイルの多い一覧ページなどをスクロールする時に、露骨に固まることもない。

 ただしごくまれに、タッチおよびスワイプによるページめくりが反応しなくなる。プチフリーズのような症状で、すぐに復帰するので実用上は問題はないのだが、iPadのようなヌルヌルさは期待しないほうがよい。挙動のスムーズさについては、iPad以下、Fire HD 10とは同等もしくはやや上、というのが筆者の評価だ。

目当てのアプリがきちんと動作すればコスパ込で有用

 以上のように、ChromebookはAndroidアプリがそのまま使えることから、電子書籍を閲覧するにあたって有用なデバイスだ。ラップトップタイプは手に持って使えないためあまりおすすめできないが、今回試用した「IdeaPad Duet Chromebook」のような2in1タイプであれば、使い勝手はまさにAndroidタブレットのそれに等しい。起動も高速だ。

 ただし前述のように、Android版の電子書籍ビューアの売りの1つである音量ボタンによるページめくり機能が使えなかったり、BOOK☆WALKERアプリのように動作不可を明言している場合もあるので、決して万能ではない。現時点では目当ての電子書籍アプリが利用できるか、購入前の情報収集は欠かせない。

ちなみにデフォルトでは「Google Play ブックス」がプリインストールされている。こちらを利用してもよいだろう。ただし音量ボタンによるページめくりは本アプリも非対応だ

 なおこの「IdeaPad Duet Chromebook」は、標準ではストレージが128GBだが、Amazon専売モデル(ZA6F0024JP)は64GBへと減らされており、その代わりにクーポン適用で3万円を切るという、驚異的な価格を実現している。

 一方でレノボの直販ストアでも、2021年1月15日までキャンペーンで大幅な値引きが行なわれている。本製品はメモリカードスロットを搭載せず、ストレージの追加ができないことを考えると、こちらを選ぶ選択肢もあるだろう。あくまでもタイミング次第だが、本製品に興味のある人は、こうした点を見極めて購入することをおすすめしたい。