山口真弘の電子書籍タッチアンドトライ

Onyx International「BOOX Max2 Pro」

~サブディスプレイとしても利用可能なE Ink搭載の13.3型Android端末

Onyx International「BOOX Max2 Pro」。6型のKindle Paperwhite(右)と比べるとその大きさがわかる

 Onyx Internationalの「BOOX Max2 Pro」は、13.3型のE Ink電子ペーパーを搭載したAndroidタブレットだ。電子書籍専用のE Ink端末と異なり、Google Playストアからさまざまなアプリをインストールして利用できる、汎用のE Inkデバイスだ。

 現在、単行本を同等サイズで見開き表示できる大画面デバイスと言えば、12.9インチiPad Proが挙げられる。本製品はそれを上回る、13.3型の巨大なE Inkディスプレイを搭載しており、また筐体も550gと、12.9インチiPad Pro(Wi-Fiモデルで631g)より軽量であることが特徴だ。

 さらにPCとHDMIケーブルで接続することで、PCの外部ディスプレイとしても利用できる。これにより、ふだんはサブディスプレイとして利用しつつ、必要時には単体で電子書籍やドキュメントのビューワとして利用したり、付属のペンを使って手書きメモを取るといった使い方に対応できる。

 今回は前回紹介した「BOOX Nova」や「BOOX Poke Pro」と同様、国内代理店であるSKTから借用した製品をもとに、レビューをお届けする。なおとくに断りがないかぎり、電子書籍ストアはKindleストアを、コミックの表示サンプルにはうめ著「大東京トイボックス 1巻」を用いている。

従来の「BOOX Max2」の上位版に相当する。縦向き利用を基本としたデザインで、フロントライトは搭載しない
外出先に持ち歩くときに使う保護ケースや、HDMIケーブルなどが付属する。さらに国内代理店が販売するモデルには電源アダプタや保護フィルムも同梱される
本体背面。下部にはスピーカーを搭載する。カメラは前後ともに搭載しない
技適の番号は裏面下部にシールで貼付されている
本体上部および左右はポートおよびボタン類は搭載しない。断面はくさび状にカットされている
ベゼルとの間には段差がある
正面左下に4つの物理ボタンを搭載する
ポートおよびボタン類は底面に集約されている。電源ボタン、イヤフォンジャック、Micro USBコネクタのほかMicro HDMI端子も搭載する

12.9インチiPad Proを超える画面サイズ。4つの物理ボタンが特徴

 外観は、従来のBOOXシリーズをそのまま13.3型に拡大したかのようなデザインで、縦向きでの利用を基本とする。画面サイズで言うと、6型デバイスを上下左右に4つ並べたのと変わらない巨大さだ。言うまでもないが、12.9インチiPad Proと並べても、本製品のほうがひとまわり画面が大きい。

 E Inkデバイスとしての特徴は、従来のBOOXシリーズと基本的に同様だ。解像度は2,200×1,650ドット(207ppi)ということで、300ppiクラスの製品にはおよばないが、パネルサイズ自体が大きなことを考えれば、十分に及第点だろう。

 おもな相違点として挙げられるのは、冒頭でも述べたHDMI端子の搭載と、画面の左下に4つの物理ボタンを搭載していることだ。このうち2つは、ページめくりに利用できるので、画面を直接タップやスワイプせずに、電子書籍のページを前後に移動できる。これについては後述する。

 また2,048段階の筆圧検知により、ワコムペンでの描画にも対応する。本稿では詳細なレビューは行なわないが、きちんとペン先に描画が追従するなど、実用性は高い。画面を横向きにして左側にドキュメントを表示し、右側にメモをとることもできる。本体右側のフリップに挿せるので、携帯にも便利だ。

13.3型ということで、12.9インチiPad Pro(右)よりもさらにひとまわり大きい
以前レビューした10.3型の「BOOX NOTE」(右)との比較。手書き対応など機能はよく似ているが、筐体および画面サイズはふたまわりは違っており、まるで別物だ
12.9インチiPad Pro(右)との厚み比較。本製品のほうが厚みがあるが、軽量なことから本製品のほうが薄く感じられる

BOOXおなじみのセットアップ手順。Google Playストア有効化がやや難

 セットアップの手順は、以前紹介した「BOOX Nova」や「BOOX Poke Pro」と同じだ。言語および時刻周りの設定を終えるとすぐホーム画面が表示されるので、その後Wi-Fiの設定を行なう。Wi-Fi設定が完了した時点で日時は自動取得されるが、本製品はGPSを搭載していないため、タイムゾーンだけは自前で設定する必要がある。

 続いて、Google Playストアの有効化を行なう。アプリの管理画面からGoogle Playを有効にしたのち、GSF IDの登録を行なう。GSF IDが自動入力されなければ再起動をかけるか、時間をあけてもう一度トライする。

 これら一連の作業はやや手間がかかるが、これを乗り越えないと、任意のAndroidアプリをインストールできないので、粘り強く行なう必要がある。手順は国内代理店であるSKTのサイトで詳しく紹介されているので、そちらを参考にするとよい。

 なお今回国内代理店から借用した製品は旧ファームウェア仕様だったため、ここではインストール完了後に新ファームウェア(2.0)にバージョンアップしたのち、再インストールを行なったときの画面を掲載している。製品版が新旧どちらになるか不明なため、画面のデザインが異なる可能性があることに留意してほしい。フロー自体はどちらもほぼ同一だ。

まず言語を選択する。ここではデフォルトが英語に設定されているが、中国語の場合もあるようだ
日時設定。タイムゾーンは中国標準時に設定されているので変更の必要がある
電源管理まわりの設定画面。あとからでも変更できるのでここではスキップして先へ進む
ペンを持つ手を選んだのちキャリブレーションの設定を行なう
セットアップが完了するとホーム画面が表示される。このあと設定画面へと移動し、Wi-Fi設定を行なう
「アプリ」画面で「Google Playを有効化」にチェックを入れ、GSF IDの設定を行なうことでアプリ一覧にGoogle Playのアイコンが表示される

動作はきびきび。ページめくりボタンはアプリとの相性あり

 さて、電子書籍デバイスとしての使い勝手だが、以前の「BOOX Nova」でネックとなったレスポンスの遅さは本製品では見られず、非常にきびきびと動作する。「BOOX Nova」や「BOOX Poke Pro」の倍となる、4GBのメモリを搭載している影響が大きそうだ。E Inkデバイスとしてはかなり優秀な部類に入る。

 その電子書籍の表示については、ストアによっては画面を2値化するA2モードに切り替える必要はあるものの、反応速度は実用レベルだ。各電子書籍ストアアプリとの相性は前回の「BOOX Poke Pro」のレビューを参照いただきたいが、アプリ選びさえ間違えなければ、大画面のメリットを活かした読書が、きびきびとした動きで楽しめる。

 なにより、13.3型という画面サイズは圧倒的だ。実寸で言うと、幅201×高さ268mmものサイズがあるので、週刊誌に多いB5サイズ(182×257mm)よりも大きい。ふだんコミックを単行本で読み慣れていると、単ページ表示は大きすぎてむしろ戸惑う。

 またテキストコンテンツも、情報量が多すぎて、そのままでは読みにくい。思い切ってフォントサイズを(極端に)大きくするのも手だろう。

 見開き表示については、画面回転をサポートする外部アプリを使って行なうことになる。今回は「BOOX Nova」でも利用した外部アプリ「Rotation Control」を用いることで、問題なく見開き表示が行なえた。

 ただ、後述する外部ディスプレイとしての利用時は、本体側で画面の回転を実現しているだけに、できれば本製品の標準機能として画面回転をサポートしてほしいところだ。

コミックを単ページで表示したところ。週刊マンガ誌よりも大判だ
外部アプリを使えば見開きでの読書も可能だ
12.9インチiPad Pro(下)とのサイズ比較。本製品のほうがひとまわり大きいことがわかる
前回までにレビューした、6型の「BOOX Poke Pro(下段左)」、7.8型の「BOOX Nova(下段右)」との比較。見開き表示の状態でも、これら両製品を上回るサイズだ
Kindleにおけるコミックの画質比較。上段が標準のモード、下段がA2モードで、いずれも左が単ページ表示、右が見開き表示。Kindleは標準のモードでの相性が悪いため(ページがめくられない場合がある)、原則A2モードを用いることになる
文庫本と同等のフォントサイズでテキストコンテンツを表示すると、さすがに情報量が多すぎる。どうしても本製品で読むならば、フォントサイズを極端に大きくしたほうがよいだろう
Kindleにおけるページめくり速度の比較。いずれもA2モードで、前半は単ページ、後半は見開きでのページめくりをタップおよびスワイプでそれぞれ行なっている。Kindleは本製品との相性は必ずしもよくなく、ほかのストアはこれよりも快適にめくれる場合が多い

 ところで本製品がこれまでのBOOXシリーズと大きく異なるのは、ページめくりボタンが搭載されていることだ。画面サイズが大きくなると、スワイプ操作で指をスライドさせる距離が長くなるほか、タップでページをめくるにしても、指先ではなく腕全体での操作を強いられるため、読んでいて疲れてしまうこともしばしばだ。

 その点、画面左下のボタンでページめくりが行なえれば、指先の最小限の動きだけで本を読み進めることができる。片手で本製品を保持し、もう一方の手で操作するといった具合に、両手の役割分担もはっきりする。電子書籍との相性は、きわめて良好だ。

 注意したいのは、このページめくりボタンにも、各アプリとの相性があることだ。このボタンはページめくりのほか音量調整にも利用でき、その役割は画面右上のアイコンで切り替えるのだが、音量調整に設定していないと、ページがめくれないアプリもある。

 たとえば、本製品標準のPDFビューアアプリは「ページめくり」のままで問題なく動作するのだが、Google Play経由でインストールした電子書籍アプリの多くは、ボタンの役割を「ページめくり」ではなく「音量調整」に設定して、初めてページめくりが行なえる。

 これはもともと電子書籍ストアアプリのAndroid版がサポートする、音量調整ボタンによるページめくり機能を使うためだ。このあたりは非常にわかりにくい。

 またKindleのように、アプリ側は音量調整ボタンによるページめくりに対応しているはずなのに、本製品では利用できない場合もある。かなり相性が激しいようなので、うまく動けば儲けもの、程度に思っておいたほうがよいだろう。

ページめくりボタン。音量調整との切替式だ
ページめくりと音量調整の切り替えは画面右上のアイコンをタップして行なう。音量調整モードにしないとページをめくれないアプリもあるので要注意だ

サブディスプレイ機能はやはりレスポンスがネック?

 さて、電子書籍ユースとは直接関係はないが、本製品のもう1つの用途である、サブディスプレイとしての性能もひととおりチェックしておこう。

 サブディスプレイ機能は、本製品の「アプリケーション」のなかにある「onyx.sdk.ui」というアイコンをタップすることで利用できる。挙動を見るかぎりでは、Android上で、プリインストールされているサブディスプレイアプリを起動させているようだ。

 なお外部ディスプレイとして利用するだけならば、Google Playストアの有効化はとくに必要ないようだ。

HDMI接続のサブディスプレイとして利用できる。画面は自動的に90度回転する
「アプリケーション」のなかにある「onyx.sdk.ui」というアイコンをタップすることで、外部ディスプレイとして利用可能になる

 PCとの接続は付属のHDMIケーブルを利用する。今回はWindows 10環境で試用したが、とくにデバイスやユーティリティをインストールする必要はなく、接続すると拡張ディスプレイとして認識され、画面が表示された。あとはWindowsの画面の設定で、解像度などを調整すればよい。

Windowsからは外部ディスプレイとして認識される。解像度は2104×1560ドットと高い。今回は200%に設定して使用している。なお電力不足でUSB経由の給電が必要になる場合もある
メニューボタンを押すと、下段にメニューバーが表示される

 本体側では自動リフレッシュの間隔が設定できる。範囲は5~60分の間ということで、最短でも5分というのはやや長く感じるが、白背景でテキストを入力するだけならば、それほど気にならない。逆に言うと、残像が残りやすい濃い色はもう少し頻繁にリフレッシュしたいわけだが、そうした場合は手動でのリフレッシュボタンを活用することになる。

 これらのメニューは、本体左下(画面を横倒しにしている場合は右下)の、3本線のアイコンがあるメニューボタンを押すことで表示できる。直感的に操作でき、使い勝手は良好だ。一方で濃度調整などの機能はなく、A2モードとの切り替えのようなギミックもない。

タッチ操作でスライダを動かすことで、自動リフレッシュの間隔を5~60分の範囲で指定できる
手動リフレッシュにも対応している

 動作速度については、やはりE Inkということで、レスポンスは厳しいものがある。1つのドキュメントをずっと表示しておくぶんには問題ないが、Web画面だとスクロールはメイン側のディスプレイに比べてワンテンポ遅れるほか、マウスのポインタを高速に動かすと見失うことも多い。ポインタを大きいサイズに設定するなどの対策が必要だろう。

 またテキストの入力では、漢字の変換候補のポップアップがワンテンポ遅れるほか、描画が遅いために直前の文字をBackSpaceキーで消そうとして必要以上の回数を押し、余分な文字を消してしまうこともよくある。一方、変換候補のポップアップがない英数字などはかなり快適に入力できる。詳しくは動画で確認してほしい。

ノートPC側のディスプレイ(プライマリ、左)と、本製品(セカンダリ、右)での動きの比較。マウスポインタの動きはなめらかではなく、またスクロールはワンテンポ遅れる
テキスト入力のテスト。打鍵にはなんとかついてくるが、漢字の変換候補のポップアップはワンテンポ遅れるほか、BackSpaceキーで前の文字を消す操作では、レスポンスが悪いため誤操作が起こりやすい

 実機を並べて比較したわけではないが、一定以上の頻度で書き換える用途ならば、前回紹介した「Paperlike HD」のほうが向いているように思う。本製品はどちらかというとより静止コンテンツの表示に向いている印象だ。

 ただレスポンスの遅さを別にすれば、画面サイズは十分すぎるほど大きいほか、解像度も高く、実用上の不具合も見受けられない。E Inkタブレットの「おまけ機能」というレベルの性能では決してなく、これならばタブレットとして使わない場合は常時サブディスプレイとして使おうという気になるだろう。

いい意味でつぶしがきく製品

 本製品は、13.3型の大画面E Inkデバイスという、唯一無二の存在だ。それに加えて、Google Playストア経由でさまざまな電子書籍アプリをインストールできるほか、付属のスタイラスを使ってノートを取ることもでき、さらに外部ディスプレイとしても利用可能であるなど、何通りもの使い方ができるのが大きな利点だ。

 E Inkデバイスはその挙動が独特ゆえ、実際に導入してみたところ思ったような使い方ができなかったというリスクは、ほかの製品よりも比較的高い。それゆえ導入には慎重にならざるを得ないのだが、本製品のようにいくつもの使い方ができるのであれば、いい意味でつぶしがきく。買う側からするとこれはメリットだろう。

 価格は10万円をわずかに切るレベルで、ポンと買える額では決してないが、この画面サイズのデバイスとしては法外に高いわけではないので、iPadのような汎用性よりもE Inkの特性に魅力を感じるユーザーにとっては、注目すべき選択肢だろう。電子書籍ユースでは、Kindleとの相性の悪さ、およびフロントライトが非搭載であることをどう評価するかが、ポイントになるだろう。

付属のワコムペン。以前レビューした10.3型の「BOOX NOTE」に添付されていたものと同一形状だ
手書きでノートを取ったり、PDFに注釈を書き込むこともできる。詳しくは以前の「BOOX NOTE」のレビューを参照してほしい
ペンは未使用時に本体右上のホルダーにセットしておける
デフォルトのPDFリーダは多機能でオプションも多く、ドキュメントの閲覧用途では重宝する。こちらを中心に使うのももちろんありだろう