山田祥平のRe:config.sys

爆速に生まれ変わっていたキャリアの公衆Wi-Fi

 かつて公衆Wi-Fiは鬼門だった。インターネットが使えないときにはカスのようなWi-Fiに勝手につながっていないかどうかを真っ先に確認した。そのくらい昔の公衆Wi-Fiはひどかった。それが今、様変わりしている。

ひどかった過去の公衆Wi-Fi

 乱立するWi-Fiアクセスポイントが互いに干渉し、つながっているようで、結局つながらない。有限の資源である電波が干渉し、誰も幸せな通信ができない。それがかつての公衆無線LANだった。きっと今も、そういうことが世界中のあちこちで起こっているのだろう。

 ドコモやKDDI、ソフトバンクといった大手キャリアが、モバイルネットワークの補完のために街中のあらゆるところにWi-Fiアクセスポイントを設置して、加入者に解放してきた。加入者なら無料で使える太っ腹なネットワークだ。

 たとえば、鉄道駅にはほぼ確実に設置されている。だから駅のベンチに座れば、ほぼ確実に、こうしたネットワークが使えた。3Gネットワークの時代に、それより高速なネットワークが得られることもあったので、それはそれで便利だったのだが、ネットワークの質としてはひどいものが多かった。つながっているようにみえて、データが流れないというのは最もたちが悪い。そういうことがしょっちゅうあったのだ。

 だから、使いものにならないアクセスポイントにつながっていることが分かると、そのSSIDを削除して、2度とつながらないようにした。同時に、LTEネットワークの浸透によってモバイルネットワークの実用度も向上し、よほど混雑している時間帯/場所でもない限り、まっとうなキャリアのネットワークなら、あまり不便を感じなくもなってきている。MVNOに代表されるネットワークの選択肢も増え、コスト的にも低廉化された。スマホのようにモバイルネットワークを使った通信が前提のデバイスにおいては、Wi-Fiを頼らなくてもそれほど困らなくなっている。

 もっとも、一晩中YouTubeを見っぱなし、Netflixで毎晩映画三昧、毎日数時間はTeamsやZoomで会議といった使い方では、容量に制限のあるプランではひとたまりもない。だから、在宅時のネットワークについては、別途ご相談といったところだろうか。

完全無料で完全無欠?

 そんなわけで、久しくキャリアの無料Wi-Fiは使っていなかった。そんな中で、この2月にドコモが同社の公衆Wi-Fiサービスである「docomo Wi-Fi」を終了し、「d Wi-Fi」に一本化することを告知した。d Wi-Fiは、同社のdポイントクラブ会員向けの公衆Wi-Fiサービスで、2020年3月から提供されている。

 以前のdocomo Wi-Fiとの大きな違いは、ドコモの回線契約が不要で、利用料金が完全無料である点だ。つまり、申し込めば誰でも使える。さらに同時接続可能台数が5台までとなっていて、PCなどの接続についても公式に認められている。

 KDDIやソフトバンクでも、同種のサービスが提供されているが、ここまで柔軟なものではない。あまりにも中途半端なのだ。だが、d Wi-Fiは、dポイントクラブに入会し、dアカウントを発行、dポイントカード利用登録のお手続きを完了すれば、すぐに使えるようになる。

 巨大キャリアによる完全無料の巨大ネットワークだ。「カフェ、コンビニ、ファストフード、空港、駅などでご利用いただけます」とされていて、検索用サイトも用意されている。ただ、検索結果の一覧は決して使いやすいものではない。あまりにもスポットが多すぎるからだ。

 だから、よく行く場所で、スマホやPCなどを使ってWi-Fiの電波を探してみるといい。

  • 0000docomo
  • 0001docomo

 このどちらかが見えれば、それは「d Wi-Fi」のアクセスポイントだ。個人的には、首都圏での自分の行動範囲では、かなりの場所が網羅されているという認識をもっている。

パブリックスペースのWi-Fi整備

 実際につないでみて驚いた。以前の公衆Wi-Fiのイメージを完全に覆す品質になっていた。タダほど高いものはないという先入観を持たなくてもいい。いくつかの駅のベンチで試してみたところ、駅によって多少は異なるものの、上り下りともに数百Mbpsは普通に確保できる。これなら十分に実用になる。とにかく、勝手につながってしまうと困るというような品質ではない。

 手元のノートPCは、LTE等の通信ができるものとできないものがある。LTEや5GをサポートしないPCで、出先でのインターネット接続が必要な場合には、スマホのテザリングに頼っていた。ノートPCを使うたびに、スマホをポケットから取り出してテザリングをオンにするのは面倒なので、モバイルネットワーク非対応のPCを持ち出すときには、家を出る時点でスマホのテザリングをオンにしていた。そうしておくことで、ノートPCの液晶を開けば、スリープから目覚めたPCが、すぐにインターネットにつながる。

 当然、スマホのバッテリの保ちは落ちるし、この猛暑の中、ポケットの中でスマホが熱くて不快だったりもするが背に腹は代えられない。

 どんなノートPCでも、当たり前のようにSIMやeSIMを使ってLTEや5Gのネットワーク接続ができるようなら、こうしたサービスを頼る必要はない。でも、そうはいかないのが現状だ。ノートPCにとってのWAN通信は、まだまだオプションで当たり前にはなっていない。

 それに、通信のための契約をすれば、毎月の維持費もかかる。そもそもノートPC購入のためのコストについてもWAN対応のために数万円の追加投資が必要となる。これから円安や戦争の状況、半導体不足、都市のロックアウトなどによる製造現場の混乱等、さまざまな要因でPCの入手に際するコストは上がっていくだろう。あれば便利なことは分かっているWAN機能だが、そこにコストをかけるのは難しいというのも分かる。

 WAN機能を持たないデバイスからインターネットに接続するための方法を、複数持っているというのは心強い。最終的には手間がかかったとしても、自分のスマホに頼ればいい。その前に、たとえば駅、そしてコンビニではファミリーマートとローソン、また、郵便局があれば、そのほとんどで「d Wi-Fi」が使えることが分かっていれば、いつか何かの役に立つかもしれない。あそこに行けば必ずつながるという場所をいくつか確保しておこう。PCからは802.1X認証による自動ログインもできるので本当に手間知らずだ。

 インターネット接続がなかなか思い通りにならない若い世代も助かるかもといったことを考えれば、通信事業者ならではの社会還元としては悪くないんじゃないかと思う。パブリックスペースについては自治体等によるインターネット接続が提供されていることも多いようだが、これらとあわせて、いつでもどこでも自由に使えるインターネットをさらに充実させていってほしいものだ。