山田祥平のRe:config.sys

USB Type-C以外のレガシーポートはなくても困らない

 パソコンの拡張性は、装備されているポートやカード用のスロットで決まるというのはレガシーな当たり前だった。この当たり前は、これからもずっと当たり前で居続けるのだろうか。ないのが望ましいとはならないのだろうか。

あると邪魔でもないと困る

 手元にあるノートPCでもっとも拡張用のポート類が多いのは、なんといってもパナソニックのレッツノートだ。

 左側面にバレルDC-IN、HDMI、Thunderbolt 4×2、オーディオ/マイクコンボ、USB 3.0があり、右側面に有線LAN、USB 3.0×2、ミニD-Sub15ピン、SDメモリカードスロットを装備する。総計11個だ。

 人それぞれ必要なポートの種類は異なる。だからこそあらゆるものを装備しておくのは1つの方法だし、レッツノートは頑固にその方針を貫いている。

 個人的には日常、これらのどのポートを使うかというと、電源供給と映像出力を兼ねてType-Cポートを1つと、USB 3.0にロジクールのマウスやキーボード用のレシーバであるUnifyingアダプタを装着しっぱなしにしてあるくらいだ。データのやりとりの多くはクラウドストレージを介することが多くなり、ネットワークはWi-Fi、外付けディスプレイの接続もUSB Type-CのDP Altモードを使うようになった結果だ。

 有線LANやミニD-Sub15ピンは使うことがまずない。また、仮にUSB 3.0がなかったとしても外付けマウスが必要ならBluetooth接続すればいいので困らないだろう。だからあってもなくてもいい。

 HDMIは微妙な立ち位置で、今、ノートPCを持ち込んだ先で外部ディスプレイに出力しようとしたときに、そのディスプレイがUSB Type-CでDP Altモードでの映像入力ができるとは限らないし、当面はTVのような家電についても同様だろう。だからHDMIはそこそこ使用頻度は高い。なくなると困るかもしれない数少ないポートの1つだ。

 レッツノートにはDC-INのための端子がある。同梱のACアダプタを使ってここから電源を供給すれば着脱式のバッテリを取り外してしまっても稼働する。

 以前のレッツノートはUSB PDによる電力供給ではそれができなかった。バッテリを取り外すとその場で電源断となりシステムが落ちたのだ。つまりレッツノートはUSB PDを全面的に信用してはいなかったのだろう。バッテリが装着されていなければ、単独での稼働はできないし、させないというポリシーだった。

 ところが最新のFVシリーズでは、バッテリを取り外しても、USB PDでの十分な電力供給があればそのまま稼働を続けるようになった。これはちょっとうれしい。これで、DC-INはなくても困らないポートの1つになった。ここまで外出の機会が減ると、せっかくの着脱式バッテリは外してしまっておいたほうが精神衛生上いい。ただ60W超の電力が検知できない場合は従来と同様に落ちてしまうようだ。

 USB Type-Cポートを使って電力を供給するのは、ほかの機器と電源アダプタを共有したいからだ。USB PDならそれができる。どのノートPCでも同じアダプタが使えるし、スマホでもマウスでも、あるいはワイヤレスイヤフォンでも何でもつなげて充電できる。外出時に持ち歩く電源アダプタは1つだけでよくなる。

 SDメモリカードスロットはどうかというと以前はたまに使った。長期の出張中はカメラに装着しているメモリカードの残り容量が少なくなってきた時に、撮影済みの写真をノートPCに待避させるために重宝していた。最近は、カメラのUSB端子にケーブルで直結すれば、最悪でもGen1の5Gbps速度でデータを転送できるので、メモリカードをカメラから取り出すことがほとんどなくなった。USB Type-Cポートを持つカメラも増えてきた。

 それによってコピー後のメモリカードの戻し忘れというアクシデントもなくなった。当然、もっと高速な転送が必要というニーズもあるだろうが、そういう人は、きっとCF Expressを高速バスの外付けカードリーダで使っているだろう。写真はカメラで撮影直後にBluetoothで200万画素にリサイズした上でスマホに転送され、そのままクラウドにアップロードされるようにしてある。だから、バックアップについては万全とはいえないがあまり心配していない。

高速ポートが2つあればそれでいい

 そんなわけでノートPCに装備されていて欲しいポートとしてはThunderbolt 4のような高速で汎用的なものが2つもあれば十分だ。理想的には左右両側面にあるといい。2つ欲しいのは片方を電源供給に使っている時に、何らかの機器をつなぎたいということがあるからだ。それが左右にあればレイアウトの自由度が高まる。ノートPCはバッテリ駆動ができるので、そのときだけ電源供給を中断しても困らないとは思うが、1つくらいのスペアがあって困ることはない。

 ポート類をたくさん装備するということは、そこが重量の点でも、強度の点でも弱点になりやすい。ポートの根本は内部基板そのものであり、外部からの衝撃などが直接基板にダメージを与える可能性もある。

 スマホを見れば分かるように、ボタンやポート類を極限まで廃して、本体の堅牢性や防水、防塵、そしてコスト削減をもくろんでいる。かつて、ガラケーが大量のボタンを装備したテンキーを備えていたことを思えば、こちらが新しい当たり前ということだ。

ドックがノートを大きく拡張

 拡張を欲張るという点ではどうだろうか。今ならドックという存在がある。Thunderbolt 4対応のドックも見かけるようになった。先日発売されたばかりの「Anker PowerExpand Elite 12-in-1 Thunderbolt 4 Dock」および「Anker PowerExpand 5-in-1 Thunderbolt 4 Mini Dock」は、どちらもThunderbolt 4対応の製品だ。

 両者の違いは、前者がレガシーポートの拡張に主眼を置いているのに対して、後者がポートの増設を主軸にしている点だ。つまりハブだ。

 HDMIポートや有線LAN、SDカードスロットなどを使うことが分かっているなら前者、すでにUSB Type-C接続のデバイスを常用しているなら後者を選べばいい。70cmのThunderbolt 4ケーブルが同梱されているのも親切だ。4KディスプレイをHDMIで2台以上つなぎたいといったマルチディスプレイ環境のためには、こうした高速ドックが必要だ。

 どちらもUSB PDをサポートし、入力された電力から自分が使う分を差し引いてUSB Type-Cポートにパススルーする。ただ、ポートごとに電力量が異なる点に注意が必要だ。

 電力の確保については両製品ともに巨大なACアダプタが同梱されている。前者は120W、後者は100Wのアダプタで、ドックにはバレルコネクタを使って給電する。こうしたドックを接続するだけで、ポートの少ないノートPCでも一気に拡張性を確保することができる。なお、どちらの製品も、USB PD入力のパススルーはできず、ドックを使うためには必ず専用ACアダプタの接続が必要だ。ドック本体は比較的コンパクトだが、このアダプタの巨大さは携帯を拒むのに十分な理由となる。

 ドックはハブと考えることができるのだが、実際にはルーター、またはスイッチのイメージで稼働する。ホストであるPCとドックを往来する信号は、種類は様々で、それらが細切れ状態で混在してトンネリングされるが、それがUSB4パケットにマッピングされ、各行き先に届く。ネットワークで使われる複数のクライアントがぶら下がるルーターの仕事そのものだ。

 これからのハイブリッドワークにおいて、PCを拡張する必要がある場所は、主に、各種の拠点だ。在宅勤務なら自宅、テレワークスペースなら共有テーブル、オフィスならそのデスク、遠出の出張なら宿泊先のホテルといったところだろうか。それらの拠点にこうしたドックが常置されていれば、携行するノートPCの拡張ポートは最小限であっても困らない。

 かつてのドッキングステーションは機種ごとに専用の端子でガッシャンコとつなぎ、単に端子の延長をワンステップで実現するものだったが、今風のドックはそうじゃない。

 今後のトレンドとして、高速ポートを拡張するドックの浸透で、モバイルノートPC本体の拡張ポートは、今よりも、ずっと少なくなっていくだろう。

 逆に、USB 2.0のような低速ポートでもいいからとにかく数が欲しいというニーズもある。Type-Cポートにつないで複数のUSB Type-Aデバイスを装着できるポートを増やしたいというだけなら、エレコムの「U3HC-A424P10」シリーズのような製品を使えばいいし、これなら携行するときの負担も少なくできる。バスパワーで稼働するので電源の心配はない。スピードもGen2の10Gbps対応なのでとりあえずは不便はなさそうだ。

 拠点に到着後、ノートPCに必要な機器を1つずつ接続するのではなく、1本のケーブルを接続するだけで電源供給から映像出力、各種データ転送に、HID接続までをすべてまかなえる。そして撤収時にはその1本のケーブルを取り外して液晶を閉じ、ノートPCをカバンに。

 拡張のオンとオフが瞬時にできること。それこそが拡張の新しい当たり前だ。新しいノートPCの購入時に拡張性を気にする必要はもうない。Thunderbolt 4ポートが2つもあれば十分だ。