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★ ゲームソフトインプレッション ★

壮大なストーリーと、オーソドックスなゲーム展開
英雄伝説V 海の檻歌(おりうた)


スクリーンショット

  • ジャンル:ロールプレイングゲーム
  • 発売元:日本ファルコム株式会社
  • 価格:10,800円
  • 対応OS:Windows 95/98
  • 発売日:12月9日発売
 
【ゲームの内容】
     世界の終わりを救うという“幻のメロディー”が刻み込まれた24個の「共鳴石」を探し求める旅を描いたロールプレイングゲーム。プレーヤーは主人公の少年となり少女、祖父、老犬が所属する音楽一座と共に旅に出なければならない。
【動作環境】
  • CPU:Pentium 133MHz以上(Pentium 166MHz以上推奨)
  • メモリ:32MB以上
  • HDD:100MB以上
  • 解像度:640×480、256色表示
  • CD-ROMドライブ:8倍速以上のCD-ROMドライブ
  • DirectX 6.1以上

日本ファルコムのホームページ
http://www.falcom.com/
「英雄伝説V 海の檻歌」の製品情報
http://www.falcom.com/ed5/index.html
特製スクリーンセーバーダウンロードページ
http://www.falcom.com/ed5/ed5_ss.html
オープニングムービーダウンロードページ
http://www.falcom.com/ed5/opmovie.html



英雄伝説V「海の檻歌」
へたっぴ!!
 蒼く広がる海、白く砕ける波、波間を飛び交うカモメ、そして、風に乗って流れてくるラッパの調べ。こうしてこの物語は静かに幕を開く。しかし、しかしである。このラッパ、お世辞にも「上手い」といえるものではなかった。その証拠に、ラッパの奏者であるフォルトの演奏が終わると、近くで釣り糸をたれていた彼の祖父・マクベインは開口一番「へたっぴ」。これである。さらに追い討ちをかけるように「魚が逃げる」とまで。これにはさすがにフォルトも腹に据えかねて「魚が釣れないのを僕のせいにして。へたっぴー」とやりかえす。かくして、静かな海辺の村に、しばし少年と老人による「へたっぴ」の応酬が続けられた。


「英雄伝説」シリーズ最新作

 「英雄伝説V 海の檻歌(おりうた)」は「ガガーブ三部作(トリロジー)」と銘打たれたロールプレイングゲームのシリーズ最新作にして第3作、つまり最終作にあたる。このシリーズが初めて世に出たのは今から5年前の'94年。「英雄伝説III 白き魔女」でのことだった。まだWindowsが普及していない時代にPC-9801用のタイトルとしてリリースされたこの作品は多くのファンを魅了した。「白き魔女」は「ドラゴンスレイヤー 英雄伝説」という、かつての看板シリーズ「ドラゴンスレイヤー」シリーズの流れを受け継ぎつつ、同時に「英雄伝説」という新しい位置付けの作品として成長してきた作品でもあり「白き魔女」「朱紅(あか)い雫」そして今回の「海の檻歌」を総称して「ガガーブ三部作と呼ばれ「詩うRPG」として親しまれてきたシリーズでもある。

 もちろん、シリーズとはいっても個々の作品は独立しているし主人公も異なっているので、前作までを知らなくてもプレイに支障はない。もしも本作をプレイしてみて、興味を持ったら前作に触れてみるのもいいかもしれない。「白き魔女」はWindows用にリメイクされたものが発売されているし「朱紅い雫」も開発が進んでいる。

英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」
ゲームを起動し、オープニングのデモを見た瞬間に「ああ、気合入ってるな」とわかる。他社であればムービーで処理してもおかしくないアニメーション処理を、あえて描画にこだわって作っている点からも、制作サイドの熱意が伝わってくるようだ


音楽がストーリーの中心

英雄伝説V「海の檻歌」
物語は章立てされて進む。1つの章だけでもボリュームはかなりのもの
 さて「海の檻歌」に話を戻そう。主人公は冒頭でラッパを吹いていたフォルト少年。ラッパの技術は未熟だが、キタラ(ギター)の奏者としてはかなりの腕前の持ち主だ。彼の家族は、両親と祖父、それに、祖父が連れている老犬のジャン。祖父のマクベインは芸人で、かつては手琴をひいて世界中を回っていた。ある日、旧友シャオから届いた手紙がきっかけで、マクベインは最後の世界行脚に思い至る。数多くの名曲を遺した天才作曲家・レオーネが「伝承の幻のメロディ」を再現した「水底のメロディ」作り上げ、24のフレーズに分けて世界中に隠し、封印したとされる「共鳴石」を探し求めるために。フォルトは、両親から祖父のお目付け役をいいつかり、同じ村に住みフォルトにひそかに好意を寄せる少女・ウーナとジャンも加わり「マクベイン一座」として演奏旅行の旅に出ることになる。

 この序盤の物語やタイトルからもわかるとおり、この「海の檻歌」では「音楽」が非常に重要な役割を果たす。楽器の独奏会やレオ-ネゆかりの音楽学校など、物語の随所に盛り込まれる音楽をモチーフとしたイベントの数々はもとより、共鳴石を手に入れ装備することで使えるようになる共鳴魔法や、それを通常の攻撃魔法と組み合わせて使用する「アンサンブル魔法」など、物語にも、システムにも、根底に流れているのは音楽だということがわかっていただけるのではないかと思う。フォルトたちが音楽を演奏するシーンでは、画面に題名と奏者が表示されるなど、演出面でも音楽を意識したものとなっている。
 また、フィールドを歩いていると、ふいに鳥の声などが聞こえてくることがある。これがBGMと調和してプレイヤーにもたらす感触というのは、プレイしてみて初めて実感できるものだろう。

英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」
演奏のシーンでは、曲名と奏者のテロップが表示される テーマが音楽だけに、それにちなんだイベントが数多く発生する


戦闘の少ないRPG

英雄伝説V「海の檻歌」
 「英雄伝説」シリーズは、戦闘の少ないRPGとしても知られている。物語の流れをさえぎる戦闘は極力廃し、不要なレベル上げも必要ないRPG。その考え方は、本作でもしっかり受け継がれている。
 マップ上を歩いていると、敵は突然攻撃を仕掛けてくる。移動マップと戦闘マップには切り替えはないので、冒険の一環としての戦闘という感覚を強く感じることができるだろう。戦闘に入ると、各キャラは自分の判断で敵を攻撃しに行く。仲間が危なくなれば回復の呪文を唱えたり、強い敵には必殺技や魔法で攻撃したりと、基本的には見ているだけでOK。特定の敵に攻撃を集中したいときや、魔法や必殺技を使いたいときにはコマンドを与えてやればいい。戦闘はリアルタイムで進行はするが、それほど忙しいわけではないという、一般的なRPGとは少し毛色が違った戦闘を楽しむことができる。

 戦闘や、レベルアップを楽しみにRPGをプレイしている方には物足りなく感じるかもしれないが、ストーリーを楽しむという点ではこちらのシステムに軍配が上がるし、それで冒険がつまらないかといえば決してそんなことはない。そのことを何よりも端的に現しているのが、この「ガガーブ三部作」のシリーズなのだ。戦闘は少なくとも、プレイ時間では他のRPGに決してひけをとっていない。戦闘を増やすことでプレイ時間を引き延ばしているRPGが多い中、これは大変なことだと思う。それは、それだけ用意するシナリオの量が増えるということに他ならないのだから。だからこそこのシリーズは多くのユーザーに受け入れられたのではないかと思うし、自分自身、このシリーズのファンなのだと思う。最近の「3Dにあらずばゲームにあらず」のような風潮を一笑に付すような、極めてクオリティの高い2DのRPG。「ゲームである」というのがどういうことであるのか、その1つの回答がこの「海の檻歌」の中にあるような気がする。

英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」
戦闘シーンは基本的にフルオート。必要に応じて適切なコマンドを与えていくこともできる


豊富なパッケージ、どれを選ぶべきか?

英雄伝説V「海の檻歌」 英雄伝説V「海の檻歌」
マップの移動中にも、いきなりイベントが発生する場所がある。ゲームのシステムと物語が自然に調和していればこそ可能な演出だ
 最後になるが、このゲームには2種類のパッケージが用意されていることを書き添えておこう。違いは簡単、CD-ROM版かDVD-ROM版かの差に過ぎない。
 が、実はこれがクセもので、CD-ROMは2枚組だけれどDVD-ROMは1枚でプレイでき、途中交換が必要ないというメリットを持っている。また、CD-ROM版に収録されている音楽は22KHzで収録されているが、DVD-ROM版にはより高音質の44KHzで収録されているという点は、音楽をモチーフとしているこのゲームにおいては、より重要なポイントということができるだろう。その他のパッケージ内容や価格には違いはないので、プレイ環境が許すのであれば、ぜひDVD-ROM版をプレイすることをおすすめしたい。

 いずれのパッケージにも、初回出荷版にはガガーブ三部作(未公開のWindows版「朱紅い雫」まで含め)を、ムービーで紹介する「ガガーブビジュアルトリロジーTHE MOVIE(CD-ROM1枚)」と、ガガーブ三部作に使用された350以上の曲の中から厳選されたものを収録した「ガガーブサウンドトリロジー(オーディオCD1枚)」が同梱される。古くからのファンには垂涎もの、そうでない方にも嬉しいアイテムになるはずだ。価値がどうこうというより、好きな方、興味のある方に、ぜひ手にしてほしいと願う。

 正直な話をすれば、価格面では難色を示す方も多いのではないかと思うし、自分自身も値段だけを見た限りでは、そう思わないでもない。しかし、最近ことに粗製濫造の進んでいるように見受けられるコンシューマーソフトを2本買うよりは、このゲームを購入した方がプレイ時間の面でも満足度の面でも得なのではないか……とプレイした今の段階では感じているのも確かだ。


 純国産の「海の檻歌」。全てのテキストが日本語であるのはもとより、風土や文化の違いによるゲーム性や難易度の違いを気にせずプレイできるのも嬉しい。そして、全編を通して流れる美しい音楽と、暖かい雰囲気の物語は老若男女を問わず誰にでも受け入れることのできるものだと確信する。昨今のRPGがどこかに忘れてきてしまった楽しさ。それが、この作品には確かにある。


"A Cagesong of the Ocean" (C) 1999 All rights reserved by Nihon Falcom. Illustration:Toshihiro Kawamoto

【筆者紹介】
  • 名前:山城 宏
  • プロフィール:企画・著述業兼システムエンジニア。ゲーム制作のお手伝いもちょっとだけ。今回の「海の檻歌」は、今年プレイしたゲーム、コンシューマとPC、あわせて約300本の中でも5本の指に入るくらいに好みだったりする。蛇足ながら、日本ファルコムのホームページでは、このソフトの発売を記念してスクリーンセーバーなどのダウンロードサービスを実施中。興味のある方はぜひ
レビューハード環境】
  • 使用ハード:自作PC/AT互換機(Pentium II 400MHz、RAM 256MB、HDD 約20GB、2倍速DVD-ROM、3D BLASTER Banshee(AGP 16MB)、SOUND BLASTER AWE64、IF-SEGA/ISA+セガサターンパッド)

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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp