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COMDEX/Fall '99 基調講演レポート
ソニー代表取締役社長(CEO) 出井伸之氏
「広帯域エンターテイメント企業としての道を確立する」

会場

期日:11月15日(現地時間)

会場:Las Vegas Convention Center
   Sands Expo and Convention Center
   Las Vegas Hilton

 

 「Comdex/Fall '99」初日の基調講演を行なったソニー代表取締役社長 出井伸之氏は、家庭に「広帯域」接続を提供する来るべきデジタルネットワーク時代に、ソニーは技術面とコンテンツ面の双方の利点を活かして、「テクノロジーとエンターテイメントの融合する広帯域ビジネスをリードする」という展望を語った。

 講演のゲストには、「Fortune」誌のシニアエディター ブレント・シュレンダー氏、ギタリストのスティーヴ・ヴァイ氏、Sun Microsystemsの共同設立者でチーフサイエンティストでもあるビル・ジョイ氏など多彩な顔ぶれが現われ、最後はジョージ・ルーカス監督まで登場し会場を沸かせた。



■3種類の広帯域プラットフォーム

スティーヴ・ヴァイ

 出井氏は「デジタルネットワークは、急速に広帯域へと進化している。ソニーはこの分野で、VAIOパーソナル・コンピュータ、デジタルTVセットトップボックス、またプレイステーション2という3種類の広帯域プラットフォームを提供するだろう。それと同時に膨大なコンテンツも有しているソニーは、技術とコンテンツが融合する広帯域分野で業界をリードするだろう」と語った

 技術とエンターテイメントの融合を示すデモを、ソニーは自社のアーティストを使って行なった。Epic/Sony Music所属アーティストのスティーヴ・ヴァイが登場し、ギターのライブ演奏を行ない、演奏の後で「実は今のライブを、このチューインガムで録音したんだ」と語った。ヴァイがチューインガムと表現したのはソニーのメモリースティックのことで、メモリースティックウォークマン「NM-MS7」でこのライブを再生すると、会場からは大きな拍手が起こった。



■ソニー、広帯域のトップ5に

出井社長

 出井氏はまた、「我々は将来、広帯域分野でのトップ企業5社のうちの1社になることを目指す」と語った。「それでは、残りの4社はどの企業かと皆さんは思っているだろう。実は、このアイデアは、私ではなく、『Fortune』誌で発表された記事によるものだ」と語る。この記事『Real Road Ahead』を書いたのは、同誌のシニアエディター、ブレント・シュレンダー氏。ゲストとしてステージに登場した同氏は「この記事で、私は次の10年間にインターネットコンピューティング業界を率いることになる企業5社を予測したが、多くの反響があった。多数の読者がこの5社に、ソニーが入っていたことに対して驚いた」と語った。

 出井氏はすかさず「実は、私も驚いた」と切り返し、会場を笑わせてから、「ソニーは広帯域分野ではまだ大きなプレゼンスがないものの、将来的には、ハードウエアで持つ巨大なパワーと、映画や音楽などの膨大なコンテンツを組み合わせて、広帯域分野で優位な地位につくことを予測している」と語る。同氏によれば、現在ソニーのMDプレーヤーは総計2,000万台が、プレイステーションは毎年2,000万台が出荷されているという。



■パーソナル・ブロードキャスティングの時代

 同氏はまた「我々は'90年代前半から、コンテンツとハードウエアを融合する努力を行なってきた。インターネット、TV、PC、プレイステーションなどを使用して、人々はメディアを受信するだけではなく、コンテンツを自ら簡単に作成して配信するメディアの送り手になることができる」と語り、これを「パーソナル・ブロードキャスティング」と呼んだ。

 出井氏は、パーソナル・ブロードキャスティングに最適なツールとして、MDを使用したビデオカメラ「MD DISCAM」を紹介した。同デバイスは、MPEG-2フォーマットでビデオ、静止画、オーディオを記録・再生するだけではなく、カメラ本体に多彩な再生・編集機能を搭載している。

 ゲストで登場したSun Microsystemsの共同設立者でチーフサイエンティストのビル・ジョイ氏は「MD DISCAMのインターフェースは、Personal Javaで書かれている」と述べた。このMDデジタルカムコーダーは、Ethernetでインターネットに直接接続し、気に入ったビデオクリップやソフトウエア、アドオン機能をWebサイトからダウンロードすることもできる。



■「インフォスティック」でワイヤレス

 出井氏は、デジタル時代にはワイヤレスがさらに重要になるとし、ソニーのワイヤレスモジュール「インフォスティック」を公開した。これは、「Bluetooth」技術を使用したデバイスで、メモリースティックやPC、またその他のデバイスをワイヤレス接続するもの。ジョイ氏は「将来は、ソニーなどのWebサイトで自分のお気に入りのラジオ番組を選んで、それをワイヤレス接続によりウォークマンで聴けるようになるだろう」と語った。インフォスティックは、来年の終わりに発売される予定。

 同氏はまた、ペン型の音楽プレーヤー「ミュージッククリップ」を発表した。これは64MBのメモリを内蔵したUSBデバイスで、単三電池1本で5時間まで音楽が聴けるという。出井氏は「PCだけではなく、今後はより多くのデバイスがさらに登場してくる。これらのデバイスは、i.LinkやHAViなどを通して互いにネットワークにつながるだろう」と語る。ここでは、シンプルさがカギだとし、「想像してみたまえ。リモコンが10種類もあれば複雑だ。しかし、1つのリモコンで済めば、これは便利なものだ」と語る。ジョイ氏は「でも無くしたときを考えて、僕は2つ欲しい」と言い、会場を笑わせた。



■プレイステーション2、全米初公開

プレイステーション2のデモの一部
デモの一部

 出井氏は「皆の期待を裏切らないように」と語り、プレイステーション2のプレビューを行なった。Sony Computer Entertainment Americaのカズオ・ヒライ社長兼COOが登場し、「プレイステーション2は、単なるコンシューマ製品ではなく、最初のマスマーケット向けの広帯域向け製品になる」と語った。また、「プレイステーション2が広帯域ネットワークを家庭に普及させる大きな原動力になるだろう」と語った。

 プレイステーション2は、64フレーム/秒のCPUスピードとグラフィックレンダリング技術で、動物の群れの動きをシュミレートしたり、太陽の光や影、カーレースの熱風などをリアルに表現できる。プレイステーション2の最大の魅力であるこれらの映像の美しさに拍手が起こった。プレイステーション2は、2000年3月4日に日本で発売が開始され、順次、米国、欧州で発売される。

ジョージ・ルーカス監督
ジョージ・ルーカス監督

 最後のゲストには、なんとジョージ・ルーカス監督が登場、ソニーがPanaVisionと共同開発したDVカメラ「HDCAM」に関して語った。同氏は、「ILMでは、このカメラのテストを開始しているところだ。これにより、次のスターウォーズではすべての工程がデジタル化され、多大な時間とコストが節約できる。これでやっと我々は(価格面で)アマチュア・コンシューマ市場に追いついたというわけさ」と語り、会場を沸かせた。

 出井氏は最後に、ソニーはさまざまな企業と提携することで、幅広いプラットフォームの確立を目指していることをアピールした。同氏は「ソニーはSunと家庭向けネットワークで提携し、IBMやMicrosoftとも共同で開発を行なっている。また、今日VAIOにPalm OSを採用する提携発表を行なった。さらに、AdobeやPhilipsを含む25社の企業が、メモリースティック技術を使ったデバイスの開発を行なっている。また、ソニーはCOMDEXだけではなく、CES、NAB、またはグラミー賞の祭典、オスカーにも出席している。ハードウエア、メディア、ゲーム、これらを通して、我々は広帯域エンターテイメント企業としての道を確立する」と語り、講演を締めくくった。

□COMDEX/Fall '99のホームページ(英文)
http://www.zdevents.com/comdex/fall99/
□ソニー、ニュースリリース目次
(11月15日付けで、音楽配信を中心に多数のリリースが公開されている)
http://www.sony.co.jp/soj/CorporateInfo/News/index.html

('99年11月16日)

[Reported by HIROKO NAGANO,NV]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp