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AMD副社長兼Fab30ジェネラルマネージャの
ジム・ドーラン氏インタビュー

AMD副社長兼Fab30ジェネラルマネージャのジム・ドーラン氏
 21日はAMDの最新工場であるFab30開所式の様子をお伝えしたが、その翌日にAMD副社長兼Fab30ジェネラルマネージャのジム・ドーラン氏にインタビューを行なった。Fab30の開所式があったばかりで、同氏のスケジュールも分刻みと大変忙しいなかであったが日本の読者の皆さんのため、特別に時間を確保していただいたので、その模様をお伝えしていく。



●AMDがFab30を作った理由はより多くのマイクロプロセッサを供給するため

Q:このFab30を建設した目的はなんですか?

ドーラン氏:ずばり、マイクロプロセッサをこれまでよりも多く市場に供給するためです。我々はより多くのマイクロプロセッサを供給するために新しい工場を必要としていたのです。

Q:Fab25(*1)との違いはなんですか

ドーラン氏:1つ目の違いはより大きな製造キャパシティです。我々はより多くのマイクロプロセッサを出荷するためにより多くの工場を必要としていました。2つ目の違いは、Fab30は次世代のプロセス技術を利用したマイクロプロセッサを作っていくことです。Fab30ではMotorolaとの協力のもと次世代のプロセスに関する研究を続けており、来年には実際にそのプロセスを利用したCPUを皆さんのお手元に届けることができるでしょう。このように、より大きな製造キャパシティと新しいプロセス技術の存在、これこそが最も大きなFab30とFab25の違いと言えるでしょう。

Q:Fab30の最新の設備の特徴はなんですか?

ドーラン氏:私は3つの特徴があると思います。それはプロセス技術、設備、そして従業員です。プロセス技術という観点に立てば、Fab30はヨーロッパで一番最初の銅配線技術(*2)のプロセスを作成することができる工場であるということです。もちろん、設備の面でも特徴を持っています。例えば、Fab30はSMIF(Standard mechanical InterFace)と呼ばれる最新のシステムになっています。具体的にはウエハー(*3)が流れるライン自体もクリーンルームになっています。まさにクリーンルームの中にクリーンルーム(*4)があるという2重の構造になっており、半導体を生産する工場としては最新のものです。最後に開所式でサンダース会長も述べていたように、Fab30の従業員、つまりはこの地方の労働者は非常に知的レベルが高く、仕事に対する高いモチベーション(やる気)を持っています。

Q:Fab30にドレスデンを選んだという理由はなんですか?

ドーラン氏:サンダース会長が述べているように人材は確かに重要です。それ以外にもドイツ政府やザクセン州政府などからのサポートも非常に重要な要素と言えます。我々の会社の規模は20億ドルから25億ドルといったところですが、そうした規模の会社が20億ドルから25億ドルもかかる工場を数年おきに建設していくというのは非常に大変なことです。我々は工場以外にも様々な投資を行なっています。例えば研究開発費には10億ドルを使っています。そうした工場を立てるにはある程度の財政援助が必要であり、ここではそれを得ることができるというわけです。


●HIP6プロセスのAthlonは2000年の第2四半期に登場!

Q:このFab30で作成する製品にはどんなものがありますか?

ドーラン氏:我々がこの工場で作成する製品は、ご存じの通りAthlonプロセッサと(将来登場するであろう)Athlonファミリ(*5)のプロセッサです。

Q:K6ファミリやCS50プロセス(アルミ配線の0.18μプロセス)のAthlonはこちらでは生産しないのですか?

ドーラン氏:いいえ、そういう計画はありません。K6ファミリやCS50プロセスのAthlonについてはFab25で生産を続けていますので、今のところそうした必要性は感じていません。とにかくこのFab30は次世代の製品、つまりAthlonプロセッサファミリのための工場なのです。

Q:銅配線の0.18μmプロセスのAthlonはMotorolaのHIP6プロセス技術に基づいて作られていますが、逆にこの工場でMotorolaのマイクロプロセッサ、例えばPowerPCなどを生産する計画はありますか?

ドーラン氏:現時点でのお答えは「いいえ」です。おっしゃるとおりHIP6のプロセスはMotorolaより技術供与されたもので、(MotorolaのマイクロプロセッサをFab30で生産することは)技術的には不可能ではありませんが、現時点ではそうした計画はありません。現時点ではこの工場はすべてがAthlonのために動いています。

Q:昨日サンダース会長のスピーチでは「早期サンプル」という表現で900MHzかそれ以上のHIP6プロセスを利用したAthlonプロセッサの製造に成功したというお話がありました。これが市場に登場してくるのはいつになるのでしょうか、またクロックはどのあたりで登場するのでしょうか?

ドーラン氏:昨日のサンダース会長のスピーチの通り、我々は少量のHIP6プロセスを利用したAthlonプロセッサの社内向けのサンプルを持っています。ただ、これから製品の品質をチェックしたり、認定を通したりするのに実際に生産ラインへ持っていくのには少々時間はかかります。顧客への出荷は2000年第2四半期の終わり頃になるでしょう。どのクロックで登場するかは、確実なことをお話しすることはできません。


●Fab30の完成でAMDの製造キャパシティは倍以上に!

Q:Fab30の完成でAMDの製造キャパシティはどれだけ大きくなったのでしょうか?

ドーラン氏:Fab30とFab25のウエハーの生産数はほぼ同等です。従って、ウエハーの数という観点に立てば、我々の製造キャパシティは倍になったと言えるでしょう。プロセス技術の進化という観点も加えるとすれば、それ以上になると思います。

Q:地元経済への影響はどの程度ですか?

ドーラン氏:AMDのこの工場の従業員は1,000人ほどです。AMDの社員以外にも様々なサービス業の関係者も出入りしているので、単にAMDが新しく作り出した雇用という以外でも影響は非常に大きいと考えます。私が思うに2.5倍から3倍程度は地元経済の成長に貢献できると思っています。

Q:こちらの工場にはどのような部署が入っているのですか?

ドーラン氏:ここの建物は工場、ラボ、PR部門、それからデザインセンターを抱えています。基本的にはセールス部門以外の部門がここにあると考えていただいていいと思います。

Q:Athlonのデザインはこちらでやっているのですか?

ドーラン氏:現在、Athlonコアデザインチームはオースチンにいます。K6デザインチームやさらに将来の製品に関してのチームはサニーベールにいます。ここのデザインセンターではAthlonの周辺部分、具体的にはチップセットなどをサポートしています。ただ、将来的にAthlonのデザインチームをこちらに移行させる可能性はあると思います。

Q:見たところこの工場の敷地は非常に広大で、まだ空いている土地も多いようですが、今後更にFab30を拡張していく計画はありますか?

ドーラン氏:現時点では具体的にお話できる計画はありません。ただ、おっしゃるとおり将来的に拡張していくことが可能であることは事実です。例えばオースチンのFab25は敷地いっぱいに建物が建っている状態です。そういう状態はあまりスマートとは言い難いので、Fab30では余裕を持って今必要としているよりも大きめな土地を購入することにしました。

Q:AMDの将来にFab30が与える影響を教えてください

ドーラン氏:とても大きいと考えています。既に我々は'99年の第2四半期にAthlonの出荷を開始しています。Fab30の完成により、AMDは次世代プロセッサへの準備も着々と整いつつあるわけです。私はこのことがAMDの利益に大きな影響を及ぼすと考えています。

【筆者注】
(*1)Fab25:AMDが米国テキサス州オースチンに所有している現在のメイン工場。
(*2)銅配線技術:AMDは次世代の0.18μmプロセスとして2つのプロセスを持っている。1つは素材にアルミニウムを利用したCS50と呼ばれるアルミ配線の0.18μmプロセスで、もう1つがMotorolaとの提携により技術供与された素材に銅を利用したHIP6と呼ばれる銅配線の0.18μmプロセスだ。
(*3)ウエハー:ウエハーとは半導体を生産するときの単位で、丸形の板状の中に複数の半導体が詰まっている。このウエハーを切って分割することで単体の半導体となる。
(*4)クリーンルーム:ウエハーが生産される時に少量の塵などでも不良の原因となるので、それらを極力排除した部屋のことを指す。ここでいうクリーンルームの中にクリーンルームがあるという表現は、ウエハーを生産するラインまでも小さなクリーンルームになっていて、2重の防御をしていてより綺麗な状態を保っているということを言っている。
(*5)ドーラン氏がいうAthlonファミリとはMicroprocessorForumで若干詳細が明らかになったAthlon Ultraと噂されているソケット版Athlonのことを意味していると思われるが、彼は製品展開担当でないためか具体的な製品についての言及はなかった。

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【10月21日】900MHzの銅配線Athlonプロセッサのサンプル製造に成功!
~ AMDがドイツドレスデンのFab30開所式を開催 ~
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991021/amd01.htm

('99年10月22日)

[Reported by 笠原一輝]


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