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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Intelがローエンドノートでオーバー400MHzの大攻勢に出る


●Intelが秋にモバイルCeleron 433/466MHzを投入

 Intelは、この秋、熱いけれども速くて安いモバイルMPUを出してくる。計画通りなら、モバイルCeleronプロセッサブランドで、433MHzと466MHzを投入する予定だ。これらの新MPUは、いずれも従来のCeleron同様に低価格で登場。433/466MHz登場に応じて400MHz以下のクロック製品も価格がスライドするという。そのため、低価格ノートPCは、一気に高クロック化が進む見込みだ。

 これは、Intelの方向転換を示している。というのは、高クロック版CeleronはIntelの従来の熱設計基準に適合しないからだ。つまり、熱くて消費電力が大きい。そのため、高クロックCeleron搭載ノートPCは、ファンを搭載したりボディを大きくするなどの方法で、従来より大きな発熱に対応しなければならない。また、バッテリの駆動時間も短くなる。つまり、Intelがこれまで目指してきたモバイルパソコンではなく、省スペースが目的のノートになるということだ。


●Intelのモバイル戦略は3つに分かれた

 Intelは、今年に入って、ノートPCに対する考え方を変えた。モバイルを大きく3つの分野に分け、それぞれにモバイル向けMPUを特化させる道を選んだようだ。その方向というのは、(1)パフォーマンスノート、(2)バリューノート、(3)ミニノートの3つだ。

 (1)のパフォーマンスノートPCは、伝統的なノートPCセグメントで、価格帯で言えば1,500ドル/20万円以上のオールインワン型だ。このセグメントでは、Intelは、これまで通り一定の消費電力・発熱量の枠内でクロックを上げていく。Intelは、パフォーマンスノートPCでは、バッテリ駆動時の消費電力を、MPUと2次キャッシュ合わせて9.5W(Typical)に抑えるというガイドラインを出しており、これを守る見込みだ。そのために、できるだけ早く次世代のプロセステクノロジを採用する。Intelは、0.18ミクロン版Pentium III(Coppermine:カッパーマイン)へ迅速に移行させて、消費電力を抑えながらパフォーマンスを引き上げようとしているらしい。

 そして、その上で、AC電源時にだけクロックと電圧を引き上げる「Geyserville(ガイザービル)テクノロジ」を来年第1四半期から導入する。AC電源時には、従来の9.5Wの制約以上の消費電力・発熱を許すことで、クロックの上限を限りなくデスクトップMPUに近づけるわけだ。おそらく、AC電源時には16W(Typical)の消費電力にすると見られる。それでいてバッテリ駆動時には、従来通りの9.5Wとすることで、モバイルでもある程度快適に利用できるようにする。

 IntelはこのGeyservilleテクノロジを、一部のノートのためだけの技術とは考えていないようだ。どうやらパフォーマンスノートPCは、すべてGeyserville対応へと誘おうと考えているフシがある。そもそも、IntelはGeyserville対応の特別なチップを作るわけではない。モバイル版Coppermineは、技術的にはすべてGeyserville対応になると見られている。となると、あとはノートPCメーカーの対応、つまり16Wに耐えられる熱設計のノートPCを作ってもらうことだけだ。

 Intelの思惑としては、モバイルCoppermineへの移行が進む来年中盤までには、パフォーマンスノートの2,000ドル以上のライン(日本なら20万円台後半)のノートPCは、Geyserville対応で600MHz以上にもっていこうとしていると思われる。


●バリューノートでは15Wの枠内で最高性能を

 しかし、(2)のバリューノートPCでは、展開はまったく異なる。Intelの見るバリューノートPCは1,000ドルから1,800ドルまでの価格帯で、ここには当面、Geyservilleテクノロジはもたらさない。また、バリューノートPCでは、プロセス技術の移行もパフォーマンスノートよりもワンテンポ遅れる。年内は、0.25ミクロンのまま移行する見込みで、0.18ミクロンへの移行もパフォーマンスノートほど迅速にはいかないと見られている。これは、古い製造ラインを活用して、コストを抑えボリュームを確保するためだろう。

 そのため、Intelは年内は従来のモバイルCeleronである「Dixon-128K」を使って高クロック化を図る。その場合の問題は消費電力と発熱だ。Dixon-128Kは、366MHz版で9.5Wとなっており、すでに、モバイルCeleron 400MHzからこれまでの消費電力ガイドラインを踏み越え始めている。そして、466MHzのCeleronは15W程度にまで消費電力が上がる見込みだ。これは、高クロックになればなるほど駆動電圧も上げなければならないからで、400MHzまでのCeleronが1.6Vなのに対して、466MHzのCeleronは1.9V程度にまで電圧が上がると見られている。

 そのため、Intelでは、バリューノートでは9.5Wの制約を外し、15WまではOKということにしたようだ。すでに、ノートPCメーカーには15Wまで対応できる熱設計を呼びかけているという。

 こうしたバリューノートの方向性は、Intelが誘導したものではなく、市場のニーズとして沸き上がってきたものだ。低価格のオールインワンノートは、モバイルで使われることが少ない。省スペース性や屋内で簡単に移動できる点を買われて使われるのが一般的で、そうした用途では、消費電力が少々高くても、高クロックの方が消費者にアピールするというわけだ。そして、実際にAMDは、Intelの間隙を突いて、熱いけれども高クロックで安いMPUをこの市場に投入して、そこそこの成功を収め始めている。これが、466MHz Celeronの登場する最大の理由と見て間違いはないだろう。


●電圧を下げたバージョンをミニノート向けに投入

 (3)のミニノートへのIntelのアプローチは、クロックを抑える代わりに駆動電圧を下げ、消費電力と発熱を抑えた製品を投入することだ。Intelは、すでに低電圧版のモバイルPentium II(Dixon)とCeleron(Dixon-128K)を投入している。電圧を従来の1.6Vから1.5Vに落として、消費電力を6W以下に引き下げたものだ。従来のモバイルPentium II 266PE MHzとCeleron 266MHzの消費電力が最大で9.8Wだったのに対して、低電圧版は7.9Wになっている。クロックが266MHzと低いのは、電圧を下げると低クロックでないと動かないためだ。

 さらに、IntelはこのあとCoppermineでも、低電圧低クロック版をミニノート向けにも投入する。現在の予定では、450/500MHzのモバイルCoppermineが登場する時に、400MHzのモバイルCoppermineを投入することになっているという。450/500MHzが1.6Vなのに対して、400MHzは1.35Vになる見込みだ。

 以上がIntelの現在のモバイル戦略の概要だ。次回のコラムでは、各戦略に沿った製品の詳細を分析してみたい。


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('99年7月29日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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