~ PCでも次世代ゲームマシンに負けないグラフィックを実現 ~ 「セガラリー2」
ソニー・コンピュータエンタテインメントが今年年末(来年早々?)にも次世代プレイステーションを発売、任天堂はコードネーム「Dolphin」という次世代ゲームマシンを発表、セガはDreamcastの価格引き下げと世界戦略を展開。と、コンシューマゲーム業界は今年に入って次世代ゲームマシンに関する様々な話題が入り乱れ、何かと騒がしい。
これら次世代ゲームマシンでは、現在のハイエンドグラフィックスPCすら大きく凌駕するパワーを持つ描画エンジンを搭載することで、これまでムービーとして収録されていた3Dグラフィックをリアルタイムでレンダリングし描画できるようになる。現在あるPC用ハイエンドビデオカードの3Dグラフィック描画能力は、それら次世代ゲームマシンの能力の足元にも及ばない。
しかし、ゲームの楽しさはハードで決まるものではない。ソフトの出来が良ければ、マシンパワーが劣っていたって楽しめる。PCゲーム業界だって今の状況を黙ってみているわけではないはずだ。
そこで今回は、PC用ゲームでも、次世代ゲームマシンに負けないグラフィックを実現し、しかも誰がプレイしても楽めるゲームを紹介しよう。
■ アーケードで大人気のラリーゲーム、セガラリー2をPCに移植!
レースに勝つにはセッティングが重要。セッティングを煮詰めてタイムを極限まで削れ |
PC版セガラリー2の内容は、基本的にDreamcast版とほぼ同じである。アーケード版を再現したアーケードモードに加え、10イヤーチャンピオンシップモード、ネットワークを利用した最大4人でのマルチプレーヤーモード、1台のPCを利用した2プレーヤー対戦モードなどが用意されている。登場するラリーカーは、Dreamcast版同様、アーケードエントリー7台にアディショナルエントリー11台の合計18台。カーグラフィックTVでおなじみの古谷徹氏がナレーションを担当し、それぞれのラリーカーの特徴を紹介するカープロファイルももちろん収録されている。
PC版独自の特徴としては、WRC99年シーズンにあわせた最新車種3台の投入と、それにあわせて新しく収録されたカープロファイル、プレイ中に時間変化に伴って背景などの情景が変化する点などがあげられる。また、Creative SoundBlaster Live!シリーズでおなじみの3DサウンドAPI、EAXに対応した3Dサウンド機能や、フォースフィードバック機能に対応することで、アーケード版に迫る臨場感を実現できる。
PCのラリーゲームとしては、昨年発売された「COLIN McRAE RALLY」が非常に評判が良いが、こちらはシミュレーション性に徹したゲームである。対してセガラリー2は、シミュレーション性ではなくゲーム性を追求したゲーム、といった感覚だ。これまでのセガのレースゲーム同様、そこそこ大味なゲーム性ながら、初心者でも十分に楽しめ、上級者は極限までタイムを削る走りを追求できる。ネット上ではコースごとにラップタイムを競うネットランキングが繰り広げられており、既にかなりのプレーヤーがしのぎを削っている。やはり日本を代表するゲームメーカーだけあって、プレーヤーを楽しませるコツを良く知っている。
ところで、ラリーカーの挙動だけでなく、背景などに使用されているテクスチャデータ、プレイ中にポリゴンが欠けたりするといった画面描画の特徴などがDreamcast版とよく似ている。Dreamcast版セガラリー2は、DirectXを使用して開発されていると言われているが、おそらくPC版はDreamcast版の開発コードやポリゴンデータを一部使用して制作されていると考えていいだろう。
2プレーヤー対戦モードでは、画面を2分割してプレイする | レースに勝つと、新しいラリーカーが登場し、使えるようになる | Dreamcast版でも好評のカープロファイルには、新車も登場している |
■ PC版セガラリー2のグラフィックはをDreamcast版を越え、アーケード版に匹敵
レースに勝つと、新しいラリーカーが登場し、使えるようになる |
ゲーム中に登場するラリーカーのカラーリングはどれも緻密に描き混まれたテクスチャデータが使用され、まるで実写取り込みのような雰囲気だ。また、窓ガラスは透明処理で車内や窓ガラス越しに見える風景が描かれているのはもちろんのこと、周りの風景が反射して見える、いわゆる環境マッピングに近い処理もおこなわれている。路面にはブレーキ痕やスリップ痕が残り、後輪からは砂埃が舞い上がる。コーナーではテールランプが帯を引いて流れていく。さらに、沿道の観客の一部がポリゴンで描かれており、コースに飛び出してきてプレーヤーカーを撮影するといった行動を取ったり、動物がコースを横切ったり、といった具合だ。
こういったグラフィックの特徴は、Dreamcast版でも実現されていたが、PC版では最大800×600ドットの解像度が選択できるようになっているため、より磨きがかかり、アーケード版に近いレベルのグラフィックが実現されているのである。
ところで、このグラフィックを最大限引き出してプレイするためには、かなりのマシンパワーが必要になると思われるかもしれない。しかし実際には、Direct3D対応のビデオカードこそ必須であるものの、CPUはそれほど高いパワーは要求されないようである。パッケージには、推奨CPUこそPentium IIIとなっているものの、最低現環境としてはCPUがPentium 200MHzとなっている。つまり、CeleronクラスのCPUを搭載しているPCであれば、プレイに支障はないと考えられる。
下の画像を見てもらいたい。これは、CPUやビデオカードを換えて、ほぼ同じシーンをキャプチャーしたものである。画面モードはどれも800×600ドットの解像度で、その他の画面オプションも全て最高設定にしてある。これを見るとよくわかってもらえると思うが、ビデオカードの違いによって、描画される画面に多少の差は見られるものの、大きな差は見られない。RAGE FURYを利用した画面では、背景にフォグがかかっておらず、かなり印象が違っているが、それ以外に関してはほぼ同じと言ってもいいだろう。ちなみに、同時にDreamcast版の画像も掲載したが、比較するとグラフィックの質の違いがよくわかってもらえると思う。
また、プレイ中のフレームレートであるが、CPUにK6/233を搭載するマシンに関しては30fpsをかなり切っている印象を受けたが、それでも全くプレイできないというほどではなかった。もちろん、解像度を下げるなどすれば、快適にプレイできたのは言うまでもない。また、今回最強環境と思える、Pentium III + Millennium G400の組み合わせでは、ほぼ全域において60fpsに近いフレームレートが出ているという印象だ。しかし、Dreamcast版で見られる処理落ちほどではないものの、ゲーム中所々で処理落ちを感じることがあった。やはり処理内容によってはパワー不足が表面化することもあるようだ(Millennium G400では、ビデオドライバの問題か、マウスカーソル部分の画像が黒く抜けてしまうという不具合も見られた)。
同じコースでも、時間経過に伴ってこのように情景が変わってくる |
ただ、やや残念な部分もある。それは、解像度が高くなったことで、背景のテクスチャデータの粗が目立ってしまうということだ。例えば、立木がアップになったりするとその粗さが目立つのだ。どうせ解像度を高めるのであれば、背景のテクスチャデータも高解像度データを用意して、より美しく見えるようにしてもらいたかった。
あと、ラリーカーの窓ガラスに反射する、風景の環境マッピングに関しても、正確な意味での環境マッピングにはなっておらず、走行している場所に応じたテクスチャが張られて流れているだけのようだ。プレイ中はそれほど気にならないものの、リプレイを見たりしていると、やや違和感を覚えてしまう。このあたりはマシンパワーなどとの兼ね合いもあるとは思うが、どうせなら本当に環境マッピングするような画面オプションを用意しても良かったのではないだろうか。環境マッピングオプションをONにしてプレイするために、ハイエンドパーツを買いそろえるコアなゲームユーザーが増えるのもおもしろいと思うのだが……。
グラフィック以外で気になる部分としては、CDに収録されているBGMの再生が始まる瞬間にゲームが一瞬固まってしまう、というものがあるが、これは最新アップデートパッチを利用することで多少改善される。ちなみに、マシンによってはBGMが鳴らないなどの不具合が出ることがあるようだが、それも最新アップデートパッチで修正されている。ユーザーの人はぜひ手に入れてアップデートしておこう。
コースに飛び出してくる観客は、写真を撮ると一目散に逃げ出す | ダチョウが飛びだしてくるコースもある |
■ セガラリー2にPCゲームの可能性を見た
展示会などでも注目を集めるほどのグラフィックのクオリティはスゴイの一言! |
しかし、PCゲームを楽しむためには、かなり高いスペックのPCが必要で、それを揃えるためにはかなりの投資が必要となる。しかも、多額の投資で最高スペックのパーツを揃えても、半年から1年経つと、最新ゲームを楽しむためにはパワー不足となってしまうことも少なくなく、ゲームによってはハードウェアを選ぶものもある。
肝心のゲームソフトも問題だ。もちろん話題作はいろいろとあるし、PCからゲームマシンに移植され大ヒットするソフトも少なくない。なのに、PCゲームは盛り上がりが感じられない。ゲーム自体マニアックなものが多く、一部のコアなゲームマニアが楽しんでいるだけにとどまっており、一般のゲームユーザーを引きつける魅力的なソフトは少ない。
コンシューマ機ならば、ハードは1台2万円程度で手に入るし、そのハード用のソフトであれば間違いなく動作する。しかも、豊富な販売台数に支えられ、魅力的なソフトも多数発売されている。そのため、わざわざPCで多額の投資をしてまでゲームを楽しむ意味はないのではないか、といった風潮が広まりつつある。
しかし、今回紹介したセガラリー2のように、PC用ゲームでもゲームマシン用ゲームと同じように万人が楽しめるすばらしいゲームを作ることが可能なのだ。また、ハードの問題にしても、それがPCの欠点であると同時に最大の長所でもある。パーツを交換して自由に機能をパワーアップできる、PCはまさに最強のゲームマシンといえる。
昨今のインターネットブームでPCの普及率はかなり上がっている。ならば、ゲームマシンだけでなく、PCででもゲームを楽しむことが増えてもいいはずだ。これまでPCでゲームを楽しんだことがないという人も、この機会に一度試してみてはいかがだろうか。ゲームマシンとはまた違った感動を味わうことが出来るはずだ。
[Reported by 平澤寿康]
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(C)SEGA ENTERPRISES,LTD., 1998, 1999
Special Thanks:Hiroyuki Okamoto(DOS/V POWER REPORT)