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元麻布春男の週刊PCホットライン

ハードディスクの最近の動向 その3



 一般的なクライアントPCが内蔵するハードディスクが1台である以上、ハードディスクインターフェイスはATAの方が価格の面でSCSIを上回り、性能面でも見劣りしない。前回筆者はそう書いたが、実はすべての局面でそうとは言いきれない。その最大の理由はOSサポートにある。

■ OSによるバスマスタIDEのサポート

 前に書いたように、記録密度の向上という技術革新にドライブされて、ハードディスクの低価格化と高性能化は、ものすごい勢いで進んでいる。だが高性能化、つまりデータ転送速度の上昇は、もう1つの副作用を生む。IBM PC/AT以来の伝統(?)であるPIOによるデータ転送で、テータ転送速度が向上し続けるということは、それだけCPUに対する負荷が高くなる、ということでもある(ちなみにPC XTのハードディスクインターフェイスはDMAベースであった)。要するにハードディスクのデータ転送によるCPU占有率が上がってしまう。

 もちろん、この問題は早くから認識されており、現在ATAハードディスクのインターフェイスは、Ultra DMA/33と呼ばれるバスマスタDMA技術をベースにしたもの(バスマスタIDE)になっている。これならば、データ転送にCPUパワーを必要としない。問題は、すべてのOSがUltra DMA/33をサポートしていない、ということだ。

 クライアントOSの主力であるWindows 9xの場合、Windows 95 OSR2でバスマスタIDEのサポートが行なわれ、同OSR 2.5ではUltra DMA/33のサポートが行なわれた。これがそのままWindows 98に引き継がれ、間もなくリリースされるWindows 98 Second EditionではUltra DMA/66のサポートが加わる。したがって、Windows 95 OSR2以降のOSを利用する限り、ATAだからといってCPU占有率が極端に高くなることはない。だが、バスマスタIDEをちゃんとサポートしたOSは、現時点では他にあまりないのである。

 たとえばWindows NT 4.0の場合、標準状態では内蔵するIDEドライバはUltra DMA/33には対応していない。一時、Intelが独自にWindows NT対応のバスマスタIDEドライバを配布していたこともあったが、現在ではWeb上から撤去されている。おそらくその理由は、ハードディスクとCD-ROMドライブ以外のデバイスの動作が保証されないなど、ドライバとしての完成度に問題があったからだろう。最初に同ドライバがリリースされた時点では、ATAデバイスといってもハードディスクとCD-ROMドライブくらいしかなかったのだが、現在ではSuperDiskやZIPといったリムーバブルメディアドライブ、テープドライブ、CD-R/RWドライブなど多様なATAPIデバイスが登場している。これらがきちんと動作しないドライバでは、かえって混乱を招きかねない。NTのSP3以降で追加されたDMACHECK.EXEというプログラムで、DMA転送が有効できるようになったが、同様の理由で標準状態ではOFFとなっている。

 この問題に関連して、筆者は面白い経験をしたことがある。筆者はATAPIのCD-RドライブをCD-R専用マシンに内蔵させて使っているのだが、最初はOSにWindows NT 4.0を組み合わせていた。CD-R焼き専用マシンは目的が限定されているため、デバイスサポートという点でWindows NT 4.0でも問題ないだろうし、Windows 9xより安定するのではないか、と考えたのである。ところが、この環境でどうしても複製を作れないCD-ROMがあることに気づいた。

 筆者は、インストール時にシリアル番号等を求めてくるようなCD-ROMは、基本的に複製を作ることにしている。以前、オリジナルのCD-ROMはあるのに、シリアル番号の書かれた紙が見つからなくて困った経験から、CD-Rに複製を作り、メディアの表面にマジックでシリアル番号を書いておくことにしているのだが、あるメディアがどうしても複製できなかったのである。ところが、ハードウェア構成、ライティングソフトはそのまま、単にOSをWindows 98に変えたところ、何の問題もなく複製できるようになってしまった。おそらく、Windows NTはバスマスタIDEに対応していないため、CPUが追いつかずバッファアンダーランが生じていたのだろう。Windows NTでもSCSIのCD-Rドライブなら、きっとうまく複製が作れたのではないかと思う。

 筆者は、こうした事例を元に、ATAよりSCSIが優れているとか、ATAのCD-Rドライブは安定しない、とか言うつもりは全くない(Windows NT 4.0は古臭い、とは若干言いたいが)。問題はATAやSCSIといったインターフェイスそのものではなく、OSサポートにあると考えるからだ。おそらく、Windows 2000ではバスマスタIDE(Ultra DMA)がサポートされ、上記のような問題はなくなるものと考える。

 しかしその一方で、ユーザーとしてはOSサポートまで含めてインターフェイスを選ばなければならないのもまた事実である。筆者はWindows NT 4.0を使っているユーザーに、ATAPIのCD-Rドライブを勧めるつもりはない。それどころか、ハードディスクを接続するインターフェイスとしても、SCSIを選んだ方がベターであろうと思う(問題は、そのために2倍の価格のドライブを選ぶことが正当化できるか、である。NT用のドライバが添付されたサードパーティ製のATAホストアダプタがあるのは知っているが、筆者自身が性能や互換性についてテストした経験はないため、何とも言えない)。

 結局、Ultra DMAにしても、AGPにしても、USBにしても、最新のハードウェア技術がサポートされたOSは、現状ではWindows 98しかないというのが筆者の結論である。これが筆者が仕事マシンにWindows 98を使う最大の理由だ。ところが、そんな仕事マシン(もちろんハードディスクはATAである)にも、いまだにSCSIホストアダプタがインストールされ続けている。次回はその理由について触れてみたいと思う。

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[Text by 元麻布春男]


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