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WINDOWS WORLD EXPO/Tokyo 99 展示会場レポート



~ メーカー各社が新製品を展示 ~


会期:6月30日~7月3日

会場:幕張メッセ


 WINDOWS WORLD Expo/Tokyo 99は、ボーナス商戦真っ只中という時期を反映してか、参加しているメーカー各社は自社製品のアピールに熱が入っていた。今回の会場レポートではそうした製品の中から目に付いたものをお伝えする。


●メーカー各社が新製品を展示

 ほとんどのメーカーが既にボーナス商戦向けの商品発表からずいぶんと時間が経過しているだけあって、今回は発表済みの製品の展示というメーカーが多かった。昨年のようにソニーが開発途上のC1を展示したり、カシオ計算機がFIVAを展示したりといった目玉になりそうな展示はほとんどなく、そうした意味ではやや拍子抜けだったとも言える。

来場者の注目を集めていたLibretto ff。特にi.Shuttleを使っていろいろ試している来場者が多かった Libretto ffのブースに展示されていたLibretto ffの基板。非常に小さい基板にLSIがところ狭しと実装されている

 そうした中でも来場者の注目を集めていたのは、なんといっても一昨日に発表になったばかりで、今回が一般には初のお披露目となった東芝の新製品だろう。特に液晶一体型のDynaTopとミニノートのLibretto ffには多くの来場者が足を止めて実際に触っている姿が目に付いた。

 特に注目を集めていたのは、ひっそりと展示されていたDynaTopのスケルトンモデルだろう。これはケースのカバーをスケルトンにしたもので、残念ながら市販する予定はないというが、DynaTopの内部の様子がよくわかって楽しい。会場に行ったならば一見の価値はある。Libretto ffが置いてあるブースでは液晶リモコン付きヘッドフォン「i.Shuttle」を試す来場者が多く、注目度も高かったようだ。このほか、NEC、シャープ、ソニーなども新製品を発表していたが、既に店頭に並んでいる製品ばかりであり、特に新しいものは無かった。

東芝のブースに展示されていたDynaTopのスケルトンモデル DynaTopのスケルトンモデルの裏側


●Athlonは無かったAMDブース

Athlonの展示はなかったAMDブース
 また、先日Athlon(これまでK7で呼ばれていたAMDの次世代CPU)を発表したばかりのAMDもやや大きめのブースを出展していた。ただ、注目のAthlonに関しては何の展示もなく、こちらもやや拍子抜けな展示であった。日本AMDの広報担当者によると先日のAthlonの発表はOEM向けに出荷を開始したというものであり、CPUの発表自体はもう少し後になるということだった。

 この事について、日本AMDの関係者は「CPUだけ発表してもOEMベンダが出荷しなければ意味がない。Athlonの発表はOEMベンダのマシンが出そろう時期に改めて行なう」と述べ、OEMメーカーの発表と同時にAthlon自体の発表を再度行なうことを明らかにした。ただ、Athlonのスケジュール自体は「予定通り進んでいる」とのことで、既に主要なOEMに向けてAthlonが予定通り出荷されていることを明らかにしてくれた(なお、Athlonに関してはAMDのホームページでも既にベンチマーク結果が公開されている)。

 また、先日米国で開催されたPC EXPOでAlpha Processorが展示していたSlot2対抗のSlot Bに対応したCPUをAMDも出荷するのかという問いに対しては「現時点ではノーコメント。ただ、現在のAthlonのポジショニングよりさらに上のCPUに関しては検討はしている」と肯定こそしなかったものの、可能性に関しては否定しなかった。

□AMDのAthlonベンチマーク結果
http://www.amd.com/products/cpg/athlon/benchmarks.html


●実際に触れるWindows 2000 β3

東芝のWindows 2000をインストールしたマシンのデモンストレーション
 別途レポートされているように、マイクロソフトはWindows 2000に関しての記者会見を行なったが、会場でもWindows 2000のβ3を展示し、実際に来場者が触って試すことが可能になっている。例えば、東芝では「Windows 2000 READY PC」と銘打ったコーナーを用意して、実際に東芝のPCにインストールされたWindows 2000を来場者が操作できるようになっている。こうしたコーナーは東芝の他、NECやマイクロソフト自身のブースに用意されている。現時点では、一般ユーザーにとってWindows 2000に触れることができる貴重な機会であり、多数の人を集めていた。


●新たに参入する企業の登場で盛り上がる音声認識ソフト市場

Dragon Systems社の音声認識ソフトDragon Speech Selectを利用して、連続文章入力を行なっているところ Dragon Speech Selectを利用して連続音声入力した文章
 日本アイ・ビー・エムに続き、NECがSmartVoiceで本格的に参入したことで活気づきつつある音声認識ソフト市場だが、今回さらに新しい企業の参入が明らかになった。それがDragon Systemsで、ソニーのブースの一角で同社の音声認識ソフトDragonSpeech Selectのデモを行なっている。

 同社の担当者によると「当社は欧米の音声認識ソフト市場で65%の市場占有率を持つなど高い評価を得ている。特に連続音声認識を重視している」と自社製品のアドバンテージをアピールした。それを受け、会場では新聞を連続して読み上げるデモが行なわれていた。発売は9月の中旬を予定しており、価格に関しては現時点では未定だが「先行しているNECやIBMの価格(1万8千円前後)と比較して競争力のある価格」(Dragon Systems担当者)とのことで、期待したい。

 なお、なぜDragon Systemsがソニーのブースでデモを行なっているかと言えば、日本語化にあたりソニーが技術協力しているためだという。では、ソニー製のPCにプリインストールされるという展開もあるのではと期待したくなるところだが「現時点では未定だが、当然そうした展開も考えられる」と前向きな答えが返ってきた。もしソニーのPCにも音声認識ソフトがプリインストールされるとなると、音声認識ソフトが大手メーカー製PCに必須のソフトとなる可能性もあるだろう。このほか、NECのブースでは先日発表されたSmartVoice 2.0やその周辺ソフトのデモが行なわれていた。


●カシオはコンパクトフラッシュのGPSカードを展示

カシオが参考出品したコンパクトフラッシュスロットに挿すGPSカード GPSカードを挿したE-500

 マイクロソフトのパートナーズパビリオンにあるカシオ計算機のブースではコンパクトフラッシュのスロットに挿して使うGPSカードが展示されていた。これを挿している同社のPalm-size PCのE-500はエプソン販売が発売しているロカティオにそっくりで、E-500がそのまま携帯型GPSに変身するという訳だ。年末までの発売を予定しており、価格などは未定。地図ソフトとしてはインクリメントPのPalm-size PC用の地図ビューアMapFan CE 2000を利用する。こちらはPC上にあるMapFan IVと連携して利用することが可能で、PC上でMapFan IVの地図をPalm-size PCに切り出して利用する仕組みになっている。なお、MapFan CE 2000はインクリメントPのホームページからダウンロード可能になっている。興味があるE-500/507ユーザーはインクリメントPのホームページを参照してほしい。ただし、現在のバージョンはGPSには対応していない。

□MapFan CE 2000商品情報
http://www.mapfan.com/mf4/ce2000.html


シャープのTeliosでも使えるようになったclick!のPCカードドライブ
 iomegaのブースでは先日発表されたClik!をPCカードスロットで利用する小型ドライブをシャープのH/PC ProマシンTeliosで利用するデモが行なわれていた。iomegaの説明員によるとシャープがホームページを通じて配布しているドライバを利用すると、使用可能になるという。

□Telios用Clik! ドライバ
http://www.sbc.co.jp/telios/download/clik_pc/


新潟キャノテックのUSB-パラレル変換ケーブル
 このほか、新潟キャノテックはUSBポートが用意されているH/PC Proマシンで、プリンタを使うためのUSB-パラレル変換ケーブルを参考出展していた。これは既に同社が発売しているUSB-パラレル変換ケーブルにWindows CE用のドライバをバンドルしたもので、既存のUSB-パラレル変換ケーブルを持っているユーザーに対してドライバだけを配布する計画もあるということだ。


●マイPCブーム到来か? 各社がカラーリングサービスなどをデモ

鮮やかなグリーンなどに塗装され、キーボードもスケルトンに交換したDynaBook バイオLシリーズ用に発売されたキーボードカバー。上からパープルグラナイト、ダークグラナイト、グリーングラナイト、バイオグラナイトの4色

 これまで、単一色のPCに飽きが来ていたというユーザーには非常によいニュースがある。今回のショーで、ケースに色を塗ったり、キーボードを取り替えたりというサービスに関する展示がPCメーカー各社で行なわれていたことだ。例えば、東芝は自社のノートパソコンのキーボードをスケルトンにしたり、ケースに色を塗ったりというサービスに関する展示を行なっていた。色の選択肢なども非常に多く、グレーやシルバー系の色に飽きたユーザーは是非とも見にいくといいだろう。このほか、ソニーはバイオLシリーズのキーボードカバーのカラーバリエーションを展示していたし、シャープもビジネスショーに続き、京友禅作家による塗装の実演を行なっていた。こうしたマイPCも今後のトレンドとなる可能性もある。


●各所で見かけたExpo特価

1,000円ProAtlas2000の看板
 Windows Expoといえば毎年話題になるショップの安売りだが、今年は会場が本会場の方に移動したこともあり、多くの来場者が安い商品を求めてショップの前を行き来していた。ただ、昨年に比べてショップ数などは減っており、一昨年のように競って価格が下げられることも特になかった。抽選で非常に安価に購入できる商品などへの応募が集まっていたことを除けばさほど安い商品があるわけでもなく、それほど盛り上がっている感じでなかった。ただ、中には明らかに秋葉原より安い商品もあったので、もし会場を訪れるようならとりあえずチェックしてみよう。

 このほか、ProAtlas2000を発表したアルプス社ではProAtlas2000の東京23区/大阪市/名古屋市限定版を1,000円と安価に販売中だ。通常版(5,800円)に比べると、地域は限定されるものの、非常に安価でこの地区だけで事足りる人は購入して損はないだろう。


●落日のWINDOWS WORLD Expo/Tokyo

 最後に今回のWINDOWS WORLD Expo/Tokyoの規模について触れておきたい。昨年までのWINDOWS WORLD Expo/Tokyoは、幕張メッセの8つある展示場のうち、6つとさらに併設するイベントホールを利用するという割と大きなイベントだった。実際筆者は昨年のWINDOWS WORLD Expo/Tokyoを1日では回りきれず、2日間通った。

 これに対して、今年は昨年の半分以下の3つの展示場だけと、規模が大幅に縮小しており、実際昨年参加していたメーカーで今年は見かけないところもたくさんあった。内容も昨年はC1やFIVAが初登場し、USBやIEEE-1394に対応した新しい周辺機器が大量に展示されるなど多くのニュースがあったが、今年は筆者のレポートでもわかるようにあまり目新しい展示もなかった。残念ながら規模・質共に昨年や、他のイベントに及ばないというのが筆者の感想で、そうした意味ではわざわざ幕張まででかける価値があるのか疑問を持たざるを得ない。不景気の波を受けたり、ボーナス商戦向けの発表はすべて終了しているという時期であるという不利な要素はあると思うが、そろそろ主催者側もコンセプトを変えるなどの思い切った変革が必要なのではないかと感じた。来年以降に期待したい。

□WINDOWS WORLD EXPO/Tokyo 99のホームページ
http://www.idgexpo.com/wwe/win/index.htm

('99年6月30日)

[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp