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非同期通信レポート 第46回

緊急速報

NTT、ISDNで定額制サービスを開始へ

TEXT:法林岳之


いよいよ始まる定額制サービス

 電話回線を利用したインターネットへのダイヤルアップ接続では、プロバイダに支払う接続料の他に、通信事業者に支払う通話料が発生する。通常、家庭や企業などで利用する固定電話の場合は、NTTに対して通話料を支払っている。日本とアメリカではインターネット接続に掛かる費用が大きく異なると言われているが、実はその違いは通話料に起因するところが大きい。たとえば、アメリカの一部の地域では市内通話の定額制サービスが提供されているのに対し、日本では深夜・早朝に限定したテレホーダイ、市内通話が5分10円(昼間)で利用できるタイムプラスなどの料金割引サービスが提供されているのみだ。ただ、日本とアメリカでは、通話品質やサービス内容、習慣、歴史的背景などが異なるため、まったく同じような定額制サービスをすぐに導入するのは難しいと言われていた。
 今年6月22日、郵政省『次世代ネットワーク構想に関する懇談会』がまとめた報告書では、インターネット普及のための常時接続や定額料金制の推進について、

という提言を行なっている。報告書では具体的な金額は提示されていないが、およそ5,000~6,000円がメドになるのではないかという見方もある。しかし、NTTでは「現時点ではその価格で定額制サービスを提供するのは難しい」としており、低廉な料金でのインターネット接続は簡単に実現できないと見られていた。
 ところが、ここに来て、NTTが通話料の定額制サービスを試験的に導入する計画であることが明らかになった。今回は、6月29日現在で得られている情報をまとめてお送りしよう。


NTTの定額制サービスのプランとは?

 ここ数カ月、新聞やニュースなどを注意深く観察していると、電話料金の定額制サービスに関する話題が非常に多いことに気づいたと思う。前述の『次世代ネットワーク構想に関する懇談会の報告書』は、それらにとどめを刺すような形で発表された。「数年後には使い放題になるかもしれないのかぁ」などと期待を抱いていた人も多いはずだ。

 今回、NTTが試験的に導入を検討している定額制サービスには、画期的な特徴がある。それは定額サービスを提供する対象回線をISDN(INSネット64)に限定している点だ。ISDNはご存じの通り、アナログ回線と同じ屋内配線を利用しながら、やり取りする信号をデジタル化することにより、高速かつ高品質な通話や通信を提供する電話サービス網のひとつだ。従来、ISDNで提供される料金割引サービスの多くは、アナログ回線で提供されたものを後追いする形で提供されてきたが、どうやら今回の定額制サービスはISDN独自のものということになりそうだ。

 ISDNで定額制サービスを提供するとは言え、何でも定額になるというわけでもなさそうだ。すでにISDNを導入したユーザーなら、請求書を見てもらえればわかるが、ISDNの料金は『回線使用料』『屋内配線使用料』『付加機能使用料』『INS通話料』『INS通信料』などから構成されている。今回の定額制サービスでは、これらの料金の内、デジタル通信を行なったときに課金される『INS通信料』を定額にすると見られている。

 ISDNではISDN機器のアナログポートに接続した電話機やFAX、モデムなどからの発信(音声通話)を『INS通話料』、データ通信ポート(RS-232CやUSB、Ethernetなど)からの発信(デジタル通信)を『INS通信料』として区別して集計している。この後者が定額制サービスの対象になると見られているわけだ。つまり、毎月一定の料金を支払っておけば、ISDNターミナルアダプタやISDNダイヤルアップルータを使い、プロバイダに64/128kbps同期通信モードなどで接続する場合に限り、使い放題になるという考え方だ。ISDN機器のアナログポートに接続したモデムなどで通信をした場合の料金は、音声通話と同じ扱いになるため、定額制サービスの対象にはならない。時間帯や曜日、接続先などは限定されない見込みだが、当面、サービス提供地域は都市圏(関東及び関西)に限られる予定だ。

 気になる定額制サービスの料金だが、今のところ、月額1万円程度が有力とされている。現在、プロバイダで提供されている定額料金プランが3,000~5,000円程度であることを考えると、実質的にはトータルで月額1万5,000円程度で、64/128kbpsが使い放題になるというわけだ。OCNエコノミーによる常時接続サービス(最大128kbps)が月額約4万円であることを考えれば、かなり割安と言えるだろう。

 非常に単純な計算だが、この定額制サービスは月に50時間以上、インターネットに接続すれば、十分に元が取れることになる。また、ISDNダイヤルアップルータを利用する環境では、クライアントPC側でダイヤルアップネットワークなどのPPPソフトを使わないため、専用線や常時接続に近い感覚で使うことができるが、毎日40分に1回以上の間隔でメールをチェックすれば、ほぼ元が取れることになる(メールチェックを自動に設定し、1回のメールチェックに10円が掛かると計算した場合)。


定額制サービスでインターネットが変わる?

 ただ、ここで気をつけなければならないのがプロバイダ側の観点だ。現在、得られている情報のみで判断すると、定額料金プランを提供するプロバイダにとって、実質的には3,000~5,000円程度で常時接続サービスを提供しなければならなくなる。つまり、プロバイダ側から見ると、ISDN定額制サービスを利用するユーザーは専用線ユーザーと変わらない存在になる。当然のことながら、そこには料金体系の見直しなどが発生するだろう。逆に、ISDN定額制サービスにも耐えられる設備を整え、それをセールスポイントにするプロバイダが登場する可能性もある。

 また、ISDN定額制サービスの1万円という料金は、すべてのユーザーにとって恩恵があるわけでもない。なぜなら、採算分岐点が月に50時間以上ということは、毎日1時間半以上もインターネットに接続しなければならない計算だ。多くのユーザーが月15~20時間のキャップ制料金プランを利用し、それに概ね満足している現状を考慮すれば、このISDN定額制サービスはインターネットのヘビーユーザー向けということになる。

 そこで考えられるのが料金割引プランのバリエーションだ。あくまでも筆者の推測でしかないが、現在のINSテレホーダイの時間や曜日を拡大したり、デジタル通信に限って利用できる別の料金割引プランを提供するといった方法が考えられないだろうか。というより、筆者としてはそういったサービスの登場を期待(お願い)したい。

 いずれにせよ、低廉な料金でのインターネットの常時接続が可能になれば、インターネットの普及が進むだけでなく、利用のスタイルも大きく変わることになるだろう。また、ISDN普及の面から見ても大きな起爆剤になる可能性が高い。

 ただ、最後にお断りしておきたいのは、これらの情報は筆者が独自に取材し、入手したものであり、決して確定的な情報ではない。正式なアナウンスは近く行なわれると予想しているが、それまでは筆者の予測に過ぎないという点に注意していただきたい。NTTが正式に発表次第、続報をお伝えする予定だ。とにかく発表を楽しみに待つとしよう。

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp