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元麻布春男の週刊PCホットライン

ハードディスクの最近の動向



■ 5年でハードディスクの価格は1/25、容量は25倍に

 プロセッサやグラフィックスチップほど話題にならないものの、ここ数年で著しく価格性能比が向上したデバイスがある。言うまでも無くそれはハードディスクだ。以前筆者は、ハードディスク購入に際して参考にするため、ハードディスクのMB単価をExcelのシートで管理していたのだが、このシートを更新しなくなって久しい(このコラムを書くのにシートを引っ張り出してみたところ、最終更新日は'94年10月であった!)。Conner PeripheralsやMicropolice、DEC、Hewlett-Packardなど、買収などによりハードディスクベンダが減ってしまったのに加え、何よりこれだけハードディスクが安くなってしまっては、もうどれでもいいや(事前調査しなくても、店頭で適当なものを選べば事足りる)、というのが正直なところなのだ。

 ハードディスクはどれだけ安くなったのか。上述した5年前のシートの中で、最もMB単価(1MB当りの価格)の安いIDEハードディスクを調べると、容量546MBのMaxtor 7546Aであることが分かった。540MBという「低容量」にもビックリするが、これが当時の売れ筋の容量だったのである。この7546Aの実売価格は24,000円。MB単価は約44円である。

 では現在のハードディスクはどうなっているか。PC Watch6月29日付の「CPU、HDD相場情報」によると、10.1GBのハードディスク(IBM DTTA351010)が16,800~19,800円、というところが今の相場のようだ。16,800円とすると、何とMB単価は1.7円を切ることになる。ハードディスクの価格は5年間で約25分の1になってしまったのである。猛烈な速度で性能向上を続ける半導体には、1つのチップに集積可能なトランジスタ数の上昇を物語るものとして、ムーアの法則(1チップに集積可能なトランジスタ数は18カ月で倍増する)があるが、ハードディスクの低価格化はムーアの法則さえ凌いでいる。

 さて、5年前という時代は、ようやくIDEインターフェイスのCHSパラメータによる「520MBバリア」が解消され、1GBクラスのIDEハードディスクが登場した頃である(最初の7,200rpmドライブであるSeagateのBarracudaが登場したのもこの頃だったと思う)。それまでは、大容量のハードディスクというとSCSIの独壇場だった。といっても、本格的な大容量ドライブは、まだ5インチフルハイトタイプが主流(記憶が確かなら、SeagateのEliteに9GBモデルが登場したのもこの頃ではなかったろうか)で、3.5インチドライブにしてもハーフハイト(約41mm厚)で4GB、現在の主流である1インチハイトタイプではIDEと同じ1GB程度の容量が主流だった。それが今では、IDEなら1インチハイトで25GB、SCSIの場合はハーフハイトで36GBの容量が実現している。大まかにいって、容量も5年で25倍になったと考えて良いだろう。もちろんバイト単価が25分の1になったことと、容量が25倍になったことは、無関係ではない。

 この時代、筆者が仕事マシンに使っていたハードディスクはSCSIのドライブだった。Windows 3.1時代の当時、筆者が仕事マシンに要求していた容量は3GB。ノイズの点からも用いるケースの点からも、さすがに5インチドライブは使いたくなかった筆者は、2台のSCSIハードディスクをマウントしていた。

■ ハードディスクは1台より2台が安全か!?

 現在の仕事マシンに内蔵されているのは8GBのハードディスクが1台のみ。インターフェイスもSCSIからIDE(より正確には、今はATAと呼ぶべきなのだが)へと変わっている。1台で大容量のハードディスクを使うより、2台に分散させた方が安心だと思っている人もいるようだが、RAID等で冗長性を持たせない限り、ハードディスクを2台に分散させることは、故障率を2倍にするだけだ。

 飛行機なら、2台のエンジンは機能的に等しく、どちらか片方のエンジンのみでも飛行を継続可能なよう設計されているから、単発機より双発機の方が安全だ。しかし、PCのハードディスクは1台目と2台目で役割が違う(記録内容が違う)から、飛行機と同じには論じられない(双発機の2台のエンジンのごとく、2台のハードディスクに同じ内容を書きこむと、ミラーリングになる)。特に、最近のWindowsはCドライブにあるレジストリデーターベースが失われると、ほとんどお手上げだ。それでもハードディスクをデータとバイナリ(アプリやOS)に分ければ、片方だけは丸ごと助かるケースもあるが、ダウンタイムの発生確率という点ではやはり2倍なのである(まさかデータが全滅しても仕事が続けられるとは思えないし、データが生き残ってもOSやアプリの再インストールが必要になる)。

 つまり、ハードディスクと飛行機のエンジンの故障率をいずれも1/10とすると(ずいぶん乱暴な話だが)、1台のハードディスクが壊れる確率は0.1だが、すくなくともいずれかが壊れる確率は1-(いずれも壊れない確率)で求められ、1-9/10×9/10=0.19となる。飛行機なら、2基のエンジンの両方が同時に壊れない限り飛行を継続できるわけだから、エンジントラブルにより墜落するのは1/10×1/10でわずか1/100ということになる。

 もちろん、上の1/10というのは話を分かりやすくするための例であり、実際のハードディスクの故障率はグンと低い。とはいえ、メカニカルな稼動部品を持つ以上、「絶対に壊れない」ということもあり得ないことだ。1台だろうが何台だろうが、ハードディスクは必ずバックアップしなければならないのである。

 ハードディスクを1台にするメリットは、信頼性だけではない。当然のことながらノイズ(騒音)と発熱も小さくなる。ノイズが小さいことは、夜中に自宅で仕事をする筆者にとっては無視できない点だ。また発熱が小さければ、不要なファンを回さずに済む。ファンはノイズの発生源であると同時に、これまたいつかは壊れるパーツである。必要不可欠なファンが壊れると、システム全体の障害へとつながる。ファン無しで済ませられるのなら、その方がはるかに良い。さらに、DVD-ROMドライブにSuperDiskと、ただでさえレーザーデバイスの多い筆者のシステムの場合、熱に弱いレーザーピックアップの寿命を考えても、熱の出るデバイスは極力内蔵したくない(同じ理由で5,400rpmドライブを使っていたりする)。

 と、ハードディスクが1台になったという話をしたところで、紙数が尽きてしまった。次回もこの話の続きをしたいと思う。

編集部注:HDDが壊れる確率について、多数の方からご指摘をいただきました。ご教示いただいた方々に感謝するとともに訂正させていただきます。

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【6月29日】CPU、HDD相場情報(秋葉原 '99/6 第4週)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990629/pa_cphdd.htm

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[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp