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~ PDFはWebブラウザよりもポピュラー ~
会場:NewYork Javits Convention Center
PC EXPO最終日の基調講演を務めたAdobe SystemsのCharles M. Geschke社長は、コンピュータやインターネットの普及により情報のデジタル化が急速に進む中で、「Acrobat PDF」のファイルフォーマットは「企業コストを大幅に削減し、ペーパーレスを実現するプラットフォームであり、デジタル情報をやりとりするスタンダードとして幅広く認識されている」と語った。また、デジタル情報をいかに印刷するかだけではなく、いかに処理、保存、分析するかの包括的なソリューションが求められており、21世紀のデジタル情報管理には「E-paper」ソリューションが必要であるという展望を述べた。
■真のペーパーレスをもたらす「E-paper」
しかし、ビジネスで成功するためにはコミュニケーションとコラボレーションの質と速度を向上させ、新たなビジネスモデルを構築し、世界中に点在する企業リソースにリアルタイムにアクセスすることが必要となる。同氏は、PDFをベースにした「PCファイル、データベース、電子メール、FAX、ボイスメールを含んだ包括的な情報配信プラットフォーム」を「E-paper」ソリューションと称し、これが真のペーパーレスをもたらすことになると語った。
■PDFはWebブラウザよりもポピュラー
同氏はまた、E-paperではスタンダード化が重要であるとし、「'80年代に起こったPC革命により情報のデジタル化が進んだが、簡単にデータ保存ができるようになった反面、データ保存が互換性のない複数のアプリケーションやプラットフォームで行なわれ、ある文書を読むためには必要なソフトウエアを買わなければならない状況が生まれた」と語った。
「こうした問題を解決したのが、'93年に発表されたPDFフォーマットだ。PDFを読むためのAcrobat Readerは現在、1億本以上市場に出回っており、これはIEとNavigatorを合わせたWebブラウザの数よりも多い。PDFフォーマットは現在、米食品医薬品局 (FDA) や米証券取引委員会(SEC)を始めとする150以上の米国政府機関で電子的ファイル文書のスタンダードとして承認されている。さらに、裁判所でもPDFフォーマットを標準として採用し始めた。世間は、PDFをプラットフォームに依存しないソリューションとして見ている」と語った。
■PDFでFDAに申請された最初の製品は「バイアグラ」
同氏はまた、従来は紙の書類で行なわれていた処理を、PDFフォーマットを使用してペーパーレスに移行させる会社が登場しているとし、その例として、ニューヨークのIntraLinks、トロントのEntreVisionなどをあげた。数年前に設立されたIntraLinksは、金融関係の複雑な処理を行なう際、Acrobatを使用することで通常の5~10倍の速度での処理を実現し、これにより数百万ドルのコスト削減を可能にしている。
また、製薬業界でも新製品申請のために大量の書類を必要とするが、Pfizer(ファイザー)ではPDFフォーマットを使用することで新製品を市場により速く投入することに成功し、推定で毎日数百万ドルものコストを節約しているという。Geschke氏は「最初にPDFフォーマットでFDAに申請された製品は“バイアグラ”で、PDFのおかげでたったの4カ月で市場に投入された」と語った。
同氏は「Acrobatが電子的な形態をとった『21世紀のペーパー』になると信じている。このソフトウエアは、ペーパーレス・オフィスの夢を実現するために生まれたのだ」と語り、最後にAcrobatがCOMDEX '93でデビューした際のビデオを流した。その中では、あるビジネスマンはビジネスプランをクライアントに送る際に、コピーをしたグラフを提案書に切り張りするのに悪戦苦闘し、またある老齢の女性は「何人かは必ず書類のコピーを返さないので、いつも何十部もコピーをするの」と話し、不必要に紙が消費されている非効率な状況が風刺されていた。
□PC EXPOのホームページ(英文)
http://www.pcexpo.com/
□Adobeのニュースリリース
http://www.adobe.com/aboutadobe/pressroom/pressreleases/HTML/9906/990624.pcexpo.html
('99年6月25日)
[Reported by HIROKO NAGANO, NY]