元麻布春男の週刊PCホットライン

ディスプレイのリプレース ~ナナオE78Fを購入して思ったこと~



■ 愛用してきたメインディスプレイが不調に

 プロセッサにしてもグラフィックスチップにしても、PCを構成する主要パーツである半導体は、ムーアの法則に支配され、アッという間に陳腐化する。それに対し、比較的陳腐化しにくく、良いものを買っておけば、4~5年は確実に使えるのがディスプレイだ。筆者がこれまで仕事マシン用のメインディスプレイとして使っていたのは、世界でも有数の通信機器メーカーであるNokia製の445Xというもの。無謀にも米国から個人輸入したこのディスプレイ、'94年後半からずっと筆者のメインディスプレイの座にあった。

 ところが、今年に入ってから、どうも調子が悪い。画面が微妙に揺れたり、ひどい時には画面が突然真っ暗になる、という現象が生じるようになってしまった。これでは仕事に集中できないばかりか、目にも悪い。本当は修理に出したいのだが、日本では売られていないディスプレイ。メーカー修理というのは難しい。今のところまだNokia 445Xを捨てずに、どこか修理してくれるところがないか、探しているのだが、まだ見つかっていない(たとえば米国なら、メーカー不問で修理してくれる独立系の業者があるのだが、日本ではなかなか難しいようだ)。




■ ナナオのE78Fを購入

 最終的にNokia 445Xがどうなるにせよ、修理が実現していない以上、代わりのディスプレイを手配せねばならない。早い話、次のディスプレイを買う必要がある。Nokia 445Xは、筆者にとって3代目の20/21インチクラスディスプレイだったが、これより小さくすることは考えられない。また、筆者はアパチャーグリルを使ったディスプレイがあまり好きでない。これは良し悪しではなく、好き嫌いの問題なので、どうしようもない(実は、筆者は仕事マシン用に加え、もう1台20インチクラスのディスプレイをテスト用に必ず用意しているのだが、こちらは仕事マシンのシャドウマスク管と比較するため、必ずアパチャーグリル管にすることにしている。だが、こちらもあまり調子が良くないのが目下の悩みの種だ)。

 というわけで、21インチのシャドウマスク管を使ったディスプレイ、この条件でディスプレイ探しを始めた。ところが、実際に探してみると、この条件に適合するディスプレイが非常に少ないのが分かった。どうにかナナオ(2機種)、松下電器産業、日立製作所といったメーカーに、条件に合うディスプレイがあったものの、圧倒的多数はアパチャーグリル管、それもダイアモンドトロン管を使ったものだったのである。しかも、日立製作所の21インチディスプレイは、秋葉原でも売っているところを見つけることができなかった(もちろん、すべてのショップを回ったわけではないのだが)。

 結局筆者が購入することにしたのは、ナナオのE78Fである。今は無き某誌で20インチクラスディスプレイの評価を行なった際、際立った画質が印象に残っていた。当時は価格があまりにも高く、人様に薦めることはもちろん、自分でもちょっと買えないと思ったのだが、今回調べたところ、標準価格では50万円近いこのディスプレイが、某Web通販で26万円台で売られていることが分かった。これでも決して安いとは思わないが、ディスプレイが良いものを選べば十分5年程度使えることを考えれば、何とか捻出できない金額ではない。逆に、半端なものを選んで、買い直しを余儀なくされるくらいなら、間違いのないE78Fにしとこう、というのが正直な気持ちだった。




■ E78Fに感じた違和感の正体

 さて、E78Fが届けられて、それまで445Xがあった場所に設置した。そして、早速仕事マシンに火を入れると、昨日まで445Xで見ていたのと同じ画面がE78Fに映し出された。だが、ここで筆者は違和感を感じた。チェックしたところ、色温度が非常に高いのに気づいたので、6,000度まで落としたのだが、やはり違和感はなくならない(ちなみに、色温度を6,000度から6,500度程度まで下げ、気にならない限界までコントラストを下げる、というのが筆者が常用する設定である)。

 筆者が感じた違和感の正体は何か。それは、E78Fでは何を映しても水彩画に見えてしまう、ということだった(その点でいうと、445Xは油絵ということになる)。色温度を下げるだけでなく、RGBによるカラーバランスの調整も試みたが、どう調整してもE78Fの画を、約5年間見慣れた445Xと同じにすることはできなかった。

 ただし、E78Fを客観評価すると、445Xよりはるかに上である。筆者が使っていた445Xは画面右上に、一目でそれと分かるミスコンバージェンスがあったが、E78Fにはそんなものは存在しない。フォーカスのシャープネス、各種の歪など、どれをとってもE78Fの方が良好である。あまりにシャープなせいか、当初はかえって目が疲れたほどだ(さすがに1カ月も使っていると、そんなことはなくなったが)。

 にもかかわらず、筆者の心のどこかには、445Xの見え方を好む気持ちが残っている。だからこそ、445Xを捨てられない(どこか修理してくれるところはないのかと探してしまう)のである。これがディスプレイの難しいところかもしれない。

[余談] 6月1日から、ついに? MegaWaveの有料サービスがスタートした。筆者は以前この欄で、MegaWaveのクライアントソフトウェアについて不満を述べたが、有料サービスに先立つ5月28日、クライアントソフトウェアのアップデートが行なわれた。まだ、それほど使い込んでいないが、以前のバージョンのように、エラーになったりすることはほとんどなくなったようだ。お金を取れるレベルにギリギリ間に合った、というところだろうか。ただ、夏ごろにはInternetアクセスの共有をサポートしたWindows 98 Second Editionがリリースされる。今のクライアントソフトウェアは、Internetアクセスの共有には対応できそうにないことを思うと、まだまだ改良が必要だろう。

□FlexScan E78F製品情報(ナナオ)
http://www.nanao.co.jp/home/products/e78f.html

[Text by 元麻布春男]


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