半導体産業カンファレンス開催
SCEI社長による次世代プレステに関する基調講演

'99年4月19日 開催



 日本ガートナーグループは19日、半導体関連企業を対象としたカンファレンス「Dataquest Semiconductor Conference 99」を開催し、半導体産業の市場動向や、予測に関する講演が行なわれた。

 カンファレンスでは、米ガートナーグループデータクエスト半導体分析部のバイスプレジデント/ディレクターを務めるグレッグ・シェパード氏による「半導体市場の展望」や、米ボール・セミコンダクター社の石川明社長によるロードマップ公開、ソニー・コンピュータエンタテインメント(以下SCEI)の久多良木健社長による「テレビゲーム市場」に関する講演などが行なわれた。
 今回はコンシューマ市場に近い、久多良木氏の講演に関してレポートする。

■テレビゲーム市場:その進化とこれからのビジネス展望

 今回の久多良木氏の講演は、先月の次世代プレイステーションの発表資料に基づいており、新しい発表はないが、SCEIの目差す方向や仕様に関するヒントが見え隠れする面白い内容だった。

 SCEIはプレイステーションで、2D表現だったゲームの世界を3Dで表現するべくグラフィックエンジン“Graphics Synthesis”を開発した。3D表現が実現となった現在、次にゲームは何を表現するのかといった時、久多良木氏によれば「音楽や映画を包括した総合デジタルエンタテイメントの創出」であり、「世界そのものを作り出す」ことが目標だという。

 久多良木氏は「これまでのPC用のCPUは計算機のために作り上げられた。我々はPCとは違った発想でCPUを作り、発展していこうと思った」という。具体的には「ゲームにとって必要なのは整数演算ではなく浮動小数点演算であり、高速で大量のデータを転送できるバスが重要。PCのCPUはこれまでクロックを上げることを目的としてきたが、我々は違った方法を採った。それが10個の浮動小数点積和演算ユニット、4個の浮動小数点除算ユニットであり、メモリの混載だ。0.18ミクロンで初めて可能となったが、なぜこういった発想がこれまで無かったのか私は不思議だった」。
 また、Pentiumとの性能比較もグラフを使って説明された。「先日の発表会で性能比較をしたことで、インテルの方が非常に気分を悪くされたということだが、比べやすいものですから」と断わった上で、浮動小数点などの優位性が示され「ただし、機能整数演算はPentium IIIどころかPentium IIよりも低い」と、目的に添ったCPUの開発を強調した。

 今回のCPU開発に関するコストと市場関係にも言及し、「シリコングラフィックスなどの1千万円台の高価なワークステーションが年間1万台から2万台売れているが、これだけの市場ではコストがかかりすぎて、CPUの開発に向けてダイナミックな投資が行なえない。我々は数千万台売れることを期待しているため、多額の投資を行ない新しいCPUを開発することができた。このためワークステーションなどの市場と我々の市場で、技術的な逆転現象が起こるのは当然。同じことがアーケードゲームでも言える。数万台売るだけの市場なのだから、掛けられる投資額は限られてくる」といった問題点を提示した。

 今後の問題点として大量生産への不安が挙げられるが、「こんな大きなCPUをゲーム機用として大量生産できるのか? と言うことが問題となってくると思うが、やれる自信はある」とキッパリ。また、今後の方針として「今回、開発したEmotion Synthesisだが、完成ではなく始まりである。2005年になれば、このアーキテクチャは使い物にならない程度の進歩がなければ、産業の広がりはない。ゲーム機の寿命は5年から6年と見ているが、半導体で言えば、2世代先のものを開発していかなければならない」と、次々世代プレイステーションへの展望も明らかにした。

 このほかではDVDに関する問題にも触れ、「MPEG2のデコードはあくまでも、テクスチャなどの大量の圧縮データを展開するためのもので、DVDムービーを再生するためのものではない。少なくとも我々(SCEI)としては次世代プレイステーションをエンタテイメントマシンとしてとらえているし、スーパーゲームマシンと思っている」としながらも、「プレイステーションでCDを聞いている人はいないと思うが、CD再生の機能は付いている。次世代プレイステーションでも発売時に何か新しいフィーチャーとして付加するものがあるかもしれない」と含みのある発言も聞かれた。
 コントローラに関しても「まずは従来のタイプのコントローラで発表することになると思うが、2000年の中頃には全く新しいコントローラを提案できるだろう。マウスやキーボードも絶対ではない」と、新しいアイディアの片鱗をみせた。

 全体を通して自信に満ちた態度で、次世代プレイステーションの発売に向けて着々と足場を固めつつあるという印象だった。

□データクエストのホームページ
http://www.dataquest.co.jp/
□「Dataquest Semiconductor Conference 99/Predicts 99」のページ
http://www.dataquest.co.jp/event/semicon.html
□関連記事
【2月22日】後藤弘茂のWeekly海外ニュース
究極のバーチャルワールドを作り出すPlayStation2チップがISSCCで登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990222/kaigai01.htm
【3月2日】「次世代プレイステーション」の基本仕様を公開、国内発売はこの冬を予定
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990302/play.htm

('99年4月19日)

[Reported by funatsu@impress.co.jp]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp