巷では、IOCの不正疑惑が取りざたされているようだが、オリンピックはやはり「冬季」、しかもフィギュアスケートが一番である。米国でも、スポーツ番組の中で常に視聴率上位にあるのがこのフィギュアスケートで、統計上は野球やバスケット、フットボールよりも視聴率が高いのである。
さて、今回取り上げるのは、Kristi Yamaguchi(クリスティヤマグチ)をPCで楽しむことができる“Kristi Yamaguchi Fantasy Ice Skating”である(写真 1)。Kristi Yamaguchiは、いいです。うちでは家族全員ファンです。少なくとも伊藤みどりよりいいと思います。
●Kristi Yamaguchiについて
Kristi Yamaguchiは、'92年フランス、アルベールビル冬季オリンピックのフィギュアスケート、女子シングル金メダリストだ。オフィシャルサイトは、http://kristi.yahoo.com/である。なお、フルネームは、Kristi Tsuya Yamaguchi。'71年カルフォルニア生まれである。
●どんなソフトなんでしょう?
“Kristi Yamaguchi Fantasy Ice Skating”(以下、KYFISと略す)は、ユーザーがKristi Yamaguchiさんを楽しむことができるソフトで、大きく2つの機能からなる(写真 2)。
1つは、Kristi Yamaguchiさんのコスチュームデザインをしてそれを印刷できるDress Up(写真 3)、そして演技をデザインし、3DでKristi YamaguchiさんがスケートしまくるDesign a Routineの2つである。また、オマケとして、同ソフトウェアを作成中の風景(当然、Kristi Yamaguchiさんが写っている)を納めたムービーが付属する。
はっきりいうと、Dress Upは、かなりつまらない。というのは単に着せ替えができるだけだからである。欲をいえば、後述のDesign a Routineで作った演技で、ここで作ったコスチュームを着てくれるとさらにすばらしいソフトになったのではないかと思う。
【写真2】 |
【写真3】 |
●Design a Routineを説明する前に
このソフトでは、フィギュアスケートでいう「フリースケーティング」競技を行なわせるもので、この競技は、8種類のエレメント(ジャンプ、スピンなどの技)を行ない、それを審判がテクニカルメリット(技術点)とアーティスティックインプレッション(芸術点)で採点するもの。
同じようなものにショートプログラムという競技があり、こちらは、指定したエレメントを使って演技するものである。実際の競技では、このショートプログラムとフリースケーティングの2つの結果により順位を決めていく。
エレメントには、ジャンプ、スピン、ジャンプスピンと、それ以外の技(たとえば技と技をつなぐ動作)がある。ジャンプに、スケート靴のエッジ部分で跳ぶエッジ・ジャンプと、スケート靴の先にあるギザギザを使うトゥ・ジャンプに分けられ、前者にはアクセル(Axel)、サルコウ(Salchow)、ループ(Loop)、などが、後者にはトゥ・ループ(Toe loop)、ルッツ(Lutz)、フリップ(Flip)などがある。
スピンは、簡単に言えばクルクルと回転することで、キャメルスピン(Camel Spin)、シットスピン(Sit Spin)、バックスピン(Back Spin)などの種類がある。たとえば、シットスピンは、回転しながらしゃがんで、座っているような体制になるもの。スピンで難易度が高くて有名なものに「ビールマンスピン」(Bielman Spin)がある。これは、回転しながら、片足のエッジを手でつかみ、その足と手を真上に伸ばすというもの。よっぽど体が柔らかくないとできない技です。
●Design a Routine機能とは
ここでは、Routine(演技)の開始から終了までの動きを定義する(写真 4)。定義する動きには、ポーズ(最初と最後のキメの動作)、ジャンプ、スピン、接続動作、コンビネーション(ジャンプスピン)の5種類があり、それぞれに何種類かの動き(技)がある。これを組み合わせていくわけだが、画面上の9つのスポットに選択したマウスでクリックした動作が配置される。なお、一度に表示される動作は9つだけだが、左右のボタンで前後の画面を表示でき、また、演技のカットや空白動作の挿入(後から動作を設定する)も行なえる。各動作は、種類ごとに床の部分が色分けされ、さらにそれぞれの技を示すアイコン(Kristi Yamaguchiさんの動きをかたどったアイコン)があり、また、設定時とスポットの再選択時には、音声で動作の名前をしゃべってくれるため、操作は簡単である。
この動作とは別に、使用する音楽を10曲から(写真 5)、背景を3つ(競技会場、屋外リンク、背景なし)から選ぶことができる(写真 6)。時に競技会場は、氷への映り込みやスポットライトなどがあり、かなり複雑なCGとなる。
作成したRoutineは、ファイルとしてセーブでき、また、ビデオレコーダーを模した簡単なプレビュー機能もある(写真 7)。
【写真4】 |
【写真5】 |
【写真6】 |
【写真7】 |
ここで動きを定義する |
音楽を選択する |
背景を選択する |
プレビュー |
●Kristi Yamaguchiさまに演技していただく
Routineを作成し、ファイルにセーブしたら、実際の演技を見る準備が整ったわけだ。画面右のツールバーの上にある演技ボタンを押そう。
すると、指定した背景と音楽にあわせ、Kristi Yamaguchiさまが演技をして下さる(写真 8)。ここでの見所は、競技会場を背景にしたときにスポットライトにあった氷に映り込むKristi Yamaguchiさまのお姿と、ほかの光源によるいくつもの影である(写真 9、10)。
さて、この演技だが、実際にKristi Yamaguchiさま本人を3Dスキャナで取り込み、さらにKristi Yamaguchiさまがリンクで演技したものをモーションキャプチャで取り込んだものをモデル化して、動作が作成されている。このため、演技時の手の角度や足の曲げ具合や顔の向きといったちょっとした動作もすべてKristi Yamaguchiさまのオリジナル演技と同じなのである。
【写真8】 |
【写真9】 |
【写真10】 |
●製品評価
なにかといえば、武器を振り回して、悪人や怪物とはいえ、殺戮の限りを尽くすようなソフトが多い昨今、このような心和むソフトは少ないといえる。しかも、このソフトは、自分で衣装やRoutineを作ることはできるが、勝敗もなければ、点数も出ない。幼少のころより、やれテストだ通信簿、内申書に入学試験といった学生時代を過ごし、社会人になるのにも入社試験や面接を潜り抜け、そのうえ、査定だボーナスだと常に、評価と競争を続ける現代人にとって、この何も評価しない、誰も負けないというソフトは、さしずめ現代社会へのアンチテーゼとして、すがすがしささえ感じられる。それにKristi Yamaguchiさまは、美人で、見ていても楽しくなる。よって、本ソフトの評価は星5つとしたい。
仕事で疲れた、勉強に飽きた、プログラムが動かない、Windowsがクラッシュしたというあなた、このソフトで、人間性を取り戻そうではないか。
Wizard Works( http://www.wizworks.com/press/pr_krist.htm ) 推定小売価格:$19.95 |
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【今回の製品評価】 ★★★★★ |
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なし たとえ家族が人質に取られても使うな。 ★ はっきり、いいましょう。使うと不幸になります。 ★★ まあ、やめといたほうが無難だね。 ★★★ 使えないわけでもないけど、金を出すほどのソフトか? ★★★★ 欲しけりゃ買いなよ。でも後悔しても知らないよ。 ★★★★★ 青島幸雄が国会で決めた。使わないやつは死刑なのだ。 |
('99年4月1日)
[Reported by 塩田紳二]