先週発表されたPentium III Xeonプロセッサは、当初、450/500MHzで登場するはずだった。ところが、Intelは高クロック化のスケジュールを数ヶ月前倒しして、500/550MHzで出してきた。これは、Intelが、それだけPentium IIIファミリと内製SRAMの高クロック品の歩留まりに自信をつけたということを示していると思われる。
では、Intelはワークステーション(WS)/サーバー領域では、今後、どんな攻勢をかけて来るのだろう。まず、「Tanner(タナー)」というコードネームで知られていた現在の0.25ミクロン版Pentium III Xeonに続き、今年後半には「Cascades(カスケイズ)」と呼ばれる0.18ミクロン版Pentium III Xeonが登場する。インテル日本法人によると、このCascadesでは、133MHz フロントサイドバス(FSB)バージョンが登場するという。しかし、デスクトップ向けのPentium IIIプロセッサと同様に、Xeonも100MHzから133MHzへ、すべてが移行するわけではない。少なくとも、今後1年以上、100MHz FSBと133MHz FSBが並列することになる。具体的には、デュアル(2CPU)構成までは133MHz FSBへとシフトするが、4ウェイ以上のマルチプロセッサ構成のシステムは100MHzに留まることになる。
●133MHz FSB版は急速に高クロック化
133MHz FSB版Pentium III Xeonは、今後、Pentium IIIとほぼ同じか1四半期早いペースで、クロックアップしていくことになる。おそらく、600MHzと667MHzが年内に登場、その後、733MHz、そして多分、800MHzが2000年の中盤までに登場することになるのではないだろうか。ただし、これらの高クロックPentium III Xeonは、当面、Coppermineと同じく256KBの2次キャッシュだけをCPUコアとワンチップ(On Die)に統合するようだ。それ以上の2次キャッシュを統合したバージョンは、当面は出てこないらしい。
そのため、133MHz FSB版Pentium III Xeonは、現在の512KB 2次キャッシュ搭載のPentium III Xeonを置き換えることはできるが、1MBと2MBの2次キャッシュバージョンを置き換えることはできない。また、133MHz FSBでは2CPUまでしかサポートされない。つまり、133MHz FSBに移行できるのは、エントリレベルのサーバーとミッドレンジのワークステーションまでということになる。それ以上のクラス、つまり、4ウェイ構成のミッドレンジ以上のサーバーとハイエンドワークステーションは、100MHz FSBのまま進展する。
インテルによると、4ウェイ構成では、少なくとも来年前半までは100MHz FSBのままだという。これは、技術上の制約で、現在のバスアーキテクチャのままでは100MHz以上のバスで、4CPUとチップセットの合計5デバイスを載せるのは難しいからだという。そのため、4ウェイ以上で100MHz FSB以上に上がるのは、バスアーキテクチャが変わる次の世代のCPUからになると思われる。実際、Pentium IIIの次のIA-32プロセッサ「Foster(フォスタ)」では、フロントサイドバスの帯域は3.2GB/秒になると発表されている。これに見合うのは、128ビット幅のバスを200MHzで駆動した場合などだ。
100MHz FSBでは、現在512KB版しか発表されていない550MHzの1MB版と2MB版が次に登場する。大容量キャッシュ版が遅れるのは、技術的な理由で、2次キャッシュ容量が大きくなると電気的に難しくなるためだという。IntelがOEMメーカーなどに明らかにした情報によると、100MHz FSB版ではこの550MHzのあと、しばらくCPUのクロックアップは行なわれないらしい。
来年前半までのXeonのセグメントは次のようになる。
100MHz FSB | 大容量2次キャッシュ | 4ウェイ | ~550MHz |
133MHz FSB | 256KB2次キャッシュ | 2ウェイ | 600MHz~ |
100MHz FSB版がクロックアップされるのは、どうやら来年中盤以降になる模様だ。関係者によると、Intelは100MHz FSBで、CPUコアに統合する2次キャッシュSRAMの量を256KBより増やしたバージョンを出すという。統合される2次キャッシュの量は、1MB以上、おそらく2MB版も登場すると思われる。この大容量2次キャッシュ統合版では、外付けSRAMチップという高クロック化の足をひっぱる要素がなくなるため、CPUのクロックもおそらくかなり上がるだろう。
●新チップセットIntel 840が秋頃に登場
Pentium III Xeonのイントロデュースに合わせて、Intelはチップセットも世代交代させていく。まず、8ウェイのマルチプロセッサ構成をサポートする「Profusion(プロフュージョン)」チップセットを、Pentium III Xeonとともに発表した。これは、CPUのFSBが100MHzでPC100をサポートする。
そして、今年後半には、「Carmel(カーメル)」というコードネームで知られていた「Intel 840」が、4ウェイまでのシステム用に登場する。これは、デスクトップ用の次世代チップセットIntel 820とほぼ同時期、おそらく秋頃に登場することになるだろう。ポジションとしては現在450NXと440GXを置き換えることになると思われる。
すでにIntelは、開発者向けカンファレンス「IDF」などで次世代WS/サーバー用チップセットの概要の一部を明らかにしている。それによると、新チップセットはDirect RDRAMインターフェイスを2チャンネル装備する。帯域は、Intel 820の2倍の3.2GB/秒になる。AGP 4Xモード、133MHz FSBもサポートされる。また、業界関係者によると、Intel 840は最大4CPU構成をサポートするが、その場合は100MHz FSBになるという。つまり、133MHz FSBは2CPU構成までということらしい。
Intel 840は、8ウェイをサポートするProfusionや各社の独自チップセット、450NXをベースにブリッジチップを使った8ウェイシステムとは棲み分ける。そのため、サーバーではメモリインターフェイスがエントリレベルはDirect RDRAM、ミッドレンジ以上がSDRAM系と分かれることになる。
これは、メモリの最大搭載量の問題のためだとIntelは説明する。Direct RDRAMは、プロトコル上は1チャンネル当たり32デバイスを接続できる。Intelは、すでに32デバイス接続の検証を終えたという。また、サーバーなどでは、さらにリピータを使ってチャンネルあたりのデバイスの数を増やすことで容量を増やす。そのため、Intel 840では最大8GBまでのDirect RDRAMをサポートできるという。
しかし、8GBでも、8ウェイクラスのサーバーでは足りない。それ以上の容量をDirect RDRAMでサポートするのは、現在のDRAMチップの集積度ではできないため、8ウェイ以上ではメモリインターフェイスがSDRAM系になるという。実際、Profusionでは、最大32GBまでサポートしている。
●2002年に0.13ミクロンへ移行
Intelは、来年の中盤までは、Pentium III Xeonの発展形で押す構えだ。しかし、そのあとは、いよいよ次のアーキテクチャが見えてくる。それがIA-64系のCPU「Merced」と「McKinley」、IA-32系のFosterだ。
Mercedに関しては、2月に開催されたIDFで情報がアップデイトされた。アルバート・ユー上級副社長兼ジェネラルマネージャ(Microprocessor Products Group)によると、Mercedは回路設計とレイアウトの最終段階に入り、シミュレータ上で64ビット版Windows NTや各社UNIXなど7つのOSのブートアップに成功したという。Mercedは、'99年の中ごろにサンプル出荷が始まり、2000年の中盤の出荷を目指すという。Mercedは、フルスピードアクセスの2次キャッシュSRAMを搭載した新パッケージに収められ、新チップセット「460GX」とともに登場する。
一方、Fosterは、Mercedより少しあとに登場することになるようだ。来年遅くか2001年初めとなる見込みだ。FosterはMercedと異なり、2次キャッシュSRAMをCPUコアに統合したタイプになる。クロックは、1GHzとアナウンスされている。
Merced後継のMcKinleyは、0.18ミクロンのプロセスルールで、来年遅くにサンプルが出て、2001年遅くに製品が出荷される見込みだ。しかし、McKinleyは、すぐにハイパフォーマンスの「Madison」と高コストパフォーマンス「Deerfield」の2ファミリに世代交代する。これらはMcKinleyコアで、0.13ミクロン化した製品だ。
これら新情報を織り込んだロードマップは、こちらで公開している。
('99年3月24日)
[Reported by 後藤 弘茂]