元麻布春男の週刊PCホットライン

同時進行連載:リビングルームPCが欲しい・その4
マザーボードはDiamondのMicronics C400を採用



■ワイドTVのスクィーズ

 毎回、数多くのメールがくるこの「リビングルームPCが欲しい」なのだが、今回はワイドTVの是非やDVD-Video等に用いられているスクィーズに関するものが多く寄せられた。スクィーズというのは、横長の画面を左右に圧縮して(つまり縦長に)記録する方式を指す。これを再生時に横長に引き伸ばすことで、見かけ上の解像度をかせぐことが目的のものだ。ワイドTVでは切り捨てられてしまう天地方向の走査線を救済する技術、と言えなくもない(ただし、最近は4:3のTVでも、プログレッシブ変換機能を持つもの、ソニーDRシリーズや東芝29Z3Pなど、はスクィーズ画像の伸展機能をサポートしており、ワイドTVの専売特許ではなくなりつつある)。

 そもそも、なぜワイドTVなるものが出てきたのだろうか。筆者はAVの専門家ではないが、聞くところではワイドTVに用いられている16:9の画角というのは、元々NHK技研が、次世代TV(言うまでもない現在実験放送中のハイビジョン)の研究の中で、より人間の視野角に近いものとして、選び出したものといわれている。つまり、ハイビジョンに用いられているMUSEは、16:9のフォーマットを採用することになり、自然な流れとしてディスプレイ(ハイビジョンTV)も、この画角を採用することになった。

 ハイビジョンの実験放送開始と同時に、これに対応したTVが必要になるわけだが、既存のTVはみな4:3の画角のブラウン管(CRT)を採用している。ハイビジョンTVのためだけに、新たに16:9のCRTを量産すると、そのコスト、特にガラス管のコストが極めて高くなり、ただでさえ数量が見込めず割高なハイビジョンTVの価格がさらに高くなってしまう。そこで、量産規模を拡大することで、せめてガラス管のコストだけでも安くしようとしたのが、ワイドTVのルーツではなかったのではないかと思う(あくまでも、筆者の想像である)。どうも筆者には、スクィーズという技術が、ワイドTVという技術的必然性のないフォーマットを既成事実化するためのものとしか思えなかったりする。



■ワイドTVで気にかかること

 まぁ、それはおいといて、筆者がワイドTVで困るのは、利用するコンテンツの多くが4:3である、ということにある。地上波放送のニュース、あるいはデジタルCSのペイパービューで見るNFLなど、筆者にとって重要なコンテンツはみな4:3のままである。筆者の手元にはすでに100枚近いDVD-Videoがあるが、1日のうちリビングルームのTVを利用する時間でいくと、圧倒的な大部分を占めるのは放送コンテンツの利用であり、DVD-Videoを見る時間は、ごく一部に過ぎない(しかもDVD-Videoにも4:3のタイトルや非スクィーズのタイトルが含まれる)。

 もし、筆者が専用のAVルームを持ち、DVD-VideoやLDといったパッケージメディアの鑑賞にしか使わないディスプレイを持てる身分であれば、そこで選ぶのはワイドTV(あるいは16:9の画角を持つディスプレイ)かもしれない。だが、残念ながら、筆者の収入では、専用AVルームどころか、2LDKのアパートを借りるのがやっとである。リビングルームで使うTVの中核となる用途は放送メディアであり、そうである以上、4:3のディスプレイの方がはるかに自然だ。

 もう1つ、筆者がワイドTVで気にかかるのは、日本以外の国でほとんど売られていない、ということだ。正確には、米国でもワイドTVは売られていることになっている。おそらく、試聴をあらかじめ電話予約するような、高級AV専門店なら、ワイドTV(今なら放送が始まったDTV対応のものかもしれない)を扱っているのだろう。だが、筆者が米国に出かけた際に訪れるようなCircuit CityやBest Buy、Fry'sといった量販店で、4:3以外のTVを売っているところを見たことがない。ヨーロッパの事情は良くわからないが、少なくともBBCのニュース等で時折映し出される現地の家庭に、4:3以外のTVがあったことはないと思う。家電分野での日本企業の実力を考えれば、16:9以外の画角が将来の主流になるとは思いにくいが、今のところ世界的な主流は4:3のままであり、利用するコンテンツを考えても特に急いで16:9に移行する必然性が感じられない、というのが筆者個人の判断である。



■CPUはCeleron 300A、ビデオはXPERT@Play 98、マザーは

ダイヤモンドマルチメディア Micronics C400
 さて、それでは話を前に進めよう。プロセッサがCeleron 300A MHzに決まり、ビデオカードもXPERT@Play 98を使うことを先週明らかにした。が、肝心のマザーボードについては全く触れていなかった。結論を言えば、採用したのはDiamondのMicronics C400だ。なぜこれにしたのか、と言われるとあまり積極的な理由はなく、プロセッサ同様、流用可能だったから、というのが最大の理由である。ただ、もう1枚手元で余っていた別の台湾製マザーボードが、時に互換性問題が頻発するのに対し、C400の方が安定している、ということは言える。

 たとえば、今回のリビングルームPCでは、リムーバブルデバイスとして、フロッピーディスクドライブはやめ、第2世代のSuperDiskドライブ(松下寿電子工業のLKR-F934)を使うことにしている。既存のフロッピーディスクとの互換性、改善された性能に加え、動作音が静かになったという点も加味してのものだ。また、メディアの取り出しがソフトウェアイジェクトでできるというのも、PCを離れた場所に設置するリビングルームPCでは便利だと思ったからでもある(これが便利なのは、デバイスドライバ等をフロッピーからロードしてリブートする際くらいのものかもしれないが)。せっかくワイヤレスキーボードを使っても、フロッピーを取り出すのに、メカニカルスイッチを押さねばならないというのは、ちょっと恰好悪い。

 ところが、C400とは違う別のマザーボードでは、LKR-F934を認識しない。アレッと思い、第1世代のドライブ(同じ松下寿電子工業製)を接続したところ、こちらは認識する。おそらくベンチマーク対策等で、現物合わせでギリギリまでタイミングを詰めていたりすることの副作用なのだろうが、困ったものである(はっきりいって、筆者はこういう「チューニング」は要らない)。他にIntel製のマザーボード(SE440BX)にもLKR-F934を接続してみたが、やはり問題は生じなかった。もちろんC400もちゃんとLKR-F934を認識する(別に台湾製マザーボードが悪いと言っているのではない。実際にはC400も台湾のBCM Advanced ResearchからのOEMだと思う。問題は変なベンチマーク対策/チューニングである)。

 もう1つ、C400にした理由としては、PCIスロットが5本あることが挙げられる。今では5本のPCIスロットを持つマザーボードは決して珍しくないが、たとえば前述したSE440BXは4本しかもたない。筆者が望むリビングルームPCは、やたらと拡張スロットが必要になるであろうことを考えると、5本でも足りないくらいなのだが、今のところこれより多くは望めない。サーバ等の用途であれば、PCI-PCIブリッジを用いてPCIスロットを増やすことは可能だし、実際にそうしたマザーボードが存在するのだが、残念ながらリビングルームPCで使いたい拡張カードは、セカンダリPCIバスでは動かないものの方が多いだろう。セカンダリPCIバスでも問題なく動作するのは、ネットワークカードやSCSIホストアダプタ、RAIDコントローラといったもの(サーバ向けのものばかり)で、リビングルームPCで使いたい、マルチメディア系のカードはほとんどの場合動作しない。

 逆に、オンボードに周辺デバイス、たとえばサウンドやネットワーク、あるいはビデオチップなどを載せてしまえば、拡張スロットの数は少なくても済むのではないか、という話もある。理屈の上では確かにその通りなのだが、実際の製品ベースで考えると、やはりこれもうまくいかない。次回はこの辺の事情と、サウンドカードについて触れてみたいと思う。

□ダイヤモンドマルチメディアのMicronics C400製品情報
http://www.diamondmm.co.jp/products/index-system.html

[Text by 元麻布春男]


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