プロカメラマン山田久美夫の

CES展示会場レポート「拾遺編」

会期:'99年1月7日~1月10日 開催(現地時間)
会場:ラスベガス LasVegas Convention Center、他

 先週行なわれたCESのリアルタイムレポートできなかったアイテムの拾遺編です。電子手帳から天体望遠鏡まで、広い分野から気になるアイテムを紹介します。


●アメリカ版ポケットボード!?
 「シャープ TelMail」「JVC HC-E100」

シャープ TelMail
JVC HC-E100
 ネットワーク先進国のアメリカだけに、E-Mailはビジネスマンを始めとした多くの人にとって、すでに生活必需品になっている。しかし、以前から疑問だったのは、外出先でのアクセスだ。なにしろ、モジュラージャックがついたISDN公衆電話があちらこちらにある国なんて、私が知る限り日本以外ない。特にアメリカでは、そのような公衆電話など見たこともない。もちろん、セルラーフォンでの無線モバイル機器もあるが、もっと簡単にE-Mailがチェックできる携帯端末があるはずだ……と。

 そして今回のCESで見つけたのが、昔懐かしい音響カプラーを一体化したE-Mail専用端末 「シャープ TelMail」と「JVC HC-E100」だ。これらは昨秋のCOMDEX/Fallでデビューした製品だが、シャープの製品は今回のCESで「INNOVATIONS 99」という賞を受賞しており、米国でも注目されている製品のようだ。

 「シャープ TelMail」と「JVC HC-E100」は、「PocketMail」というサービスを活用した通信端末。日本の「ポケットボード」での「10円メール」と同じような感覚で捉えるとわかりやすいだろう。このサービスは、1カ月あたり9.95ドル(約1,000円)の固定料金を支払い、「1-800-POCKETM」というフリーダイヤルに電話をするだけでE-Mailの受信やFAX送信ができるというサービス。通信相手がフリーダイヤルなので、電話代は無料。しかも、完全固定料金という点も安心だ。

 通信はモジュラー経由ではなく、一体型の音響カプラーを普通の受話器に押しつけて行うというアナログ的なもの。具体的には、公衆電話などからごく普通に「1-800-POCKETM」に電話をかけ、この端末を受話器に押しつけながら、背面の送受信ボタンを押すだけというシンプルさ。
 この単純な構造で、実際にどれくらいの通信速度がでるのかわからないが、E-Mailに必要十分な速度は出るようだ。

 端末側の機能は、E-Mail専用機だけに、よく整理されており、ボタン一つで「INBOX」(受信箱)、「OUTBOX」(送信箱)、「COMPOSE」(作成画面)に切り替えられる。もちろん、E-Mailのアドレス帳も作成できる。表示はいずれも反射式の2値のモノクロ液晶で、表示は粗いが英語圏ならば、これでも十分なレベルだろう。電源も単三型2本と入手しやすいものになっている。
 なお、モジュラージャックなどはなく、あくまでも「PocketMail」専用機という位置づけのようだ。価格はシャープが149ドル、JVCはわずか99ドルととても手頃だ。

 これらの製品は英語専用端末であり、「PocketMail」サービスも米国内のフリーダイヤルなので、日本では使えない。だが、日本国内でもモジュラージャック付き電話は探そうと思うと意外になく、携帯電話やPHSも通じない場所も結構多い。そう考えると、日本の携帯端末にもこのような機能があってもいいのではないだろうか。

TelMailの背面
TelMailを受話器に
セットする
HC-E100の背面


●超小型GPS付き腕時計を出展したカシオ

 カシオは今回、国内でも発表された腕時計スタイルの超小型GPSをアクリル越しながら展示した。腕時計の横にGPS用の受信部が出っ張った感じで、意外なほどコンパクトに仕上がっている。

 これは、GPSから得られた緯度経度情報を表示する機能がメイン。地図データは内蔵されず、緯度経度情報を元に地図上で自分の位置を確認するため、緯度経度表示のある地図が別途必要だ。だが、本機にはあらかじめ目的地の緯度経度を登録しておくと、そこまでの方向や距離を簡単なイラストで表示出来る機能を持つ。

 GPS単体がここまでコンパクトになると、あとは地図情報をROM化するか、必要な部分だけ外部からメモリに転送すれば、超小型のナビゲーションシステムができそうだ。なお、価格は未定だが500ドル前後になるという。

□ニュースリリース
http://www.casio.co.jp/productnews/gps.html


●Outlookとのシンクロ機能を備えた149ドル電子手帳「カシオ PV-200」

 昨年はWindows CE搭載のPalm-size PCの発表でにぎわったカシオブース。同社は今回、日本でのカレイドシリーズのような電子手帳「PV-200」を発表した。PV-200は、基本機能としては普通の電子手帳という感じなのだが、「Microsoft Ooulook 97/98」とのシンクロ機能を前面にアピールしている点が大きな特徴。価格は149ドルと、Palm-size PCよりも遙かに安価に設定されている。

 Palm-size PCのメリットはWindowsとの連携であり、文字入力が苦手である性格上、外出先で利用するデータのほとんどはOutlookとシンクロ出来れば事足りる。そんなシンプルで実用的なコンセプトのモデルがこのPV-200というわけだ。
 今回のCESを見ると、Palm-size PC自体、昨年ほどの盛り上がりは感じられず、ときおりこの手のツールでメモを取っている来場者を見ても、その多くがPalm Pilotだったりする。昨年のCESで鳴り物入りで登場したPalm-size PCだが、やはりアメリカでは高機能よりも、シンプルで手頃なもののほうが好まれる傾向があるようだ。


●カシオ「プチコレ」も出品!

 カシオブースでは、日本でも人気が出始めている「プチコレ」も出品していた。これは、プリンタ内蔵デジタルカメラで、本体だけで簡単なシールプリントができる。機能的には1/4VGA相当の1/4インチモノクロCCDを採用したモデルで、プリンタ部分は超小型の感熱式モノクロタイプを内蔵している。デジタルカメラといっても、外部へのデータ出力機能のないプリント専用機だが、専用ストロボ付きで12,800円(日本国内価格)と手頃な価格に抑えられている。ブースでは、あまり目立たない場所に展示されていた。


●PCやWebすべてをTV上で扱うシステムを発表した「松下」

 松下は今回、50インチを越えるような大型テレビを発表し、ホームシアターの世界を積極的にアピールしていたが、その一方で、テレビやゲームはもちろん、PC画面までも普通のテレビで表示し管理する家庭用システムを発表していた。

 このシステムは、「MicroCast」と呼ばれるもので、家庭内の映像情報を家庭用の大型ディスプレイ上で一括表示することで、ユーザーはテレビを見ながら、必要に応じてパソコン操作やネットサーフィンを楽しめるというもの。PC用ディスプレイに比べるとテレビは解像度が低いため、文字情報などを読みやすくする画像処理を施している。
 また、テレビ上にPCの画面を表示しながらも、そのなかにテレビウインドウを重ねて表示することもできるので、ネットサーフィンしながらテレビ放送を楽しむこともできるという。


●大容量HDD内蔵のNetTV続々登場

 今回のCESの大きな見所となったのがHDDドライブを内蔵したセット・トップ・ボックス。なかでも、「RePlay」と「TiVo」が双璧となっており、いずれも人気を博していた。
 これらの機器は、数十GBのHDDドライブを内蔵することで、簡単にテレビ番組の録画やリプレイが見る事ができる。通常のモデルでも6時間程度の録画ができ、見たい番組をネット経由で送られてくる番組表から選んで、リモコンで予約しておくだけでOKと、インターフェイスも実にシンプルなもの。
 大容量HDDを内蔵している割に、価格は500ドル程度と意外に手頃。しかも、将来的にはホームサーバー的な使い方ができる可能性もあることから、今後このような製品が続々登場する可能性が高い。

 今後、より大容量のHDDディスクが安価に供給されるようになれば、1週間分の見たい番組を全部録画しておき、週末にまとめて楽しむといった使い方もできそう。しかも、HDDなのでテープメディアに比べて検索が容易な点も大きなメリットといえる。あと数年で大きな進化を遂げるであろう分野だけに、今後の動向が注目される。


●150ドルのコンピュータ対応望遠鏡を発表した「Meade」

 最後に天文ネタをひとつ。CESには家電系はもちろん、実に様々な製品が展示されているのだが、その中には光学機器である望遠鏡まである。
 なかでも今回は、アメリカの望遠鏡メーカーでもデジタル化に熱心なMeadeが、超低価格なコンピュータ対応望遠鏡を出品していたのが印象的だった。これは、専用のコントローラに内蔵されたコンピュータを望遠鏡(経緯台)に接続し、星の名前を入力するだけで、望遠鏡が自動的にその星を導入してくれるというもの。
 この手のシステムは同社が昔から得意としていた分野なのだが、従来は数千ドルクラスの望遠鏡にしか対応していなかった。それが今回、たった150ドルの望遠鏡(入門用の経緯台付き60mmの屈折望遠鏡)でも 100ドルのオプションを追加するだけで、自動導入ができるというシステムを発表したわけだ。これがあれば、天体の知識がなくても、簡単に天体観察が楽しめる。
 もっとも、現物はプレスとディーラーだけに公開され、写真撮影も特定モデルのみというものだった。なお、写真は世界的に大人気の90mm反射望遠鏡にそのシステムを追加したもの。また、同システムを使った70mm F3.5の屈折望遠鏡も参考出品していた。

□1999 International Consumer Electronics Show
http://www.cesweb.org/

('99年1月19日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp