後藤弘茂のWeekly海外ニュース

CPU価格競争で、K6-2 300MHz搭載パソコンが399ドルへ



●Intelはローエンドのシェアを回復していないもののXeonのおかげで増収増益

 今週のIntel関連ニュースは、前四半期の増収増益の吉報で溢れつつある。IntelはまたMPU出荷のレコードを破ったという。これは、もちろん11月から12月にかけてのホリディシーズン商戦、日本で言うところの年末商戦でのパソコン売り上げが絶好調だったからだ。また、「PC Sales Growth, Cost Cuts Help Boost Intel's Earnings」(THE WALL STREET JOURNAL,'99/1/13、有料サイトhttp://www.wsj.com/ から検索)によると、IntelのASP(Average selling prices)もまた、第3四半期の214ドルから221ドルに上がったという。ただし、ASPが引き上げられたのは、Pentium II Xeonのおかげだという。ローエンドのサブ1,000ドル市場では、Intelのシェアは28%で、AMDの37%、National Semiconductorの30%と比べても低い状態が続いていると報じている。つまり、ローエンドではシェアを失ったものの、サブ1,000ドルが引き金となったPCセールスの好調や、ハイエンドのPentium II Xeonシリーズの売り上げで、増収増益を維持しているという構図になる。


●ビジネスユーザーにはPentium IIがIntelの戦略

 先週のこのコラムではIntelのCeleron価格戦略について書いたが、同じようにIntelの価格戦略について突っ込んだ記事が出てきた。「Intel's low-end push pressures prices Intros 366-, 400-MHz Celeron processors」(Electronic Buyers' News, '99/1/08)がそれで、やはりIntelはローエンドのPentium IIを犠牲にしてCeleronをAMDに対抗させようとしていると報じている。また、この記事の中で、MicroDesign Resources(MPU業界情報誌Microprocessor Reportの発行元)のアナリストLinley Gwennap氏が、Intelの戦略はコンシューマ市場での対AMDはCeleronをぶつけ、Pentium IIはビジネスバイヤーに売ろうとしている、と指摘している。つまり、ブランドロイヤリティの低いコンシューマでは、バーゲンのCeleronで対応して、Pentium IIはブランド信仰の強いビジネスユーザーに高値で売ろうというわけだ。しかし、「危険は、そうしたバイヤーがCeleronが(Pentium IIと)ほとんど変わらないほど速いと気がついてしまうこと」だと付け加えている。


●K6-2 300MHzマシンが399ドル

 こうしたIntelとAMDの激しい争いで、当面、利益を得るのはユーザーだ。「Emachines Steps Up Production, Drops Cyrix」(Computer Retail Week,'99/1/11)によると、ローエンドパソコンとして名乗りを上げたEmachinesは、現在採用しているNational Semiconductor/CyrixのM IIに代わって、AMD K6-2とIntel Celeronを採用することにしたという。IntelとAMDが競い合ってMPU価格を引き下げているからで、K6-2 300MHzマシンが、なんと399ドルだという。となると、Cyrixが居場所をなくしてしまうかも知れない。


●K7は6月23日?

 珍しくAMDのK7関連の記事が出た。「Details of AMD's K7 emerge, as Intel reveals Pentium III plans」(Electronic Buyers' News,'99/1/12)がそれだが、内容はそれほど目新しくはない。AMDの内部資料をもとに、2000年前半にはK7がソケット用のパッケージになると報じている以外は、すでに公開された情報がほとんど。また、K7の発表が6月23日というウワサについても、AMDに確認したが、AMDでは肯定しなかったという。AMDも、今年の前半はほかにやることがたくさんありすぎて、K7のプロモートはとりあえず後回しモードなのかも知れない。


●Microsoft裁判の経済学者対決

 Microsoft裁判は、年明け早々からまた再開されているが、ようやく司法省側の証人が最後の一人の、マサチューセッツ工科大学(MIT)のフランクリン・フィッシャー教授の番となった。「Last DOJ witness calls Microsoft "predatory"」(CNET NEWS.COM,'99/1/12)など多くの記事がフィッシャー氏の証言を報じているが、他の証人同様に、Microsoftを手厳しく批判したらしい。

 反トラスト法裁判の歴史を少しでも知っている人にとって、このフィッシャー氏が司法省側の証人台に立つというのは、非常に興味深いことだ。というのは、フィッシャー氏は、今回同様に“歴史的”と言われたIBMに対する反トラスト法裁判の際に、IBM側の証人として立ったことがあるからだ。フィッシャー氏は、多くの人が使うようになればなるほど、その製品の利用価値が増えるという「ネットワーク効果」理論で知られる有名な経済学者で、IBM裁判では、彼の理論がIBMの正当性を証明していると証言したという。その彼が、今回はそのネットワーク効果で守られているため、MicrosoftがWindowsの高価格を維持している点などを指摘したそうだ。

 ちなみに、今回の裁判で司法省が切り札として起用した弁護士デビッド・ボイズ氏も、じつは、IBM裁判でのIBM側の弁護士だった。この裁判は、結局、IBMの引き延ばし作戦などが功を奏して、なしくずしになってしまったのだが、その立て役者2人が、今回は司法省側についているのだ。Microsoftにとっては、なかなかやりにくい状況なのは確かだろう。

 Microsoft裁判でヤジウマ的な意味で面白いのは、こうした人物構図で、たとえば、Microsoft側の証人では、フィッシャー氏の弟子に当たる人物が登場する予定だ。同じ理論をベースに、対立する論を張る。このあたりはじつにアメリカ的で面白い。また、東海岸系弁護士を立てた司法省に対して、西海岸系弁護士で固めたMicrosoftという、弁護士業界の東西対決という側面もあるという。こういう視点で見ると、難解な裁判も面白いかも知れない。


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('99年1月13日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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