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落日のCOMDEX? 地元新聞が下り坂と報道



●昨年までは満杯だったホテルが稼働率80%に

 右肩上がりで規模を大きくしてきたCOMDEXも、いよいよ下り坂に入ったのだろうか。COMDEX/Fall '98の開催された週の後半に、COMDEXが不入りだったというニュースが地元ラスベガスの新聞に相次いで登場した。

 まず、Las Vegas SUN紙。同紙は「Tourism execs weigh Comdex impact」(Las Vegas SUN,11/19)で、例年ではCOMDEXの数ヶ月前にメジャーホテルの部屋は売り切れてしまうのに、今回はCOMDEXの期間中でもほとんどのホテルが空き部屋を抱えていたと報じている。たとえば、ストリップ大通りの大ホテルのひとつミラージュは、例年なら95%の稼働率なのに、今年は80%しか埋まらなかったという。その原因は、客の数が減ったことと、客の平均の宿泊日数が減ったことだと、ミラージュホテルのスポークスマンが証言している。「多くのCOMDEX客は、4泊する代わりに3泊にした」のだそうだ。

 また、ホテルの宿泊料金も下落したそうだ。ラスベガスのホテルは、通常のシーズンは他の都市のホテルよりも宿泊料金がずっと安い。それは、ホテルはカジノで儲けられるため、宿泊料金は安く抑えて客を集めようとするからだ。ところが、COMDEXだけは例外で、この時期、ホテルは軒並み通常の3倍から4倍のCOMDEX料金を取る。「Thunderbird sued over Comdex rate hike」(Las Vegas SUN,11/18)によると、そのために訴訟まで起きたそうだが、今年はちょっと様子が違ったようだ。


●宿泊料金は平均40%もダンピング

 「Comdex commotion cools」(Las Vegas Review-Journal,11/19)によると、ラスベガスのホテルブローカーの手配したホテルの宿泊料金は、昨年のCOMDEXに比べて平均で40%も落ち込んだという。大手ホテルは土壇場で軒並み宿泊料金を下げ、ほぼ通常料金で提供したという。例えば、ミラージュにCOMDEX期間中に予約なしで入れば、79ドルで泊まれたそうだ。通常、このクラスのホテルの宿泊料金はCOMDEX期間中200~350ドルに跳ね上がってしまうので、これはかなりのディスカウントだ。このほか、レストランの客数が減ったとか、タクシーの乗車率が減ったというレポートもある。また、実際に、会場を歩いていても、COMDEXウィークの後半に入ると、去年より混雑が少なかった。

 もっとも、こうした観測に対する反論もある。「Comdex says it will be back in force in '99」(Las Vegas SUN,11/20)では、参加者は約22万人で、ほぼ事前の予想通りだったとZiff-Davisのスポークスウーマンが説明している。混雑が少なくなったのは、通路などを昨年より広く取ったからだという。また、会場近くのレストランの売り上げが減ったのは、COMDEX客が少し離れた場所のレストランを利用するようになったためもあるという。空室の多いホテルが出たのは事実だが、それは競争相手が宿泊料金を落とした時にすぐに対応しなかったためだという。また、ホテルが空いたのは、ラスベガス全体のホテルが増えているせいもあるらしい。事実、前年よりホテルの部屋数は5,100も増えている。ちなみに、来年のCOMDEXまでにはさらに3つのメガホテルがオープンする予定だ。


●COMDEX客はしみったれ

 地元の新聞で、COMDEXの規模がこれだけ取りざたされるのは、それだけCOMDEX/Fall '98というイベントがラスベガスにとって特別なものだからだ。「Highbrows and Low-Rollers」(Business Week,11/9、有料サイト、 http://www.businessweek.com/ から検索)によると、COMDEXの経済効果は約3億4,100万ドル。それに対して、同数の通常の観光客の経済効果は1億2,500万ドルと見積もられているという。だが、そのわりには、ラスベガス地元民はCOMDEX客が好きではない。この記事には、地元民のCOMDEX客に対する悪口がいろいろ収録されていて、それによると、彼らは……1日仕事して食べるのはピザだけ/ガム買うときにもレシートを欲しがる/20ドルしか持って来なくて20ドルぽっきりしか使わない/チップをくれない、などなど、ともかくしみったれている、というのが嫌われている理由らしい。

 COMDEX客がケチというのは、ラスベガスではもう有名な話らしくて、ともかくいろんな記事にその手の話は登場する。たとえば、「Why are Comdexters so loath to buy their thrills?」(Las Vegas SUN,11/19)によると、4.90ドルの支払いに5ドル出して、「つりはとっておいてくれ」というのがCOMDEX客だそうだ。もうひとつ、COMDEX客が有名なのはスケベだということ。この記事によると、COMDEX期間中ラスベガスのストリップクラブは満杯になり、夜9時過ぎなら立ち見でぎっしりになってしまうという。


●COMDEXで儲けたひとも

 儲けたのはストリップクラブだけではない。「Video firm benefiting from Comdex」(Las Vegas Review-Journal,11/17)によると、最近は地元のビデオ制作会社などが儲けているという。これは、プレゼンテーションがどんどんビジュアル化しているためで、たとえば、Century Productionsという会社は、Microsoftを顧客に掴んだため、彼らのビデオを制作したり、衛星回線を用意したりでだいぶ潤ったらしい。言われてみれば、Microsoftは現地で撮ったビデオや衛星回線をよく使いたがる。

 かと思うと、余計な出費を強いられている企業もある。「Comdex logistics」(Las Vegas SUN,11/16)によれば、電話会社がその一例でバックボーンを銅線から光ファイバーに張り替えたという。これは、COMDEXでは通信をする人が多いので、電話回線網がパンク寸前になってしまうためらしい。また、ラスベガスコンベンションセンターでは、電気需要がどんどん増えているので、トランスを3つに増やしたという。


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('98年12月2日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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