元麻布春男の週刊PCホットライン

ホットプラグのメリットを享受できるUSBデバイスとは


■USBで使いたいデバイスの条件

NEC PetiScan
NECの携帯用USB接続スキャナ「マルチリーダPetiScan」(34,800円)。携帯向けのUSB製品も増えており、シリアル/パラレルポートが本体に装備されていないノートPCではUSBというだけでもメリットがある場合も。しかしデスクトップPCでは、メリットを実感できるUSBデバイスがまだ少ない
 USBのサポートは、間違いなくWindows 98の目玉とでも言うべき新機能の1つだ。もちろん、OSR 2.1以降のWindows 95でUSBのサポートは実施済みだったが、OSR 2.1が一般に市販されなかったこと、対応するデバイスの種類が少なかったことなどを考えれば、やはりWindows 98こそUSB普及の本番とみなすべきだろう(現在のWindows 98でのACPIサポートが、Windows 95 OSR 2.1でのUSBサポート同様、OEMの実験用に近いもの、と言っては言いすぎだろうか)。

 しかし、いざUSBデバイスを実際に使おうとすると、困ったことに気づく。USBで接続すべき周辺機器が、ほとんどないのである。確かに、Windows 98のリリース以降、市場にはさまざまなUSBデバイスが登場してきた。大型量販店にはUSBコーナーまで設けられており、USBケーブルやUSBハブといったそれ自体では特定の機能を持たないものから、キーボードやマウスといった入力デバイス、さらにはスピーカーやシートスキャナといったUSBデバイスが売られている。

 だが筆者の仕事マシンには、むなしくUSBハブのみが接続されており、そこに特定の機能を持つUSBデバイスが接続されることはほとんどなかった。USB入力デバイス(マウス、キーボード、ゲームパッド)を接続することはあっても、それは一時的な実験目的のもので、常用するUSBデバイスは存在しない。むろん、USBマウスを常用しても良いのだが、あまりその必然性を感じない。理屈の上では、ISAデバイスであるPS/2マウスより、USBマウスの方がシステムへの負荷が小さいことは知っているが、だから何なのさ、というのが率直なところである。ましてや、最近のキースイッチを使ったUSBキーボードなど、タイピング感(少なくとも筆者にとってはシステム負荷より100倍重要である)の点でメカニカルキースイッチを用いたビンテージキーボード(PS/2コネクタですらないATコネクタのキーボードである)の敵ではない。

 個人的には、マウスやキーボードはもちろん、スピーカーやモデムといった、毎日利用するデバイスをUSBにすることに、あまりメリットを感じない。なぜなら、こうしたデバイスの多くは常時接続されており、いちいち抜き差しすることなどほとんどないからだ。これでは、ホットプラグ可能なUSBの利点が消えてしまう。逆にモデムを外付けのUSBデバイスとして接続するのは、USBのコネクタにロックがないだけに、かえって不安を感じる。RJ-45プラグのような簡単なツメでも良いから、スポンと抜けてしまうことを防止する手段がないと、ちょっと怖い。

 これを裏返せば、USBで使いたいデバイスの条件が見えてくる。毎日利用しないが、ある程度は定期的に利用するデバイスで、通信のようなクリティカルな用途向けではないもの。しかも、USBのカバーする最大データ転送速度(12Mbit/秒)の範囲に収まるデバイスである(モデムは内蔵ソフトウェアモデムに向かうのが自然の流れだろう)。この条件を考えると、iMacが事実上フロッピードライブをUSB接続の外付けのみにしたことは、英断に違いない(標準添付すべきかどうかに、議論の余地があるかもしれないが)。システムの起動とそれに伴うBIOSの問題さえなければ、PCにとってもUSBフロッピードライブは魅力的だ(PCでは、DeviceBayが答えになるのだろうが)。



■ホットプラグのメリットが享受できるデバイス

 それはともかく、筆者にとって上記の条件を満たすデバイスの代表格は、ジョイスティックやゲームパッドといったゲーミングデバイス(言いかえれば、常時使用しない入力デバイス)と、スキャナやプリンタといったイメージングデバイスである。筆者は、こうしたデバイスをあまり使わないのだが、全く使わないわけでもない。使いたい時だけリブートせずに接続して使えたら、それに越したことはない。たとえばUSBのジョイスティックは、筆者にとって間違いなく最適の解であろう。

 しかし、イメージングデバイス全般となると、ある矛盾に気づく。プリンタやスキャナ(特にフラットベッドスキャナ)といったデバイスは、それなりにサイズが大きい。ジョイスティックと違って、ホットプラグ可能な取り外し式になったとしても、普段どこに置いておけば良いというのだろう。プリンタ等は、おおむねPCからそう離れていない場所に鎮座しているのが普通であり、そうである以上、プリンタとPCの間が常時ケーブルで結ばれていても大きな不便はない。USBによるホットプラグのメリットとしては、必要な時だけ周辺機器の電源を入れれば良いというものも含まれているが、昨今のプリンタは省電力化が進んでおり、常時接続同様、常時通電が当たり前になっている。そうであれば、USBよりたとえばイーサネットなどの方が、共有などの点で、プリンタにはベターなソリューションであろう。

 ホットプラグのメリットが享受できる小型のイメージングデバイス、ということで最もポピュラーなのは、間違いなくデジタルカメラだ。携帯して利用するデジタルカメラは、常時PCと接続するわけにはいかないし、デジタルカメラを接続するたびごとにPCをリブートする、というのはナンセンスである。まさにUSB向けといっても過言ではない。

 では本当にUSBはデジタルカメラにとって、理想的なインターフェイスなのだろうか。上で述べたように、PCから見れば、デジタルカメラはある程度理想に近いUSBデバイスの候補である。しかし、逆にデジタルカメラ側から見ると、USBは必ずしも理想的なインターフェイスではない。デジタルカメラにとってUSBが不便なのは、ホスト(つまりはPC)がなければ何もできない、ということである。USBを採用することで、確かにデジタルカメラとPCの接続性は向上するが、せっかく用意したUSBを利用して、デジタルカメラとUSBプリンタを直接接続することはできない。デジタルカメラで撮影したデータをプリンタへ出力するのに、いちいち間にPCをはさまなければならないのでは、PCを持たないユーザーにとってのメリットはほとんどない。また、屋外あるいは出先でデジタルカメラのデータを出力するのに、ノートPCとプリンタの両方を持ち運ばなければならないようでは、機動性が大きく損なわれる。デジタルカメラがUSBを採用することは、自らをPCの従属物にすることになりかねない。

 USBを採用しながら、PCの従属物にならないようにするには、自らがホスト機能を備えれば良い。そして、PCに接続された時にはスレーブデバイスとなり、そうでない時(たとえばカメラにプリンタを接続する時)は自らがホストになれば良いのである。しかし、そのためにはデジタルカメラ側に、高級なプロセッサを持たせたり、OSを搭載したりと、カメラとしての本質的な機能以外に(撮影機能以外に)、かなりのコストを割かねばならない。また、このように複雑さを増すほど、カメラとしての手軽さや速写性が損なわれる。カメラの電源スイッチをオンにするとOSのロードが始まって、ということでは、とても報道用には使えない。

 と、どうもUSB採用のデジタルカメラというのは、「PC側の片思い」の感が強い。だが、デジタルカメラのデータを手軽にPCで利用したいという欲求がなくなったわけでは決してない。カメラ側がその機能を中に取り込んでくれないだけの話だ。ならば、他の手段を使えば良い、というわけで、デジタルカメラのデータ記録媒体として最もポピュラーな、フラッシュATAカード(コンパクトフラッシュやスマートメディアを含む)をPCで読み出すための周辺機器がいくつも登場している。

 中でも、ノートPCで普及しているPCカードスロットでコンパクトフラッシュやスマートメディアを読み出すためのアダプタは、最もポピュラーなものの1つである。PCカードスロットを持たないデスクトップPC向けには、ISAバスを利用した汎用のPCカードスロットに加え、デジタルカメラ向けに特化したフラッシュATAカード専用のカードリーダが、パラレルポートやSCSIバスに接続されるデバイスとして販売されている。あるいはスマートメディアをフロッピードライブで読み出すためのアダプタもその一例だ。

 だが、こうした周辺機器に問題がないわけではない。ISAのインターフェイスカードを用いたPCカードスロットであろうと、パラレルポートを利用したフラッシュATAカードリーダであろうと、レガシーインターフェイスを必要としており、将来が明るいとは言いがたい。PC99システムデザインガイドでは、ISA拡張スロットの撤廃や、パラレルポートに接続して良いデバイスがプリンタだけであることが明記されている。SCSIを利用したフラッシュATAカードリーダは、SCSIホストアダプタを含めれば高価な上、現時点ではホットプラグできない。スマートメディア向けのフロッピーアダプタは、レガシーインターフェイスを利用する上、データ転送速度が低いという問題がある(ただし、フロッピーインターフェイス自体は、当面提供され続ける)。

 前置きが長くなってしまった。PCとデジタルカメラの間のデータ交換デバイスとして、現時点で最も理想的なのは、USBを用いたフラッシュATAカードリーダである。これなら、起動中のPCに簡単にホットプラグし、デジタルカメラのデータを吸い上げることが可能だ。小型だから、使わない時にしまっておくことができるし、複数のPCで共有したり、自宅と会社で持ち運んで使う、といった利用も容易である。データ転送速度も、静止画の取り込みなら十分なハズだ。

 というわけで、次回はこの秋登場した、USB対応のフラッシュATAカードリーダについて、実際に使ってみた感想を述べることにしよう。果たして実際の製品は、理屈通り「理想的」なのだろうか?

[Text by 元麻布春男]


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