元麻布春男の週刊PCホットライン

AGPの互換性


■相変わらず不安定なサードパーティ製チップセットのAGPサポート

 最近、久しぶりにIntel製以外のチップセットのマザーボードを購入してみた。3DNow!をサポートしたDirectX 6が正式リリースされたのを機に、AMDのK6-2の性能を再評価してみようと思ったのである。結論から言えば、K6-2のDirect3D性能は、DirectX 6を利用することで「最大」で2倍程度に向上することが確かめられた。最大ということわりがつくのは、Direct3Dを用いたアプリケーションの中には、DirectX 6と3DNow!の効果が高いものと、そうでないものが含まれるからだ。3Dグラフィックス処理は、ジオメトリ演算とレンダリングの2ステージからなるが、3DNow!の効果が著しいのは、両方の処理にDirect3Dを用いているもの。逆にいえば、レンダリングだけにDirect3Dを利用しているゲームは、3DNow!の効果があまり発揮されない。残念ながら、市販のゲームの大半がジオメトリ演算にDirect3Dを使っていない(自前で計算している)ため、それほど高い効果は得られなかった。やはりゲーム側の対応(といっても、ジオメトリ演算にDirect3Dを使うだけだが)が必要なようだ。

 このDirectX 6のテストをしていて驚いた? のは、サードパーティ製チップセットのAGPサポートが、相変わらず不安定なことである。今回用いたマザーボードは、VIAのMVP3チップセットを用いたAOpenのAX59Pro。一応、購入前の調査で比較的安定しているという評判を聞いて決めたものだ。しかし、実際にWindows 98をインストールして使ってみると、なかなか一筋縄ではいかないことが分かった。VIAのWebサイトの情報では、VIAのチップセットはWindows 98でフルサポートされているとしながらも、Windows 98のインストールには、守らなければならない手順があり、なおかつWindows 98のインストール後、IRQルーティングとAGPの2つのデバイスドライバをインストールせねばならないという(しかもIRQルーティングは、AX59Proではドライバを組込んでも有効にならなかった)。

 少なくともIntel製のチップセット(筆者がWindows 98をインストールしたことがあるのは、440LX、440EX、440BXの3つに過ぎないが)で、このような面倒な手順を要求されたことはない。それに、AGP用のドライバが必要なのはWindows 95の話で、Windows 98では要らないハズではなかったのか。こうしたドライバの問題に加え、必ずしもすべてのAGPグラフィックスカードが動くわけではないなど、Intel製チップセットに比べ、見劣りする点があることは否めない。もちろん、こうした問題のいくつかは、チップセットの問題ではなく、特定のマザーボード固有の問題である可能性もある。だが、チップセットベンダであるVIAのWebサイトの情報、さらにはAGPドライバが頻繁に更新されていることを思えば、大半の責任がチップセットにあるものと考えられる。また、頻繁な更新は、頻繁に更新せざるを得ないということであり、それだけ動作が不安定なことを意味する。


■互換ベンダの宿命

 そもそもAGPは、Intelの規格である。たとえばPCIはIntelから生まれたものの、現在ではその標準化作業はPCI SIGへと移管されており、もはや「Intelの規格」ではない。PCI規格はPCI SIGから発行される。それに対しAGPは、AGP Implementors Forumといった団体があるものの、その役目は実製品レベルでの互換性保証にあり、規格の標準化作業を行なっているのはIntelのみである。Intelが標準を握る以上、グラフィックスチップベンダもIntelのチップセットに合わせて製品開発を行なう。そして、Intelチップセットで動作する以上、もしサードパーティ製チップセットで動作しなかった場合は、サードパーティが何とかしなければならない。それが互換ベンダの宿命というものだ。

 かつてPCに「互換機」が登場した時、IBMの純正機で動作するものが互換機で動作しない場合、それは100%互換機の責任とされた。日本IBMがDOS/Vをリリースした際、サードパーティ製グラフィックスチップでも動作するよう、互換性を高める努力をしたせいか、PC/AT互換機が育つ過程において、IBMが協力したように勘違いしているユーザーもいるかもしれないが、決してそんなことはない。確かにIBMはPCからPC/ATまで、回路図等を公開したが、別に互換機を育成しようと思ってのことではない(互換機を育成するためのオープン路線ではなかった)。逆に、EGAやVGAといったグラフィックスに関しては、非公開のレジスタが存在したほどだ。互換機の黎明期とDOS/Vでは、時代が違うのである。

 それを思えば、規格を公開し、Implementors Forumを事実上主催するIntelは、良くやっている方ではないか。AGP Implementors ForumのイベントであるPlug Festa(実際にベンダが製品を持ち寄って、相互動作確認するイベント)には、VIAやALiなどチップセットのサードパーティも参加している。サードパーティには、互換性について一層の努力が求められよう。


■チップセットにグラフィックス機能を統合するもうひとつの利点

 しかし、かつてのPC/ATの時代に比べ、現在のPCは格段に高速化している。タイミングマージンも小さく、互換チップを開発することはますます困難になっている。しかもIntelは、今後もAGP 4Xモードをはじめ、チップセット関連技術の高速化を推し進めていくことは明らかだ。果たして、サードパーティはIntelにキャッチアップしていけるのか、ここ1~2年が勝負になるかもしれない。

 以上を踏まえると、最近のニュースに別の見方をすることが可能になる。たとえばVIAは、MVP3にグラフィックス機能を統合したMVP4を発表した。同様な製品は、SiSからもSiS530として発表されている。これらの狙いを素直に考えれば、Socket 7プロセッサを用いて、IntelのWhitney(i740相当のグラフィックス機能を統合したBasic PC向けのチップセット)とCeleronの組合せに対抗することであろう。だが、AGPグラフィックスをチップセットに取り込むことで、互換性が問題になりがちなAGPソケットを用意せずに済む、という利点も考えられるのである。


□VIA Technologiesホームページ
http://www.via.com.tw/
□Apollo MVP4製品情報
http://www.via.com.tw/mvp4prod.htm
□AOpenホームページ
http://www.aopen.com.tw/
□AX59Pro製品情報
http://www.aopen.com.tw/products/mb/ax59pro.htm
[Text by 元麻布春男]


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