本格派デジタルカメラを参考出品

山田久美夫のソニー メモリースティック発表会レポート

メモリースティック
'98年7月30日 発表会開催

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 コンパクトフラッシュ、スマートメディアに続く、第三のメモリカードとして注目されるソニーの新型メモリカード「メモリースティック」が先だって正式発表された。このメモリースティックは以前から存在自体は公表されており、すでに数社が採用を表明していたもが、細かな仕様は発表されていなかった。
 それが今回、メモリースティックが利用できる新型ビデオカメラとともに発表された。さらに、ズームレンズ搭載の本格派デジタルスチルカメラも参考出品されており、メモリースティックを中心とした同社の新しい展開を表明した発表会となった。

●キーワードは“つなげる”

ビデオ  この「メモリースティック」はそもそも、ソニー内部のバーチャルカンパニーであるVAIOセンター(期限付きのバーチャルセンターで、1999年12月31日に解散)で開発されたもの。
 開発時のキーワードは“つなげる”であり、各バーチャルカンパニーの商品同士をつなげる媒体として開発されたという。さらに、同社の中ではメモリースティックを、テープメディア、ディスクメディアに続く、シリコンメディアとして位置づけていると説明している。

 この“つなげる”というキーワードだが、残念ながら現時点では、具体的な製品はない。だが、発表会でのプロモーションビデオでは、「デジタルカメラで撮影し、メモリースティック対応の電話で送る」、「旅の記録をメモリースティック対応のカーナビと連係させ、ビデオの画像といっしょに保存する」、「メモリースティック対応のボイスレコーダーで記録し、ボイスメールとしてPC経由で送り、自動的に文字変換する」などといった例が紹介された。メモリースティックを利用することで、静止画、動画、音声、テキストといったあらゆる情報をデジタルデータに一元化し、機器間で有効に利用可能にするという、将来的なビジョンが明確に描かれている。

 また、その構想には音楽などの著作物に対するプロテクトを基本設計に盛り込むことで現在の音楽CDのようなメディアとしての使い方も含まれている。今回の製品には、このコピープロテクション機能は採用されておらず、将来の大容量タイプに搭載されるという。

 現在、メモリースティックには、アイワ、オリンパス、カシオ、三洋、シャープ、富士通が協賛しており、発表会では、「2~3年後には、MSといえば、マイクロソフトではなくメモリースティックといわれるようになりたい」という豊富を語っていた。

発表会で上映されたプロモーションビデオ

ビデオ1 ビデオ2 ビデオ3
ビデオ4 ビデオ5

●一般ユーザーを強く意識したメモリースティック

ビデオ2
背面に書き込み禁止の
スイッチが設けられている
 メモリースティックはいわゆるメモリカードの一種といえる。詳細な仕様などは編集部によるレポートに譲るが、いずれにしても、従来からの「コンパクトフラッシュ」や「スマートメディア」、「ミニチュアカード」などと比べ、一般ユーザーを強く意識したものに仕上がっている点が注目される。
 実際に現物を手に取ってみた印象としては、CFカードとスマートメディアの中間的な感じで、“スティック”という語感から想像していたものよりはやや大きめだった。色は写真でわかるように、VAIOのイメージカラーである薄手のバイオレット。

ビデオ2
接続端子には手で触れない
ように工夫がされている
 構造自体は比較的シンプルなものだが、10ピンのコネクタになっている接点部に直接指などが触れないように工夫してあったり、不用意にデータを消去しないようなプロテクト機能もあるなど、メモリーカードに対する知識があまりない人でも安心して使えるように考えられている。

 今回発表されたものは、容量が4MBと8MBのものだが、現時点では32MBタイプまでは予定に入っているという。また、将来的にはより大容量のものになる可能性もあり、それを見越して、独自のシリアルプロトコルを採用している。これにより将来にわたる互換性を確保している。このあたりは、同じ新規格のメディアであっても、規格がコロコロ変わっているスマートメディアと大きく異なる点といえる。
 なお、今回はPCカードアダプタとのキットも発売されており、このアダプタを介すことで、PCMCIA Type2のATAカードとして扱える。

PCカードアダプタ メモリースティックリーダ
PCカードアダプタ
メモリースティックリーダ

●5倍ズーム付き本格派デジタルカメラを参考出品

参考出品のデジタルカメラ  さて、メモリースティックといっても、それに対応した製品が登場しないことには、絵に書いた餅。実際に今回の発表会では、メモリースティックを記録媒体に使って静止画記録ができる3CCDを採用したデジタルビデオカメラが発表された。だが、メモリースティック対応といっても、実際にはPCMCIA変換アダプターと組み合わせて利用するもの。つまり、PCMCIA Type2のATAカードなら、なんでも使えるわけで、メモリースティック専用機ではない。

 一方、今回の発表会で気になったのが、参考出品された新型デジタルスチルカメラだ。これはハイクラスのアマチュア層をターゲットに新開発したという、かなりの意欲作だと思われる。とはいっても、参考出品だけに、詳しいスペックについては、一切ノーコメントだった。

 もっとも、この手の参考出品モノの場合、完全なモックアップ状態で、アクリル越しに見るだけというケースが多い。今回も最初は「触れてはいけないのかなあ~」と思って、外観写真を撮っていると「どうぞ、手にとってご覧になってください」といわれ、少々ビックリ。
 しかも、手にしてみると、単なるモックではなく、ファインダの光学系までシッカリと作られている動作品に近いレベルのもの。感覚的には、正式発表までさほど時間がかからないレベルのものという感じだ。
 もちろん、正式名や型番なども公開されておらず、ボディー側面には型番のインスタントレタリングを削った形跡もあった。

参考出品のデジタルカメラ 参考出品のデジタルカメラ 参考出品のデジタルカメラ
PCMCIA Type2の
スロットを備える
いっけん交換式に見えるが
交換できないレンズ
ボディ側面には諸機能を
呼び出せるダイアルがある

 さて、今回の出展で外見上分かる範囲のことをまとめると下記のようになる。

 まず、デザインは写真で分かるように、どことなく「オリンパス C-1400L」を連想させるようなスタイル。もちろん、ソニーのオリジナル設計で、サイズはC-1400Lよりも大きめで、どちらかというと発売が延期された「キヤノン PowerShot Pro70」に近いもの。また、試作レベルとはいえ、質感もよく、高級感もある。もっとも、業務用モデルを手掛けたスタッフが開発しただけに、パーソナル機として見ると、あまりに実用本意で色気がない点が気になった。

 レンズは一見交換式に見えるが固定式で、光学式の5倍ズーム(5.2~26mm)を搭載。ズームも電動式ではなく手動式だ。ピントはオートフォーカスで、マニュアルフォーカスも可能。ファインダは光学式で、ビューファインダー式ではなく、撮影レンズを通過した光をピント版上で確認する一眼レフ的な形式を採用しているようだ。
 また、背面には2.5インチ程度の液晶モニタが装備されているが、これは再生用なのか、ファインダとしても利用できるかどうかは不明。

 CCDのサイズや画素数は未公開。だが、わざわざメモリースティック専用機ではなく、PCMCIA Type2カードを採用しているところを見ると、結構な高画素モデルだと思われる。まったくの予想だが、おそらくは145万画素から200万画素クラスのCCDを搭載していると思われる。
 また、CCDのサイズはワイド側が5.2mmということから推察すると、2/3インチではなく、1/2インチか、1/3インチタイプということが予想される。もっとも、レンズが異様に大きいことを考えると、レンズ設計上、かなりの高解像度を実現している可能性もあり、比較的小さなCCDを採用している可能性も高い。

 機能はかなり充実しているようで、ボディ側面のダイアルで諸機能を簡単に呼び出せるようだ。ダイアル上にはストロボモードのほか、「AE」(露出モード)、「WB」(ホワイトバランス)、「DRIVE」(1コマ撮りと連写の切り替え?)、「QLTY」(JPEG圧縮率?)、「SIZE」(画像サイズ)、「ISO」(実効感度切り替え?)、「USER」(ユーザー設定?)といった文字があり、これらの点を見ても、単なるフルオート志向ではなく、かなり本格的な撮影に対応できるモデルであることが推察される。
 このほかにも、シャッターボタン付近には、露出補正とスポット測光(?)専用ボタンがあり、ファインダー部には視度調整機能があるなど、フィルム式の高級機を思わせる仕上がりだ。

 このように、今回参考出品されたものは、かなり本格的なモデルであり、正式発表される時期もさほど遠くないものと思われる。もしかすると、9月中旬にドイツで開催される世界最大のカメラショーである「フォトキナ」で公開される可能性もある。
 もともと同社は、アナログ記録式のマビカを発表した時点から、スチルカメラ市場に参入したいという意志がある。それだけに、本機の登場は、デジタルカメラ時代の到来で、同社が本格的にスチルカメラ市場に参入する意志を明確にアピールしたものとしても注目される。
 なにしろ、ソニーは今回のメモリースティックの発表により、メモリカードや各種記録媒体から、カメラ、PC、画像処理システム、プリンタまでのすべてを網羅できる体制となったわけで、今後の展開次第では、かなりドラスティックな動きを見せる可能性もある。ライバルメーカーにとっては戦々恐々といった感じだろうが、ユーザーにとっては大いに魅力的な展開になりそうだ。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/index-j.html
□関連記事
【7月30日】「ソニー、新記憶媒体『メモリースティック』」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/980730/sony1.htm

('98年8月5日)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp