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「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」は、同名のPlayStaion用ゲームのWindows移植版だ。PlayStation版ではまず「トゥルー・ラブストーリー」が'96年12月に発売され、その後イベントや新しいフィーチャーが追加され、細かいバランスなどの変更を行なった完成版ともいえる「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」が登場した。
恋愛シミュレーションゲームではコナミの「ときめきメモリアル」が有名だが、プレーヤー自身が成長する「ときメモ」に対して、この「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」は、女の子とのコミニュケーションに的を絞った、現実的な恋愛物語を描き出している秀作だ。
主人公は父親が転勤になるため、1カ月後に転校しなくてはならなくなってしまう。突然のことに思いをめぐらせていると、妹のみさきが部屋にやってきて、「転校の話は学校では言わないでおこう」といわれる。転校の秘密を抱いたまま、転校までの間の思い出作りにちょっと積極的になってみようかな、と思いつつ登校するところから始まる。君は1カ月の間にほんとうの愛の物語に出会えるだろうか。
●シンプルで飽きのこないゲームシステム
目当ての彼女がどこにいるかを推理して、どこに行くかを決定する |
下校時の会話モード。単刀直入に恋愛の話題をふっても女の子は逃げちゃうだけ。なかなか奥が深いのだ。 |
そしてもっとも特徴的なのが下校時の会話システムだ。下校するときに会った女の子にいっしょに帰らないか、と誘うことができ、相手がOKしてくれるとさまざまな会話が楽しめる。学校のこと、趣味のこと、ゲーム内でのできごと、そして恋愛といった選択肢を選ぶことができ、その反応によって女の子との親密さも変わっていく。また、下校時の会話で休日にデートに誘うこともでき、OKならば指定の日にデートイベントが起こり、楽しい休日が過ごせるわけだ。
最終的には転校する日までに好意度を高めて、女の子との告白に持っていけばいいわけだが、成功したとしても主人公は転校しなくてはならないため、ちょっとせつないエンディングを迎えることになる。
女の子の状態が一覧できる「みさきのラブ(実際はハートマーク)チェック」や、下校時会話イベントでの相手の気持ちのゲージ表示など、パラメータを特に隠していないのも面白い。難易度も低い方で、狙った女の子とうまくいかない場合のほうが少ないだろう。クリアまでにかかる時間も短く、その分ストーリーを集中的に楽しめるし、いろいろなキャラクター狙いで何度もやってみよう、という気にさせてくれる。
●魅力的な登場人物たち
妹のみさき。今回はみさきを口説くことも可能 |
こういったゲームでは、キャラクターにいろいろな要素でディフォルメがつけられることがしばしばだが、外見上のグラフィックのみならず、性格や口調なども、ごく一般的で等身大の女の子像を作り上げており、それでいてそれぞれのキャラクターがきちんと描き分けられている点は高く評価したい。もちろんそれはシナリオがよくできているからであり、キャラクターの口調の変化や微妙な反応、そしてイベント作りのうまさ、隠れたもうひとつのストーリーを随所に織り込む巧みさに、プレーヤーはゲームにぐいぐい引き込まれていってしまうだろう。
起用されている声優も豪華だ。ゲームの主題歌「きみとぼくのうた」も歌っている菊池志穂、藤野かほる、豊島真千子、久川綾、丹下桜、横山智佐、池澤春菜、緒方恵美、吉田愛理、西村ちなみ、さらに脇役には井上喜久子、石川英郎、石田彰と、そのスジの人間にはこたえられないキャスティングで、これがほぼすべての場面できちんとしゃべることを考えると、それだけでつい買ってしまう人もいるのではないだろうか。
幼なじみののぞみ。なぜだか判らないけど“幼なじみ”と言う関係にはグッと来ますね | 元気娘の後藤さん。なかなか色っぽい展開にならないのがなんとももどかしい…… | 美人の先生。年上が好きな方はどうぞ。と言っても若いけど。 | メガネをかけている女の子もそれだけでポイントが高い……と言う人も多い | 妹の友達の南弥生ちゃん。とにかくかわいらしい仕草が特徴。 |
Windows版はコンシューマー版の完全移植であり、イベントなどの変更はない。Windowsになったことで、背景のグラフィックが65,536色となった。また、下校時のイベントで選択肢がウィンドウの外に表示されるようになり、画面全体を見ることができるようになった点以外ではまったく同じといっていい。
ただ、完全移植ということで、Windowsアプリケーションらしさがないのが少々残念だ。ゲーム中にはいろいろとボタンを選択する場面があるわけだが、マウスを使ってもカーソルは現れず、キーボードで選択するのと同様の選択ボタンの移動が行なわれるのはかなり面倒くさい。
推奨されているハードウェア環境は上記のようになっているが、実際にはもう少しハイスペックなマシンを使ったほうがいいだろう。今回使用した環境では、ベータ版ではあるが、選択にもたついたり下校時会話で台詞とアニメーションが合わないことがあった。
パッケージには以前発売されたWindows用のアクセサリ集「トゥルー・ラブストーリー アクセサリーボックス Vol.1」にひき続いて、「アクセサリーボックス Vol.2」が収録されており、壁紙、時計、計算機、ゲーム画面を使ったスクリーンセーバーなど、いろいろと楽しめるうれしい構成になっている。
(C)1998 ASCII Corp./Bits Laboratory
ソフトウェア開発部第一制作部部長 プロデューサー 杉山一郎 氏 |
■Windows版の制作には本当に苦労したんだ(苦笑)
流行に敏感な天野さん。でも別れの時に流した涙を見ると、女の子らしい一面もあるのかな? |
Windows版の開発にあたって、どのような苦労がありましたか?
杉山氏 苦労したのはPlayStationでは簡単にできるグラフィックのフェードインやフェードアウトといったグラフィック関連の処理や、目パチ口パチのアニメーション、そしてリップシンク(口パクにセリフをあわせること)ですね。特にリップシンクには気を使いました。Windowsはサウンドを鳴らしたら鳴らしっぱなしで、いつ終わったかはわからないですからね。これは開発にサウンド処理の得意な人間がいたので、なんとか解決しました。なにしろWindowsでの開発は初めてだったので、DirectXがらみでも想定した動作をしなかったり、大量のデータ転送をするとまったくパフォーマンスが追いつかなかったりと、相当苦労しました。発売が予定より延びたのはこのあたりのグラフィックスや、描画処理の簡略化、計算ルーチンの見直しといった速度のチューンアップに費やされたんです。
最近は数多くの恋愛シミュレーションゲームが登場していますが、参考にしたものなどはありますか?
杉山氏 トゥルー・ラブ・ストーリーの製作が始まった当時は、まだPC Engeneでときめきメモリアルがあったくらいで、いまほど恋愛シミュレーションは多くなかったんです。もともと恋愛ものの構想はあったので、今のうちにこのジャンルを開拓しておかなければならないなと考えていた時期に、開発のBits Laboratoryさんと会いまして、じゃあやってみよう、ということになったんです。もちろんほかのゲームも見ましたが、やはりほかとは違ったことを、新しいことをやりたいですから、参考にしたものはありません。似ないように参考にしたわけですね。
■転校のシステムは自分の経験が色濃く出ていますね
これが「みさきチェック」。常にチェックして彼女たちの心の動きを把握しておこう |
ゲームシステムの作成で、心がけたことはありますか?
杉山氏 ゲームの進行が“作業”の繰り返しとなって、つまらなくなってしまわないようにしました。主人公のパラメータを固定にして、数値的なものは意識させない。もちろん内部で数値はあるんですが、ゲームに必要になるものはゲージやみさきチェックで見ることができますし、毎日の生活で選択する場所でも、キャラクター情報で彼女たちがよく行く場所はわかるようになっています。あとはやはり下校時会話システムですね。ユーザーの彼女たちへのアプローチによって、女の子の反応が違うので、楽しめるようになっています。手軽にプレイできて、何度も楽しめるようなシステムに仕上がっていると思います。
次回作がすでにアナウンスされていますが、どのようなシステムになるのでしょう?
杉山氏 PlayStation版の「トゥルー・ラブストーリー2」の開発はかなり進んでいて、年末には発売される予定です。今回はWindowsへの移植も考慮した開発をしているのですが、Windowsへの移植はできればもうやりたくないですね(笑)。今回のパッケージのアンケートで、ユーザーの要望が高ければもちろん考えますが。ちなみにトゥルー・ラブストーリー2は3枚組みにボリュームアップしています。それぞれのディスクが1学期・2学期・3学期になっていて、それぞれの学期で完結するようになっているんです。シナリオの量は前作に比べて約4倍になっています。
今回発売された「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~ +アクセサリBOX Vol.2」は、ゲーム自体も優れたものだが、おまけもたくさん付いてきてかなりお得なパッケージになっている。ファンはもう一度このパソコン版で復習して、年末に予定されている「トゥルー・ラブストーリー2」を楽しみにしてはどうだろうか?
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