★ ゲームソフトインプレッション ★

手軽で何度でも楽しめる恋愛シミュレーションゲーム
トゥルー・ラブストーリー
~Remember My Heart~

+アクセサリBOX Vol.2
& 制作者スペシャルインタビュー付き

画面写真1

  • ジャンル:恋愛シミュレーション
  • 発売メーカー:株式会社アスキー
  • 標準価格:8,800円<>
  • 対応OS:Windows 95/98
  • 発売日:発売中
 
【ゲームの内容】
     突然転校することになった主人公が、転校までの1ヶ月の間に女の子に告白してもらうのが目的。独特の会話を軸にしたゲームシステムが、細やかなストーリーを紡ぎ出す。出会っていく女の子との会話を通して、少しずつ近づいていく心と、別れの時。ちょっとせつない本格的ラブストーリーを、自然なグラフィックと豪華声優のフルボイスで送る、本格恋愛シミュレーションゲーム。
【動作環境】
  • CPU:Pentium 133MHz以上(166MHz以上推奨)
  • RAM:16MB以上
  • HDD:1MB以上(最小インストール時)
  • CD-ROMドライブ:倍速以上のCD-ROMドライブ(4倍速以上推奨)
  • 3Dグラフィックカード:DirectDrawに対応した2MB以上のメモリを持つビデオカード
  • 3Dサウンドカード:Windows 95対応のサウンドカード(GM音源に対応したMIDI音源推奨)

アスキーのホームページ
http://www.ascii.co.jp/
アスキーのゲーム製品に関するページ
http://www.ascii.co.jp/ascii/et/main.html
製品情報
http://www.ascii.co.jp/ascii/et/catalog/win/tlsr95.html
「トゥルー・ラブストーリー」のホームページ
http://www.ascii.co.jp/ascii/et/tlove/tlshome.html
ビッツラボラトリーのホームページ
http://www.highway.or.jp/bitslabo/index.htm


 「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」は、同名のPlayStaion用ゲームのWindows移植版だ。PlayStation版ではまず「トゥルー・ラブストーリー」が'96年12月に発売され、その後イベントや新しいフィーチャーが追加され、細かいバランスなどの変更を行なった完成版ともいえる「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」が登場した。
 恋愛シミュレーションゲームではコナミの「ときめきメモリアル」が有名だが、プレーヤー自身が成長する「ときメモ」に対して、この「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」は、女の子とのコミニュケーションに的を絞った、現実的な恋愛物語を描き出している秀作だ。

 主人公は父親が転勤になるため、1カ月後に転校しなくてはならなくなってしまう。突然のことに思いをめぐらせていると、妹のみさきが部屋にやってきて、「転校の話は学校では言わないでおこう」といわれる。転校の秘密を抱いたまま、転校までの間の思い出作りにちょっと積極的になってみようかな、と思いつつ登校するところから始まる。君は1カ月の間にほんとうの愛の物語に出会えるだろうか。


●シンプルで飽きのこないゲームシステム

画面写真2
目当ての彼女がどこにいるかを推理して、どこに行くかを決定する
画面写真3
下校時の会話モード。単刀直入に恋愛の話題をふっても女の子は逃げちゃうだけ。なかなか奥が深いのだ。
 このゲームの特徴のひとつは、恋愛シミュレーションにありがちな、自分を磨いていくという「育成システム」を採用していない点だ。主人公のパラメーターはゲーム開始時に「勉強」「運動」「センス」「性格」「態度」をプレーヤーが5段階で指定し、これが変化することはない。このパラメーターは女の子側の好意度やイベントに微妙に関係してくるが、とくに重要というわけではない。
 プレイする期間は転校までの1カ月だが、時期が春夏秋冬の中から選べるようになっていて、季節ごとに違った女の子がひとりずつ登場したり、季節限定のイベントなども用意されていて、単調になりがちな繰り返しのプレイにもいろいろな新鮮さを見せてくれる。
 主人公の行動は平日では学校での「休み時間」、「昼休み」、「放課後」、「寄り道」(土曜日は昼休みが放課後に変わる)の4つの時間帯に学校内や学校周辺で立ち寄る場所を選び、日曜日も「午前」、「午後」、「夕方」に行く場所を選ぶだけの簡単なもの。選択した場所で女の子と会い、会話することによって、その女の子の「あこがれ度」や「お友達度」という好意度が上昇していく。これによってさまざまなイベントが起こるのだ。

 そしてもっとも特徴的なのが下校時の会話システムだ。下校するときに会った女の子にいっしょに帰らないか、と誘うことができ、相手がOKしてくれるとさまざまな会話が楽しめる。学校のこと、趣味のこと、ゲーム内でのできごと、そして恋愛といった選択肢を選ぶことができ、その反応によって女の子との親密さも変わっていく。また、下校時の会話で休日にデートに誘うこともでき、OKならば指定の日にデートイベントが起こり、楽しい休日が過ごせるわけだ。
 最終的には転校する日までに好意度を高めて、女の子との告白に持っていけばいいわけだが、成功したとしても主人公は転校しなくてはならないため、ちょっとせつないエンディングを迎えることになる。
 女の子の状態が一覧できる「みさきのラブ(実際はハートマーク)チェック」や、下校時会話イベントでの相手の気持ちのゲージ表示など、パラメータを特に隠していないのも面白い。難易度も低い方で、狙った女の子とうまくいかない場合のほうが少ないだろう。クリアまでにかかる時間も短く、その分ストーリーを集中的に楽しめるし、いろいろなキャラクター狙いで何度もやってみよう、という気にさせてくれる。


●魅力的な登場人物たち

画面写真4
妹のみさき。今回はみさきを口説くことも可能
 登場する女の子たちは、妹の「みさき」も含めれば10人。学年のあこがれの女の子、いわゆるヒロインの「桂木綾音」、主人公の幼なじみ「広瀬のぞみ」、いつもジャージの運動少女「後藤育美」、ちょっと内気で読書が好きな「本多智子」、みさきの友達で占い好きの「南弥生」の6人はレギュラーメンバー。春にはちょっとキツイ風紀委員の「春日千春」、夏にはノリノリ行動派の「天野みどり」、秋にはりりしい上級生の「草薙忍」、そして冬には室内プールを借りに来る他校の生徒「水谷由梨香」が登場する。

 こういったゲームでは、キャラクターにいろいろな要素でディフォルメがつけられることがしばしばだが、外見上のグラフィックのみならず、性格や口調なども、ごく一般的で等身大の女の子像を作り上げており、それでいてそれぞれのキャラクターがきちんと描き分けられている点は高く評価したい。もちろんそれはシナリオがよくできているからであり、キャラクターの口調の変化や微妙な反応、そしてイベント作りのうまさ、隠れたもうひとつのストーリーを随所に織り込む巧みさに、プレーヤーはゲームにぐいぐい引き込まれていってしまうだろう。

 起用されている声優も豪華だ。ゲームの主題歌「きみとぼくのうた」も歌っている菊池志穂、藤野かほる、豊島真千子、久川綾、丹下桜、横山智佐、池澤春菜、緒方恵美、吉田愛理、西村ちなみ、さらに脇役には井上喜久子、石川英郎、石田彰と、そのスジの人間にはこたえられないキャスティングで、これがほぼすべての場面できちんとしゃべることを考えると、それだけでつい買ってしまう人もいるのではないだろうか。

画面写真5 画面写真6 画面写真7 画面写真8 画面写真9
幼なじみののぞみ。なぜだか判らないけど“幼なじみ”と言う関係にはグッと来ますね 元気娘の後藤さん。なかなか色っぽい展開にならないのがなんとももどかしい…… 美人の先生。年上が好きな方はどうぞ。と言っても若いけど。 メガネをかけている女の子もそれだけでポイントが高い……と言う人も多い 妹の友達の南弥生ちゃん。とにかくかわいらしい仕草が特徴。

●気になる移植の出来

 Windows版はコンシューマー版の完全移植であり、イベントなどの変更はない。Windowsになったことで、背景のグラフィックが65,536色となった。また、下校時のイベントで選択肢がウィンドウの外に表示されるようになり、画面全体を見ることができるようになった点以外ではまったく同じといっていい。
 ただ、完全移植ということで、Windowsアプリケーションらしさがないのが少々残念だ。ゲーム中にはいろいろとボタンを選択する場面があるわけだが、マウスを使ってもカーソルは現れず、キーボードで選択するのと同様の選択ボタンの移動が行なわれるのはかなり面倒くさい。
 推奨されているハードウェア環境は上記のようになっているが、実際にはもう少しハイスペックなマシンを使ったほうがいいだろう。今回使用した環境では、ベータ版ではあるが、選択にもたついたり下校時会話で台詞とアニメーションが合わないことがあった。

 パッケージには以前発売されたWindows用のアクセサリ集「トゥルー・ラブストーリー アクセサリーボックス Vol.1」にひき続いて、「アクセサリーボックス Vol.2」が収録されており、壁紙、時計、計算機、ゲーム画面を使ったスクリーンセーバーなど、いろいろと楽しめるうれしい構成になっている。

(C)1998 ASCII Corp./Bits Laboratory

【筆者紹介】 【総プレイ時間・ハード環境】



「トゥルー・ラブストーリー」
制作者スペシャルインタビュー

「発想をかえて、同じものは作らない」

杉山氏
株式会社アスキー
ソフトウェア開発部第一制作部部長
プロデューサー 杉山一郎 氏

 「トゥルー・ラブストーリー」シリーズ第1作目から常に作品全体を統括し、シナリオなども手がけられた、プロデューサー杉山一郎氏に作品の内容からWindows版への移植の苦労などを伺った。

 
■Windows版の制作には本当に苦労したんだ(苦笑)

画面写真10
流行に敏感な天野さん。でも別れの時に流した涙を見ると、女の子らしい一面もあるのかな?
 Windows版を製作することになったきっかけは?
杉山氏 Windows版は、実は最初のPlayStation版の後にイベントなどを追加して新しいパッケージとして発売する予定だったんですよ。ただ、開発に時間かかっているうちに「じゃあPlayStation版を先に出してしまおう」ということになで「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~」が出てしまった。そういったこともあって結果的にWindows版はPlayStationの移植ということになってしまったんです。逆に遅れたおかげでWindows 98での動作テストまで行なうことができました。

 Windows版の開発にあたって、どのような苦労がありましたか?
杉山氏 苦労したのはPlayStationでは簡単にできるグラフィックのフェードインやフェードアウトといったグラフィック関連の処理や、目パチ口パチのアニメーション、そしてリップシンク(口パクにセリフをあわせること)ですね。特にリップシンクには気を使いました。Windowsはサウンドを鳴らしたら鳴らしっぱなしで、いつ終わったかはわからないですからね。これは開発にサウンド処理の得意な人間がいたので、なんとか解決しました。なにしろWindowsでの開発は初めてだったので、DirectXがらみでも想定した動作をしなかったり、大量のデータ転送をするとまったくパフォーマンスが追いつかなかったりと、相当苦労しました。発売が予定より延びたのはこのあたりのグラフィックスや、描画処理の簡略化、計算ルーチンの見直しといった速度のチューンアップに費やされたんです。

最近は数多くの恋愛シミュレーションゲームが登場していますが、参考にしたものなどはありますか?
杉山氏 トゥルー・ラブ・ストーリーの製作が始まった当時は、まだPC Engeneでときめきメモリアルがあったくらいで、いまほど恋愛シミュレーションは多くなかったんです。もともと恋愛ものの構想はあったので、今のうちにこのジャンルを開拓しておかなければならないなと考えていた時期に、開発のBits Laboratoryさんと会いまして、じゃあやってみよう、ということになったんです。もちろんほかのゲームも見ましたが、やはりほかとは違ったことを、新しいことをやりたいですから、参考にしたものはありません。似ないように参考にしたわけですね。

■転校のシステムは自分の経験が色濃く出ていますね

画面写真11
これが「みさきチェック」。常にチェックして彼女たちの心の動きを把握しておこう
 主人公が最後に転校するというアイディアがこのゲームの特徴を決定づけていると思います。このアイディアはどこから得られたのですか?
杉山氏 最初にゲームについて企画しているときに、漠然と学校を舞台にしたゲームを考えていたんですが、期間を1カ月に限定しようという提案があって、そこから最終的に“転校する”というシナリオになったんです。自分が学生のころ5回くらい転校したり、遠距離恋愛なんかもしていたので、シナリオやエンディングの手紙などのイベント作成で、これらのいろいろな経験が生かされているんじゃないかと思います。こういった“せつなさ”が受けたようで、内部ではデバッグしながら泣いてた人もいたぐらいで(笑)、これはいけるんじゃないか、と思いました。

 ゲームシステムの作成で、心がけたことはありますか?
杉山氏 ゲームの進行が“作業”の繰り返しとなって、つまらなくなってしまわないようにしました。主人公のパラメータを固定にして、数値的なものは意識させない。もちろん内部で数値はあるんですが、ゲームに必要になるものはゲージやみさきチェックで見ることができますし、毎日の生活で選択する場所でも、キャラクター情報で彼女たちがよく行く場所はわかるようになっています。あとはやはり下校時会話システムですね。ユーザーの彼女たちへのアプローチによって、女の子の反応が違うので、楽しめるようになっています。手軽にプレイできて、何度も楽しめるようなシステムに仕上がっていると思います。

 次回作がすでにアナウンスされていますが、どのようなシステムになるのでしょう?
杉山氏 PlayStation版の「トゥルー・ラブストーリー2」の開発はかなり進んでいて、年末には発売される予定です。今回はWindowsへの移植も考慮した開発をしているのですが、Windowsへの移植はできればもうやりたくないですね(笑)。今回のパッケージのアンケートで、ユーザーの要望が高ければもちろん考えますが。ちなみにトゥルー・ラブストーリー2は3枚組みにボリュームアップしています。それぞれのディスクが1学期・2学期・3学期になっていて、それぞれの学期で完結するようになっているんです。シナリオの量は前作に比べて約4倍になっています。

 今回発売された「トゥルー・ラブストーリー ~Remember My Heart~ +アクセサリBOX Vol.2」は、ゲーム自体も優れたものだが、おまけもたくさん付いてきてかなりお得なパッケージになっている。ファンはもう一度このパソコン版で復習して、年末に予定されている「トゥルー・ラブストーリー2」を楽しみにしてはどうだろうか?


 インプレッションや記事に関するご意見・ご感想、とりあげて欲しいゲームソフトや企画などは、pc-watch-info@impress.co.jpまでお寄せください。

ゲームソフトインプレッション バックナンバー


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp