【ソフト】

★ ゲームソフトインプレッション ★

圧倒的なデータ量、膨大なリサーチ
それがセガの「アドバンスド大戦略98」だ!!

アドバンスド大戦略98 Storm Over Europe
制作者スペシャルインタビュー

ロゴ

 
【ゲームの内容】
     第2次世界大戦下のヨーロッパを舞台とし、史実を忠実に再現したウォーシミュレーション。膨大なデータ量を誇る一方で、現実には敗戦国となったドイツ軍でゲームを進め、勝ち抜き、歴史を塗り替えることも可能。
【動作環境】
  • CPU:Pentium 90MHz以上(Pentium 166MHz以上推奨)
  • RAM:16MB以上(32MB以上推奨)
  • HDD:100MB
  • 解像度、色数:640×480ドット、256色以上表示可能なディスプレイ(推奨:1,024×768ドット、16 bit color以上)

セガ・エンタープライゼスのホームページ
http://www.sega.co.jp/
セガPCソフト総合ページ
http://www.sega.co.jp/sega/pc/
製品情報
http://www.sega.co.jp/sega/ad98/ad98.htm
アドバンスド大戦略98アップデート(ver 1.10)
http://www.sega.co.jp/sega/pc/lib/ad98/ad98.htm


 

●世界のシミュレーション界をリードしてきた大戦略シリーズ

 大戦略シリーズといえば、あまりにも有名なシミュレーションゲームの大ヒット作。世界的にもグラフィックを多用したシミュレーションゲームがなかった'85年11月に発売された「現代大戦略」をルーツとするシリーズだ。

 現代大戦略は、プレイヤーは一司令官となって現代の陸・海・空の各部隊を指揮し、最終的には敵の首都を占領するというゲームだった。各部隊を移動→攻撃という手順(フェイズという)で動かし、プレイヤー側がすべて終わるとコンピュータ側が同じように行なっていく(これをターン制という)ゲームシステムを採用しており、そのわかりやすいシステムと当時としては画期的な画面の美しさで、パソコンにおけるウォーシミュレーションゲームの分野を築き上げた。その後「大戦略II」でマウスが使えるようになるなど、こまかな改良が行なわれ、「大戦略III」では、ターン制に変わりコンピュータとプレイヤーが同時にプレーを行なうリアルタイム制の採用など次々と進化していった。4月23日に発売された最新の「大戦略マスターコンバット2」では、キャラクターが成長するRPG的要素が付け加えられ、より広がりを感じさせるウォーシミュレーションゲームとなっている。


ゲーム画面1 ゲーム画面2 ゲーム画面3 ゲーム画面4
キャンペーンモードでのポーランド戦。画面右下からは史実どおりソ連軍(緑色の部隊)が参戦してきている 正確なスケールで描かれた、戦闘画面。でもゲーム中は時間がかかるので戦闘画面をオフにしておくのがベスト。たまにオンにしてみると結構感動する この六角形のマス目をヘクスという。「大戦略98」では、移動や戦闘の際の基本的な単位となるので覚えておこう 「大戦略98」でユニークなのは、この兵器の成長システム。IV号戦車を改良してブルムベーアにすることができる

●セガの考える大戦略とは?

 今回、セガから発売される「アドバンスド大戦略98」(以下「大戦略98」)は、舞台を第二次世界大戦当時のヨーロッパに設定し、ターン制というオーソドックスなシステムを採用したゲームだ。

 この舞台設定と、ターン制を採用したことにより、「大戦略98」はウォーシミュレーションとして凄まじいまでのボリュームを持つゲームになった。
 ひとつには第二次世界大戦という世界史上もっとも技術進化が激しかった歴史をテーマにすることで、ゲームに登場する兵器の数は1,500種類以上。そして参加国は30カ国以上という膨大なデータ量を実現している。また、シミュレーションゲームでいちばん大事なコンピュータの思考ルーチンもよく仕上げられており、コンピュータ側のおかしな動きもほとんどなく、激しくもシビアで熱い戦いが展開される。

 セガの考える大戦略とは、圧倒的なデータ量で実感満点に肉づけし、鍛えに鍛え抜かれた思考ルーチンでプレイヤーに挑んでくるウォーシミュレーションとなっていた。この「大戦略98」に勝ち抜くためには、プレイヤーが戦略的な目で戦況を判断し、細心かつ大胆なプレーが要求されるのだ。以下は、ほんとうにシミュレーションが好きな人のために、細かくこのゲームを検証していこう。

●プレーモードはふたとおり

ゲーム画面16
シナリオ名をみるだけで圧倒される。ノルウェー戦を扱った「ヴェーゼル演習作戦」までも入っていて、ビックリ
 この「大戦略98」では、ふたつのプレーモードが設定されている。ひとつめは実際の史実に沿った「シナリオプレイ」。といってもこれがハンパじゃなく60種類以上もある。

 '40年5月10日未明に始まったドイツ軍のフランス侵攻を扱った「ダンケルクへの突進」、'41年6月22日に始まる独ソ戦を扱った「バルバロッサ作戦」(北方、中央、南方と3つもある)、もちろんあのノルマンディ上陸作戦を扱った「史上最大の作戦」も用意されている。
 しかし、「大戦略98」のシナリオで驚くべきは、スターリングラード攻防戦を扱った「ヴィンター・シュトゥルム(冬の嵐)作戦」やロンメル将軍が負けたことで有名な「エル・アラメインの戦い」までもが用意されていることだ。しかもそのどれもが史実どおりの部隊編成(注1)に設定されているのには驚くばかり。このため「大戦略98」では歴史のリアルな追体験が可能となっており、フランス戦におけるグデーリアン装甲部隊の電撃戦やノルマンディ戦のパットン第3軍の快進撃などがプレイヤーの戦略によっては再現できるようになっている。
 もちろんその逆も可能で、実際にはドイツ軍が負けた史上最大の戦車戦「ツィタデレ作戦」で勝利することも不可能ではない。

 もうひとつのモードは、プレイヤーがドイツ軍の司令官となって、つぎつぎとミッションをこなし、ヨーロッパを制圧していく「キャンペーンモード」。ドイツ軍同士が青軍と赤軍に分かれた軍事演習から始まり、ポーランド戦を経てヨーロッパ全土を席巻していく。
 このキャンペーンモードではミッション間で部隊を引き継ぐことができ、自分の部隊を育てていくことができるようになっている。また、ミッションの結果によって次のミッションが決まるため、すばやく勝利をおさめればより有利な状況で次のミッションを始められる。最初のうちは、戦争準備を整えていたドイツ軍が勝利しやすいような設定だが、時代が進むにつれてアメリカ軍の参戦やソ連軍の巻き返しもあってヨーロッパを制圧するのは容易なことではない。ただそれだけに史実的状況を反映した、手ごたえのあるモードになっている。


●細部まで作り込まれたリアルなルール

 シミュレーションゲームのリアリティを高める要素として、各種のルールがあげられる。「大戦略98」でもさまざまな実感あふれるルールが設定されており、これを理解することが戦いに勝利するためのポイントだ。

 以上のほかに、工事ルールや防御射撃ルールなどが用意されているので、遊ぶ前にマニュアルによく目を通しておいてほしい。これらすべてのルールは現実をリアルに再現するためのルールなので、なぜこんなルールが設定されているのかを考えながらゲームをすると、よりいっそうこのソフトを楽しめると思う。「大戦略98」は、プレイヤーにとことん挑戦してくるゲームなのだから。


●「大戦略98」で勝利するためには

ゲーム画面16
ついに新兵器としてエントリーされたⅥ号E型(タイガーI型)戦車(注2)。進化系統をみるとIV号H型から派生してきたのが分かる
 いろいろ難しいことを書いてきたが、実は「大戦略98」で勝利するポイントはたったのひとつ。それは、どこかの野球チームみたいだが、スピード&チャージ、つまりドイツ軍が行なった電撃戦の実践あるのみだ。まず、砲兵部隊で敵の前線を叩き、高速に移動できる機甲部隊で敵を蹂躙し、敵がいなくなった都市をハーフトラックで運んできた歩兵ですばやく占領していく。これが基本だ。

 もちろん、敵が多いときにはスツーカなどの急降下爆撃機を使ったり、自国の部隊を空からの攻撃から守るために対空砲を備えたりしなければならないが、目的はいかにすばやく敵の都市を占領するかということだけだ。そのために、どの進路を進んでいけば目的の都市に早く到達できるのか、また効率よく進むことができるのかという戦略的判断が必要になってくる。
 そのために、自分の部隊、敵の部隊、マップ、天候などの膨大な組み合わせの中から、なにがベストなのかを判断していく必要がある。プレイヤーがみごとに電撃戦を成功させたあかつきには、勝利の旗が敵陣に翻っているだろう。健闘を祈る!!


●ウォーシミュレーションゲームの醍醐味

ゲーム画面9
キャンペーンモードで現われたすべての兵器が登録される兵器図鑑。1,500種以上登録できるのは、果たしていつの日か
 ウォーシミュレーションゲームの原点ともいえるのが、将棋や囲碁といえるだろう(将棋の歩兵や飛車をみれば一目瞭然)。将棋や囲碁は数百年の歴史を経て高度に洗練されているのに対して、ウォーシミュレーションはリアリティを追求しているゲームだ。将棋や囲碁に比べてリアルさを追求するがために、判断すべき要素や偶然の入り込むすきまが多く何度でも繰り返し楽しめる。とくにこの「大戦略98」の場合、史実を忠実に反映したシナリオが数多く収録されているので、ぜひ歴史的に負けた側をプレーしてみよう。数にまかせて攻めまくるのではなく、数少ない部隊を細心の注意をはらって配置し、せまりくる大軍に対して自分の部隊の被害を最小限にとどめて勝利する。
 また、レニングラード(現在は、サンクトペテルブルグ)の攻防戦を扱った「攻防900日」やノルマンディ戦を負けたドイツ側から描いた「彼らは来た」などの戦史ものの本を片手に歴史を追体験してみるのもいいだろう。なぜ、歴史はそうだったのか、実際に理解できるかもしれない。

 ただ勝つことだけが目標ではなく、知的興奮と歴史のif(なぜ?)を味あわせてくれる、それがほんもののシミュレーションゲームではないだろうか。セガの「大戦略98」は、本物を感じさせてくれる数少ないシミュレーションゲームだ。


 
★☆★ おまけ ★☆★

ミニミニ兵器図鑑

 第2次世界大戦中、ドイツ軍の主力として活躍したIV号戦車には多くのバリエーションが存在する。写真左から、大戦初期に活躍した75mm短砲身装備のIV号D型、大戦中・後期に活躍した75mm長砲身装備のH型、最終生産型のJ型、IV号の車体に150mm榴弾砲を装備したブルムベーア、20mm4連装の対空砲を装備したヴィルベルヴィント。写真のもの以外にも「大戦略98」では、ほぼすべての種類のIV号バリエーションを「改良」や「進化」によって生産することができる。これも「大戦略98」のひとつの楽しみ方だろう。

戦車1 戦車2 戦車3 戦車4 戦車4
4号D型
→ 4号H型
→ 4号J型
→ ブルムベア
→ 4号対空

[注1]
部隊編成(オーダー・オブ・バトル):ヒストリカルウォーシミュレーションゲームでは、もっとも重要視されている項目。史実どおりの部隊編成を実現するためには、膨大な資料の見極めなどに多くの時間がかかる。60以上のシナリオでこれを実現したセガの努力にはあぜんとします。はい。

[注2]
VI号E型(タイガーI型)戦車:泣く子もだまるドイツ軍の花形タイガーI戦車。88mm砲の破壊力は連合国にパニックを巻き起こした。最後のドイツ戦車らしい戦車といえる


制作者スペシャルインタビュー
制作者インタビューでは制作の背景から、戦闘シーンで使用された精密模型の公開など奥深い話題をお届けします。

参考文献:
「第二次世界大戦通史」加登川 幸太郎監修 原書房刊
「GERMAN TANKS 日本語版」ピーター・チェンバレン、ヒラリー・L・ドイル共著 翻訳監修 富岡吉勝 大日本絵画刊

協力:田宮模型

(C)SEGA ENTERPRISES,LTD. 1998 (C)System Soft 1988

【筆者紹介】  

【総プレイ時間】



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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp