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プロカメラマン山田久美夫の

ニコン COOLPIX900 使用レポート

〜 志の高さを感じる、カメラメーカーらしい本格機 〜


「COOLPIX 900」 25日発売予定のニコンのメガピクセル機「COOLPIX 900」製品版の山田久美夫氏による実写レポートを公開する。なお、本機のスペックなどについては発表時の参考記事を参照されたい。(編集部)



●ニコン初の本格派パーソナル機の登場

 ニコン初の本格派パーソナルモデル「COOLPIX 900」がついに登場する。このモデルは、1/2.7インチの130万画素CCD採用の3倍ズーム搭載機であり、パーソナル機としては「オリンパス C-1400L」と肩を並べる本格派モデルといえる。

 さらに、銀塩カメラの世界で定評のある「NIKKOR」というレンズ名を冠した自信作であり、カタログキャッチに「ニコン クォリティー」と謳うほど、画質や機能などにこだわったモデルといえる。

 本機の見どころは、クラストップレベルのバランスのとれた画質と、SXGAながらも最速2秒の高速記録、本格的な撮影に耐える詳細なモード設定機能など、数多い。なかでも感心するのが、その画質だ。


●使いこなしが難しい1/3インチ130万画素CCD

 どうも130万画素レベルの高画素モデルになると、普通に利用するには解像度が実用十分あることもあって、どの機種でも写りは似たようなものと思われがち。だが、このクラスのCCDの場合、いくつかのネックがある。

 まず、1/2.7インチ、つまり約1/3インチのセルのなかに、130万もの画素を詰め込んでいるため、1画素あたりの面積がかなり小さくなる。なにしろ、昨年主流だった35万画素クラスも1/3インチクラスが多かったわけだが、同じサイズのなかに4倍もの画素を詰め込んでいるのだから、その集積度はかなりのものといえる。

 そのため、レンズの解像度はVGAクラスのものよりも、かなり高い解像度が要求されるわけだ。また、1画素あたりの面積が小さいということは、その分、感度が低くなってしまい、ノイズも載りやすくなる。これらの要素をうまくバランスさせないと、高画素モデルといっても、決して良好な写りにはならないわけだ。

 本機が採用しているのはインターライン式の1/2.7インチタイプで、130万画素の補色系CCDだ。スペック的には先だって発売された「オリンパス C-840L」とほぼ同じものといえる(詳細は未公開につき不明)。

 どうも補色系というと、ビデオ用を流用している81万画素タイプのイメージが強いせいか、原色系に比べて、色や階調の再現域が狭く画質的に不利な印象がある。また、全画素一括読みだし式のプログレッシブタイプでない点も気になるだろう。

 しかし、先に述べたように、セルサイズが小さくなる高密度CCDでは、補色系でしかもインターライン式のほうが感度の点で有利。さらに、フィルターの構造上、解像度の点でも原色系に勝る部分があるわけだ。

 もちろん、「オリンパス C-1400L」のように専用開発の2/3インチの原色系プログレッシブタイプの、贅沢なCCDを採用している機種もあるわけだが、画質はともかくとして、コストや光学系のサイズを考えると、今回の1/3インチクラスのCCDのほうが有利な面もあるわけだ。


●さすがニコン!と感心させる、クラストップレベルの画質

花壇 自動車
花壇
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自動車
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 さて、実際に本機の画質を見てみよう。正直なところ、これはもう、1/3インチクラスのモデルのなかでは、明らかにトップクラスの実力で、事実上“暫定”トップといっても過言ではないレベルといえる。

 解像度に関して、ライバルとなる「C-1400L」や「FinePix700」「C-840L」などと比較してみると、やはり2/3インチCCD採用の「C-1400L」には若干及ばないものの、「FinePix700」とほぼ同等。もっとも「FinePix700」は輪郭強調が強めなので素直さという点では本機のほうが一歩リードしている感じだ。また、「C-840L」と比べると、CCDはほぼ同等だが、レンズ性能の点で本機には及ばず、レンズ性能の重要度を明確に感じさせる結果となった。

 CCDの特性上、原色系の被写体の輪郭部分に縦方向のスジ状のノイズが入る傾向がある。これはVGAの「富士フイルム DS-30」などにも見られたのと同じもので、詳細に見てゆくと、やや気になるケースもある。しかし、高画素モデルの場合、画像サイズが大きいため、そのノイズ部分が相対的に小さくなることもあって、それほど目立つことはなかった。

 そして、感心するのが色や階調のバランスの良さ。色再現性はなかなか素直。といっても、従来の81万画素補色系CCDのような渋めの色調ではなく、その場の雰囲気に近い自然な再現性といえる。さすがに、原色系のFinePix700などに比べると、色のクリアさという点で一歩譲る部分もあるが、実用上は十分なレベルといえる。


●自然なホワイトバランス、手動設定も記憶

 もっとも、通常のAモードでは、自動的にオートホワイトバランス機能が働くため、蛍光灯や電灯光(タングステン光)下では、自動的に色補正がかかるようになっている。そのバランスも適度で、レアなケースを除けば、ほぼ自然な補正結果といえる。

 もちろん、M(マニュアル)モードでは、ホワイトバランスの固定機能があるので、必要に応じて、デーライトやタングステン光などにマニュアル設定することもできる。しかも、メインスイッチを一度OFFにしても保持される点は便利。私の場合、Mモードではデーライト固定にセットして使うことが多く、Aモードでホワイトバランスの補正が意図とあわない場合(液晶上で分かる)、即座にMモードに切り替えて撮影するケースが多い。これは実に便利だ。

ストロボ使用 ホワイトバランスオート ホワイトバランスデーライト固定
ストロボ使用
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ホワイトバランスオート
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デーライト固定
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タワーパーク 水面
タワーパーク
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水面
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日向と日陰 建築の形と旗の色
日向と日陰
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建築の形と旗の色
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 さて、階調の再現性だが、こちらもなかなか素直。とくに、中間調のコントラストが自然で適度なため、C-1400Lのような硬さやC-840Lのような眠い感じもなく、実にニュートラルな再現性を実現してる点に好感が持てる。

 シーンによっては、わずかにハイライトが白飛びするケースもあるが、個人的には、画面に適度なメリハリがつくのでさほど気にならなかった。

 また、本機にはMモード時に、必要に応じて、カメラの階調をカスタマイズできる機能があり、これを利用することで、やや硬めにしたり、柔らかめの写りにすることもできる点がうれしい。

 また、この階調の素直さには、当然のことながら、レンズ自体のコントラストの高さが大きく貢献している点は容易に想像できる。

 一方、明暗の再現域自体は、それほど広いわけではなく、このあたりは1/2.7インチ補色系CCDの欠点を感じさせる部分もある。しかし、これをうまくカバーしているのが、同社独自のマルチパターン測光だ。

 これは画面内を64分割し、各エリアの輝度情報と画面内の輝度分布などを分析し、そのシーンに最適と思われる露出を設定する機能といえる。そのため、画面内に強い光源などが入り込んでいる場合でも、それがメインの被写体ではないと判断すれば、その部分以外の明るさを感知して露出を設定してくれるわけだ。

 本機では、これがかなり威力を発揮しており、被写体がよほど白かったり黒かったりするケース以外では、ほとんどカメラ任せで、意図に近い露出が得られるのには感心した。もちろん、この露出の正確さが、CCDの再現域の狭さをかなりカバーしているのはいうまでもない。

 ストロボの調光レベルも適度。記念写真のような3m程度の距離でも光量不足を感じるケースは少なく、また、レンズ前10cm程度の至近距離で撮影しても、ストロボ光が露出オーバーにならない点も好ましい。

 実際に本機で撮影したデータは、実にきれい。しかも、階調が豊かなので、とても立体的で奥行き感のある写りになる点が大きな魅力。ためしに、高画質プリンターでA4判にプリントしてみても、ごく普通に鑑賞に堪えるレベルのプリントが得られるのには感心した。


●やや大柄で高級感が欲しい外観

縦位置
縦位置
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 さて、今度は機能や操作性などに目を向けてみよう。

 まず、サイズはさすがに3倍ズーム付きモデルとはいえ、かなり大柄なもの。先だって発表されたリコー DC-4に比べると、ふた回り近く大きい感じがする。確かに、各機能、各パーツを順当に組み合わせてレイアウトすると、このサイズになるのは理解できるが、それでももう少し小さくならないものかと思ってしまう。

 だが、レンズを立てて、ボディーと面一にした状態では、厚さはさほどない。そのため、携帯時の収納スペースは意外なほど小さく、実際にバッグに入れてみると、(やはり大きいが)見た目ほどはかさばらない。

 また、ワイシャツの胸ポケットに収納するのは無理だが、ボディーを差し込むことはできる。そのため、私の場合、ストラップ(ボディーにあわせて幅が広めなのがいい)を首にかけて、ボディーを胸ポケットに差し込むというスタイルで撮影時に携帯している。

 個人的に気になるのは、このデザイン。確かに実用本位で機能的ではあるが、金属ボディーの割にはややチープな感じがするのが残念。やはり11万円のカメラであれば、このあたりの質感や高級感といった面をもっと重視するべきだろう。

 せめてこのデザインのままでもいいから、ニコンの高級一眼レフよろしく、ブラックボディーに赤のラインで決めたブラックバージョンを登場させて欲しいところだ。

 さて、実際に持った感じは、グリップ部が大きいこともあって、なかなか安定感がある。しかも、レンズ部が270度も回転するので、安定したホールディングを維持したまま、アングルが自由になる点も好ましい。

 しかし、これはあくまでも横位置撮影の場合の話で、縦位置撮影はやりにくい。これはレンズ回転式モデルに共通した欠点だが、とくに本機は幅がかなりあるため、縦位置撮影時に不安定になりやすい。そのため、かなり慣れたつもりでも、縦位置撮影時にうまく水平が取れず、画面がわずかに傾いてしまうケースがあるのは実に残念だ。

 家電系メーカーならいざしらず、ビデオにはない縦位置という文化を理解しているニコンなら、なにかもっといい解決方法を見つけて欲しいところだ。


●BASICで2秒、Normalモードでもわずか4秒の高速記録!

 本機を使っていて、とにかく感心するのは、その記録時間の早さ。具体的には、BASICモードで2秒、Normalモードでわずか4秒、Fineモードでも約6秒という高速記録を実現している。もちろん、BASICモードといっても、JPEG圧縮が強いだけで、画像サイズはきちんとした1,280×960ピクセルサイズの画像なのだから、その高速さには驚くばかり。これだけ軽快に連続的に撮影できる高画素モデルは(業務用のDS-300を除けば)、これが初めてだ。

 実はこのモードによる秒数の違いは、記録時のデータ容量に比例している。つまり、感覚的には処理とJPEG圧縮までで約1秒前後で、カードへの書き込み時間がその残りとなるようだ。

 もちろん、本機はコンパクトフラッシュ(CF)カードを採用しているわけだが、そこで問題になるのが、CFカードの書き込み速度。実際に試してみると、ブランドにより、記録時間が異なる。手元にあったものでは、サンディスク系のものは先の数値通りだったが、一部のメーカーのカードではその1.5倍もかかったものがあった。また、なかには使えなかった大容量CFカードもあり、すでにCFカードを持っているユーザー、もしくはこれから購入するユーザーはそのあたりを確かめてから購入したい。

 さて、記録時間と同じくらい気になるのが、カメラの起動時間。本機の場合、メインスイッチをONにしてから、約5秒、長いときで10秒近く、起動にかかるケースがある。これはC-840Lなどに比べるとかなり長く、結構、焦れったい。もちろん、ズーム付きモデルのため、ズームを前回OFFにしたときと同じ位置に動かすという作業をしていることもあるが、それでも焦れったいことに変わりはない。

 また、本機はなにも操作しないと、約30秒でスリープしてしまうのは困りモノ。確かに機構上、常時AF測距をしていたり、液晶モニターが自動的にONになるため、そのままでは電池の消耗が激しいことを考慮しての判断だろうが、それでも30秒は短すぎる。もちろん、スリープ後はシャッターボタンを半押しすれば、スリープから解除されるわけだが、それでも5秒近くかかる。そのため、できればこれらをカスタマイズでき、スリープを無効にするモードも欲しいところだ。


●良好な液晶レスポンス、視野率の足りない光学ファインダー

 液晶モニターは、2インチの低温ポリシリコンTFT。表示品質も良好で、明るくクリア。ファインダー使用時のレスポンスも秒間30フレームとビデオ並みの高速さを誇る。そのため、撮影感覚も実に軽快で好感が持てる。もっとも、日中の屋外では液晶モニターが見にくくなるケースがあるのは事実。できれば、簡単なフードのようなものが欲しいところだ。

 もちろん、そのようなケースでは、光学ファインダーが威力を発揮する。これはレンズ回転時に使えるように、レンズとストロボの中間に配置されており、見え味もなかなかクリア。しかも、視度調整機能まで備わっているあたりは、さすがにカメラメーカーらしい配慮といえる。

 しかし、感心しないのは、光学ファインダーの視野率。カタログ上は85%となっており、実際に使ってみると、光学ファインダーよりもふた回り近く広い範囲が写る。これは同じシーンで液晶モニターと比べてみると一目瞭然。この視野率は、近距離撮影時の視差などを考慮し、おそらくコンパクトカメラの基準に沿ったものと思われる(サービス判では周囲がカットされるためこの程度のことも多い)が、デジタルカメラにはやはり狭すぎる。やはり、近距離撮影時の視差の問題はあるにせよ、本格派モデルをうたうのであれば、最低でも90%台は実現してほしいところだ。 


●とにかく便利な3倍ズーム、軽快だがAFの迷いと感度の低さがネック

 撮影感覚はさすがに軽快。しかも、3倍ズームが搭載されていることもあって、単焦点レンズ式のモデルに比べると、はるかに多彩で自由な撮影が楽しめる点は大きな魅力。実際に3倍ズームに慣れてしまうと、単焦点タイプでは物足りなくなる。とくに、旅先でのスナップや風景撮影には、ズームが威力を発揮してくれる。

 また、本機はメインスイッチONで常時オートフォーカスが働いているタイプ。そのため、望遠撮影やマクロ撮影時でも常にピントのあった状態で液晶が見えている点は便利で安心だ。

 ピント精度は十分に高いが、ときおり、カメラがピントを見逃すケースがあり、液晶が大ボケ状態になってしまうこともある。この場合でも、ピントが合い易そうな被写体に向けたり、一度電源をOFFにすれば問題なく使えるので、さほど心配はいらない。

遠景 マクロ
遠景
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マクロ
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 しかも、遠景の風景などでは無限遠にピントをワンタッチで固定できる無限遠モードがある点も便利。これは夜景撮影などにも威力を発揮する。しかも、このモードでは自動的にストロボがOFFになる点も親切だ。

 マクロ撮影は、スイッチ切り替えが必要なタイプ。測距精度の問題はあるが、できれば切り替えなしでリニアにマクロ撮影ができるモードも設けて欲しいところだ。

 このほか、ストロボモードがスイッチを切るたびに自動発光になるのは失敗がなく便利だが、面倒なケースもある。できれば、前回セットしたモードを記憶して再現できる設定も実現してほしい。

 使っていて、意外に気になるのが、実効感度の低さ。ISO換算で64とライバル機に比べてそれほど低いわけではないが、やはりズームレンズでの望遠撮影やマクロ撮影時には、カメラブレの影響が気になるところ。実際に屋内での取材などでは、感度の低さが原因でブレるケースもある。そのため、できれば、多少ノイズが多くなってもいいから、高感度モードを装備し、ユーザーが自分の判断で切り替えられるような機能が欲しいところ。このクラスのユーザーなら、高感度モードでノイズが増えることも理解できると思われるので、ぜひとも次期モデルでは搭載してほしいところだ。

 電池の消耗は少なく、一般的なシーンでは新品のアルカリ電池で約100枚以上の撮影は十分にこなせそうだ。もっとも、ハードに使うなら、大容量にニッケル水素バッテリーなどを別途購入しておけば、撮影枚数もさらに増えて安心だ。もちろん、単三形なので、海外でも電池が入手し易い点も好ましい。


●志の高さを感じる、カメラメーカーらしい本格派モデル!

 本機を使ってゆくと、「ああ、よく考えてあるなあ〜」と感心する部分が随所にあり、いかにもカメラメーカーらしい細かな配慮が感じられる。その意味では、銀塩カメラに近い感触を備えたデジタルカメラといえる。その意味で、写真やカメラの知識がある人にとって、自分の意図に近い作画がし易いモデルといえる。

 機能や画質面でも、現行モデルのなかでトップクラスであり、なかなか完成度の高いモデルといえる。

 もっとも、サイズやデザインにはまだまだ一考の余地があるわけだが、カメラユーザーでも納得できる、ニコンブランドに叶ったパーソナル機を作ろうという、志の高さは十分に感じられる。

 本機は価格やサイズからいって、万人向きではないが、デジタルカメラで本格的な撮影を楽しんでみたい!という人にオススメできる、数少ない本格派モデルといえる。


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■注意■

('97/4/24)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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