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Los Angeles TimesがMicrosoftの極秘文書を入手、策謀をスクープ



●Microsoftがニセの世論作りを計画と

 Microsoftは焦っている。かつてないMicrosoftバッシングの中で、どうにかしてイメージを回復しようと、もがいている。そうしたMicrosoftの内情を暴露した見事なスクープ記事が、先週のLos Angeles Timesに登場した。

 「Microsoft Plans Stealth Blitz to Mend Its Image」(Los Angeles Times,4/10)によると、Microsoftは密かに倫理上問題がありそうなメディアキャンペーンを計画しているという。同社が入手したMicrosoftの内部極秘文書によると、Microsoftの戦術のなかには「地元の企業が自発的に出したという形で、Microsoftのトップメディア担当者が作ったものを、(メディアに)記事や読者からの手紙、意見として載せる」という戦術が含まれていたそうだ。つまり、Microsoft擁護の声をメディアに流すことで、世論のサポートがあるように見せ、調査官らに影響を与えようと計画したという。

 この記事によると、極秘文書に書かれているキャンペーンのターゲットは、Microsoftに対する反トラスト訴訟を考えているかもしれないカリフォルニアその他11州の検事総長らや政治家らだと言う。これが本当なら、かなりのスキャンダルだ。それがわかっているためか、Los Angeles Timesの取材を受けたMicrosoftのスポークスマンは、最初は否定、次には、プランの存在は認めたものの、これは単なる提案であり実際に進めていたわけではないと逃れている。もちろん、これが逆にMicrosoftに対する陰謀ということだってありうるわけだが、少なくとも今の時点ではまだMicrosoftはLos Angeles Timesに対して反証ができていない。真偽はともあれ、こうしたスクープが出てしまったことが、Microsoftにとってまた大黒星となったことは間違いがない。


●秘密の漏れやすい体質がアダに?

 Microsoftは、最近になって選挙や政治に慣れたメディア対策アドバイザーを雇い入れたのではと思われるフシがある。今回、報道されたこうした策略も、「Public Relations Strategy Reports Put Microsoft on the Defensive」(The Wall Street Journal,4/13、有料サイト、http://www.wsj.com/から検索)によると、「AstroTurf(人工芝)」と呼ばれるポピュラーな戦術だそうだ。Microsoftのこと、今回の苦境を脱するのに、選挙ばりのメディア戦略が必要だと判断したとしても不思議ではない。米国では、選挙は産業として成り立っていて、メディア戦略を請け負うコンサルタントも多数あり、ノウハウが確立されているからだ。実際、Los Angeles Timesの入手した資料には、クリントン大統領のメディア関係の元ディレクターを始め、有力なPR会社が地域コーディネータとして記されていたという。

 しかし、有能なPR会社と契約し、こうした選挙並みの策略をほんとうに計画していたとしても、その策略が出だしで明るみに出てしまうあたりが、やはりMicrosoftらしいところだ。このニュースは、他の新聞でも取り上げ、全国に知られてしまったのだから、Microsoftが本当に計画していたのなら、逆に墓穴を掘ってしまったことになる。このニュースが流れてしまったあとでは、もうどんなMicrosoft擁護の記事や意見も疑いの目で見られてしまうだろう。

 結局、Microsoftのように秘密が漏れやすい体質(内部メモなどが非常にたびたび流出する)の会社は、いくら優秀なコンサルタントがついても、こうした工作をするのは無理があるようだ。もうひとりのビル(クリントン大統領)は、ついに難局を半分脱してしまったというのに、ビル・ゲイツ氏の方は、いまだトンネルのなか。この原因は、もしかすると、口の堅い、裏仕事に慣れたスタッフを抱えているかどうかの違いにあるのかも知れない。



●Intelの減益で、長期的な展望への不安が広がる

 こうしたMicrosoft関連のスクープもあったものの、今週のニュースサイトの話題をさらったのはIntel関連ニュースだった。Intelは、米国企業のよくあるパターンで、今回、グッドニュースとバッドニュースをペアにして発表してきた。すなわち、新Pentium IIとCeleronの発表と、減益と人員削減の発表だ。もっとも、この前にすでにIntelは、収益が落ち込むことを予告しており、また3,000人の人員削減も自然減をおもに見込むなどそれほどラディカルな話ではないため、このバッドニュースによる動揺はとりあえず大きくはない。しかし、「Merrill Cuts Intel Long-Term Rate To Accumulate From Buy」(Dow Jones Newswires,4/15、有料サービス)が報じているように、金融会社Merrill Lynch & CoがIntelのロングタームの格付けを「買い」から引き下げるといった動きも出ており、長期的に見たIntelの先行きに不安が出ているようだ。

 これは、今回のIntelの減収が構造的なものではないかという、見方が多いからだ。Intelの高い利益は、高い動作周波数のMPUを高値・高マージンで販売することで成り立っているというのは、よく指摘されることだ。そして、MPUの動作周波数の違いは、同じ製造技術の場合は、通常、設計が異なるのではなく同じウェーファから取れたチップのうち、高速に動くものと低速でしか動かないものの違いでしかない。つまり、一枚のウェハーから取れるMPUのうち、高いマージンの高速品と低いマージンの低速品がバランスよく売れて、はじめてウェハー単位での高い利益を維持できるわけだ。

 ところが、昨年から今年にかけてのように、デスクトップPCの低価格化が進み、しかも互換メーカーがローエンドで激しく競合してくると、そのモデルが崩れてしまう。低速品ばかり売れて高速品の売れ行きが鈍る可能性があるし、そのローエンドでもシェアを失う可能性が出てくる。こうした状況をを防ぐには、IntelとしてはMPU価格全体を下へスライドさせないとならない。しかし、それは売り上げと利益の減少をもたらす。これが、現実にIntelに起きたことだ。たとえば、「Layoffs in Intel earnings wake」(CNET NEWS.COM,4/15)は、IntelのMPUのマーケットに登場する時の平均的な価格は、1年前と比べて下がっていると指摘している。

 3月末に行われたMicrosoftのカンファレンス「WinHEC 98」で講演したMPU業界随一のアナリスト、マイケル・スレイター氏(業界紙Microprocessor Reportのエディトリアルディレクタ)は、Intelの今後の最大のチャレンジは「収益を毎年上げて行くことだ」と指摘。「競合メーカーが手強くなってくると、現在のハイマージンを維持するのは難しい」と語っている。まさに、Intelはこのチャレンジに直面し始めたわけだ。



●Intelはワークステーションとサーバーに市場を伸ばす

 もっとも、Intelがこれで重大な危機に直面しているかというと、そうでもない。それは、Intelにとって高い利益をもたらすサーバーとワークステーション用のMPU「DS2P(Deschutes Slot 2 processor)」がこのあとに控えているからだ。スレイター氏によるとSlot 2用MPUは2,000ドル以上と「普通のPCよりも高いプロセッサ」になるという。もちろん、コストもかかるわけだが、高いマージンなのも確かだ。「Intel desktop share to slip」(CNET NEWS.COM,4/15)は、ワークステーション市場ではWindows NTのおかげで成長が望めるし、サーバーでは価格下落の心配がないと指摘している。

 そして、この市場でハイエンドPentium IIがさらに売れるようになれば、Intelは結局ウェーファ当たりでは高い利益をまた確保できるようになる。つまり、市場を高価格・高マージンの方へとさらに伸ばすことで、デスクトップ市場で価格攻勢をかけてケンカをしても、Intel全体としては利益を維持できるというわけだ。

 その意味で言うなら、同じ日にIntelとSGIが発表した提携が象徴的だ。典型的なワークステーション&サーバーメーカーのSGIが、全アーキテクチャをIntelに統一すると宣言したことは、Intelの戦略が成功しつつある、なによりの証拠になっている。また、「Silicon Graphics Unveils Strategy, Spins Off MIPS」(Electronic Buyer's News,4/14、リンクはすでに消失)の中で、SGIが指摘しているように、これはIntelが「Merced」から始まるIA-64プロセッサ群を切り札として持っているという要素が大きい。Intelは、ほとんどMicrosoftのためのプラットフォームになってしまっているx86に対して、IA-64をWindows NTとUNIXの共通プラットフォームに仕立てようとしている。それによって、各社が独自のRISCを使っていたUNIXサーバー&ワークステーションの世界も取り込んでしまおうとしている。そんな展開が、明確になってきた。


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('98/4/17)

[Reported by 後藤 弘茂]


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