【コラム】

こんなPCが欲しかった!!
SONY VAIO PCV-M300シリーズ

Text By Kazuhisa Nishikawa


 2月16日~22日のPC Watch週間アクセスランキングは「ソニーブランド強し」 となっている。確かにここのところソニーは絶好調。何を発表しても「オッ!!」と思わせる何かがある。そして今回もやってくれた。一般的なAV機器と完全にサイズ/デザインがマッチするPC、VAIO PCV-M300の登場だ。


●筆者待望のPCがやっと出た!!

 その昔(?)、モニタ一体型のパソコンがHomePCの代名詞のようになっていた頃、筆者はPCメーカーの企画担当者に「AVラックに入るようなパソコン作って!!」と、よく話をしたものだ。あんな巨大な一体型、どう考えてもリビングや書斎にそう簡単に置く事はできない。ビデオデッキやオーディオ機器と積み重ねることができれば何とかなるのに……と言ったものだが、流行から外れるのが恐かったのか、何時まで待っても出てこない。たまに出たと思ったら性能対価格比から魅力的ではない物ばかり。

 しかし、今回のPCV-M300は違う。詳細はこちらを参照して欲しいが、CPUにMMX Pentium 200MHz/L2 cache 512KB、SDRAM 32MB(最大128MB)、ATI 3D RAGE PRO/4MB、Ultra ATA対応 4.3GB HDDなど、基本スペックを押さえた上で、15インチモニタ込みの価格は20万円前後の見込み(オープンプライス)。 大手メーカー製のPCとしては無難な価格設定だ。

 残念ながら“本体のみ”の販売は無いものの、他メーカーのモニタならいざ知らず、15インチ純正スーパーファインピッチ(0.25mm)トリニトロン管が付属してこの値段なら、誰も文句は言わないだろう。*1 そして肝心のルックスはご覧の通り。アルミ材を使用したフロントパネルはこれまでのパソコンとまるで雰囲気が違い、他のAV機器と並べてもなんら遜色は無い。*2 マザーボードを購入し組み立てるだけの、完成キット品を販売しているようなメーカーの多い中、オーディオコンポの幅(280mm)に合わせ、小型化のため独自設計のマザーボードを採用、消音ボックスにHDDを入れるなど、隅から隅までこだわった逸品、それがPCV-M300なのだ。

*1 今回評価機として使用した、TVチューナー内蔵17インチモニタ付属のセットで25万前後。15インチ TFT液晶ディスプレイ(1,027×768ドット)付属で40万前後の見込み。
*2 そう言えば、富士写真フイルムのFinePix700もアルミボディーである。今年は“アルミ”がキーワードになるのだろうか!? (^^;


何十年もの歳月を隔て並んだこれらの機器。
レトロなアンプと妙にマッチするから不思議なものだ。
左下は往年の名機、McIntosh C22

キーボード/ポインティングデバイスは赤外線式
ワイヤレス。使い慣れればけっこう便利である。
左下/側面に見えるスイッチは本体の電源スイッチ。

左から、USB Port、Game Port、ヘッドホン端子、ボリューム。
主電源のON/OFFは後ろで行ない、このPowerスイッチはサスペンド・
レジューム。これも家電感覚である。右横は赤外線センサー。

LEDは左から、赤外線キーボードステータス、MODEM、HDD。
最大16倍速のCD-ROMドライブはスロットイン型。
●遊び用? 仕事用?

 その使い心地であるが、これはかなりイケル!  赤外線式ワイヤレス・キーボードは、ラフなカッコで気楽に扱え肩がこらない(逆に、仕事をする気にはなれないが…… ^^;)。 いったんAVラックの中に収めてしまえば、後片付けはキーボードをどこかへ置くだけで、至って簡単。小さい文字を見るのはちょっと厳しいものの、VideoOutがあるので、テレビに接続し、気軽にInternetやゲームも楽しめる。また、縦置きも対応しているので、省スペースパソコンとしても機能する。つまり「遊びのパソコン」、「(お持ち帰りの)仕事のパソコン」、どちらにでもPCV-M300は変身できるのだ。処理速度はスペックから見ても分かるように、普通に使うには十分。

 さて、本体背面を見ると、AV機器と間違えそうなスッキリしたレイアウト。特に面白いのはIRインターフェイスをシリアル・ポートとは別に持っている事だ。これは別売りの赤外線アダプター“PCVA-IR2”を使って、ワイヤレス・キーボードから、一般的なテレビの電源ON/OFF、チャンネル選択、ボリュームコントロールなど、基本的なテレビコントロールに利用できる。既に本体はモデムとシリアル端子で2つシリアルポートを使っているので、PCVA-IR2を使う時に汎用シリアルポートを塞がないようにする配慮であろう。

 PCIスロットは2つ。筆者であれば、Ethernet、IEEE1394、この2つを入れたいと思う。読者の方はいかがだろうか!?



上段:Line/Phone,PS/2 Mouse,S-Video(In),Video(In),Printer
下段:Keyboard,S-Video(Out),Video(Out),Serial,Monitor,LineOut,LineIn,MIC,USB,Control A1,ワイヤレスKeyboard,IR IF,AV IF



●惜しい点


 ここまで誉めまくっている筆者であるが、気になる点が2つある。

1)ハードウェア・リセットが無い

 今回、プリンタポート経由のEthernetアダプタを付けて実験したが、インストールに失敗して完全にハングアップした。その時、キーボード・リセットは効かず、ハードウェア・リセットのスイッチを探してみたもののどこにも無い。念のため、編集部経由でソニーに確認したところ、「無い」とのお答え。(^^; こうなると本体裏の主電源を切る事になる。ところがAVラックなどに入れてしまうと、この作業は大変面倒。手間を省くにはスイッチ付きのケーブルタップに接続しなければならない。Windows 95がハングアップする以上、この仕様は結構辛いと思うのだが……。

2)PCカードインターフェイスが欲しかった

 今のCyberShotは必要無いが、デジタルカメラにPCカード インターフェイスは必需品。しかしAVラックに本体を入れるとなると、外付けの物は使いにくい。と言って内蔵しようにもフロントベイは無く、八方塞がりの状態だ。妥協案としては、USBなら少しケーブルの距離が稼げるので、もうすぐ出てくるUSBポート経由のPCカードインターフェイスを使う事になるだろう。

 と、こんなところだ。この他、細かい事を言えば、Windows 95の“キーボード”→“表示の間隔”をフルにした時、「赤外線キーボードを使うとリピート速度が追いつかない」などあるが、極端に遅いわけではないので、特に問題ではない。

ほとんど目一杯の状態で色々外さないとマザーボードは
見えない。これだけの物を、280mm×92mm×355mmに
詰め込むのは結構大変だったようだ。


PCI-Slot×2、SDRAM×2のコネクタが見える。
蓋を開けるのはネジ3つを外すだけなので非常に簡単。

●総評

 とにかく最近のソニーは冴えている。筆者がソニー党である事を割り引いても、このPCV-M300のコンセプトや完成度は他のPCメーカーではなかなか真似できない代物であろう。そもそもデスクトップPCの伸び悩みの根本的な理由は「どれをとっても個性が無い」この一言に尽きると思われる。ノートPCを見ても、売れているのはPCG-505を代表とする個性派ばかりである事から考えても明白だ。そんなデスクトップPCに飽きて最近ではデジタルカメラで遊んでいる筆者に久々に「欲しい!!」と思わせた逸品、それがVAIO PCV-M300なのだ。この調子でガンガン行って下さいネ!! > SONY

[Text by 西川和久]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp