プロカメラマン山田久美夫の
CESフォトレポート

「デジタルカメラ総集編」


会場前 「1998 International Winter Consumer Electronics Show(CES)」

'98/1/8~1/11 開催(現地時間)

開催地:米ラスベガス

 アメリカ最大の家電ショー「CES」。例年はあまりPC系とは関係のないイベントであり、パソコン系メディアではほとんど知られていないが、今回は「Auto PC」や「Palm PC」などPC系の発表があり、にわかに注目を浴びた。今後はパソコン自体が次第に家電的になって行くことを考えると、今回のMicrosoftのようにPC系イベントではなく「CES」を発表の場に選ぶメーカーも増えそうだ。

 そこでCES締めくくりレポートでは、まずデジタルカメラ系の新たな動きをレポート。さらに別項では「CES」で出品されたWindows CE関連製品とCES全体の雰囲気を写真を中心に紹介しよう。


●次世代撮像素子「CMOS」を前面に展開する「Sound Vision」

Digital Photography  今回のCESではメーカー単位での製品展示とは別に、「Digital Photography」関係の展示だけを集めた特別なスペースが設けられていた。つまり、CESという家電ショーのなかで、今後注目される分野として、デジタルカメラを始めとしたイメージングに関心が集まっている証拠といえる。このスペースでは、リコー、ソニー、コニカ、アグフア、東芝などに混ざって、日本国内では見ることのできないメーカーの展示を目にすることができた。その筆頭が、ここで紹介する「Sound Vision」といえる。

Sound Vision  もし「Sound Vision」という社名を知っている人がいたら、あなたはおそらく、デジタルカメラの業界関係者に違いない! そう、このメーカーは自社ブランドでの製品展開をせず、複数のメーカーに対して製品や要素技術などを提供している、OEM(?)を中心とした展開をしている、業界内ではかなり有名なメーカーだ。

 そして、同社が得意としている分野が、次世代の撮像素子として注目を浴びている「CMOS」を使ったモデルといえる。

 この「CMOS」という撮像素子は、現在主流のCCDに比べ、消費電力が1/10程度。製造工程もCCDのような特殊なラインではなく、通常の半導体製造工程でも可能なため、量産時にはかなりの低価格化ができる。さらに、回路設計のうえでも有利な点が数多いという、さまざまな特徴を備えた撮像素子といえる。もっとも、まだ発展途上の素子であり、画質面ではCCDに劣る部分もある。現在、このCMOSを使ったパーソナル向けデジタルカメラを発売しているのは、事実上、東芝と、このSound Vision系(ビビターやUMAXなど)しかない。

 だが、次世代撮像素子としての将来から、ここ数年でIntelやモトローラなどが大規模な生産ラインを拡充しており、今後の展開が楽しみな世界といえる。

 さて、このSound Visionは今回、3系列の製品群を出品していた。まずひとつは、次のVivitarで紹介する「SVMini-2 & SVMini-209」と呼ばれる80万画素CMOSチップ採用モデル。こちらのシリーズは昨春から米国内で発売されており、“80万画素で399ドル!”という衝撃的な価格で話題となったものだ。

ファインダー内表示
液晶ファインダー内表示
 そして今回は、同じ80万画素(1,000×800ピクセル)のCMOS素子を採用した新シリーズとして、パーソナル向けの「ACPS」シリーズと、業務用の「CMOS-PRO」シリーズだ。もちろん、いずれもOEM用モデルなので、確実に製品化されるわけではない点だけは、先にお断りしておきたい。

 まず、「ACPS」シリーズの最大の特徴は、液晶ビューカム以前のビデオカメラで主流だった、覗き込むタイプの液晶ビューファインダーを採用している点といえる。同社の説明によると、この方式は液晶式ファインダーでありながらも、液晶自体が小型のため、消費電力も通常の1.8インチ液晶の1/100程度に抑えられると説明されている。

 右側のファインダー内表示も写真で分かるようにかなり凝ったもの。なかでも画像のヒストグラム(輝度分布)がグラフで表示されるので、露出オーバーになっている部分がどれくらいあるのかを簡単に知ることができる。しかも、このタイプのファインダーなら、ごく普通のカメラと同じ感覚で撮影できると同時に、撮影画像がそのまま見られるというデジカメならではのメリットもある。

ACPS-SL
ACPS-SL
 会場ではコンパクトカメラタイプの「ACPS-P」と、Cマウント(ねじ込み式)のレンズ交換式モデル「ACPS-SL」の2種もプロトタイプがあり、実際に触れることもできた。前者は同社と関係の深い「Vivitar」のコンパクトカメラをベースにしており、もしかするとVivitarブランドで発売される可能性もある。個人的には、ホールディングや操作性も従来の一眼レフに近い感覚で扱える、後者のタイプがとても気に入ってしまった。

 なお、両モデルとも、画像記録はCFカード式で、データの転送はRS-232Cもしくは“USB”となっている。

CMOS-PRO
CMOS-PRO
 また、「CMOS-PRO」はスタジオ用モデルとして出品されたモデルだ。こちらは、モノクロの80万画素CMOSを使って、RGBの3色のフィルターで合計3回撮影してカラー画像を得る3ショットタイプ。通常のカラーCCDの場合、色情報は構造上、画素数の1/3程度になるのにくらべ、この方式では全画素で色情報を得られるため、遥かに豊かな色再現ができる点が大きな特徴だ。もちろん、構造上、動くものは撮影できないが、そのクォリティーには目を見張るものがある。特殊用途のOEM専用機だが、価格は2,000ドル程度と、プロ用機としては安価。実際に撮影されたデータを見ると、“これがCMOS!?”と驚いてしまうほどのクォリティーだ(なお、実写データはhttp://www.soundvisioninc.com/に掲載されている)。

 しかし、Sound Visionなどを見ると、世の中には、一般に知られていないところに、凄い実力を持った企業があるものだと実感する。


●80万画素CMOS採用の改良機を発表した「Vivitar」

 Sound Visionの話のあとでは、ネタがばれてしまうが、昨年春に、399ドルで、80万画素のCMOSモデルを発表して話題となったVivitar。今回はその改良機として、画質の大幅な改良と記録方式を変更した改良機「ViviCam 3100」を発表した。今回は、ソフト処理により画像サイズを最大1,920×1,600ピクセルにしたもので、画像フォーマットも機能的にはメリットも多いWavelet(次世代規格であるJPEG2000のベースになるといわれている、JPEGよりも画質低下が少ない圧縮記録フォーマット。JPEGとの互換性はない)から、標準的なJPEGに変更されている(個人的にはちょっと残念だが)。ブースでのプリントサンプル画像を見る限り、画質はかなり向上しており、DC210やC-1400Lなどと比較撮影したカットでも、さほど見劣りがしないレベルとなっている。にわかに信じがたいが、Sound Visionのサンプルもかなり良好なので、取りあえず、ある程度は期待できそうだ。

ViviCam 3100
ViviCam 3100パネル ViviCam 3100 正面 ViviCam 3100 裏面

ViviCam 3100 撮影サンプル ViviCam 3100 撮影サンプル



 また同社は、液晶付きでメモリーカード対応のCCD採用VGAモデル「ViviCam 2700」も発表していた。こちらは大きな特徴はなく、低価格をウリにしたモデルのようだ。

ViviCam 2700
ViviCam 2700パネル ViviCam 2700 正面 ViviCam 2700 裏面 ViviCam 2700 側面


●デジタルカメラ+お楽しみ画像処理ソフトで299ドル!
 「ポラロイド Photo MAX」

セット PhotoMAX

PhotoMAX動作画面

 デジタルカメラの台頭で、ちょっと焦りの色が見え始めたポラロイド。なにしろ、その場で見られるというメリットをデジタルカメラに取られそうで、ビジネス用途ではそろそろ苦戦している様子。

 だが、今回はポラロイド自らが、液晶付きの低価格デジタルカメラ「PDC300」と、オリジナルの画像加工ソフト「PhotoMAX」のセットで299ドル!という、デジタルフォトのお楽しみパックを発表した。

 まず、カメラ部分は、どこかで見たことのある(COMDEX/Fallレポート参照)モデルで、一応、ポラロイドブランド。画像サイズは320×240ピクセルの液晶搭載の内蔵メモリー専用機(他社ではこれだけで299ドル)。それに、カメラからの画像転送、画像のブラウザー、補正処理、簡単な画像合成や文字入れ、ホームページ作成機能などができるオリジナルソフトをセットしたもの。

 なかなかお買い得だし、とにかくオールインワンじゃないと売れないアメリカならではのセットという感じ。日本でもうまくパッケージングすれば、それなりに売れるかも……。


●おお、ここにもIntel!
 「Intel Create & Share Camera Pack」

Create & Share Camera Pack Create & Share Camera Pack

カメラ 動作画面


 デジタルフォト専門ブースのなかでも、異色の存在だったのが「Intel」。同社は今回「Intel Create & Share Camera Pack」という、ビデオ会議用カメラ中心のセットを発売した。どうも、例のCMOSを使ったIntelのデジタルカメラ規格といい、今回の製品といい、Intelは結構本気でデジタルイメージングの世界に参入しようとしているようだ。

 ブースでは、コンパクトなケーブル接続型の小型ビデオカメラ(デザインがスタートレックっぽい)を使った、CU-SEEMEデモをおこなっていた。このセットには「USB」バージョン、PCIのビデオキャプチャーカード同梱の「PCI」バージョン、さらにビデオキャプチャーカードに加え56kモデムを搭載した「PCI MODEM」の3種類があり、ソフトウエアもVideo Phone用からPhotoEnhancer、Kai's Power GOOまで付いているなど、至れり尽くせり状態(詳細はhttp://www.intel.com/createshare/selector.htm)。まあ、ここまでセットすれば、使う人もいるかもしれないけど……。



●簡単手軽な高機能パノラマソフト
 「ENROUTE IMAGING QuickStitch」

QuickStitch QuickStitch

QuickStitch QuickStitch


 リコーブースでは今回「DC-3Z」(現地名「RDC-300Z」)に同梱されることになったパノラマ合成ソフトのデモをおこなっていた。このソフトはENROUTE IMAGINGの「QuickStitch」というもので、これがなかなか凄い。価格はアメリカで約40ドルという安価なものだが、写真で分かるように、従来の同種のソフトと違って、元画像のサムネール一覧が簡単にできるうえ、画像の順序を指定する必要もなく、上下方向はもちろん、斜め方向でも画像の重なりがあれば自動的に合成してしまうというもの。

 さらに、パノラマ撮影で問題になる、画像境目に入ってしまった人物などの処理も巧みで不自然さがないのにも感心する。細かな効果は同社Webのサンプルで確かめて欲しいが、なかなかいいソフトのないパノラマ系アプリのなかで、結構期待できそうな製品だ。ちなみに日本語版も比較的早期に発売が予定されているという。


●大人気のデジタルマビカ

特製フロッピーケース デジタルマビカ  アメリカでとにかく大人気のデジタルマビカ。ブースでもその人気は高い。聞くところによると、イベントなどで実際に撮影した画像をFDで持ち帰って、自宅のPCでチェックできるのが大きなポイントになっているとか。今回のイベントでは、その要望に応えるべく、撮影したフロッピーだけでなく、なんとSONYオリジナルのデジタルマビカ用(?)フロッピーケースまでもプレゼントするという大盤振る舞い。このケースがなかなかカッコよく、SONYファンならコレクターズアイテムにしたくなるほど。もちろん、私も貰ってきました。


●三洋ブース
 デジタルカメラを強くアピール

ホームシアター XGA Tシャツ  海外のイベントでもデジタルカメラを強くアピールしはじめたSANYO。今回はいかにもアメリカらしく(?)、XGA対応の液晶プロジェクターとDVDの組み合わせでのホームシアターを提案。それと同時に、DSC-X1の画像サイズがXGAであることもあって、“XGA Tシャツ”を作ってステージ上から来場者にプレゼント! 最初はクイズの正解者のみにプレゼントしていたが、ステージの最後には近くにいた観客の多くにプレゼントしていた。


●東芝ブース
アレグレット  アレグレットにPCカードドライブを添付

 昨年のCESで華々しく発表されたCMOS採用の超薄型デジタルカメラ「アレグレット」。コンセプトもいいし、ノートPCユーザーには便利なモデルだが、シリアル転送ができないのが欠点。しかも、アメリカではまだPCカードやスマートメディアが普及していない。それで、今回からパラレルポート用のPCカードドライブを付けて販売するという。すでにオリジナルのマクロ撮影(名刺大)用ユニットが同梱販売されていることを考えると、かなりお買い得。本当はフラッシュパスを付けたいところだが、価格があわないようだ。


□「1998 International Winter Consumer Electronics Show(CES)」ホームページ
http://www.cesweb.org/

('98/1/20)


[Reported by 山田 久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp