一ヶ谷兼乃の「PCパーツ天国」

新連載(月1回掲載):中・上級者向けパーツレビュー

一ヶ谷兼乃の「PCパーツ天国」 第1回

ASUSTeK P2L97
~PentiumII対応マザーボードの主流は440LX搭載モデル~


11月より、物欲道修行記などの連載でおなじみの一ヶ谷兼乃氏に、毎月ひとつ、旬のパーツをレビューしていただく新連載です。ここでは、パワーユーザー向けのパーツ、周辺機器などを取り上げていく予定ですので、どうぞお楽しみに。(編集部)


 現在、パワーのあるIntel系PCを組み立てようとすると、必ず必要となるパーツがある。それはPentium IIだ。出荷当初、MMXテクノロジPentiumプロセッサに比べPentium IIは極めて高価だったが、現在はその性能に見合ったレベルまで価格が落ちてきている。
 Intel系で最もパワーのある300MHz動作のPentium IIだが、10万円を切った現在では、一般ユーザでもちょっと無理をすれば手が届く範囲といってよいだろう。
 Pentium IIの出荷当初は、対応マザーボードに搭載されていたチップセットは440FXだったが、現在ではPentium II対応マザーボードの主流はAGPに対応した440LXを搭載したものに変わりつつある。


■ASUSTeK P2L97の特徴


P2L97をT-10ABに組み込んだ状態
 国内では絶大なる支持を得ているマザーボードメーカがASUSTeK Computer(以下、ASUSTeK)だ。そのASUSTeKの440LX搭載マザーボード第一弾が、このP2L97である。P2L97は最も基本となるモデルで、これにSCSIホストアダプタが内蔵されたP2L97-Sや、Pentium IIでのデュアルCPUに対応したP2L97-DSなどがラインナップされている。マザーボードのネーミングのとおり、Pentium II対応でMicrosoftのPC97を強く意識してデザインされている。

 P2L97は、非常にコンパクトなサイズに収まっているATX仕様のマザーボードだ。バススロットは、AGP(Accelerated Graphics Port)スロットが1基、PCIバススロットが5基、ISAバススロットが2基(うち1つはPCIバススロットとの共有)と、これまでのマザーボードに比べISAバススロットが少なく、PCIバススロットが多く用意されており、P2L97の特徴にもなっている。

 現在、各種拡張カードはPCIバス対応の製品が増えてきており、ISAバスでないと困るようなシチュエーションも少なくなってきた。PCカードスロット用のインターフェイスカードや、高速シリアルカードは、現在もISAバス対応製品が多いが、今後PCIバス対応製品も増えてくるだろうし、サウンドカードに関しても、'97年の春以降はPCIバス対応製品が続々リリースされている。

 P2L97には、PS/2キーボード、PS/2マウス、16550互換の2つのシリアルポート、パラレルポートに加え、2つのUSB用のコネクタが用意されている。これらのコネクタの位置に合わせたケースも、手に入りやすくなっており、以前のようにケースとの相性に悩まされることもないだろう。

 マザーボード上には、1つのFD、2つのE-IDE、IrDAインタフェイスが用意されている。E-IDEは当然のことながら、UltraDMA/33に対応だ。168ピンのDIMMソケットが3スロットあり、3.3V仕様のEDO又はSDRAMがサポートされている。

 BIOSはAWARD Softwareのものを採用しており、当然のことながらFlashROMのため、ソフトウェアでのUpdateが可能になっている(BIOS ROMのデータは、ASUSTeKのページで最新版をダウンロードできる)。また、筆者の購入したP2L97 Rev.1.02では、設定のためのジャンパピンは全て廃止され、CPUのコアクロックさえも、BIOS設定のなかでセッティングを行なうようになっている。ただし、最新のRev.1.05ではCPUクロックがジャンパピンで設定するように変更されている。

 この他にも、LM78を使ったCPU/ケースのファンやマザーボードに供給されている電圧、温度などの監視などか可能で、Advanced Configuration & Power Interface(ACPI)サポートに加え、PCの稼動状態の管理を行なうためのIntel LanDesk Client Manager(LDCM)も添付されている。


■P2L97は、440LX搭載マザーボードの事実上のリファレンス

 P2L97は、ショップブランドやメーカ直販ブランドPCでの採用実績があるだけでなく、マザーボード単体の販売でも指名買いが多い。現在出荷されている440LX搭載マザーボードの中で最もユーザーの支持を得ているマザーボードであるといいってよいだろう。ユーザーが多いということは、BIOSの設定方法や各種拡張カードとの相性といった細かな情報が得やすいということにつながり、組み立てユーザーが持つサポートへの不安が、若干ではあるが緩和されるといったメリットも見逃せない。

 自作派には気になるCPUクロックの設定は、ベースクロックを最高83.3MHzの設定が可能で、その他に75/68/66/60/50MHzなど多彩な設定ができる。現状ではAGP対応ビデオカードやUltraDMA/33はCPUのベースクロックにシビアな面があるため、細かな設定ができる点は、非常にありがたい。また、秋葉原では、次第に見かけるようになってきたSuperDisk(LS-120)をE-IDEインタフェイスに接続して、LS-120からのOSブートも可能だ。もちろん、CD-ROMからのブートもサポートされている。

 筆者もこのマザーボードを既に2ヶ月毎日のように使用しているが、マザーボードに起因するドラブルは皆無である。ただ、440LXとSDRAMを使用したDIMMとの相性問題があり、メモリを購入する際には、ショップでP2L97で使用できるかを確認するといいだろう。

 もしも、安定したPCシステムを目的として、440LXマザーボードの購入を考えているのであれば、筆者が最もお勧めしたいマザーボードの一つである。


■Asusのお墨付きATX対応ケース~AEGIS T-10AB

 P2L97を筆者のメインマシンに組み込むと同時に、ケースも新調することにした。選択したのは、ASUSTekの子会社であるELANVITAL社のケースAEGIS T-10ABだ。当然のことながら、ASUSTekのATXマザーボードはすべての機種が格納できる仕様になっているほか、インテル製のATXマザーボード用のバックパネルも付属する。


AEGIS T-10AB前面

AEGIS T-10AB背面

内部ベイ電源部分

 ケースに関しては、マザーボードがケース内にちゃんと収まるのは当然として、筆者にとっては、内蔵ベイが十分用意されていること、電源のほかに、給排気のファンが取り付けられること、側版だけが外せるといったことが主な選択の条件になっている。
 AEGIS T-10ABはケースの側版が取り外せることだけではなく、天板、5インチベイ、3.5インチベイ、電源の上に位置するHDベイが、それぞれ取り外すことができ、非常に整備性が高い。細かく分解できるケースは、往々にして強度が低い場合が多いが、このケースは必要最小限の部分に対して、補強が入っており、十分な強度が確保されている。

 また、機能的に優れているだけでなく、質感もよく、金属板のエッジも尖ったところがなく、手を傷つけることもなく作業を行なうことができるのがありがたい。
 このケースに関して残念なことは、少々高価な点と、秋葉原のショップではほとんど見かけたことがないことだ。筆者は通信販売で、手に入れることができた(編集部注:AEGIS T-10ABは現在「ぷらっとホーム」が扱っています)。


■AGP対応ビデオカード

 AGP対応マザーボードを入手したからには、当然のことながらAGP対応ビデオカードも気になるところだ。今回は、以下のAGP対応ビデオカード3製品を試してみた。

●ベンチマーク

まずは、以下にベンチマークの結果を示し、その後でそれぞれのビデオカードの使用感などについて述べていきたい。

  AGP-V3000 Winfast 3D
L2300-AGP
ViewTop AGP
Titan 3000
3Dbench 250 250 250
PC Player Direct3D
Benchmark V1.10
42.9 36.5 11.0
Intel Media Benchmark
  Video
  Image Processing
  3D Graphics
  Audio
  Overall
247.53
1241.83
299.19
498.51
338.34
389.39
1051.32
289.21
462.91
390.82
428.00
1164.76
293.08
482.81
413.93

【テスト環境】
CPUPentium II(266MHz、ECC対応)
ベースクロック 68MHz、内部動作速度 308MHz
マザーボードP2L97
メモリ96MB(SDRAM)
Sound CardEnsonic Audio/PCI
HDbench Ver.2.42 CPU 浮動小数点 24894
CPU 整数演算 19756


(1)●ASUSTeK「AGP-V3000」

AGP-V3000  マザーボードメーカとしての印象が強いASUSTeKは、マザーボード以外にもSCSIホストアダプタや、LANカード、ビデオカードなどもラインナップしている。そのビデオカードの最新モデルがAGP-V3000だ。その名前のとおり、AGP対応ビオデオカードでnVIDIARIVA128が採用されている。ビデオメモリは100MHz SGRAMで4MB搭載し、16bitハイカラーで最大1,600×1,200ドットの解像度の画面表示を行なうことができる。最近発売された他社のRIVA 128を使ったビデオカードとは違い、このビデオカードに搭載されているRIVA 128には、ヒートシンクが接着されている。

 国内で最初に発売されたRIVA 128搭載ビデオカードで、2D/3D共に高速な画面描画を実現している。画質も良好で、最新バージョン1.02のドライバの動作も安定している。うれしいのは、日本語版のWindows 95用ドライバが提供されていることだ。RIVA 128搭載ビデオカードとしては、特別高速ではないものの、高いレベルでバランスのとれた仕上がりになっている。とはいえ、これまでのビデオカードとはレベルの違いを感じさせてくれる描画速度で、2D/3D共に最速クラスであることは間違いない。

 このビデオカードの死角といえば、ビデオメモリが4MBであるということ。例えば、大型モニタを使っていて、1,280×1,024ドットの解像度でも32bitカラーでないと、作業ができないという人には向かないわけだ。
 ASUSTeKからは、RIVA 128を搭載したPCIバス対応ビデカードの3DP-V3000も用意されている。


(2)●Leadtek「Winfast 3D L2300-AGP」

L2300-AGP表
L2300-AGP裏
 古くからビデオカードを製造しているLeadtekは、新ビデオチップが登場すると積極的に採用してきた。このLeadtekから、3Dlabs Permedia2を搭載したビデオカードが登場した。それが、Winfast 3D L2300だ。このビデオカードは、AGP対応で、ビデオメモリはSGRAMを8MB搭載し、230MHz RAMDACを使って、16ビットカラー時には最大1,600×1,200ドット、32ビットカラー時には最大1,280×1,024ドットの解像度での画面表示が可能だ。リフレッシュレートは解像度によるが、最高200Hzまで設定できる。

 フルスペックの3Dハードウェアアクセラレーションを実現し、Direct 3D、OpenGL、HeidiといったAPIをサポートした、専用ドライバが添付されている。Direct3Dを使ったベンチマークの結果は良好で、テスト中の画面描写も問題なかった。ただ、2Dに関しては、他の2枚のビデオカードより若干遅いものの、一般的なアプリケーションであれば十分実用的な描画速度は確保されている。

 このビデオカードの画質は、ゴーストもなく、細部までくっきりと映っているのだが、ギラギラとした色調ではなく落ち着いたもので、とても好感を持てた。ビデオメモリが8MBに拡張され、様々なニーズに対応できるのもありがたい。8MBを搭載したビデオカードとしては、比較的低めな価格設定もうれしい。

 Leadtekからは、Winfast 3D L2300-AGPのPCIバス版のWinfast 3D L2300-PCIも出荷されている。


(3)●BRITEK ELECTRONICS「ViewTop AGP Titan 3000」

Titan 3000  最近、PCショップで、よく見掛けるブランドにViewTopがある。ViewTopは、BRITEK ELECTRINICSのビデオカードのブランドで、同社はTRUMPというサウンドカードのブランドも持っている。

 ViewTop AGP Titan 3000は、S3 ViRGE/GX2を採用した3Dアクセラレーションビデオカードだ。ビデオメモリはSGRAMを4MB搭載し、ViRGE/GX2内蔵のRAMDAC(170MHz)を使い、最大解像度1,600×1,200ドット(256Color)をサポートしている。今回取り上げた、3枚のビデオカードの中で唯一、NTSCのビデオアウトが可能になっている。ビデオアウトに接続したTVと、ディスプレイモニタの2台で、デュアルモニタとして使用できるDuo Viewをサポートしているのが特徴だ。

 このビデオカードは、お世辞にも画面の映りがいいとはいえない。他の2枚のビデオカードと比べて、若干ぼやけた感じでフォントが表示されるため1,024×768ドットを超える解像度で、広大なスプレッドシートでの作業などには向かないといえる。また、きっちりとした映りが好みの方にはお勧めできない。色に関しては少々淡い傾向があるが、それほど問題になることもないだろう。

 描画速度に関しては、2Dは従来のビデオカードと比べても標準以上であるが、3Dに関しては、多少物足りない。ViRGE/GX2は、S3のビデオチップなので、今後性能が向上したドライバが提供される可能性も考えられるが、Direct3Dを使った最新ゲームを、完璧な形の画面表示で楽しみたいというユーザにも現状ではお勧めできない。

 このビデオカードもビデオメモリが4MBではあるが、注目すべきは販売価格で、13,800円(TWOTOP)と設定されている。800×600ドットや1,024×768ドットの解像度で、ビジネスアプリケーションを使うのが主な目的であれば、十分事足りる性能は持っている。目的さえ合致すれば、非常にコストパフォーマンスが良いビデオカードであるといえるだろう。

 なお、BRITEK ELECTRONICSからは、AGP Titan 3000のPCIバス版の3D Titan 3000も出荷されている。


[Text by 一ヶ谷兼乃]


[機材協力:TWOTOP]


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