PIAFSサービス開始 特別企画

PHSデータ通信サービスの傾向と対策 その2

TEXT:本田雅一


 いよいよ開始されるPIAFSサービスを前に、モーバイルネットワーカーの多くがPHSの導入や買い換えを考えているのではないだろうか。高速な無線通信の世界は、もう目の前にある。これを見逃す手はない。
 そこでPHS通信に関する情報をまとめてみることにする。ただし、ここではPCからの無線通信に話を絞ってある。PHS通信に投資をする際の参考にしていただければ幸いだ。

●PHSデータ通信サービスの傾向と対策 その1(4月1日掲載)


【マーケット状況】

 現時点で発売されている、端末や通信カードについても報告しておこう。
 現在、PIAFSに対応したPHS端末は、NTTパーソナルおよびDDIポケットの製品が出荷されている。アステルは4月1日からのPIAFSサービスの開始をアナウンスしているが、3月末の現時点では、店頭でその存在を確認することができない。

NTTパーソナルのPIAFS対応端末とカード。いずれもシャープ製

 NTTパーソナルブランドのPIAFS対応端末は、なかなか魅力的なスペックだ。いずれも77~80gと非常に軽量で、待ち受け時間の長さ、PLAYシャトルによる操作性も非常に優れている。電話帳機能や文字メール機能、端末レベルの留守番電話機能など、データ通信を行なわなくても通常の電話機として魅力も大きい。
 価格の面では、店頭でも9,000円を越えており、PHS端末としては高価だ。データ通信用PCカードとの組み合わせでは、新規購入の場合で23,000円前後の費用(加入手数料込み)がかかるが、この端末とカードを合わせた価格では、後述のαDATA対応のものよりもかなり安くなっている。

 DDIポケット製のPIAFS対応機種は、いずれもαDATA32対応として販売が行なわれている。これはαDATAの32kbps通信対応と勘違いする人が多いのだが、αDATAの32kbps通信は単なるαDATA端末で行なうことができる。αDATA32とは、αDATAとPIAFSに同時対応した端末のことを指す。
 αDATA32対応のPHS端末は、ビクター、サンヨー、東芝から発表されているものの、いずれも店頭での存在はまだ確認していない。通信カードも東芝の「IPC0004A」が発表されているが、出荷予定は4月25日ともう少し待たなくてはならない。

 αDATA32対応端末は、サイズや重量、デザインなどでNTTパーソナルのPIAFS対応端末よりも若干劣っているように思う。サンヨーの端末「PHS-P301」は重量も軽く、端末レベルの留守番電話機能など、かなり良いスペックを持っているが、αDATA32を使うためには別売りの3,000円のデータ通信ユニットを電話機に取り付けなければならない。現時点でのおすすめは、軽量で多機能な東芝の「DL-S26P」(4月25日出荷予定)がスペック的に良さそうだ。実勢価格がそれほど高くならないようなら、ベストチョイスと言える。
 既存インフラへの接続と、将来的なPIAFS普及の可能性を考えれば、αDATA32は非常に魅力的な規格ではあるが、今のところ端末そのものの魅力を感じない点がセールス面でのマイナスポイントになるかもしれない。逆に魅力的な端末さえ登場すれば、とても魅力的な選択肢となる。

 単に32kbps通信を行ないたいだけであれば、αDATAのみに対応する端末を購入するのも手だ。こちらは昨年の12月からサービスが開始されているため、端末の選択肢も広い。
 私自身が購入した端末もこのタイプ。様々な機種の中から、松下電器産業の「KX-PH13Z」を選んだ。この機種はDDIポケットの端末としては、比較的軽量な部類で、機能も非常に豊富。操作性もNTTパーソナルのPIAFS対応端末並みにいい。無い機能は端末レベルの留守番電話機能ぐらいのものだろう。実売価格も新規購入の場合で1,680円だった。
 αDATA対応通信カードは、セイコー電子工業、東芝、松下電器産業、USロボティクスなどから発売されている。実勢価格は量販店などで28,000円前後と、NTTパーソナルのPIAFS対応通信カードと比べると高価。いずれも14.4kbpsまでの通信速度しかうたっていないが、簡単なATコマンドによる設定変更で32kbps通信を行なうことができる。
 αDATA32対応通信カード発売の影響で、αDATAのみ対応の通信カードが安くなるようであれば、PIAFSにこだわらずにαDATAのみ対応の端末と通信カードを選ぶのもひとつの手だろう。

 なお、注意しておきたいのが京セラのDataScope。無線モデムとしてDataScopeを利用する場合、標準では2,400bpsのみなし通信のみしかできない。追加ソフト(4,000円、本体予約購入者には無償配布された)をインストールすれば、PIAFS対応にすることもできる。
 しかし、αDATAに対応するには4万円の「データスコープαデータキット」(3月発売予定、未発売)を取り付ける必要がある。このアダプタは高価である上、PCとの接続はDataScopeをPCに直接挿入するのではなく、ケーブルによりシリアルインターフェイスに接続するタイプになるという。PIAFSとαDATAの両方を、DataScopeで利用可能ということで、購入を検討しているユーザーは頭に入れておいてほしい。

【PHSキャリア3社の選び方】

 「結局、どこのPHSキャリアを選べばいいのか教えてくれ」という声も聞こえて来そうなので、そろそろ結論じみたことを展開してみよう。

 規格から言えば、αDATA32(つまりDDIポケット)に対応したPHSが、もっとも柔軟性があり、かつ将来性もある。しかし、αDATA32に死角がないわけではない。
 まず初期コストが少々高くなることだ。NTTパーソナル製PIAFS端末とαDATA32端末の価格は近いと予想しているのだが、通信カードに関してはNTTパーソナルやアステルの方が単なるαDATAのカードと比較しても2万円近く安い値段で売られている。DDIポケットによれば、αDATA32用通信カードは、αDATA用よりもさらに若干高価になるとのことなので、その差はさらに広がるかもしれない。機能が違うのだから仕方ない……とはいえ、端末が数千円であることを考えれば、この差は大きい。
 また、DDIポケットにはαDATAという強力な武器があるため、逆にPIAFS普及のための特別なサービスは実施していない。たとえば、データ通信による接続を月額固定料金制にするサービスをNTTパーソナルが開始するが、DDIポケットでは現時点でこうしたサービスの計画はない。NTTパーソナルでは、4月中はデータ通信料金が無料という点も、とても魅力的だ。
 前述のように、個人的にはαDATA対応機種を購入して、全く問題も不満も持っていないが、「4月中はPIAFSデータ通信無料」という団子を目の前にぶら下げられれば、通信料金は切実な問題だけに、PIAFS対応の製品が欲しくなるのが人情だろう。
 現時点で端末のないアステルは別にして、NTTパーソナルとDDIポケット、どちらを選択するかは非常に難しい。

 では通話エリアはどうだろう。私は首都圏での活動が多いため、全国規模での使用感はわからないが、DDIポケットがもっとも電波状況が良いと感じている。DDIポケットはPHSサービス開始当初に、電波状況などでかなりトラブルがあったそうだが、それ以降、同社の高出力アンテナと高位置へのアンテナ設置などで、順調にエリアを増やすことに成功している。
 逆にデパート内や地下鉄など小エリアのカバーが弱い印象もあったが、徐々に改善されており、少なくとも都内では問題となるケースはほとんどなくなっている。
 NTTパーソナルとアステルは、小エリア向けアンテナを多数設置するというPHSの王道を進んだわけだが、ちょっと奥まった場所や室内(本来、室内ではPHSは使えないが、DDIポケットの場合は使えることが多い)での弱さを感じる。
 両社とも高出力で広エリアをカバーする、DDIポケット型の基地局も増やしているようだが、今のところDDIポケットに追いつくほどではないようだ。
 もっとも、これら通話エリアに関する話は「そうした傾向がある」程度の参考意見としてとどめて置いて欲しい。PHSは高出力アンテナでも半径500メートル程度のエリアしかカバーしないため、利用者の行動範囲によってPHSキャリアの善し悪しは大きく異なるからだ。

 結論としては、PHSの通信方式については、DDIポケットのαDATA32の方が、自宅のモデムやTAへダイヤルアップすることもでき、使い勝手が良いといえるだろう。しかし主要プロバイダーやNIFTY-Serveはサービスインと同時のPIAFSサポートを開始しており、これらのプロバイダーやBBSにアクセスするだけなら、4月中はデータ通信無料のNTTパーソナルを選択したほうが通信料、機器代ともコストは安くあがる。
 ただし、どんなに魅力的なサービスがあろうと、自分が利用したいエリアで使えなければなんの意味もない。キャリア選択の際は、まず自分の使いたいエリアで使えること、その次にデータ通信の用途と予算に合わせて選ぶことをおすすめする。

□NTTパーソナルグループホームページ
http://www.nttphs.co.jp/
□DDIポケット電話グループホームページ
http://www.j-plaza.or.jp/ddi-pocket/
□アステルグループホームページ
http://www.astel.co.jp/

('97/4/1)

[Text by 本田雅一]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp