【周辺】

ついに登場した、130万画素のズーム付きデジタルカメラ!

プロカメラマン山田久美夫が見た


富士フイルムDS-300レポート




 「今年は100万画素クラスのモデルが続々登場する」と年始に紹介したが、その第一弾が早くも登場した。それがこの2月に技術発表された「富士フイルム・DS-300」だ。このモデルは現時点で価格・発売日ともに未定だが、すでにアメリカのPMA(米国最大の写真機材ショー)では今春発売で、価格は2500ドルとアナウンスされているので、日本国内での正式発表は時間の問題だろう。

 アメリカで2500ドルということは、現在のレートでは30万円弱だが、日本国内ではもう少し安くなる可能性もあり、現在でも同じ130万画素CCDを採用した一眼レフタイプのプロ用機「DS-505A」などは80万円クラス(もちろんレンズなしのボディーのみ)であることを考えれば、ようやく、ギリギリ手の届く価格帯になってきたわけだ。この価格帯なら、「画質面で当分買い換える必要がなければ、買ってもいいかな?」という気になる人もいることだろう。そこで今回は、(たぶん)世界初となる、この「DS-300」の実写レポートをお届けしよう!



●”世界が違う”魅惑の130万画素の世界!

作例1

【1,280×1,000pixel(303KB)】

 まずは、実際の画像をダウンロードして見ていただきたい。たぶん、35万画素クラスの画像を見慣れている人にとって、この画質はほとんど未体験の世界だろう。さらに、人気の某84万画素モデルのユーザーが見ても、明らかにワンランク上のクォリティーを体験できると思う。そう、本機の画質をCPUに例えると、35万画素クラスが486、84万画素クラスがペンティアムだとすれば、これはペンティアムプロのツインCPUといった感じだろうか?

 私自身、最近は35万画素クラスのモデルを使う機会が多かったこともあって、久しぶりに見る130万画素の世界を目の当たりにして「ああ、やっぱ、きれいだなあ~」と素直に思うと同時に「デジタルカメラも、こうじゃなきゃ!」と思った次第。もちろん、私だって(自慢じゃないけど)130万画素クラスの一眼レフを持っているが、このクラスがスタンダードになって、初めてデジタルカメラは一人前になると思っている(もっとも、画像容量は展開時で約3.5MBと大きいので、CPUやメモリー容量によっては、開くだけでもキツイかもしれないが・・・)。

 さてさて、130万画素という数字だけを聞くと、解像度ばかりに関心が集中しそうだし、実際に画像を見ていると、"メガ現れる”じゃない(ATOK8の誤変換!?です)、"眼が洗われる”ような美しさを備えている。これは解像度が高いばかりでなく、色や階調の再現性にも優れているからだ。

 このあたりは、いかにもフィルムメーカーらしい、素直な絵作りとなっており、感覚的には「DS-8」のハイクォリティー版という感じだ。また、画素数が多くなることで、画面内の1画素あたりの面積が小さくなるので、それも階調が滑らかに感じる大きな要因となっている点も見逃せない。また、画像の密度が高まった分だけ、絵が大人しく見えるという点もある。これは画素数の少ないモデルほど、コントラストや彩度を高めて、見た目の印象を強くしなければ、絵として保たないともいえるわけで、このあたりを突き詰めてゆくと、かなり深~い世界がある。


●とってもきれいなVGAモード

作例2

【640×480pixel(165KB)】

 また、本機には1000×1280ピクセルモードのほかに、普通の640×480ピクセルのVGAモードもある。しかも、このVGAモードは、130万画素分のデータを使ってVGA画像を作成するため、普通の35万画素CCDの画像よりも遥かにきれいで高密度な画像になる点が大きな魅力。つまり、単板の35万画素CCDでは、輝度(明るさ)情報は35万あっても、色情報は原色系にしろ、補色系にしろ、その1/3しかない。このあたりが、同じピクセル数でも、スキャナーやフォトCD、3CCD式デジタルカメラ&ビデオの画像の方がきれいに見える所以なのだ。そして、本機のVGAモードでは、ほぼ各ピクセルすべてが色情報を備えているため、階調が豊富で実に美しいVGA画像が撮れる理由になる。そのため、ホームページ用などで大きな画像サイズを必要としない人にも大きなメリットがあるわけだ。もちろん、画像が小さい分撮影枚数も稼げるわけだ。かなり贅沢な使い方だが、明らかにワンランク上のVGA画像が得られるモードといえる。


●自然で微妙な色再現

作例3

【1,280×1,000pixel(325KB)】

 ちなみに本機は、普通のパーソナル機のように、その場の光源に合わせて、自然な発色になるように色調を自動調整する、オートホワイトバランス機能が標準ではない。通常はデーライト(日中光)でノーマルな色再現になるように設定されている。これは、微妙な色再現にこだわった結果で、電灯光下で撮れば赤くなるし、蛍光灯下で撮ればグリーンがかった発色になる。そのため、今回掲載したカットも、屋内や夕方に撮影したカットは、それなりに色がかぶっているが、これで正常だ。もちろん、ホワイトバランスの調整機能もあるが、それは業務用ビデオカメラのように、撮影する光源下に白い紙を置いて調整するタイプになっている。このあたりの仕様は、やはり業務用途をかなり重視した結果といえるだろう。

 しかし、モードとして、自動でホワイトバランスを調整するモードがあれば、屋内スナップなども気軽に撮れるため、次機種では搭載して欲しいところだ。 また、本機はISO感度を100相当と400相当に切り替えることができる。もちろん、ISO100のモードの方が画質がよく、シャドー部までノイズが少なく、きれいだ。しかし、ISO400モードでも実用十分な画質が得られるため、屋内や夕方のスナップではISO400モードを使った方が、カメラブレが少なく安心だ。


●やっぱり欲しい液晶モニター

作例4

【1,280×1,000pixel(658KB)】

 さて、本機は基本的に、結構業務用途を重視した設計になっている。とはいっても、バリバリのプロカメラマン向けというわけではなく、写真を撮るのがメインの仕事ではない記者や編集者、さらに写真館での簡単なポートレートや証明写真、簡易的なパンフレットやカタログ作成、建築記録や保険の証明用といった用途を意識した設計になっている。このあたりは、どちらかというと「キヤノン・PowerShot600」などに近い部分がある(ややターゲットは異なるけど・・・)。

 そして、外見で分かるように、いまやデジタルカメラのトレードマークとなっている、液晶モニターはない。もちろん、ビデオアウトがあるので、そこに液晶テレビなどをNTSC経由で接続すれば、再生画像を見ることができるが、通常撮影ではファインダーとして使うことはできない(マクロモードでは常時表示が可能)。これは賛否両論分かれるところだろうが、個人的には、やはりこのクラスでも液晶モニターは欲しいし、液晶をファインダーとして、ピントや露出や正確なフレーミングの確認に使いたい。この点は仕様とはいえ、やはり 残念だ。

 しかし本機は、視野枠や撮影距離情報を表示できる透過式液晶表示式の光学式ファインダーを採用しているため、少し慣れれば、液晶モニターなどなくても、ほとんど支障なく撮影できる。また、オートフォーカス機能もかなり高精度で、測距ミスをすることは、今回の実写中、ほとんどなかったので、その点でも信頼性は十分にある。そのため、本当に液晶モニターが必要なケースはあまりない。つまるところは、液晶は確認用と割り切っても、安心のために,小さくてもいいから欲しいというのが、正直なところだろう。


●大柄だが意外に軽量なボディー

作例5

【1,280×1,000pixel(669KB)】

 さすがに、サイズはでかい。といっても、中身を考えると、これほど大きなボディーサイズが必要だったのか、大いに疑問を感じるところだが、ベースとなったボディーが同社の中判カメラであることを考えれば納得がゆく。もちろん、将来の130万画素クラスのカメラがこのようなサイズになると誤解しないように・・・。

 もっとも、本機は携帯時はレンズがボディー内に収納される沈胴式のため、凹凸が少なくなり、携帯性は見た目ほど悪くない。しかも、ボディーは軽量で頑丈なマグネシウム合金のため、重さも620gと見た目よりもかなり軽量だ。 また、個人的には、この、なんともメカニカルでカメラっぽいデザインと質感の高さが結構気に入っていて、珍しく”物欲をそそる”タイプのデジタルカメラだと思っている。”違いが分かる大人”のためのデジタルカメラという感じがするのだが・・・。

 さて、これだけの高画質モデルとなると、操作も難しそうに感じるかもしれないが、そんなことはない。基本的には普通のデジタルカメラやコンパクトカメラと同じように、シャッターを押すだけでちゃんと写るイージーさを備えている。実際に使ってみると、あまりに簡単で、ほとんどコンパクトカメラ感覚で130万画素での撮影ができてしまうため、なんだか呆気ない感じすらする。
 もちろん、本機は本格的な撮影もきちんとこなせるように、全自動モードの他、プログラムAE、シャッター速度優先AE、絞り優先AE、マニュアル露出といった作品造りに便利な露出モードも備えている。さらに、露出補正機能はもちろん、連続撮影機能なども備えている。


●シャッターを押すだけの超簡単さ

作例8

【1,280×1,000pixel(325KB)】

 実際に撮影してみると、130万画素というVGAの約4倍もの高画素にもかかわらず、メモリーカードへの記録が約3秒(圧縮モードでやや変わる)と素早く、実にスイスイとスナップできるのには驚く。もちろん、単体でも十分高速だが、別売の拡張ユニットを装着すると、秒間4.5コマの高速連写(最高12コマまで)までできるのだから、これはもう軽快そのもの。このユニットにはSCSI転送用端子も備わっており、プリンターによっては、パソコンを経由せずに、カメラからダイレクトにプリントアウトすることもできる。

 撮影枚数は、画質モードで大きく変化する。画質モードは非圧縮、ファイン、ノーマル、エコノミーの4種が選べ、圧縮方式はJPEG準拠。画像フォーマットはもちろん、同社が提唱しているJPEG準拠のExifを採用している。


作例9

【1,000×1,280pixel(407KB)】
 モードによる画像サイズの変化はなく、すべて1000×1280ピクセル。そのため、記録時のファイルサイズは非圧縮では約3.5MB、ファインで約600KB強、ノーマルでは350KB前後だ。さすがに130万画素ともなると、20MBカードでノーマルモードでも撮影枚数は62枚と、意外に少ない。やはり、本格的に使うなら、20MBか40MBカードが必要だし、できれば数枚用意したいところ。今回はフジ純正の高速書き込みタイプのPCカードを使用したが、手持ちのエプソンの20MBカードやスマートメディア(PCMCIA変換アダプター併用)でも問題なく作動し、十分な記録速度が得られた。

 画像転送は基本的にPCカード経由となるが、シリアル転送もできる。もちろん、カード経由のほうが遥かに軽快だし、JPEG準拠なので普通の画像処理ソフトでも開くことができる。ただし、画像サイズが大きいので、インターネットブラウザを使う場合には、画面から画像がはみ出して困ることもありそうだ。

 今回は屋外での画像確認用にペンティアム100MHzのビブロNC/S(メモリー48MB)や、デスクトップのペンティアム133MHzクラスのマシン(メモリー80MB)で使用してみたが、このあたりが実用最低限。これよりローパワーのマシンでは、画像を開くにもかなりの時間がかかり、ストレスを感じるだろう。


作例6

【1,000×1,280pixel(568KB)】
 このほかでは、電源は充電式(ビデオなどで多用されている汎用タイプ)で、撮影枚数の点でやや不安があったが、ストロボを使わなければメーカーでは800枚の撮影ができるとしており、一日撮影していてもバッテリー表示が減ることはなかったので安心した。

 そのほか、使っていて気になったのは、細かなモード設定のやり難さで、比較的使用頻度の高い露出補正機能を使うときでも、いちいちメインダイアルをセットアップモードにして操作してから、元の露出モードに戻さなければならないのは面倒だった。

 また、マクロ撮影が20cmまでという点もやや物足りない部分があるし、このクラスのモデルになるとファインダー内にシャッター速度や絞り値を表示して欲しいといった部分もでてくる。しかしながら、富士フイルム自身が自信作だというだけあって、全体にかなり完成度の高いモデルに仕上がっていることだけは確実だ。


●とっても気になる国内価格

作例7

【1,280×1,000pixel(321KB)】

 もちろん、この世界は日々進化しているし、明日、半額のメガ・ピクセルカメラが登場してもおかしくない世界。それだけに、日本国内での価格設定が大いに気になるところ。カメラの造りがしっかりしており、細部の造りも結構凝ったモノになっていることから、実販で20万円を割れば御の字。それ以下ならかなりのお買い得価格という感じだろう。

 まあ、これで液晶モニターが標準装備されているか、せめて一体化できるものが用意されていれば、かなり便利だとは思うが、本機の画質はそれを上回るほど魅力的だ。しかしながら、シャープが109万画素CCDを発表したり、昨年発表のソニーの130万画素CCDも近い将来は量産化されるだろうし、東芝も130万画素CMOSを参考出品するなど、高画素デバイスが各社揃いつつあるので、今年中か来年には、本当に100万画素クラスがスタンダードになりそうだ。そのときにも、本機が画質的に明確なアドバンテージを維持し続けられるかどうかは、他社の努力次第というところもあるし、デジタルイメージングに本格的に取り組んでいるコダックあたりの動きも注目される。

 しかし、なんとか手の届く価格で、このような完成度の高い高画質な”メガ・ピクセル”カメラが、これほど早い時期に登場したことに驚くとともに、これを素直に喜びたい。



□富士写真フイルム株式会社のホームページ
http://www.fujifilm.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj164.html

□参考記事
【2/13】富士フイルム、総画素140万CCD採用「フジックス デジタルカメラ DS-300」発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970213/fujifilm.htm
デジタルカメラ関連記事インデックス
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/digicame/dindex.htm

■注意■

('96/3/13)

[Reported by 山田 久美夫 ]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp