【イベント】

揃い踏みした互換機の数々

MACWORLD Expo/Tokyo:注目の互換機レポート

 今回のExpoの最大の話題はマック互換機といってよいだろう。会場には多くの互換機ベンダーが軒を並べ、注目度も高い。すでに米国では各社が開発と販路拡大に凌ぎを削っており、Apple純正品と同スペックながら魅力的な価格設定をしている互換機も出回り始めている。ここでは、会場で展示されている互換機の中でも、とくに注目の製品、メーカーについてレポートする。


●パイオニア MPC-GX2(仮称)

pioneer
 日本初のクローンベンダーであるパイオニアは、昨年より噂のあったCHRP準拠マシン、「MPC-GX2」を初披露。スピーカー部の曲線が印象的なこのタワー型モデルの匡体は、先のMPC-GX1よりもひとまわり大きく、PowerMac 9500並みのサイズ。気になるその仕様は、CPUはPowerPC 604e 200MHzを搭載、ソケット式のPGA(Pin Grid Array)を採用しており、将来的なCPUアップグレードにも容易に対応できるようになっている。発売時点のチップの在庫次第では604e 225MHzなど、より高速なプロセッサに変更される可能性もあるという。「MPC-GX2」にバンドルされるOSはMac OS(Mac OS 7.6BENA + Chrp Enabler)となっている。
 CHRPに関しては、'96年暮れにMotorolaとIBMがPowerPC用Windows NTの開発中止を決定しており、雲行きがあやしくなってきた。そこで、会場の担当者に今後のCHRPへの同社の対応について尋ねてみた。

PC Watch 昨年暮れにPowerPC対応のWindows NTの開発中止がアナウンスされたが。
Pioneer パイオニアとしてはあくまでもMac互換機を作っているつもりだ。CHRP仕様を採用しているのはチップセットが66bitと現行のものよりも高速であり、最速のシステム構成が可能であるため。近い将来には75bit化も可能だ。

PC Watch 展示用マシンにはDOS/Vマシンで一般的なISAバスが搭載されているようだが。
Pioneer CHRP開発時の名残のようなもので発売時には取り外される可能性が大きい。

 言うまでもなく、PowerPC対応のWindows NTがリリースされないということは、CHRPにとって最大の旨味(最大の顧客)が欠落することを意味する。'98年にAppleからリリースされるMac OS、“Rhapsody”がIntelチップにも対応することもあり、Pioneerの今後の対応が注目されるところである。


●パワーコンピューティング

 今春から日本市場参入を果たすパワーコンピューティング。MacSquare内にあるTECHZONEで展示されているのは、アッパーミドルクラスのPowerTower Pro 225(PowerPC 604e 225MHz)、そして下位モデルのPowerCenter 180の3機種だ。

PowerTower Pro 225 迷彩服に身を包んだ日本市場担当氏

 パワーコンピューティング社でも、ブースにいた日本市場担当者に、同社の互換機戦略について話を伺うことができた。

PC Watch 米国でのPowerTower ProにはDirector5.0やSpeed Double2.0を含む多くの魅力的なソフト群がバンドルされているが、日本で発売される際にはこれらの特典はどうなるのか。
PowerComputing もちろん日本語版でも同様の特典を考えている。現在各ソフトのライセンス許諾を得ているところだが、英語圏でしか使用できないソフトをバンドルしても仕方がない。その分本体価格が安くなることもあるだろう。

PC Watch 本国ではBeOSがバンドルされているが日本国内販売分に関してはどうなるのか。
PowerComputing 日本語版に関しては別契約なので現段階では具体的なことは言えないが、我々としてはつねにBeOSの最新版をバンドルして行きたいと考えている。

PC Watch パワーコンピューティング社の互換機戦略は。
PowerComputing とにかくダイレクトセールスでDELLのように中間マージンをできるだけ省き、消費者に安価に届けたい。

 先月のExpo/San Franciscoでは、迷彩服を着た同社社員がジープに乗ってサンフランシスコ市内をパレードするなど、派手なキャンペーンが行われたようだが(今回取材した日本市場担当者も迷彩服に身を包んでいた)、同社の猛烈商法が日本でのMac市場拡大に繋がることを期待したい。


●日本モトローラ

StarMax 4200/200
StarMax上で動作するBeOS

 派手なムービーが印象的な日本モトローラのブースはStarMaxシリーズの展示が行われている。StarMaxに関しては、2月19日に日本国内販売に関する正式発表が行われた。仕様など詳細については、20日のPC Watchの記事に譲るとして、今回の展示で注目されたのはStarMax上でBeOSが動作していたことだろう。
 日本モトローラのブースでは、幸いにもBe社テクニカル・エヴァンジェリストのHiroshi Lockheimer氏にその場で話を聞くことが出来たので、互換機そのものからはちょっと離れるが、その内容をレポートしたい。

PC Watch 今回のStarMaxへのBeOSバンドルについて聞きたいのだが。
Be 現在、会場でデモしているのはディベロッパーリリース8.2だが、早ければ4月下旬ににDR9をリリースする。BeとしてはこれをプレビューリリースとしてStarMaxへバンドルしていきたい。

PC Watch Be社は今月初めハード部門からの撤退を表明したが。
Be 去年の8月にBeOS for MacOSの開発の目処がついた時点で方向性は決まっていた。PowerMac上でBeOSが十分なパフォーマンスを得られることがすでに証明されており、ユーザーからの反響も大きい。

PC Watch BeOSにとって現段階での困難はBeOS対応アプリケーションの少なさではないか。
Be 現段階ではそうだが、BeOSは多くのデベロッパーからの支持を得ており、小回りの利くソフトハウスも多い。われわれはそれらの流通、広報をサポートしていく用意は十分にある。

 会場内ではパワーコンピューティング、日本モトローラの他にも販売店「ぷらっとほ~む」がBeOSの展示をしており、いずれも非常な注目を集めていた。'96年のAppleによる買収の噂とBeOS for Macによって、BeOSはマックユーザーの注目を集め、BeOSの知名度がいっきに上がった。BeOSの普及の鍵は、やはりアプリケーションの増加にかかっている。自信を見せたLockheimer氏だが、今後の成果に期待したい。


●ユーマックス・コンピュータ

 ユーマックスではPulsarシリーズ、Apus、Astraシリーズを展示している。Apus 3000はPowerPC 603e/240MHzプロセッサ・カード搭載のミニタワー型モデル。CPU交換が容易とはいえ、パワーユーザーにはメモリスロットがふたつ(そのうちひとつははじめから16MB DIMM装着済み)という仕様は不満だろう。Apus 2000は、PowerPC 603e/160MHz、603e/200MHzの2機種が用意されたミッドレンジモデルである。会場では、PowerPC 604e 225MHzを搭載した、真っ赤にペイントされたPulsar 2500や、それとは対照的な緑色のA3サイズスキャナMirageも紹介されている。ブースでユーマックス社の方針を伺ったところ、ユーマックス社としてはDOS/Vレベルの供給環境を提供したい、システムも可能な限り可変的なものにしたいと考えている、という。

Apus 3000 UMAX PPCP-2(参考出品)

 なお、同社でもCHRP準拠のUMAX PPCP-2が参考出品されており、仕様はPCI×3、ISA×2、最大768MB(EDO、PM、SDRAMサポート)、バスクロック88MHzで、チップは603e 166MHz、604 200MHzもしくはそれ以上とのこと。


●アキア

 '96年秋に、互換機マーケットへの参入をアナウンスし話題となったアキアは、1月末に発表したMicroBook Power604e/225、 603e/240を展示。いずれも現時点でのハイエンドモデルと言える。特に604e/225は非常に魅力的な価格設定をしており、同社の液晶ディスプレイを覗き込む来訪者も多い。アキアは四半期ごとに新モデルをリリースしたい、とMac互換機ビジネスに意欲を見せている。ただ、今回ブースを共有しているマクロメディアと共に開発中とされるクリエイター向けのCreative Workstationの展示がなかったのは残念だ。

MicroBook 603e/240 MicroBook 604e/225

('97/2/20)

[Reported by nao-f@st.rim.or.jp / watchers]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp