プロカメラマン山田久美夫が見た
つまり、CCDがセットのレンズユニットと、液晶付きボディーとがそれぞれ独立した構成となっているため、将来的には4倍ズームユニットやオートフォーカス付きユニットはもちろん、100万画素CCDを採用した高画質ユニットがそれぞれ別に登場してくる可能性もあるわけだ。例えば、現在のボディ部には記憶媒体にスマートメディアを採用しているが、この記録媒体では現状で8MBまでしか予定されていないため、100万画素クラスのCCDやさらに大量の撮影をしたいという人には向いているボディとは言えない。しかし、これも大容量化の容易なコンパクトフラッシュメモリー採用ボディーが出てくれば、差し替えることで簡単に対応できることになる。もちろん、ミノルタ側はこのような計画を表明していないが、αシステムで現在のAFシステム一眼レフの世界を切り開いたメーカーだけに、このDimageVをそうしたデジタル・システムカメラとして発展させていく可能性は十分にあると言えるだろう。
今回は、「DimageV」に秘められた、こうした可能性も視野に入れながら、本機のレポートをお届けすることにしよう。
実際に手にしてみると、ショー会場で見るよりもかなりコンパクトに見えるし、思ったよりも高級感がある点がいい(Cybershotのように外装は金属なので、触れたときにヒンヤリとする点もいいですね)。
もちろん、小型軽量という点では、先日発表されたNEC・ピコナ(結構期待できそうですよ!)や、九州松下・COOLSHOT(……?)のモデルに比べれば、やや大きいサイズとなる。しかし、レンズを立てた状態では、全体に薄型になるし、このサイズで単3型電池4本とスマートメディア、1.8インチ液晶モニターからストロボまでもフル装備されているわけだし、大きく見えるレンズもこれは2.7倍ズームだからこそ。そう考えると、このコンパクトさはかなりのものといえるだろう。もちろん、胸ポケットにもスッポリはいるので、携帯性もいい。
また、これほどレンズが大きいと、気分的に写りが期待できそうな気がする。デザイン的に見れば、レンズ部がやや目立ちすぎる感じもあるが、レンズが大きい分、むしろ写りに対する安心感があるので、許せちゃう感じがするから不思議だ。
ズームレンズのズームレバーの操作感も滑らかで、適度なトルク感があり、なかなか良好な感じだ。レンズ部は180度回転し、携帯時にはレンズを立てて、ボディーと面一にするわけだが、この位置で軽い固定用のクリックが設けられている点も良く考えられている。
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電源は単3型4本。この薄さでどこに収納できるのだろうと思っていたが、やはり収納スペースはギリギリ。その蓋を開けたところに、かなりアクロバット的な入れ方で収めることになる。今回は電池が消耗するほどの枚数を撮影しなかったので、どれくらい撮影できるのかわからないが、メーカー側の説明では標準的な条件でゆうに100枚以上撮影することができるという。
記録媒体は、超薄型メモリーのスマートメディア(旧称:SSFDC)。標準で2MBのカードが付属しており、ファインモードで14枚、スタンダードモードでは30枚の撮影ができる。もっともこの枚数は確実に保証できる撮影枚数で、条件によってはさらに多くの枚数が撮影できる。これはDimageが画質を最優先し、撮影データの記録時にデータ圧縮率を一定にするタイプを採用しているためで、逆にカメラやフィルムメーカーの多くは、撮影枚数を確実に保証するため、ファイルサイズが一定になるまでJPEG圧縮を行う方式を採用している。後者のタイプでは、もともと絵柄が細かくて、JPEG圧縮による圧縮効果が少ないシーンの場合でも、ファイルサイズを規定内に収めるため、さらに圧縮率を高めて画像を粗くするという、画質重視で考えると末転倒といえるような方式を平気で採用しているということになる。本機の場合は圧縮率のみを固定しておき、ファイルサイズはある意味で成り行きとなっているが、その分、絵柄の細かい画像でも画質低下が少ないというメリットがある。ただし、撮影枚数を確実に特定できないのがデメリットだ。個人的にはやはり、DimageVが採用した方式の方がデジタルカメラとしては正しい方向だと思うのだが…。
ちなみに、本機が採用している画像フォーマットはJPEGがベースとなったExifと呼ばれるもので、富士写真フイルムが提唱している規格に沿っている。そのため、今秋から開始されるカメラ店などの店頭受付による、デジタルカメラからの高画質なカラープリントサービスに、早期から対応できる可能性が高く、長い目で見れば、この点も本機の魅力の一つと言えるだろう。
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しかも、35mmカメラ換算で34~92mm相当の2.7倍のため、ワイド側では屋内撮影や建物の撮影などもカバーできるし、望遠側が92mm相当まであれば、かなりの望遠効果がある。もちろん、遠くにいる人物をアップで取れるような望遠ではないが、人物の上半身を、相手を緊張させずに撮れるくらいの距離感が得られると思えばいいだろう。
実際に使ってみると、液晶表示を見ながらグ~ンと望遠側にズーミングするだけで、なんだか楽しく感じる。しかも、ちょっと離れた被写体を撮影するときにも安心感がある。なにしろ、35万画素程度の解像力では、画面上で一部だけをアップにしてみられるようなクォリティーは備わっていないので、その分、望遠側を使って画面いっぱいに被写体を捉えたほうが見栄えもするし、画質的にも断然有利だ。
もっとも、ズームレンズには欠点もある。レンズの明るさが通常の単焦点タイプと比べて暗いのだ。実際、多くの単焦点レンズ付きモデルのF値(明るさ)がF2~2.8前後であるのに対して、このDimageVはF5~5.6と暗い(このF値は数字が2倍になると明るさは1/4になる)。そのため、基本的には暗い場所での撮影に不利になる部分が多い。
また、意外かも知れないが、1/3や1/4インチCCDを採用した35万画素以上のデジタルカメラのレンズは、通常のフィルム式カメラよりも高い解像度が要求される。そのため、オリンパスやキヤノンなどは、1mmあたり100本以上の高解像力を備えた単焦点レンズを装備しているわけだ。しかし、これほどの高解像度をズームレンズで実現するのはきわめて困難であり、サイズや明るさ、コストなどの諸条件を満足させながらそれを実現するのは、現時点では相当に難しい。これがビデオのような動画ならば、多少レンズの画質が悪くても実用になるケースもあるが、静止画ではそうもゆかないわけだ。そのため、ズーム搭載機は基本的に究極の画質よりも、便利さを優先させるのが、現状の1/3や1/4インチクラスの、画素の小さなCCDを搭載した機種の宿命といえるわけだ。
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まず、ズームレンズを採用しているということで、一番気になるのはやはり解像力。この点は極上というほどではないが、他社の単焦点タイプと比べても、遜色のない画質を実現している。某家電メーカーのズーム付きモデルの中には、明らかにレンズの解像度が不足しているモデルもあるが、DimageVの写りなら、とくにズームであることを意識することなく、安心して撮影することができる。
もっとも、本機の場合、フォーカス機能を持たないパンフォーカス式がベースになっているため、ピントのあう範囲が狭くなるズームの望遠側で撮影すると、至近距離では明らかなピンぼけになることもある。実写した感じでは、3m付近から無限遠までのピントは十分に良好だ。また、近距離では1.5m前後が限界で、それより至近側はピンボケになることが多い。もっとも、一般に望遠側では遠景を撮影するケースが多いため、実用上は現在のパンフォーカス式でもなんとか実用になっている。
もちろん、ピントの合う範囲が広くなる広角側では、50cm以遠ならば必要十分なピントが得られるので、安心だ。また、より近い距離を撮影したい場合には、ワイド側だけだが、より至近距離が撮れるマクロ機能が装備されている。この機能を使えば、レンズ前6cm、名刺が画面一杯に写るほどの接写も楽しめる。そのため、草花のアップなどを狙うこともできる。とくに本機は、レンズ部の延長ケーブルを併用することで、かなり自由なアングルから撮影できるため、この手の撮影にはもってこいだ。
もっとも、このクラスのズームレンズを本格的に使いこなそうと思うと、どうしてもピント合わせ機能は不可欠になるのは確実。レンズ性能がいいだけに、フォーカス機能だけはぜひとも搭載して欲しいところだ。前記の通り、本機の場合にはレンズユニットだけを交換すれば機能アップが容易に出来るため、できれば早期の実現を望みたい。
色再現性はなかなか良好で、現物に近い自然な再現をするのが魅力だ。さらに、階調の再現性もなかなかよく、子供の肌の感じなどもよくでている。
しかし、やや気になるのは、暗い場所での写りだ。もともとレンズが暗いこともあって、被写体が暗い場合にはCCDの感度をあげることで(ゲインアップ)対処している。これは、暗いシーンが全く写らないよりも、多少ノイズっぽくなっても、なにが写っているのか判断が付く方がいいだろうという割り切りの結果といえる。確かに、明るい場所での本機の画質や、明るい単焦点レンズを採用したモデルに比べると見劣りする面はあるが、メモ用と考えれば十分実用になるし、多少の画像処理をすれば、実用レベルの画質が得られるため、個人的にはこの判断に賛成だ。
また本機と同時に発表される別売アプリケーションの「デジフォトマネージャー」(9,800円)を使うことで、画像の整理はもちろん、同社指定のWebに画像を転送して、銀塩方式のCRTプリンターを使った、高品質なプリントサービスをこの春に開始するという。このサービスを使えば、インターネット経由でデジタルカメラからのプリントを気軽に依頼することができ、より身近にデジタルカメラを楽しめる環境を得ることもできる。この点も本機の隠れた魅力といえそうだ。
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□ミノルタ株式会社のホームページ
http://www.minolta.co.jp/japan/index.html
□Dimage Vのプレスリリース(発表当初のもの)
http://www.minolta.co.jp/japan/press/dimagev_j.html
□参考記事
【2/17】ミノルタ、Dimage Vついに発売
http://www.watch/docs/article/970217/minolta.htm
【1/27】山田久美夫が選ぶデジタルカメラ・ランキング['97/1/24版]
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/970127/digi10.htm
■注意■
('97/2/19)
[Reported by 山田 久美夫 ]