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プロカメラマン山田久美夫が見た

キヤノン「Powershot350」実写レポート


 キヤノンからようやく、35万画素クラスのパーソナル機「Powershot350」が発表された。発表と同時に入手できたので、早速、ファーストインプレッションと実写速報をお届けしよう。

 なお、仕様、価格などは下記の関連記事を参照されたい。
関連記事【1/17】キヤノン、35万画素CCD搭載の「PowerShot 350」を発表


JPEG形式VGAサイズのフォーマット
媒体はコンパクトフラッシュ

本体正面 本体裏面  その概要を簡単に紹介すると、35万画素の正方画素・補色系CCD(1/3インチ)を採用したVGAサイズのパーソナル機。レンズは単焦点式で、ピントは手動式(3cmまでの接写可能)となっており、ファインダーはMIM式1.8インチ液晶モニターのみ。記録媒体はコンパクトフラッシュで、標準で2MBのものが添付されており、撮影枚数はファイン11枚、ノーマル23枚、エコノミーで47枚となっている。また、画像フォーマットはJPEGで、サムネール用に小さなTIFFファイルが別ファイルとして記録された同社のPowershot600と同じタイプ。価格は本体のみで69800円と液晶&メモリーカード&ストロボ採用機としては手ごろな価格設定となっている。

なかなかスタイリッシュで
軽量・コンパクトなボディー

外観正面 外観全体  「おっ、なんだかCybershotみたいで、カッコイイ!」。これが本機を初めて見たときの第一印象だ。実際に手にしてみると、見た目よりも軽い。もちろん、Cybershotと違い、外観はプラスチックなので、手にすると見た目ほどの高級感はないけれど、きちんとホールド用のグリップ部があるので、持ったときの安定性はCybershotよりもいい。サイズもけっこう小さいが、Cybershotほどではなく、厚みがあるため、胸ポケットに入らないのが残念。しかし、バッグに入れて持ち歩くなら、このサイズはさほど気にならないし、付属ケースがベルトに付けられるタイプで、しかも予備電池まで収納できるため、このケースで携帯すると、なかなか具合がいい。

 まあ、いつかどこかのショーで見たような気がする人もいることだろう。そう、中身に違いがあるか分からないが、同じく今日、2時間遅れで発表された「松下 Card Shot」とほぼ同じ外観である。デザイン的には松下の方がメタリックな雰囲気で高級感があるが、キヤノンのほうが見飽きない感じもする。個人的には、やっぱりカメラメーカーであるキヤノンブランドのほうが、なんとなく安心感がある。

 編集部注:本日発表の「コニカ Q-mini QM-3501」もほぼ同型機。
関連記事【1/17】コニカ、35万画素CCD搭載の「Q-mini」を発表

ボタンは背面に集中
1機能1ボタン

操作ボタン  操作部は背面に集中しており、けっこう細々した感じだ。実際にボタンの数が多く、スイッチ類が小さいので、余計にそんな感じがする。そこで心配になるのが操作性だが、実際のところ、日常的に撮影する場合には、メインスイッチ以外はほとんど触れることがないので、今日撮影した範囲ではさほど不便な感じはなかった(第一、これだけ一般に普及してきたにもかかわらず、いちいち細かなスイッチを操作しなれば撮影できないようなデジタルカメラは、そろそろ勘弁してほしいと思う。例えば、絞りを手動でセットするとか・・・ね)。本機にはいろいろな機能があるが、さすがに手にしてから数時間では使いこなすことができず、今回は見送った。

ファインダーの見えはイマイチ

ファインダー部  ファインダーは液晶のみで、TFTではなく、MIM方式。そのため、TFTほど明瞭ではないのが残念。また、液晶表示の再現域がかなり狭いため、実際にはちゃんと写っているのに、液晶上でハイライト(明るい部分)が白く飛んでしまうこともしばしば。そのため本機は、液晶の明るさを容易に変えられるようになっており、見やすい明るさに適時調整する仕様となっている。また、わずかだが液晶を傾けられるが、さほど実用性はないようだ。コストの問題もあるのだろうが、液晶表示はカメラの印象を大きく左右する部分だけに、高品位なTFT液晶を採用してほしかった。

レンズは単焦点
ピントはパンフォーカス+マクロ時はマニュアル

マクロ例1 マクロ例2  レンズは35mmカメラで43mmF2.8相当の単焦点式で、ピントはマニュアルとなっている。もっとも、通常撮影時はクリックが入る状態で撮影すれば、一応、無限遠から1m弱までピントがあうようになっているので、通常のスナップ撮影では、ピント合わせは事実上不要といえる。また、さらに近距離では液晶モニターを見ながら、手動でピント合わせをおこなうわけだが、ピントの合う範囲が狭くなるうえ、MIM式液晶なので、ピント合わせには慣れが必要。だが、少し慣れれば、最短3cmまでのマクロ撮影でも、かなりシャープなピントが得られた。

媒体はコンパクトフラッシュ
標準の2MBでノーマルモード23枚

コンパクトフラッシュスロット部  記録媒体は、最近採用するメーカーが多い「コンパクトフラッシュ」。標準搭載は2MBで、枚数は前記の通り、ファイン11枚、ノーマル23枚、エコノミーで47枚となっている。さすがに11枚では厳しいので、今回の実写はノーマルモードでおこなったが、画質的にはこのモードでも十分な感じだ。また、画像フォーマットはJPEGのため、使い勝手は上々。さらに、サムネール用に小さなTIFFファイルが別ファイルとして記録されているため、付属のソフトを使った場合には、きわめて高速にサムネール表示ができるというメリットがある。しかし、カードからそのまま利用するには、同じ画像が2枚ずつあるため、やや煩雑な感じもある。

CCDは正方35万画素

夕景1 夕景2  CCDは正方画素の35万画素タイプだが、最近では珍しく補色系(YMC)フィルターを採用している。このタイプは原色系に比べ、彩度や再現域の点で若干不利だが、解像度が高いのが最大のメリットといえる。また、補色系のほうが感度の点で有利といわれているが、本機はISO120相当と原色系並みだ。このあたりはメーカーの画像に対する考え方の違いを感じさせる。

電源は単三電池3本
アルカリで60分?

湾曲 湾曲  電源は単三型電池3本という、おそらくパーソナル機で初めての仕様。他社はさまざまな理由から単三型4本となっているが、一本減ることでスペースやデザイン的な制約がかなり少なくなる。これで電池の持ち時間が他機種並みなら、これは感激すべきことだ。もっとも、今日の実写では撮影枚数が少なかったこともあって、電池切れはなかったが、この点に関しては今後使ってみて、またレポートすることにしよう。ちなみに、ほぼ同機種と思われる松下の発表会では、アルカリで30分、Ni-Cdで60分、リチウムで90分が目安であり、同社のアルカリ電池(通称:金パナ)では60分前後持つようだ。これだけ持てば十分許容範囲といえる。

コクのある色再現

作例1 作例2  画質はなかなか良好だ。今回のボディーはまだベータ段階で、製品版までにさらに画質が向上するというが、同じ35万画素クラスのなかでも、解像度の高さはおそらくトップレベル。また、色再現性もなかなか素直だ。絵作りはC-400LともDS-8とも異なる独自なもので、派手さはないが、コクのある落ち着いた雰囲気を備えており、好感が持てる。しかし、補色系CCDということもあって、明暗の再現域は原色系CCDを採用しているモデルに比べて、やや狭く、コントラストの高いシーンはあまり得意ではない。

ピントは2mぐらいにピーク
無限遠はやや苦手

ピント例1 ピント例2 また、本機は通常撮影時には、実質的にパンフォーカス(固定焦点式のような感じ)になる。このときのピントの設定距離は、テスト機を見る限り2m付近にピントのピークがある。そのため、無限遠のピントは若干甘め。CyberShotほど極端ではなく、C-400Lと同程度だが、解像度が高いだけあって、やや目立つ。このあたりは、パンフォーカス式カメラいずれもが抱える問題点だが、キヤノンブランドの同機でもやはりこの点は解決されていない。普通にカメラに比べ解像度が低いといわれる35万画素クラスでも、各撮影距離で良質な画像を得るには、AF方式を採用したいところだ。

ベスト5入選は確実か

自動車  これまでは57万画素の「Powershot600」とカードカメラの「Powershot30(30T)」という、やや特殊なラインナップだったが、今回の「Powershot350」の登場でもっともポピュラーなゾーンが埋まり、ラインナップが揃ったわけだ。実質的に、松下との姉妹機という感じだが、それでもカメラメーカーであるキヤノンのこだわりを感じさせる、なかなかの実力派モデルに仕上がっている。今年初めて発表されたモデルとしても、なかなか明るい年になりそうな気配を感じさせる、幸先いいスタートだ。実際に、この機能と性能で69,800円という価格は十分に魅力的であり、ノートPCユーザーならコンパクトフラッシュをPCMCIAに変換するアダプターさえ購入すれば、接続キットなしでも使えるし、カードを買い足したり、大容量カードを購入すれば、撮影枚数をさらに増やすことができる。そのため、購入時はもちろん、将来にわたっても、実質的な出費が少ない点も大きな魅力だ。とにかく、ランキングのベスト5には入りそうな気配があるニューフェースだ。

 個人的にはちょっと肩すかしを食った感じもあるが、今回実写してみて、キヤノンブランドとしてのレベルは十分にクリアしており、ひと安心した。もともと同社は、社訓として、“他社よりも圧倒的に有利なメリットがない限り、自社開発モデルの製品化しない”という。そうなると、やはり早期にキヤノン純正モデルを見たくなる。さて、いつになるのだろうか・・・。


□キヤノンのホームページ
http://www.canon.co.jp/

□製品情報
http://www.canon-sales.co.jp/Product/DCS/ps350.html

□参考記事
【1/16】松下、回転式レンズ搭載のDVCと、コンパクトフラッシュ採用のデジタルスチルカメラを発表
http://www.watch.impress.co.jp/pc/docs/article/970116/dvc.htm

■注意■

('96/1/17)

[Reported by 山田久美夫]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp