【リレー連載 物欲道修行記】


リレー連載 物欲道修行記

第21講 こもの派 師範:広野忠敏

 今回の広野師範のお題は、新モバイルギア。モバイルギアというと、インプレス社内でも発表の前は非常に注目されていたのだが、いざフタを開けたら「パソコン通信しか対応してないんだってー」「マジっすかぁ、いまどき~?」というので、あっさり熱が冷めたときの印象が強い。はじめからPPP接続対応していたら買ったのに、対応してなかったからLibretto 20を買ってしまい、結局キーボードが打てなくてうっちゃってあり、またしても、実売6万円台かあ、PPP対応したし、モバイルギアいいかもなあ、なんて思わされているわたしの立場はどうしてくれる、という超個人的な恨み辛みはおいといて。
 今回のネタも師範得意のこもの系とあって、師範宅の押し入れの死屍累々じゃなかった、コレクションの一端が覗ける記事となっています。いちどこのコーナーで、師範のコレクションを紹介していただきたいものです。(編集部)

端末を持って街に飛び出そう - NEC 新モバイルギア

 実は前回レポートしたCASSIOPEIAでとーってもフラストレーションがたまってしまった。実際日本語が使えないのはPDAとしては致命的な欠点である。きっと英語版のCASSIOPEIAは私のPDAコレクションとして押し入れに保存される運命になるだろう。合掌……。

 ところで、一般にHPCやPDAなどに求めるものはなんだろう。これは個人によってかなり違うが、私の場合はまずウケ。やっぱ、モノを買ったら他人にウケなければしょうがない。人と同じモノを持ちたくないってのも人間として素直な欲求なハズだ。つぎに、実用性。PDAについての基本的な機能はもちろん、ほしいのはちゃんとした大きさのキーボードと通信環境。HANDY98は論外としてHP200LXは無茶(でも、原稿書いてたけど)、Librettoはキーボードが小さいため、ちょっと無茶(でも、やっぱり原稿書いてたけど)だった。余談だけど、Librettoを長時間使うと指がつりそうになるのだ。

 通信環境はモデム内蔵でインターネットメールが読めればいうことはない。モデムに関しては携帯端末でWWWなんぞを閲覧するつもりは毛頭ないので、9,600bpsから14,400bps程度で十分だ。さらに、駆動時間も長時間であればあるほどよい。バッテリ駆動で長時間という選択肢もあるが、乾電池で長時間使えればベストだ。そんなワケでこうした要求を満足することができるものを探してみた。それが、今回紹介するモバイルギアの新しいモデルだ。


これはイカすぞモバイルギア

 はじめにお断りしておきたいが、私はNECのちいさいモノが大好きである。古くはHANDY-98を所有し、初代98NOTEは発売当日に購入した、もちろんETも持っていた。そういえば、PC-8201も持っていたような気がする。余談だけどETはよくできたPDAだったのにどうしてウケなかったんだろう。謎だ。

 さて、モバイルギアは発表当時からその存在が非常に気にはなっていたのだが、これを買ってしまうとあまりにもカタにハマりすぎなので買い控えていたというわけ。どうやら仲間内でもモバイルギアを買うのはアイツしかいないと噂されてたらしい。まぁ、買わなかったのは、スペックが「ちょっと」気に入らないってこともあったんだけどね。

 そんなわけでけっこうNECのちいさいモノには思い込みがあるんで、そこんとこを加味して読んでいただきたい。

 モバイルギアの最初のモデルは通信環境がパソコン通信のみで、PPP接続してインターネットメールを読み書きすることができなかった。これが「ちょっと」気に入らなかったスペックの一つ。

 これは、新しいモデル(アドバンスドモデル)で改善され、アドバンスドモデルでは任意のプロバイダにPPP接続し、インターネットメールの送受信ができるようになっている。これが、新モバイルギアのもっとも大きな改善点だ。もちろん、従来のモデルと同様にパソコン通信も可能。また、新しいモデルは従来のモデルに比べてほかにも細部にわたり機能の追加がなされている。が、そのあたりの話をするときりがないんで割愛させていただく。

 モバイルギアに内蔵されているモデムは14,400bps。28,800bpsや33,600bpsのモデムが主流となった今ではやや見劣りするが、WWWなどを利用するわけではないので十分だ。通信は本体右サイドのモジュラージャックにケーブルを接続するだけで行なうことができる。また、FAXの送受信も可能だ。

 実際にPHSとセルラーケーブルを使い通信を行なってみたが9,600bpsで安定した通信を行なうことができた。さらに、電波状態が良い所で通信を行なってみたところ、最大14,400bpsでの接続が可能だった。携帯電話やPHSを使った通信はかなり電波状態に左右され、場所によってはPPP接続でインターネットメールを送受信するほど電波状態が良くないこともある。そういうときはモバイルギアを片手にそのへんのISDN公衆電話(グレ電というらしい)にかけこめば問題はないだろう。

 また、FAXの送受信機能も便利だ(FAXの受信はあまり使い道はないかもしれないが)。簡単な資料を電車の中で作ってISDN公衆電話でFAX送信をするというワザが使えるからだ。

 つまり、モバイルギアとPHS、セルラーケーブル、モジュラーケーブルの4つを携帯すれば、どこでも即座に通信ができる環境が簡単に構築できるというわけだ。写真の左がPHS、モバイルギアの下のペン状のものがモジュラーケーブル、その下に写っているのがセルラーケーブルだ。

 ちなみに、モジュラーケーブルはこの写真にあるソニーから発売されているペンタイプのものが便利。普段はペンタイプなので携帯に便利。モジュラーケーブルはカールコードでペン状のケースの中に格納され最長0.8mまで延長できる。また、ケーブルの両端はオス-オスとオス-メスという使い方ができるので応用範囲が広いのだ。まぁ、モバイルギアとは関係ないが、出先で通信をしたい人は是非購入して欲しい。


モバイルギアの使用感

 さて、通信環境ばかりに話がいってしまったが、ここで全体的な使用感について書いてみよう。

 まず、本体の大きさだがちょっと大きめである。他のPDAのようにポケットに入れることは当然できないため、バッグなどに入れて持ち運ぶ必要がある。これは、キーボードがフルサイズであるため。キーボードのストロークは短くもなく長くもなくちょうど良い感じだ。長時間タイプしていても全然疲れない。

 駆動は単三乾電池2本または専用バッテリ。どちらもモデムを使っていない状態で約30時間の利用が可能である。専用バッテリを本体に装着しておいてACアダプタで電源を供給すると、本体を使用してないときに自動的に充電される仕組みになっている。筆者は普段専用バッテリで使い、バッテリがなくなったら乾電池を使うという使い方をしている。

 内蔵のアプリケーションはワープロ、表計算ソフト、メール、FAX、通信、スケジューラ、アドレス帳、PC接続機能など。ちなみに、専用の開発キットがあればモバイルギア用のアプリケーションを作成することも可能だ。

 これらのアプリケーションを利用しているときに電源を落としても全然問題なし。次に電源を投入すると即座に以前の状態に復帰する。PDAとしてみたときはごくあたりまえの機能なのだが。長年(でもないけど)Librettoの長ったらしいハイバネーションに辟易してたんで結構新鮮だった。

 アプリケーションの動作速度も水準を満足する。やや重いという感じはするがけっこうキビキビ動くんで気持ち良いのだ。ちなみに、アプリケーションの軽さとキーボードのタッチのよさで原稿を書くのがはかどるかなーと思ったが、原稿の執筆速度はこうしたこととはなんら関係がないということが実証されたわけだ。まぁ、いいか。

 アドレス帳の機能がモバイルギアのメール送受信機能とリンクしているのも面白い。メールを受信すると自動的にそのメールアドレスの人がアドレス帳に追加される。また、アドレス帳にはメールアドレスを記述する欄があり、アドレス帳のメールアドレスでメールの送信ができるようになっている。これは結構便利な機能だ。特にたくさんの人間とメールをやりとりする人にとっては便利に使うことができるだろう。

 ところで、こうしたアイテムを利用するときに最も気になるのがPC本体との連携。モバイルギアのPC本体とのデータ連携は、IrDAまたはシリアルケーブルと付属するソフト(モバイルギアステーション)を利用する。モバイルギアステーションではアドレス帳、スケジューラなどのデータをPC本体のデータとシンクロさせる機能やファイル転送機能などを利用可能だ。モバイルギアステーションにはモバイルギアと同様のスケジューラとアドレス帳などの機能があるため、アドレスやスケジュールをモバイルギアとPC本体の両方で管理することが可能だ。


モバイルギアは使えるアイテムか!?

 PDAやモバイル端末には大きく分けて3つの種類がある。まず、一つ目はHP200LXやCASSIOPEIAに代表されるもの。つまり、本体を買っただけではいまいち使えない。まめに情報収集を行なって環境をユーザが独自に構築しなければならないものだ。そのため、素人が使いこなすことは比較的難しい。だが、環境を自分で構築する楽しさがある。

 二つ目はいわゆる普通のPDAに通信環境がついているもの。たとえば、ザウルスなどだ。こうしたPDAは買ったその場からマニュアルを読むだけで使うことができる。ただし、一般のPDAは入力に難があるため、PDAを使ってメモを取る程度のことはできるが、長い文章の入力には向かない。

 三つ目はサブノートパソコンなど。もちろん機能は最も豊富。だが、軽いモデルでも1kg程度なので気軽に持ち歩くというわけにはいかない。また、バッテリの駆動時間も2時間程度なので本格的に持ち歩いて使うには工夫が必要だ。

 モバイルギアはこうしたさまざまなPDAやサブノートパソコンなどのメリットをうまく融合した携帯端末だと考えることもできる。つまり、HP200LXやCASSIOPEIAのようにカスタマイズして独自の環境を構築することができる。ザウルスなどの一般のPDAのように買ったその場でマニュアルを読むだけですぐに使える。基本的な機能はシンプルなのでパソコンを使ったことがなくても簡単に理解できる。また、キーボードのサイズはサブノートパソコンと同じくらいの大きさがあるため、快適な文章の入力も可能だ。

 つまり、手軽に使える携帯用の通信環境が欲しくて、なおかつワープロを使ってさまざまな文章の入力もしたい。また、スケジュールや住所録の管理もついでにやりたい。でも、面倒な環境設定はごめんだという人にはうってつけのツールだということができるだろう。どちらかといえば、モバイルギアはカリカリのパソコンマニアよりは本格的にビジネスに活用したいといった人に使って欲しいツールだ。

[Text by 広野忠敏]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp