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Intel「Klamath」対AMD「K6」

次世代Pentium Pro「Klamath」投入は97年早期か

 97年はx86MPU市場が激戦となる。そんな気配が見えてきた。

 米Intel社はP55Cを97年の早い時期に投入することを明らかにしている。そして、おそらくそれほど遠くない時期にPentium ProのMMX版「Klamath」が登場する。Klamathについては正式なデビューの時期はまったくアナウンスされていない。しかし、P55Cからそう遠くないはずだ。そう推測する理由はいくつかある。

 そもそも、IntelはP55Cのサンプル出荷をずいぶん前から開始していた。また、最初のプロセッサロードマップでは、P55Cは96年末に登場する予定だった。それを97年までずれこませたのは、技術的な問題ではなくマーケティング的な判断だろう。そして、P55Cを遅らせた理由のひとつはMMX対応ソフトの準備が考えられるが、おそらく、もっと重要な要素はPentium Pro系の保護のためだったのではないだろうか。つまり、MMX版Pentium Pro「Klamath」とのとのタイムラグをできるだけ小さくするためだったと想像されるのだ。

 Intelの本来の目的はPentium系からPentium Pro系への世代交代の促進だ。Pentium系列は性能向上が今後もそれほど期待できず、そうなると性能を上げて行って売れ筋MPUの価格水準を維持する戦略も取れない。ところが、P55Cが登場するとMMXで盛り上がってしまい、せっかくWindows NT 4.0で盛り上がる可能性のあるPentium Proの勢いをそいでしまうことになりかねない。だから、IntelはP55Cの投入を後ろにずらし、Pentiumの性能への飢餓状態を作り出して、Pentium Proへの期待感をふくらませた、と考えられるわけだ。Intelが、現在のところMMXに関して積極的なキャンペーンを張っていない理由もそこにあると考えられる。

 Intelにとって理想は、おそらくPentiumとPentium Proの両系列をほぼ同時期にMMXにステップアップさせることだ。でも、それなら、いっそMMXはPentium Proだけにして、P55Cに組み込まなければよかったのではという見方もある。しかし、そういかない理由がある。それは、IntelがソフトのMMX対応をできる限り迅速に進めたいからだ。そして、ソフトメーカーにドライバやアプリをMMX対応にしてもらうためには、P55Cが必要なのだ。というのは、もしMMXがPentium Pro系しかないとなると、ソフトや周辺チップメーカーの対応が遅くなり、MMX技術自体がブーストしなくなるからだ。Pentium系も含めた全ラインナップが一斉にMMXに移行するのが必要なのは、そうした理由からだ。

 さて、IntelがKlamath投入を急がなければならない理由はもうひとつある。それはAMDの「K6」の存在だ。COMDEXのレポートでも書いた通り、AMDのK6はすでにサンプルが200MHzで稼働しており、32ビットでの性能はデモを見る限り同クロックのPentium Proをしのぐ。しかも、Pentium Proより16ビット性能は高い。つまり、Windows 95ではさらにPentium Proよりも高速となるわけだ。これが予定通り97年第1四半期に登場すると、Intelは最速のx86という座を奪われてしまうことになる。

 AMDというと、K5のつまづきからその能力に結構懐疑的な見方を持たれている。K5が周回遅れで軌道に乗り始めたばかりなのにK6というのだから、それも当然だ。しかし、AMDはK6を早く投入できる理由がある。COMDEXレポートでも書いたが、それは簡単な話で、NexGen買収で、すでにできあがっているPentium Pro対抗チップを手に入れ、それをベースにしたからなのだ。総トランジスタ数が880万(P55Cの2倍)なのだから、速くて当然と言えば当然なのかも知れない。

 さらに、AMDに今度はチャンスがあると見られているのは、製造技術でもアドバンテージがあるからだ。AMDはK6製造に、IBMからライセンスを受けたC4技術を使う。通常のチップでは、ボンディングするパッドをチップの周辺部に取らなければならないため、チップの面積が大きくなり、パッドへのパスの設計が非常に難しかった。ところが、C4ではチップ表面のどこにでもパッドを取ることができる。実際、ダイ(半導体本体)写真を見ると、チップ表面にパッドが点在している。そのため、K6では、従来のパッド部分がなくなりチップが小型化、さらにクリティカルパスも短くなり、性能も上げやすい。K6では5層レイヤ(現在のIntelの主流は4層)になったこともあり、チップサイズはわずか162平方mmになっている。これは、P55Cより一回り大きいだけだ。これは、コストや消費電力がPentium Proよりもずっと低いことを意味する。

 このように、技術的に見ると、K6はかなり強力なPentium Proのライバルであることがわかる。しかもMMX技術を搭載しているのだから、IntelとしてはKlamath投入を急がなければならないわけだ。市場に十分な量を投入できるかどうかは別として、ともかくKlamathの発表だけは、できる限り早い時期に行うのではないだろうか。

□参考記事
【12/9】後藤弘茂のCOMDEXリアルタイムレポート(その4)(AMDの次世代MPU「K6」はPentium Proを凌駕)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/961122/gotocom4.htm#k6
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('96/12/9)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp