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プロカメラマン山田久美夫が厳しくチェック!!
DC-20、QV-100と徹底比較

コダックDC-25、実写テストレポート

DC25 '96年10月23日 リリース公開
'96年11月下旬 出荷

標準価格:DC25 59,800円

連絡先:
日本コダック(株) デジタルイメージング事業部カスタマーサポート
Tel.03-5488-2390

 ドイツのフォトキナで発表された、コダックのニューモデル「DC25」。デジタルカメラの世界ではフジと並ぶ老舗だけにその実力が大いに期待される。そのベータ機がようやく手元に届いたので、早速、その使い勝手や描写性能についてレポートしよう。
 本機は基本的に同社の「DC20」と同じ27万画素CCDを採用したモデルで、同機の上級機種にあたる。この「DC25」では、低価格でコストパフォーマンスな「DC20」のネックだった撮影枚数を改善し、いまやデジタルカメラのトレードマークとなった液晶モニターを新たに装備したモデルといえる。(山田久美夫)


注目されるコンパクトフラッシュの採用

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実写例1:縦位置・日中
 今回の目玉はやはり、メモリーカード、なかでもサンディスクのコンパクトフラッシュの採用が注目される。現在パーソナル機ではPCMCIAのType I/II、さらに最近ではスマートメディア(SSFDC)といったメモリーカードを採用する機種が増えている。そのなかで、コダックがコンパクトフラッシュを採用した点は注目される。もっとも、すでにキヤノン・Powershot600などはPCMCIA規格ながらも、PCMCIA変換アダプター付きでコンパクトフラッシュを標準採用しており、DC25が初めてではない。しかし、コンパクトフラッシュをコダックとキヤノンの両社が採用したことで、フジ・ミノルタ・セガなどのスマートメディア陣営とのせめぎ合いが激化することは確実だ。とくに、セガは専用フォーマットとはいえ、11月から新型プリント倶楽部にスマートメディア用ドライブを装備し、プリントサービスを始めることを考えると、単なる記録メディアだけの問題ではなく、プリント環境との連携という新たな時代への対応にまで影響してくる。また、近い将来の高画質・高画素数化にあたって、ディスク容量の点も問題になりそうだ。まあ、このあたりの話は近いうちにまとめてレポートするとしよう。


実写例1:きれいな色再現と自然な階調性が魅力のDC25。ビデオ用の27万画素CCDを採用しているため、解像度はさほど高くないが、気軽なスナップには十分だ。


非圧縮記録によるきれいな画質

 意外に思えるかもしれないが、コダックはデジタルカメラにJPEG圧縮を採用していない。本機ももちろんJPEGではなく、CCDが撮影した画像情報をそのまま記録する方式を採用している。もちろん、そのままのデータではカラー画像にならないため、取り込みソフト上でカラー画像を生成しているわけだ。
 そのため、JPEG方式のように記録時点に画像が劣化することがなく、画質的に有利だというのがコダックの主張だ。この方式では画像展開時のデータ量の1/3の容量としてデータが記録される。そのため、最近のように1/10-1/20圧縮をしているJPEG方式のカメラに比べると、同じメモリー容量でも撮影枚数がグンと減ってしまう。しかし、このような非圧縮画像にはJPEGにはない美しさがあり、個人的には好きだ(とくにDC40の画像はいまだにクラストップレベルだと思っており、近いうちに最新機種との比較カットを掲載する予定だ)。
 さて、この「DC25」も同じ方式を採用しているわけだが、本機はDC20に比べて2倍の容量(2MB)の内蔵メモリーを採用しており、15枚の撮影ができる(DC20は8枚)。また、コンパクトフラッシュを使えば、さらに枚数を増やすことも可能だ。

記録時間は、たったの2秒!

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実写例2:薔薇アップ
 この非圧縮記録には、もう一つのメリットがある。それは記録時間の早さだ。つまり、撮影した画像を処理せずにメモリーに書き込むため、他のJPEG記録方式よりも、記録に要する時間が断然短い。現在最速なのはおそらく、ソニー・サイバーショットだが、本機はそれに匹敵するか、それを上回るほどの高速記録を実現している。
 このスピード感は実に軽快で、本当に小気味いい。とくに本機は光学ファインダーがメインのため、記録時間が早くないと、かなりストレスを感じる。つまり、液晶ファインダー式なら、記録している間、ぼ~っとモニターを眺めていれば記録終了が分かるが、光学ファインダー式はそれが分からない。そのため、より高速な記録速度が要求されるわけだ。しかし、この早さならば、人物でもスナップでも、本当にフィルム感覚で次々に撮影できるので、まさに普通のコンパクトカメラのような感覚だ。
 また、シャッターを押したときの感触も普通のカメラに近く、小さいながらもカチャというシャッター音がする点も好感がもてる。さらに、シャッターを押してから、実際にシャッターが切れる(写る)までの時間が短いため、シャッターチャンスが掴み易い点も好感が持てる。

実写例2:ピントがボケることを前提に撮影した、バラの超アップ。レンズ前10cm程度まで寄っているが、記録用として割り切れば、これだけ写ればいいなあ~と思ってしまう。


ファインダーは光学式がメイン
液晶はあくまで確認用

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実写例3:バラ縦位置
 「DC25」では液晶モニターが追加されたとはいえ、ファインダーは光学式がメインだ。以前のDC20のようにフレームが曖昧なものではなく、きちんとした視野枠が入ったもの。そのため、より正確なフレーミングができるようになった点は大きな進歩といえる。
 本機はオリンパスのCAMEDIAシリーズと同じように、カメラ感覚で扱える点と、電池の消耗を考えて、光学ファインダーがメインとなっている。とくに、コダックのデジタルカメラは電池の持ちがいい点が売りの一つであるだけに、液晶モニターはあくまでも”画像確認用”という位置づけだ。
 液晶モニターはサイズが1.6インチと標準的なものだが、TFTではなく、コストや消費電力などを考えてSTN型が採用されている。そのため、美しいTFT液晶を見慣れた目には、ちょっと・・・という世界がある。このモニターはあくまでも画像確認用として割り切って使うしかないだろう。
 もっとも、今回撮影してみても、実用的にはこれでもいいんだな~という感じがした。もちろん、撮った写真を液晶モニターで見せびらかしたり、アルバム代わりに使うといった用途には向かないが・・・。

実写例3:撮影距離は約30cm。これくらいのアップなら、さほどピントを気にする必要はない。また、露出が難しいシーンだが、適切な明るさに写っている。


もう一工夫欲しいデザイン

 デジタルカメラの場合、設計上のレイアウトのしやすさから、レンズがカメラの中心から外れていることが多く、カメラを見慣れた人から見ると、結構違和感がある。しかし、このDC25の場合には、普通のコンパクトカメラと同じ顔を持っており、その点での違和感はない。
 もっとも、サイズはDC20に比べて結構大きくなっており、カシオQV-100とほぼ同寸。デザインもDC20のような可愛らしさはなく、実用本位という感じがある。アメリカではこのサイズやデザインが受ける可能性もあるが、日本市場を考えると、もう一工夫欲しいところ。なかなか出来がいいだけに、この点は残念だ。

きれいで見栄えのする写り

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実写例4:夜景・縦
 写りはなかなか優秀だ。本機の場合、もともと27万画素モデルであり、画像サイズも493×373ピクセルとVGAより一回り小さい。そのため、解像度の点はあまり期待できない。しかし、データ量がが軽いため、メモリーに余裕の少ないマシンで楽しめるし、モニター上で楽しんだり、ホームページ用としては使うには適度な画像サイズといえる。
 また、画像のクォリティーは結構高く、解像度こそ最新のVGAクラスには譲るものの、階調や色の再現性に関しては、VGAクラスのモデルを凌駕するほどのレベルに達している。とくに色再現性はやや渋目だった「DC20」と違い、こちらは派手めで見栄えがする色再現となっている。しかも、これまでのコダック製モデルとも違った、なかなか日本人好みの発色だ。また、階調も豊富で補正なしでも十分なコントラストがあり、なかなか自然な再現をする。
 もっとも、画像の輪郭部分にジャギが見られるが、これが気になる場合には、やや解像度は低くなるものの、画像処理ソフトで若干ぼかすと軽減できる。
 カットによっては、無地の部分(空など)に若干の色ムラが見られるものもあるが、本機および取り込みソフト(TWAIN)がまだベータ版のため、それが原因である可能性がある。この点は製品版で最終的な確認をしたい。
 いずれにしろ、DC25は従来のDC20と同じレンズやCCDを採用していながらも、画質はワンランクアップしていることは確かなようだ。
 また、ピントはDC20と同じ固定式だが、遠景から近景まで破綻のない写りをする。とくに、明るい場所では50cm程度の近距離撮影でも十分な画質が得られるので、使い勝手は上々だ。

実写例4:DC20と同様、感度が高く、ISO800と1600の切り替え式となっている。そのため、日没後のこんなに暗いシーンでも難なく撮影することができる。もちろん、ストロボは使用していない。また、空の部分に若干色ムラが見られるため、製品版で再度チェックしたいと思う。


やや遅めの転送時間

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実写例5:夕景・横
 今回はベータ版のWindows 95用TWAINドライバーを使って画像を取り込んだ。このTWAINドライバーにはケーブル経由でカメラから画像を取り込む機能と、パソコン内にあるDC25用ファイルを補正、展開する機能を備えている。もちろん、本機はコンパクトフラッシュを採用しているため、カード経由でスピーディーにパソコンに転送することもできるし、ケーブル経由で転送することもできる。
 画像フォーマットは、当然のことながら専用ファイル形式で、専用ソフト以外で展開することはできない(サムネール画像だけは普通のソフトで見ることができる)。そのため、始めからJPEGフォーマットで記録されているモデルに比べると、使い勝手はやや劣る。これは前記の通り、画質との駆け引きの結果、コダックが選んだ方法だ。この方法はやはり処理に手間と時間がかかるのが最大の欠点といえる。そのため、できれば、撮影した画像を一括して指定のフォーマットに変換し、セーブしてくれるソフトの開発を希望したい。

実写例5:夕景もここまで写れば立派なもの。カメラぶれも少なく、普通のコンパクトカメラよりも暗いシーンに強いのは、このDC25の大きなメリットだ。


低価格モデルの決定版となるか?

 DC25は、今回使用した範囲では、なかなか完成度が高く、機能もシンプルだが充実した、好感の持てるモデルといえる。また、WindowsとMacintosh用のソフトとケーブルまでセットになっており、買ったその日から追加なしに使える点も便利だ。
 やや気になった点は、電池が単3型乾電池ではなく、カメラ用によく利用されるやや高めのリチウム電池(123A)を利用している点だが、電池の消耗だけは長期間使ってみないと判断が付かないので、この点は追ってレポートしたい。もっとも、かなり省エネ化が図られているので、さほど心配する必要はなさそうだが・・・。
 しかし、59800円という価格はなかなか微妙なものがある。つまり、あと数千円でVGAの「カシオ・QV-100」が入手できるし、液晶ナシの「C-400」ともバッティングする。もちろん、両機とも転送キットは別売なので、実際にはもう少し価格差がでるが、いずれにしろ、同価格帯になることは必至だ。DC25の場合、画素数は少ないが、絵作りはなかなかキレイだし、撮影枚数の心配がないメモリーカードが利用できるので、この点をどう評価するかがポイントになる。難しいポジションだが、個人的にはなかなか魅力的な機種に思えた。あとは製品版の完成度と、実売価格がどれくらいになるかが楽しみだ。

DC-25 VS. DC-20 VS. QV-100実写データ比較

今回は同じ光学系やCCDを採用している姉妹機の「DC20」と、価格帯が近い「カシオQV-100」(リコール後)を同一条件で撮影した。いずれも専用ソフトで取り込み、意図的な画像補正は行っていない。


SAMPLE1-1 SAMPLE1-3 SAMPLE1-3
実写例1-1:DC20 実写例1-2:DC25 実写例1-3:QV-100


 DC25に比べ、DC20は同じ色傾向だが若干露出はオーバー目となった。また、QV-100は見掛け上の解像度が高いが輪郭が強調され過ぎてギスギスした感じだ。またコントラストも高過ぎる。もちろん、車の色はDC25やDC20のものが正解だ。



SAMPLE2-1 SAMPLE2-2 SAMPLE2-3
実写例2-1:DC20 実写例2-2:DC25 実写例2-3:QV-100


 DC20に比べ、DC25はコントラストが若干向上し、色再現も現物により近くなっている。逆に細部の写りは誇張された感じのQV-100のほうが明確だ。


猫の美術館


SAMPLE3-1 SAMPLE3-2 SAMPLE3-3
実写例3-1:DC20 実写例3-2:DC25 実写例3-3:QV-100


 DC20ではややコントラストが不足気味だが、DC25では適度なコントラストとなっている。また、色再現性もDC25のほうが彩度が高く、見た目に近い雰囲気だ。


ガーデン


SAMPLE4-1 SAMPLE4-2 SAMPLE4-3
実写例4-1:DC20 実写例4-2:DC25 実写例4-3:QV-100


 誰が見ても、DC25がもっともキレイ。これほど明確な差がつくとは思いも寄らなかった。ちなみに、色に定評がるC-400Lで同じシーンを撮影したカットよりも、DC25のほうがきれいだった。また、階調の再現性もDC25がもっともよい。


山手十番館


SAMPLE5-1 SAMPLE5-2 SAMPLE5-3
実写例5-1:DC20 実写例5-2:DC25 実写例5-3:QV-100


 どのカットも、それなりにきれいだが、もっとも自然で感じに写っているのはやはり「DC25」。DC20はやや大人しく、QVは派手な感じだ。

■注意■

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□日本コダック(株)のホームページ
http://www.kodakj.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.kodakj.co.jp/86131c00.shtml



('96/10/31)

[Reported by 山田 久美夫]


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