そうなのである。俺もずっと待っていたのだ。いつから待っていたのかというと、でっかいパスポート時代のパスポートサイズの8ミリビデオカメラであるTR-705を購入した直後から待っていたのである。アレは非常に小さかったが実にデカかった。今でも覚えている。世界で屈指の小ささを誇るビデオカメラを得た喜びと、それを持ち歩くには案外気合が要るということのギャップを。俺の理論ではTR-705を得た直後から俺はビデオ撮影マニアと化し、撮影時のポーズを取りながら連日街を闊歩しまくって撮影しまくるしくみになっていた。が、決してそうはならず、TR-705はあまり使われなかった。どう表現すればいいのか、ちょうど、デスクトップマシンのユーザーが「これなら持ち歩いて使える」とノートパソコンを買って、結局はデスクトップノートパソコンとして使う道を歩むといった感覚だ。理論と現実の差だ。
俺は最近完璧に理解した。「持ち歩けるくらい小さい」程度では持ち歩かないのである。「置き忘れるほど小さい」くらいの大きさで初めて持ち歩こうと思う、ということをだ。
そういった意味で、このDCR-PC7はヒッジョーに良い。現にもう数度持ち歩いて、しっかり使い、2~3度デニーズに置き忘れそうになった。
あ~もう俺はライターとして全然ダメである。DCR-PC7にヘロヘロだしゾッコンだしシッチャカメッチャカだし何も伝えられない。使い勝手や不便な点を書く前に、どうしてもこの超イカシた小ささを表現したい!! 小ささがDCR-PC7の最大の魅力だと思えるからだ!!
で、どの程度小さいか。感覚的なボリュームとしてはまず、サントリーの烏竜茶340g入りな感覚である。片手で持つのに違和感を感じないボリュームだ。それからコンパクトさというかミニさでは、俺愛用のDoCoMoのデジタルムーバのDIIハイパー程度なカワイさなのだ。この超カワイイ大きさをTOSHIBA製の世界最小Windows95サブノートパソコンLibrettoと比べると、「なーんだ東芝さんのはかなりでっかいじゃんか」ということにもなりがちである。あ、ジャンルが違うか。それから、このカメラに使うMiniDVテープはDATテープほども小さくてカッコ良いのだが、この超小さいしサイバーだしクールなMiniDVテープとカメラ本体を比べてもそれほど大きくない。それから使われているバッテリーパックも泣けてくるほど小さい、というか薄いので、本体に装着した時にバッテリーの存在が感じられない。これほど小さいと、もう機能なんかどうでもよくなるほど欲しくなるというものだ。
さて、小ささを思う存分大表現したら何だか落ち着いてきた。ここで少々使い勝手の良し悪しをレポートしてみる。
まず、カメラとしての使用は、本体を縦にして右手に持って撮影することになる。ハンドストラップは本体の右にも左にも自由に動かせるので、本体を左手に持っての撮影もできるのだが、こうした場合は液晶やズームボタンが少々使いづらくなる。撮影時のコントロール関連ボタンは、本体右側に集まっているので、右手でこうして持って撮影するのがカンファタボーで便利だと言える。撮影時には、親指でスタート・ストップボタンを押し、人指し指でズーム操作をすることになるわけだ。ちなみに、このズームボタンがややクセモノで、微妙なコントロールを効かせないと非常に素早くズームアップ・ダウンしてしまう。慣れれば非常にゆっくりしたズームアウトや素早いズームインなど、絵作りにバッチリ役立つズーム効果を使えるようになる。
カラーのビューファインダーはかなり見やすい。ちょっと前までは“カラービューファインダー”と聞くと「一応色が見えるビューファインダー」的なヘボさだったと思っていた俺だったが、いつの間にか微妙なピント合わせをカラビューファインダーでしっかりこなせる時代になっていた。また、小さいながらもコントラスト・色合いに優れた2.5インチTFTカラー液晶も使いやすい。撮影・再生時のディスプレイとして違和感なく使えるのはもちろん、クルクルと450゜も回転してくれるので、ローアングルからハイアングルまでさまざまなポーズでの撮影を楽にこなせる。もちろんこんなコトも簡単。なお、本体から開ける角度は90゜までだ。
デッキとして使ってもまあまあの使い勝手なのだが、本体手前のコントロール部のボタン類は少々押しづらい気もする。まあ、付属のリモコンを使えばそんなことも気にならないのだが。
このほか、ACアダプターも比較的コンパクト、バッテリーは超薄型、テープも小さいので、予備バッテリー予備テープやACアダプター類をフルセットで持ち歩いても、いわゆるひとつの男のセカンドバッグみたいな小形ポーチに収まる。このトータルな小ささは、やはり利便のひとつ、というか最大の利便と使い勝手の良さの源だと言える。また、そういう小ささと手軽さが、従来の「ビデオカメラ一式を専用バッグに入れて持ち歩いて気合を入れて撮影モードに入る」という面倒臭いイメージを打ち消し、まるでデジタルスチルカメラをバッグに入れているような軽快な気分にさせてくれる。取り出して即撮影、というお手軽感が実に強いデジタルビデオカメラなのである。
俺個人としては、今年の衝動買い物件の中でDCR-PC7は、トップクラスの満足感が得られたナイスガジェットだ。
DCR-PC7は、デジタルスチルカメラとしても使える。またパソコン(AT互換機)へデジタルスチル画像をダイレクトに転送することも可能(DV静止画キャプチャーボードキットDVBK-1000を買えばオッケー)なので、ちょっと使ってみたい気もしたが、静止画を撮るための機能としてならやはりデジカメの方が上だと思ったので、スチルカメラとしては全然使っていない。でもおもしろそうではある。
バッテリーの持ちは、普通に撮っていて1本のバッテリーでおよそ30~40分撮れる感じだ。ソニー謹製のインフォリチウムバッテリーを採用しているので、あと何分するとバッテリーが切れて撮影不能になるヨという情報が画面に出るのが便利だ。
それから、最近の事情を知らずに久々に買ったビデオカメラなので、細かな機能にイロイロと感動した。例えば手ぶれ防止機能だ。コレってホントに手ぶれ全然起こさないんですねーみたいな。たるんだ精神状態でカメラを回していてもきれいで見やすい“安定した”映像を撮影できるのには脱帽した。また、ほとんどすべての設定を液晶ディスプレイを見ながら行えるというのは便利だ。まあ、最近のビデオカメラはみんなそういう感じなのだそうだが、マニュアルなしで各種設定を済ませられた。
そうそう、大切なコトを忘れていた。このビデオカメラ、作りが頑丈なイメージを受ける。よく見ると全体が頑丈なのではなくて、力が加わる部分だけかなり丈夫に作られているのだ。今まで買ったソニー製品の中で一番壊れにくそうな気がする。というか実は既に3回も落としてしまったが、何ともない。
もうひとつ忘れていた。画質。デジタルビデオカメラを初めて使った俺なのだが、画質は非常にいい。まずノイズがない。そして輪郭がシャープで滲みもない。東京メトロポリタンTVでは取材用にデジタルビデオカメラを使っているそうだが、なるほど、下手な高級Hi8ビデオカメラよりも目鼻立ちのはっきりした画像が得られる。きっとソニーのマニアックなデジタルビデオカメラはもっと画質いいんだろーなー。ちょっと欲しくなっちゃったなー、みたいな。
あとひとつ、ビデオ出力ケーブルやACアダプターからのケーブルをつなぐ本体側のコネクタ部分だが、この部分のカバーが俺としては妙に目障りというか気になる。紛失しないようにと、本体にカバーが軟固定されている。ケーブル接続時にはこのカバーがプラプラして使いづらい。ケーブルを接続しない場合、例えば撮影時にちょっとした拍子でこのカバーがプラプラ状態になったりして、ちょっとイラつくのだ。そういえばビデオカメラのコネクタ部分ってみんなプラプラでムカツクよなー的心情。まあ、このカメラに限らずありがちなイライラ点であり、なおかつ細かい点なのだが。
それにしても、俺がこのビデオカメラに対して気にくわない部分と言えば、ビデオ入力がない点(ていうかいつになったらデジタルビデオカメラは外部からのビデオ信号を録画できるようになるのやら)と、ファインダーとレンズが出っ張ってる点、そして上記のカバーのプラプラだけだ。カバーのプラプラ以外は、改善されると別の問題が起きそうなので、まあ問題点と言えないかもしれない。ともあれ、久々に秀才的ガジェットをゲットできてかなりの満足モードの俺であった。
[Text by スタパ齋藤]