【周辺】

プロカメラマン山田久美夫が買って使った

ソニーサイバーショット DSC-F1購入&実写レポート

DSC-F1 '96年10月25日 発売

標準価格:88,000円

連絡先:ソニー株式会社
お客様ご相談センター
Tel.東京:03-5448-3311、名古屋:052-232-2611、大阪:06-539-5111



サイバーショット発売

DSC-F1  話題の人気機種「ソニー・サイバーショット」が本日25日に発売された。本来は発売前にメーカーから借りてベータ版レポートをお送りする予定だったが、メーカーからの貸しだしが来週になり、発売に間に合わないことになった。しかし、これほどの人気機種だけに、いち早くその実力をお知らせしたい!という衝動が抑え切れず、自分で購入し、レポートをすることにした。

 しかし、まだ、転送ソフトが発売されておらず、通常の方法では画像を転送することができない。そのため、やむを得ず、IrDA転送ができる同時発売の昇華型プリンター(DPP-M55)を購入。プリンター経由でパソコンに画像を転送するという緊急手段での画像評価となった。そのため、転送キットでの結果とは多少画質が異なる可能性もあるが、基本的な性能はこの組み合わせでも変わらないと判断し、今回のレポートをお届けしよう。

 もっとも、本日夕刻に購入したばかりなので、屋外での撮影はできなかった。しかし、インプレスのデジタルカメラスタジオでテスト撮影した結果を、取りあえず画像をアップすることにした。撮影光源は、ブルーフラットランプなので、基本的には日中光と同じ条件といえる。もちろん、カメラぶれを防ぐために三脚を使用している。また、画質の比較のために、いつもの「フジ・DS-7」と同時に撮影しているので、その実力がわかると思う。

 なお、操作感や日中での写りなどは、もう少し使い込んで数日うちに別途レポートするので、そちらを参考にしていただきたい。


結構気になるジャギ

 サイバーショットの画像で一番気になるのは、画像の輪郭に見られるジャギ。もちろん、ビデオ用CCDでのフィールド撮影画像に見られるようなひどいものではないが、プログレッシブ・スキャン方式のCCDを採用したモデルとしては、やはり気になるレベルといえる。もちろん、絵柄によって目立つケースと、それほどでないケースがある。今回のテストでも、人物撮影などではさほどでもないが、斜め方向にシャープな直線がある色鉛筆のカットなどでは、直線がガタガタとした感じになっている。これは同じタイプのCCDを採用したフジ・DS-7と比較すると、そのレベルがよく理解できるだろう。

若干低めの解像度

DSC-F1  サイバーショットの特徴として、きわめて美しい液晶表示がある。しかも、液晶モニターでの拡大機能を使ってみていると、解像度は結構高そうに見える。そのため、メモ用機としてはなかなか便利そうだ。

 しかし、今回プリンター経由でデジタルデータを見てみると、画像自体はさほど解像度が高いほうではなく、むしろ、低めの部類に入る。これは輪郭の甘さが欠点といわれる「DS-7」と比較しても、それを上回るほど。もっとも、DS-7の画像は解像度が低いわけではなく、輪郭強調をあまりかけていないので、いっけん、低そうに見える。サイバーショットも、どちらかというと、輪郭をあまり強調しないタイプだ。そう考えると、この解像度はやや不満が残るレベルといえそうだ。


素直な色再現性

DSC-F1 一方、色調や階調の再現性はなかなか良好。とくに、色鉛筆のカットやフルーツのカットを見ると、その素直さがよく理解できる。とくに、人物撮影などは、解像力よりも階調や肌色の再現性が重視される世界なので、なかなか良好な結果が得られる。

 とくに色再現性は素直で、見た目に近い感じだ。しかし、DS-7に比べると、彩度が若干低めなので、やや見劣りがする感じもある。色の世界は、善し悪しよりも、好みの世界ともいえるが、個人的には写真的な美しさを備えたDS-7の色調のほうが”好き”だ。


早期発売が期待される取り込みソフト

 今回はレポートのために、画像転送用としてプリンターを購入したが、これは本意ではない。やはり、安価で手軽な取り込みソフトを使うに越したことはない。しかし、本体の発売日にソフトが間に合わないという今回の事態は、理由はとにかく、理解に苦しむ。しかも、IrDAでパソコンへの転送ができることが売りのプリンター経由では、とにかく取り込み速度がきわめて遅く、画像モードが混合された状態で15枚を転送するのに7~8分もかかる。しかも、最大で15枚単位でないと転送できないため、きわめて不便だ。デジタルカメラの実力や使い勝手はカメラだけでなく、ソフトや周辺機器までを含めたシステムとしての評価となるため、この点は大いに不満が残る。

 今回は取りあえずの第一報ということで、より詳しい使用感などは、次回を期待していただこう。今回はフル充電する時間がなかったので、あまり正確なことはいえないが、カタログ上でもフル充電で27分といわれる撮影時間だけに、実際にはかなり短くなることが予想される。また、無限遠のピントについても気になるし、操作感も要チェック。このあたりは、数日うちに再びレポートをお送りする予定だ。個人的には、期待が大きかっただけに、ガッカリとした部分も多く、すでに本機を”サイバーちょっと”と呼びはじめているのだが・・・。


DSC-F1とDS-7の実写サンプル
DS7 SAMPLE 1-1 SAMPLE1-2
DS-7での実写例 DSC-F1での実写例
 斜め方向の直線がメインになるシーン。それだけに、ジャギが目立つシチュエーションでもある。サイバーショットは斜めの直線部分に明らかなジャギが見られ、とくにケースのヒンジ部分の直線を見ると、結構目立つ。一方、DS-7は斜線もきちんとラインとして表現されており、この違いは結構大きい。また、DS-7では色鉛筆の文字が読めるが、サイバーショットでは読むことが難しい。両機は写る範囲が微妙に異なるため、完全に同一アングルではないが、その傾向を知ることはできるだろう。

DS7 SAMPLE2-1 SAMPLE2-2
DS-7での実写例 DSC-F1での実写例
 花束を見ると、両機の色傾向の違いが見られる。まず、サイバーショットは現物に忠実で、とても素直な色再現だが、あまり見栄えはしない。また、コントラストもやや低めで、取り込んだままの画像ではややメリハリに欠ける印象だ。もちろん、画像処理ソフトをつかって処理すればいいわけだが、撮影した画像をそのまま補正なしで使うにはやや物足りない。

DS7 SAMPLE3-1 SAMPLE3-2
DS-7での実写例 DSC-F1での実写例
 これくらいのクローズアップなら楽に撮影できる。もちろん、ピントは手動式で、液晶モニターを見ながらピントを合わせるわけだが、サイバーショットは液晶モニターの見え味がきわめてシャープなため、ピント合わせも容易だ。また、近距離でもさほどピントが悪くなることはない。また、両機とも自動的にカラーバランスを補正する、オートホワイトバランス機能を備えているが、フジは画面内に占める花の面積が広いためか、かなり青みの強い画像になってしまった。

DS7 SAMPLE4-1 SAMPLE4-2
DS-7での実写例 DSC-F1での実写例
 この手の画像を35万画素クラスのモデルで撮影すること自体が酷な世界だが、それでもなかなか健闘している。このカットではサイバーショットとDS-7の違いはさほど大きくはなく、色再現性ではサイバーショット、質感ではDS-7という感じだ。一般的にはサイバーショットの写りのほうが好まれるだろう。もちろん、近距離での撮影になるので、両機とも液晶表示で慎重にピントを合わせて撮影している。

DS7 SAMPLE5-1 SAMPLE5-2
DS-7での実写例 DSC-F1での実写例
 人物のカットを見るとサイバーショットの素直さがよくわかる。肌の色や服の階調の忠実さはなかなかのもの。とくに、肌色と白のヌケのよさは大きな魅力だ。しかし、パっとみたときの第一印象はDS-7のほうが一歩リードしている。この自然でさりげない演出はいかにもフジらしい。これはどちらがいいというよりも、完全に好みの世界だ。

DS7 SAMPLE4-1 SAMPLE4-2
DS-7での実写例 DSC-F1での実写例
最近多くなった白熱電球風の蛍光燈下でのカット。もちろん、ストロボなしでの撮影だ。オートホワイトバランスの性能が色再現を大きく左右するシーンだが、サイバーショットの方が自然な色再現となった。また、ピントは通常撮影用のクリックがかかる状態で撮影しているが、サイバーショットはややピンぼけ気味で、DS-7のほうがシャープだ。比較的多用される撮影距離でのピントの甘さはかなり気になるところといえる。また、サイバーショットはクリックが強すぎて、微妙なピント合わせができない点も不満だ。

DSC-F1 SAMPLE Ex-1 DSC-F1 SAMPLE Ex-2 DSC-F1 SAMPLE Ex-3
エコノミーモード スタンダードモード ファインモード
 本機は内蔵メモリー式のため、撮影モードによって、撮影できる枚数が大きく異なる。各撮影モードとも画像サイズはまったく同じで、圧縮率による違いとなっている。同じカットを各モードで撮影したが、その違いは意外に少なく、通常のスナップならば、スタンダードモードか、枚数がかなり稼げるエコノミーモードでも十分といえる。もちろん、ファインモードがもっとも画質がよく、細部の解像度も高いが、スタンダードモードとよくよく見比べなくてはわからないレベルといえる。



□ソニー(株)のホームページ
http://www.sony.co.jp/index-j.html
□製品情報
http://www.sony.co.jp/Exhibition/DSC/DSC-F1/index.html

【関連記事】
【8/22】ソニー、デジタルカメラ2機種を10/10に発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/960822/sony.htm

('96/10/25)

[Reported by 山田 久美夫]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp