【法林岳之の非同期通信レポート】

法林岳之の非同期通信レポート 第11回

TS128GA2試用レポート

TEXT:法林岳之


TS128GA2
 128kbpsは待った方がいい!という広告コピーで話題となったISDN TAと言えば、サン電子TS128GA2だ。7月に発表されながら発売が延期されていたが、9月末にようやく出荷が開始された。製品版を入手したので、その試用レポートをお送りしよう。


カッコいいデザイン

 ISDN TAはモデムと違い、単にインターネットに接続するためだけの道具ではない。アナログポートに電話機やFAXを接続するため、いわば回線の要のような存在でもある。しかし、国内で販売されるISDN TAの多くはモデムとほぼ同じか、それ以下の表示機能しか持っていない。

 サン電子のTS128GA2を見ると、まず目に入るのが前面の液晶パネルだ。業務向けの高価な製品には液晶パネル付のISDNターミナルアダプタもあるが、3万円台の製品(標準小売価格は3万6800円)に搭載されてくるとは正直言って驚いた。この液晶パネルには、通信速度DTE速度発信者番号通話時間及び電話料金回線切断理由通信ポートの使用状況などがリアルタイムで表示される。ISDNターミナルアダプタはどうも事務機器的な地味なものが多かったが、液晶パネルひとつでかなり趣が違う。なかなかカッコいい製品と言えるだろう。

 TS128GA2はまだ初期出荷の段階で、市場にはそれほど数が流通していないが、すでに3万円を切る価格を設定しているショップもある。外付けDSUが添付されたパッケージ(標準小売価格:5万6800円)も販売されており、こちらは5万円前後といったところだ。

 さて、簡単に基本スペックを紹介しておこう。

項目 諸元および機能 備考
接続回線 INSネット64 終端抵抗内蔵
交換形態 回線交換、Dチャンネルパケット
使用チャンネル B,Dチャンネル
デジタル
ポート
ポート数 1 D-Sub25ピン
制御コマンド体系 拡張ATコマンド
非同期通信速度 1.2/2.4/4.8/9.6/19.2/38.4kbps ITU-T V.110準拠
同期通信速度 64/128kbps(非同期/同期PPP変換機能による) 128kbpsはMP対応
サービス機能 着信自動判別、短縮ダイヤル、オートコールバック、識別着信、
ユーザー間情報通知、自己アドレス、自己サブアドレス
Dチャンネル
パケット通信対応
アナログ
ポート
ポート数 2
対応ダイヤル方式 プッシュホン 各種設定も可能
供給電圧 24V
フレックスホン コールウェイティング
ダイヤルイン 対応 グローバル着信
選択機能あり
内線 通話及び転送に対応
その他 サブアドレス、電話機からの各種設定、
アナログポート優先着信設定選択
メンテナンス機能 自己診断、フラッシュEPROM搭載 ファームウェアの
バージョンアップ対応
電源 AC100V(本体内蔵) 消費電力約5W
外形寸法/重量 155(W)×43.8(H)×203.5(D)mm/約600g

 ちなみに、アナログポートの内線転送については、マニュアルに記載されていないが、開発終了直前に盛り込まれたそうだ。操作方法などについては、後日、サン電子のホームページやNIFTY-Serveのモデムベンダーフォーラム(FMODEMVA)などで公開されるはずだ。


意外に見づらい液晶パネル


TS128GA2 Frontside TS128GA2 Backside
 筐体は最近のTAにしてはやや大きめで、MN128よりもひと回り以上大きい。しかし、邪魔になるサイズではない。むしろ、個性的なデザインがされているため、存在感があるという方が適切かもしれない。本体前面には最初にも触れたように、液晶パネルが装備され、その上にLEDが並んでいる。

 背面は上の写真のように端子類が並んでいる。右からISDN端子、RS-232Cインターフェイス、そしてアナログポートが2つとアース端子だ。電源部は本体に内蔵している。右側面には電源スイッチ、底面にはディップスイッチが装備されている。ディップスイッチは終端抵抗のON/OFFやDTE速度などの設定をするときに使うため、一度セットしてしまえば、あまり触ることはない。

TS128GA2 Panel
 注目の液晶パネルだが、これが意外に見づらい。パネルそのものが筐体の最前部より少し奥まったところにあるため、LEDが格納されている付近の出っ張りで影になってしまうのだ。左の写真もかなり上に傾けて撮ったが、やはり出っ張りの影が出てしまった。しかもバックライトがないため、近づいてのぞき込まなければ、文字が読めないのだ。アイワや
Supraダイアモンドマルチメディア)のモデムのように、バックライト付にしても良かったのではないだろうか。せっかくの液晶パネルがあまり効果的に機能していないように感じられる。



128kbpsは業界標準のMPに対応


 昨年、サン電子はTS64DAAというV.110/38.4kbps非同期通信対応のISDN TAを発売しているが、今回のTS128GA2はTS64DAAよりも安い価格で、現状で考えられる最高のスペックを実現している。なかでも注目の128kbps対応は、業界標準規格と言われるMP(Multilink Protocol)に対応しており、全体的に見てもライバルと目されるMN128とほぼ同等のスペックを持っている。違いがあるとすれば、アナログポートの給電電圧くらい。もちろん、価格はTS128GA2の方が確実に安い!

 気になるインターネット接続時のパフォーマンスだが、いつも通りプロバイダのサーバーに対してftpを使ってput/getを繰り返し、ファイル転送テストを行なってみた。

 まず、64kbps同期通信での接続時についてだが、getが5%ほど遅かったものの、putについてはまったく問題がなかった。実用レベルでは気にならない程度の差だ。一方、MPを使った128kbps接続については、put/getともに十分な速度が出ておらず、今ひとつという印象を受けた。この点については今後の改善を望みたい。幸い、フラッシュROMを搭載しているので、何らかの形でバージョンアップが期待できそうだ。


使い勝手はどう?

 さて、使い勝手などを含めたその他の部分を見てみよう。パッケージには各プラットフォームに対応したケーブルや変換コネクタ、設定ファイルが添付されており、DSU付のISDNらくらくスターターキットにはDSUと極性チェッキー、クロスモジュラーケーブル(屋内配線が逆に配線されていたときに使う)が含まれている。つまり、DSU付パッケージなら、あとはNTTに申し込むだけで済むわけだ。

 ただ、ダイヤルインなどの各種パラメータを設定するためのユーティリティは添付されていない。アナログポートに接続した電話機から設定をすることもできるが、大半がパソコンユーザーであることも考えれば、WindowsやMacintoshに対応した設定ユーティリティは欲しいところ。今後、インターネット上などで公開する形でも構わないので、ぜひ提供してもらいたい。


全体的に見て

 まず、コストパフォーマンスという点については、おそらくトップレベルと言い切れるだろう。MN128とほぼ同等のスペックを持ちながら、実売で1万円近い価格差があるのは驚異的ですらある。視認性に問題はあるが、液晶パネルを採用した独創性についても高く評価したい。

 マイナス面としては、128kbps接続時のパフォーマンス不足と設定ユーティリティがないことが挙げられる。128kbps接続時のパフォーマンスについては、まだ対応プロバイダが少なく、本格的な普及はBACPなどの次期標準プロトコルが登場する来年以降と言われているので、その時期までには改善してもらいたい。逆に、設定ユーティリティについては早急に開発し、何らかの形で配布して欲しい。TS128GA2を購入したユーザーに待ってて良かったと感じさせられるかどうかは、ファームウェアのバージョンアップやユーティリティの配布を含めた今後のサポート体制にかかっている。

 若干の問題点は残されているものの、TS128GA2は価格的にも機能的にも十分なものを持っており、かなり魅力的なTAと言えるだろう。当面は64kbps同期通信で接続しておき、ファームウェアのバージョンアップなど、時期が来た段階で128kbps同期通信に移行するので構わないのであれば、買いのTAである。

[Text by 法林岳之]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp