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後藤 弘茂のWeekly海外ニュース 【号外】

Cyrixが1,000ドルパソコンを実現する
新MPUプランを発表

'96/8/27 発表


 米Cyrixは、8月27日に東京で技術セミナーを開催、今後のMPUロードマップを明らかにした。

 それによると、「Gx86」(開発コード)と呼ばれる新製品ファミリを新たにラインナップに加える。これは、同社が新しい市場開拓を目指して第4四半期から投入するインテグレーテッド製品。MPUコアに、グラフィックスアクセラレータ機能、サウンド機能、メモリコントローラ、PCIコントローラなどの周辺機能を集積する。それによって、周辺チップを削減、システムの大幅な低コスト化を実現する。

 米Cyrix社のコーポレイティングマーケティンブ担当上級副社長スティーブ・トーバック氏は、Gx86について「完全なパソコンを、1,000ドル以下で売り出すことができるようにする製品。性能はミッドレンジのPentiumクラス」と解説する。位置づけとしては、ネットワークコンピュータ(NC)などに対抗する超ローコストパソコンやノートのためのデバイスだ。

 Gx86は、昨年のマイクロプロセッサフォーラムで、Cyrixがアーキテクチャを発表したリサーチプロジェクト「5Gx86」の製品化。5Gx86は5x86をコアに採用していたが、Gx86ファミリでは同社の次世代MPU「M2」コアも将来採用するなど、さらに発展させてゆくという。なお、Gx86は、オブジェクトコードはx86互換だが、既存のx86系MPUとのピン互換性はまったくない。

 トーバック氏によると、Gx86を搭載したMPUを使った製品は、大手のシステムメーカーにより、ワールドワイドで展開される予定という。

 このほか、セミナーでは、先週、米国の半導体関係のシンポジウム「Hot Chips」で発表した、同社独自のMPUへのマルチメディア拡張であるCyrix MMX技術の概要も発表した。それによると、同社のMMX技術は、命令セットレベルでは米Intel社のMMX命令と完全互換になる。ただし、FPU命令とMMX用命令で同一レジスタを別名定義して共有するために生じるレジスタ退避の問題に対しては、IntelのP55C(MMX搭載Pentiumのコード名)にない技術で対応する。具体的には、MPU内部の1次キャッシュメモリの一部をロック、レジスタ内容をメインメモリに退避する代わりに、キャッシュ内のロックされたエリアに退避することで、高速な退避とロードを可能にする。

 MMX技術を搭載した同社のMPU製品「M2」(開発コード)では、この技術により、浮動小数点演算命令とMMX命令の両方を使う必要がある3Dグラフィックス処理などでの性能が上がるとしている。M2は、このほか32ビットコード最適化や64KBの大型1次キャッシュ搭載などの特長を持つ。トランジスタ数は600万、2.5V駆動(バスインタフェースは3.3V)、6x86ソケット互換(完全なピン互換ではない)、0.35ミクロン5層CMOSプロセスで製造し将来は0.25ミクロンに移行する予定。詳細なアーキテクチャに関しては、10月のMPU業界の学会「Microprocessor Forum」で技術発表の予定。サンプル出荷は年内。

 また、同社は現在のPentium対抗MPU「6x86」も強化。今年第4四半期から駆動電圧を2.5Vに下げた低消費電力版を、ノート市場向けに投入する予定。

Cyrixのホームページ(8/27現在 この製品のニュースはあがっていない)

('96/8/27)

[Reported by 後藤 弘茂]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp